VR・Oculusが拓く芸術の「新たな地平」

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2016/09/29

(写真=PIXTA)

2016年4月、GoogleはVRヘッドマウントディスプレイ「HTC Vive」向けの、3Dペインティングソフト「Tilt Brush」をリリースした。同ソフトを使えば、キャンバスに絵筆で絵を描くように、仮想空間に仮想の筆で絵を描けるようになり、新たな「絵画」の世界を作り出しそうだ。

まだまだ開発段階にある仮想現実(VR)の応用例の一つである3Dペインティング。その応用例は数少ないが、現時点ではどういった方法で描写するもので、なぜ話題になっているのかを解説する。

VRは芸術のあり方までも変えるか?

3Dペインティングをよりよく理解するために、絵画の大まかな歴史をまずは振り返ってみよう。

従来の絵画といえば、油彩画や水彩画を想像するだろう。油彩画が生まれたのは14世紀後半、ヨーロッパでのことで、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」を含め、数多くの名画が制作された。油彩画は絵の具を塗り重ねることで生まれる質感、混色のしやすさなどが特徴だ。

一方、水彩画も古くから存在したが、油彩画家からはスケッチや模写の道具とみなされていた。18世紀になると水彩画が英国などで広く普及し、「ウォッシュ」と呼ばれる手法の薄く溶いた絵の具を、大きめの筆で一定方向に線を引くように塗りつぶし、にじみやぼかしを作るのが特徴だ。

また20世紀後半になるとコンピューター・グラフィックス(CG)を芸術に活かす動きも出始めた。CGはノイズのない鮮やかな色合いや、修正や編集が容易という特徴を持ち、ペインティングソフトとマウスを用いてパソコンの画面上で描画するスタイルが普及してきた経緯がある。

Oculus RiftやViveで出来る3Dペイントとは?

さらには、近年、VRのヘッドマウントディスプレイと3Dペインティングソフトが登場したことで、新しい「絵画」が生まれる可能性も出てきている。

アーティストはOculus RiftやViveなどのヘッドマウントディスプレイを装着し、3D空間の中で自由に絵を描ける。

Vive用のソフト「Tilt Brush」では、「絵筆」の代わりにコントローラーを使う。同ソフトでは、パレットと、筆(ブラシ)の対になったコントローラーを用いて、裏側につけられたトリガーボタンを押しながらコントローラーを動かすことで、線が描ける。設定次第で、線の種類や色も組み合わせは自由だ。描いた線が炎のエフェクトで揺らめいたり、スプレーで雪を降らせたりするなど演出も多彩となっており、今までにはない表現を作り出す可能性を秘めていると言ってもいいだろう。

またViveはルームスケールVRを特徴としているため、部屋の中を自由に歩き回って、等身大のダイナミックな絵を描くことも可能だ。

「ペインティング」に与える大変革

伝統的な絵画はキャンバスや紙に描いたものを目で鑑賞するのに対し、3Dペインティングは、仮想空間で「空間に描く」「絵画を体験できる」という点で従来と大きく異なる。例えば、3Dペインティングでは絵の周囲を回りながら描いたり、描いた絵を裏側から眺めたり、下から覗き込んだりすることもできるといった具合だ。

保存した絵は描いた順番で再生できるため、描く過程も一つのアート作品として楽しめる。Googleは6人の著名アーティストが「Tilt Brush」を使ってゼロから作品を作り上げる過程をブラウザ上で公開しており、360度調整できる視点から楽しめ、マウスのクリックで拡大、縮小も可能だ。

また「Tilt Brush」は2016年8月にアップデートしており、音楽に合わせて線が動いたり、光ったりする機能が搭載されて、より動的な3Dペイントの体験ができるようになった。

3Dペインティングの可能性

3Dペインティングは応用の幅も広い。オーストラリアのロックバンド「Ball Park Music」は「Tilt Brush」を使ってミュージックビデオを制作した。複雑な色の線で描かれた絵が音楽に合わせて動いたり、歌詞の一部が空間で光っているのが見えたりするなど、音楽の世界観を疑似体験できるコンテンツとなっている。

また大手自動車メーカーであるトヨタはIT関係の国際イベント「ディスラプトSF 2016」で、プリウスのドライブ・シミュレーターを発表しており、シミュレーターの背景などは3Dペインティングアプリで作られているという。利用者は「Vive」を装着して、リアルな運転体験ができるようになっているという寸法だ。

もちろんほかにも、たくさんの3Dペインティングの応用例が想像できる。その普及が今後、新しい体験型の芸術の時代への扉を開くことになるのかもしれない。

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