量子コンピュータに匹敵!? 日立のCMOSアニーリングチップとは

1,170view

2016/12/02

(写真=PIXTA)

交通渋滞の緩和、サプライチェーンでの物流コストの削減、エネルギーの安定供給など、大規模かつ複雑な課題を効果的・効率的に解消するためには、ネットワーク全体の最適化を図るための組み合わせを見つけなければならない。この、いわゆる「組合せ最適化問題」の解決に大きな力を発揮すると期待されるのが、量子コンピュータだ。

逆に、組合せ最適化問題を従来のコンピュータ(量子コンピュータと対比して、古典的コンピュータと呼ばれる)で解こうとする試みも、もちろんある。日立製作所(日立)はそうした取り組みを進めている1社だ。すでに2015年に「CMOS」と呼ばれる従来の半導体技術で作ったコンピュータ回路で、組合せ最適化問題を効率よく解く成果を発表済みだ。

量子コンピュータに匹敵する? 「CMOSアニーリングチップ」

日立は、量子ゆらぎの多い状態から徐々にゆらぎを減らしエネルギーが極小状態となる最適解を見つける量子アニーリングに代わる方法として、半導体CMOS回路上で擬似的に再現する「CMOSアニーリングチップ」を開発した。

CMOSアニーリングチップは、従来の半導体技術で作られているため、量子コンピュータで必要な極低温への冷却が不要で、室温でも作動する。そのため管理も比較的に容易で、大規模化にも容易に対応できると言う。また日立によれば、通常のコンピュータと比べて1,800倍の電力効率を実現し、エネルギー消費量の大幅な低減も可能になると言うのだ。

また日立は、新たな方法で従来技術を使ったコンピュータで、組合せ最適化問題に挑む際の問題を回避しようとしている。従来の半導体回路を使ったコンピューティングで組合せ最適化問題を解こうとすると、全体から見ると最適ではないが比較的に狭い範囲での解である局所解を、最適解だとして算出してしまう可能性があった。

その問題についてCMOSアニーリング技術では、特殊な回路を経て外部から疑似乱数などのノイズを入力し、特定の局所解への固定化を防止。より適した解を求めるためのアニーリングを、半導体回路で実施していると言う。

ただ、日立の解説に対しては「擬似乱数の生成アルゴリズムを説明していない」や、「ゆらぎの大きさが制御されていないように見える」などの批判的な意見も出されている。今後、その有効性は検証されていくと見られるが、組み合わせ最適化問題が社会の発展を促す上で、カギになるかもしれない。

量子アニーリングとCMOSアニーリングの違いは?

日立のCMOSアニーリングチップと、量子コンピュータの違いはどこにあるのかも見ておこう。

従来のコンピュータは、信号のオンとオフで示される「1」か「0」という情報を組み合わせて作動している一方で、量子コンピュータは「1」と「0」の値を重ね合わせた情報(量子ビット)も利用して、超並列計算を実行しているという特徴を持っている。

量子コンピュータではさらに、量子的に振る舞う回路を使うことで量子ビットの計算への応用を可能にし、ビット数の2倍の数の組み合わせを同時に計算できる。2量子ビットの計算を行えば、2の2乗で4通り、5量子ビットの計算では2の5乗で32通りなどといった計算を一度に行えると言うことだ。

また組合せ最適化問題を解くには、磁性体の振る舞いを数学的に表現するイジングモデル(2つの値をとれる格子点の組み合せで構成され、隣の格子点のみの相互作用を考慮するモデル)と呼ばれるモデルで処理。実用化されている量子アニーリング型の量子コンピュータでは、その中で全ての条件を重ね合わせた状態から、ゆらぎを与えて最適解を絞り込んでいけると言う。

日立のCMOSアニーリングチップはどうかと言うと、「CMOS半導体を使って」イジングモデルを擬似的に再現している。量子コンピュータで行うようなイジングモデルの計算処理を、半導体技術で疑似的に再現しているとも言えるだろう。日立によれば、イジングモデルの計算では部分計算を行うだけで全体最適に近い解である実用解を算出できるため、処理速度の高速化と電力消費量の低減を両立させることが可能だという。

現在では、日立の他にも従来の半導体技術を用いたコンピュータで、組合せ最適化問題を高速で解く試みを進める企業がある。開発の競争も激しくなっており、量子コンピュータの実用化競争とともに、量子コンピュータと従来のコンピュータの組合せ最適化問題の計算も一つの競争になっていると言えそうだ。

>> MUFGと協働し新しいサービスを創造!ビジネスパートナーシップ登録はこちら

>> スタートアップアクセラレータ“MUFGデジタルアクセラレータ”第2期説明会の参加登録はこちら

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

INNOVATION HUBの最新情報をお届けします