大隅氏のノーベル賞受賞を決めた「オートファジー」で目指すアルツハイマー病の治療

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2016/11/29

(写真=PIXTA)

京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授は、iPS細胞の発見により2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。他にも大村智・北里大学特別栄誉教授や、理研MIT神経回路遺伝学研究センターでセンター長を務める利根川進氏もノーベル生理学・医学賞を受賞している。

そして2016年10月には、東京工業大の大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞した。大隈氏はオートファジーのメカニズムを分子レベルで解明したのだ。今回は、このオートファジー応用の可能性を紹介しよう。

人が人の体を食べる? タンパク質をリサイクルするオートファジー

オートファジーとは、生物が細胞内でタンパク質を分解し、再利用するメカニズムのことである。大隈氏は酵母の細胞内にある液胞という器官に着目し、オートファジーの働きに不可欠な遺伝子を特定した。その結果、分子レベルでオートファジーの仕組みが明らかになったのだ。

ノーベル賞決定のニュースを聞くまで、オートファジーという言葉を耳にしたことのない人も多かったかもしれない。「オート(Auto-)」はギリシア語では「自分自身」、「ファジー(-phagy)」は「食べる」ことを意味している。不要なたんぱく質などを細胞自身が集めて、分解・再利用するという、いわば「リサイクル」の仕組みだ。

オートファジーの働きそのものは、以前から世界中の研究者に知られていた。しかし、どのようなメカニズムで分解作用が起こっているのかは突き止められていなかった。特に分解活動は短時間に行われるため、観察するのが困難で研究が進みにくかったと言われている。

大隅教授はさまざまな研究過程を経て、酵母にもオートファジーが存在していることを突き止め、オートファジーの研究材料として酵母を使用した。併せて、同教授は単細胞生物の酵母を使い、細胞内部からタンパク質を分解し、新しいタンパク質を合成することを証明し、オートファジーの作用に関わる遺伝子の特定にも成功している。

「オートファジー」には医学、美容業界も期待

オートファジーの研究成果によって、どのような効果が期待できるのだろうか。まず挙げられるのがアルツハイマー病の解明と治療の開発だ。アルツハイマー病は、アミロイドβペプチドなどの異常なタンパク質が脳の神経に蓄積することが主な発症原因とされており、オートファジーの働きを治療に活かせるかもしれないのだ。

オートファジーが有効に機能すれば、プロセスでアミロイドβペプチドが分解され、リサイクルが進むことでアルツハイマー病は発症しない。しかしオートファジーが機能していなければ、脳内でアミロイドβペプチドの量が増加し、アルツハイマー病を引き起こすと見られている。つまり、オートファジーの研究がさらに進めば、アルツハイマー病の治療方法の解明も可能になる日がくるかもしれない。

また、オートファジーの機能を高めることで、がんや神経疾患の症状の改善に繋がる可能性もあるという。すでにオートファジーを応用した抗体医薬や核酸医薬などの研究も進められており、実用化が待たれる。

医学の他に、美容業界でもその機能に着目した製品が生み出されている。

例えば化粧品会社の中には、美容液の開発にオートファジーの研究を応用しているところもある。体内のリサイクル機能が低下すると、肌の細胞を浄化する機能がうまく働かなくなり、老廃物が溜まっていく。これらを予防するための商品が、既に開発されているそうだ。今回のノーベル賞の発表により、オートファジーへの関心を高め、新たな製品の開発に乗り出す動きも出てくると予想される。

大隅氏の地道な研究が実を結んだオートファジーの発見は、そのインパクトも巨大で、さまざまな分野への応用でさらなる潜在性を秘めていると言えるだろう。遺伝子の書き換えなどの技術も生かし、オートファジーの応用がさらに広がっていくことを期待したい。

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