カブドットコム証券とゼロビルバンク MUFGのアクセラレータプログラムで生み出された「OOIRIコイン」

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2016/12/01

(写真=PIXTA)

ビットコインを筆頭に注目を集める「仮想通貨」と「ブロックチェーン」。仮想通貨の取引所やブロックチェーンのソリューションを用いたスタートアップも立ち上がる中、カブドットコム証券とゼロビルバンクが、主に企業内で流通させる仮想通貨(企業内仮想通貨、企業内コイン)をスタートさせた。

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カブドットコム証券はこの「OOIRIコイン」を社内施策推進のインセンティブに使い、「働き方改革や健康経営」を推進するという。カブドットコム証券のFintech Labで主任研究員を務める中澤康至氏と、イスラエルに本拠を持つブロックチェーンスタートアップ、ゼロビルバンクの共同創業者兼CEOの堀口純一氏に話を伺った。

健康的な生活等の価値に付与される「OOIRIコイン」

カブドットコム証券の社内で10月中旬から運用が開始されたOOIRIコイン。その目的は現在のところ、「社員コミュニケーションの活性化」だという。例えば社員間のアドバイスに対する感謝を、OOIRIコインを渡すことで伝えるといった使い方が想定されている。中澤氏はまた「例えばある会議で、参加者が効率的な会議の運用に貢献すれば、OOIRIコインを付与して評価していくという使い方もあるのではないか」と話す。

他にも、社員の健康的な生活推進にも応用している。カブドットコム証券のある東京・大手町一帯をエリアとして、社員の動きを記録し、健康的な生活をする社員に対しOOIRIコインを渡すことで報いているのだ。

例えば、朝8:30以前に大手町エリアに入れば、10・OOIRIが付与される。これは朝活や早目の出社を応援するためだ。またノー残業デーに大手町エリアから早く出ていれば、10・OOIRIが付与される。こちらは早期帰宅を促し、業務の効率化を促す狙い。また「OOIRIでGO」というキャンペーンでは、1日1万歩歩くと、100・OOIRIを付与してウォーキングを促している。いずれにしても、OOIRIコインを付与することで健康的な働き方を評価しているのだ。

この大手町エリア内の社員の行動を観測するシステムを支えるのが、ジオフェンシング(Geofencing: Geo-=地理的な・位置の、-fencing=囲い)と呼ばれる、特定の場所に限定してサービスを提供する技術だ。

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堀口氏は「基地局とGPS、Wi-Fiの位置情報の3つを組み合わせることで、スマートフォンなどの持ち主の居場所を特定する機能を使っている」と解説。アプリを起動していなくても、携帯端末がスリープ状態でも位置情報を取得でき、電源をオンにしてアプリを起動するといった手間もなく利用できるという利点もある。

両社はまた、オフィス周辺の飲食店と連携し、支払いにも使えるようにしたいと考えている。証券会社としての売り上げや利益の向上には直接的につながらないかもしれないが、社内で推奨される活動へのいいインセンティブとして働く可能性はある。

これは、大手町周辺を「OOIRIゾーン」と位置づけ、カブドットコム証券の企業内コインが流通する地域を作り出そうとする試みなのだ。

「OOIRIコイン」を生んだMUFG Digitalアクセラレータ

カブドットコム証券とゼロビルバンクの「OOIRIコイン」は、仮想通貨やブロックチェーンという新技術をフル活用した成果といえるが、その出自も技術的な先進企業やスタートアップらしい。

両社の協働を後押ししたのは、MUFGが主催するスタートアップアクセラレータである。OOIRIコインは、11月28日から第2期の募集が開始された「MUFG Digital アクセラレータ」の第1期で、ゼロビルバンクの仮想通貨・ブロックチェーンの技術を生かした一つの仕組みとして生み出された(第1期はFinTechアクセラレータという名称で実施)。

第2期アクセラレータの記事はこちら:https://innovation.mufg.jp/mufg/311

中澤氏はOOIRIコインの開発経緯について、「もともとはブロックチェーンを使って何かできないかという考えがあった。そこでまずは社内で、スモールスタートでやってみようと始まった」と明かす。そのうえで「企業内コインを発行すれば、どのような価値が出てくるのか、ゼロビルバンクで整備されたAPIの課題もはっきりさせられる」という意図があったとも述べている。

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アクセラレータプログラムで両社は協働を深め、サービスを具体化した。中澤氏によれば、ゼロビルバンクの仮想通貨・ブロックチェーンの技術を地域振興に活用するというアイデアもあったという。目の前にある技術を使って問題解決を図るアプローチは、カブドットコム証券からも新鮮だったようだ。

他方で、堀口氏はアクセラレータで得られた成果について、「スタートアップにとっては時間という貴重な資源を何に使うかは非常に重要だ」とした上で、「トップの企業グループからFinTechの観点でアドバイスをもらい、自分達の技術を形にしていく場とチャンスを貰えたこと、自分達のお客様や社内での活用もできるのかということを、腰を据えてやれたことが良かった」と話す。

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実際に、カブドットコム証券とゼロビルバンクがアクセラレータプログラムの終了後すぐに「OOIRIコイン」を立ち上げ、運用を開始できたことを踏まえれば、両社のアクセラレータプログラムの取り組みは成功だったと言えそうだ。

ウェアラブルとの連携で新たな価値の結晶化を支援、新たな価値の市場創出も視野

OOIRIコインには、社員の健康増進や社員間のコミュニケーションの促進が期待されているが、その可能性は実はさらに大きい。企業内仮想通貨とIoTなどを連携させることで、新たな使い方を提案しようとする動きもある。

その一つが禁煙の後押しだ。例えば、ある企業が禁煙活動推進のため、喫煙室へ入室した際に、企業内コインがマイナスされるといった、負のインセンティブ設計もできるという。スマートフォンのBluetooth機能を用いたビーコンを喫煙室に設置し、そのアクセスデータを記録することで、喫煙者をチェック。健康に悪影響を与える要因の一つとして、禁煙を促すというアイデアだ。

喫煙室にスマートフォンなどを持っていかないという回避方法もあるが、その点について中澤氏は「スマートフォンに表示させるQRコードを読み込ませることで、喫煙室の鍵が開き、入室できるようにするなど、ユーザーのアクションに基づいて設計する」など、ニーズに応じた設計も出来ることを強調する。

堀口氏はIoTデバイスとの連携について他にも「例えばウェアラブル端末と連携して、睡眠時間や心拍数なでのデータを生かすこともできる。今ではスマートフォン搭載のカメラで、フラッシュを当てて指先を撮るだけで脈拍を計測できる。それと連携して、健康を計測することもできる」と構想を描いてみせた。

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加えて、健康診断を受けたかどうかや人間ドックを受診したかどうかなどのデータを組み合わせることもできるという。まさに「健康を増進する行動」に価値を付け、交換するプラットフォームに拡大していく可能性もありそうだ。

中澤氏はさらに、将来的な活用法について解説。「顧客サービスにも使えるのではないか。また今は社内のコミュニケーションツールに過ぎないが、社外でも使えるコインとして流通させられれば、いろんな意味で大きな価値が市場に出てくるのではないか」と、将来的な構想を語る。

「目に見えない価値をやり取りする」ための仮想通貨のプラットフォームを作ったゼロビルバンクと、それを企業内コインという形で生かし、運用を開始したカブドットコム証券の新たな取り組み。

今後、「何を」「どのような基準で」評価して価値あるものだと認定していくのか--。今までにないインパクトを社会に生み出す可能性は十分にある。新たな価値基準、価値の移転システムの登場が期待される。

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