「世界最高のデジタルバンク」 のイノベーションがアジアのFinTechを加速させる  

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2017/03/17

(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

国家規模で推進されるビジネス改革や、アジアを代表する金融ハブの地位を最大限に活用し、FinTechを先導するシンガポール。東南アジア一の資産規模を誇るDBS銀行は、過去3年間にわたりAI、ビッグデータ、バイオメトリクスなど最先端のテクノロジーを研究した成果が実り、自他ともに認める「世界最高のデジタルバンク」に変貌を遂げた。

外部と内部、両側からのデジタル改革で次世代銀行を創る

ピユシュ・グプタCEOが自ら「22万人のスタートアップ」と称するDBSは、既存の常識と限界を打ちやぶる銀行システムの再構築をスローガンに、ユニークな改革アプローチを用いている。

DBSがFinTech化を目指すライバル大手に大きく差をつけているのは、テクノロジストの引きぬきやスタートアップとの提携といった外部からの力に依存するだけではなく、内部から基盤を創り変えようとしている点だ。

例を挙げると、2017年だけでも5,000人以上の従業員にハッカソンやカスタマー・ジャーニー(顧客による商品やサービスの認識から購買に至るまでのプロセス)のワークショップを通して、デジタルコンセプトに親しめる機会を提供。シニアマネージャーには各々のカスタマー・ジャーニーを担当させ、顧客や従業員が受け入れやすい組織再編の実現を試みている。

こうしたユニークな内部改革とともに、スタートアップとの提携にもオープンだ。米AIプラットフォーム「Kasisto」やシンガポールのデジタルバンキング・ソリューション企業、Moneythor、ソフトトークンの「V-Key」と提携し、インド初のモバイル銀行、digibankも2016年4月に開設した。

スタートアップとDBSが共同体となるFinTechハブ「DBS Asia X 」

DBSのソースにこだわらないアプローチは、2016年11月に設立したFinTechハブ「DBS Asia X (DAX)」にも色濃く反映されている。

情報通信、メディア、科学・エンジニアリングの研究開発専用施設「フュージョノポリス」のビジネスセンター内にオープンしたDAXは、1,486平方メートルの広々としたスペースに100人を収容できるコワーキングスペース、プロジェクトルーム、会議室などを設備している。

8週間から12週間のプログラムには、DBSのテクノロジー・スペシャリスト、ユーザーエクスペリエンス・デザイナー、エスノグラフィー・スペシャリスト、データサイエンティストなども参加。スタートアップとともにモバイルおよびオンライン・バンキング・ソリューションの開発やプロトタイプのアイデアを検証する。

統合されたバンキングシステムの開発を目指すスタートアップ、中小企業、社会的企業向けに、定期的にハッカソンも開催している。

世界中から「才能の原石」を発掘する人材ハッカソン

直近の試みでは、2017年3月に人材ハッカソン「Hack2Hire」を開催している。世界中のさまざまなテクノロジー分野からの優秀な人材発掘が目的で、外部からクラウド、AI、機械学習、ビッグデータ、分析の知識や経験を採用し、デジタルバンクとしてのDBSの未来を築き上げていくという試みだ。

公募にあたりDBSが求めているのは金融の専門家ではなく、テクノロジーが有する創造力と革命性である点を強調している。データ構造からアルゴリズム、分散システム、Webアプリケーションまで、多様な分野における「才能の原石」を探し出すのである。

90分にわたるオンライン・アセスメントに通過した応募者は、3月下旬にシンガポールで行われる「Hack2Hire」への参加だけではなく、DBSのテクノロジー部門からオファーを受けるチャンスも用意されている。「世界レベルで実力を試してみたい」という、技術者への機会を提供しているのだ。

グローバル企業と提携したアクセレーター・プログラムも開催

またDBSはMicrosoftやKPMG、IBMを含むグローバル企業と提携し、スタートアップを募るアクセラレーター・プログラムなども精力的に開催している。

2016年に香港のビジネス地区、ワンチャイで開催されたプログラムでは、スタートアップが12週間にわたる専門家の指導を受け、DBSのテクノロジー、サービス、エコシステムなどを利用しながら、アジアFinTechの未来を変えるソリューション開発のチャンスを得た。

自社従業員の行動変革を促すだけでなく、グローバル企業やスタートアップとの提携、人材が集うハブ施設の運営や優秀な採用を視野に入れたイベントの開催など、DBSのFinTechへの取り組みは一層加速していると言えそうだ。

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