三菱UFJ信託銀行×三菱UFJトラストシステム×AVILEN社 3社協働で目指したAIの民主化

三菱UFJ信託銀行×三菱UFJトラストシステム×AVILEN社 3社協働で目指したAIの民主化

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2021/07/28

2021年3月、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJトラストシステム(以下、MUSK)、株式会社AVILEN(以下、AVILEN社)の協業によって開発された、専門知識がなくてもExcelでAI開発が可能なシステム「AISeed」の外販化が決定し、これから本格的なサービス提供がスタートする。AIベンチャー企業との協業という、大手金融機関の伝統的なビジネスモデルとは異なる枠組みから生まれた新たな事業は、同社が目指す新時代の金融ビジネスにおいて、どのような意味を持っているのか。今回は3社が協業に至った経緯やそこからもたらされた成果、そして今後の展望について、プロジェクトに参画したメンバーから話を伺った。

関連記事:ひとりの社員のアイデアが外販にまで発展した「AISeed」に見る、三菱UFJ信託銀行のイノベーションとは?

(写真左から)
三菱UFJ信託銀行 経営企画部 デジタル企画室 上級調査役 岡田拓郎氏
株式会社AVILEN 代表取締役 高橋光太郎氏
三菱UFJ信託銀行 資産運用部 外国債券運用グループ チーフファンドマネージャー 樋口裕之氏
三菱UFJトラストシステム ITイノベーション推進部 グループマネージャ 伊豆峻昭氏

競争が激化する金融業界で不可欠なAI活用と組織の変革

—AISeedの外販化は、三菱UFJ信託銀行において初の試みということですが、開発に至った背景を教えてください。

 

樋口氏:金融業界は今、異業種などからの新規参入によって競争がますます激化しています。また、大幅な金融緩和による低金利によって、金利に依存したビジネスモデルは通用しにくくなっています。一方、銀行にはお客様との長期にわたるお取引の中で大量のデータが蓄積されており、これらのデータを活用することでお客様の様々な課題を解決できる潜在的な可能性があります。こうした背景から、お客様と近い距離にいる現場社員のアイデアを引き出す上で、テクノロジーが大きな役割を果たしてくれるのではないかと考えたのが、AISeedの開発・展開に至ったきっかけです。


(三菱UFJ信託銀行 資産運用部 チーフファンドマネージャーの樋口裕之氏)

岡田氏:これまで当社では、マーケティング、コンサルティング、資産運用の3つの領域でAI活用に取り組んできました。マーケティングでは、個人・法人を問わず、お客様のニーズに最適な金融商品の提案。コンサルティングでは、人手では難しい精度の高いデータ分析による付加価値の提供。資産運用では、勘と経験ではなく最新のデータに基づいた知見を運用者に提供することを、それぞれ目指しています。

現時点では専門企業以外は参入しにくい状況かもしれませんが、いずれは高度なテクノロジーを強みとする企業が参入してくることも十分に考えられます。こうした近い将来に到来する競争環境にも備えておく必要があります。

従来のビジネスモデルを超えたAIベンチャーとの協業

—三菱UFJ信託銀行、MUSKおよびAVILEN社の協業は、どのような経緯で実現したのでしょうか。

 

岡田氏:樋口さんが資産運用部内でAISeedの前身である汎用型AIを発明したのが2018年8月です。その後、2019年9月から全社展開のためのシステム化の検討が、また2020年の秋からは外販化に向けた議論がスタートしました。この一連の経緯の中で、以前から面識のあったMUSKの伊豆さん、AVILEN社の代表取締役の高橋さんにもお声かけをして、プロジェクトが立ち上がりました。

プロジェクトには、発案者である樋口さんにもアドバイザーとして参加してもらい、AI、クラウドなどの技術に精通した伊豆さんは開発プロジェクトのまとめ役、そして私はシステムの企画部門という立場から企画・推進全般を担当しました。また、AVILEN社の高橋さんには、AISeedの機械学習アルゴリズムやデータ可視化機能の高度化を担当していただきました。AVILEN社とは以前から取引があり、高い技術力を備えたパートナーとして他のメンバーも高く評価していました。


(三菱UFJ信託銀行 経営企画部 上級調査役の岡田拓郎氏)

伊豆氏:AISeedの前身である汎用型AIは、社員が普段の業務で利用している標準端末上で稼働していたため、ソフトウェアの配布・導入の負荷、端末のスペック不足などによる機能制限の課題がありました。現場での利用を促進するためには、クラウド化、AIアルゴリズムの強化、機能追加が容易な言語での再開発など、全面的な刷新が必要でした。核となる機械学習モデルの作成機能の開発には、短時間で高精度な機械学習モデルを作成するための深い知見が必要でしたが、データ分析案件を過去にご一緒させていただいた際に、AVILEN社のAI技術力の高さを認識しており、心配はありませんでした。また、高い技術力に加えて、顧客企業が抱えている課題を解決するために尽力してくださる姿勢も、AVILEN社の魅力だと感じています。

樋口氏:それぞれ得意分野が異なるメンバーが適材適所で力を発揮することで、要件定義は1カ月(合計4~5回程度のミーティング)で完了し、コロナ禍の制約もある中で試作品は4か月で完成しました。これまでの組織の枠組みを超えて、理想的なチームワークで仕事をすると、こんなにも早く成果を手にできるのだと実感しました。AISeed開発チームはまるで大学の研究室のような雰囲気で、全員が前向きに好奇心を持って開発に取り組んでいたと思います。

—AVILEN社のようなベンチャー企業と協業するメリットをどのようにお考えですか?

 

岡田氏:高度なテクノロジーを強みとする企業が次々と金融ビジネスに新規参入してくる中で、こうした企業と競合するよりも、協業を通じて新たな市場を開拓していくほうが重要だと考えました。

樋口氏:時代の変化に応じて、銀行という組織も変わりつつあります。私も新規参入してくるテクノロジー企業は、敵ではなく、むしろ積極的に協業し、新たな金融ビジネスを一緒に模索すべき仲間だと考えています。そのためには協業先の技術を理解し、こちら側のノウハウを伝えていく橋渡し役のような人材が金融業界には必要なのかもしれません。

—AVILEN社では、三菱UFJ信託銀行のような大手金融機関との協業にどのような価値を見い出していますか?

 

高橋氏:AISeedの話を最初に聞いたときは、これは私たちのようなテック企業では発想できないものだと感じました。金融機関はもちろん、多くのビジネスパーソンが慣れ親しんでいるExcelを操作画面として利用するというのも、現場の業務を深く理解しているからこその考え方だと思います。

ベンチャー企業がエンドユーザー向けの商品を開発しても、実際にはなかなか成功しません。アイデアは出せるのですが、作っても本当に需要があるかどうかが判断できないからです。商品やサービスの開発は最初の資金集めが大変で、失敗も許されません。しかし、大手企業であれば社内に多くの従業員がいますから、一定規模の仮説検証を内部で実施することができます。こうして大手企業と協業することで、ゼロから商品を生み出すリスクを回避できるのは、極めて大きなポイントです。

また、金融業界に限らずトップ企業とのパートナーシップには、さらに大きな価値があります。それは、業界のスタンダードになり得る可能性を秘めていることです。そうしたプロジェクトに関わることで、当社が得られるメリットは計り知れません。


(株式会社AVILEN 代表取締役の高橋光太郎氏)

伊豆氏:今回のプロジェクトで感じたことの1つとして、開発や品質管理におけるAIベンチャー企業との考え方の違いがあります。銀行では品質重視のシステム構築が一般的ですが、ベンチャー企業では、スピード重視でリリースし、その後は短いサイクルで改善を繰り返していく開発が多く、両者は大きく異なります。今回のAISeedの開発では、試作版の作成はスピード重視で開発し、利用者の増加に伴い徐々に品質重視へと切り替えていきました。

高橋氏:おっしゃる通りです。私たちは最新の技術を活用して、ユーザーのニーズにいち早く応えることを得意としていますが、そこには不具合があれば修正機能のリリースで対応していくという考え方があります。しかし、今回のプロジェクトでは初期段階における品質管理の重要性を改めて認識することができました。これは普段の仕事では得がたい貴重な経験でした。

AIを活用してビジネスの価値を高めるデジタル人材の育成も支援

—AIの価値を高めていくためには、その前提となるデータが重要ですよね。

 

岡田氏:ツールだけあってもデータが整備されていなければ、AIはその価値を発揮できません。そして、データ整備には高度なリテラシーが必要です。そのため、AISeedの販売においては、同時にデータ活用のための人材教育とコンサルティングを合わせて提供していくことを考えています。こうした点でも、AI教育の分野でも実績があるAVILEN社との協業にはメリットがありました。

—今後、AISeedを多くの企業に提供していくにあたって、どのような拡張をお考えでしょうか?

 

樋口氏:すでにプロジェクトのメンバーからも様々なアイデアが出されていますが、直近のテーマとしては自然言語処理にもう少し力を入れていきたいと思っています。自然言語処理技術はここ数年で急速に進歩していますが、それをマーケットに利用するにはまだまだ工夫が必要です。マーケットは生き物なので、単純にニュースのセンチメント判断だけでは、マーケットは予想できない。マーケットでは「噂で買って事実で売る」といった格言がありますが、噂レベルの動きを捉える必要があります。こうした動きを数値化し、一部はAISeedに取り込んでさらなる精度向上を図りたいと考えています。

伊豆氏:AISeedの開発では、分析結果の説明のしやすさを重視しました。そのため、分析結果の説明が難しいディープラーニングの機能は除外しています。ただ、ディープラーニングが可能であることは精度向上や販売促進にもつながるので、将来的に組み込めないか検討しています。


(MUSK ITイノベーション推進部 グループマネージャの伊豆峻昭氏)

樋口氏:将来的には、我々の業務でさらに多くのテクノロジーを応用し、世界中で低コストかつ効率的に運用できる体制が実現できればよいなと、私個人としては考えています。クラウド化を進め、運用環境ごと海外に持っていければ理想的です。ただし、そのためには情報の分別、セキュリティ、法的要件の整理など、越えなければならない多くのハードルがあると思っています。しかし、今回のプロジェクトメンバーのようなチームがグループの中で増え、適材適所で力を発揮できれば、いつかは乗り越えられると信じています。

AISeedお問い合わせフォーム:https://service.avilen.co.jp/l/843143/2020-02-10/mdt1fb

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