三菱UFJ銀行が導入したブロックチェーンを活用した貿易金融プラットフォーム「komgo」とは

三菱UFJ銀行が導入したブロックチェーンを活用した貿易金融プラットフォーム「komgo」とは

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2020/11/24

三菱UFJ銀行は、2019年12月に行内初のブロックチェーン実装案件として貿易金融プラットフォーム「komgo」を導入し、貿易金融の分野で長年課題となっていたペーパレス化、事務効率化や不正リスクの軽減に取り組む。

komgoは、三菱UFJ銀行を含む海外の大手金融機関、石油メジャー、コモディティ商社等、計15社の株主により2018年8月に設立されたKomGo SA(以下、Komgo社)が開発した貿易金融プラットフォームだ。現時点ではコモディティファイナンス(石油、鉱物、穀物等のコモディティの商流に関連する短期のファイナンス、外為取引等)に特化して取引のデジタル化に貢献している。
今回は三菱UFJ銀行 ロンドン支店 欧州投資銀行部 貿易金融グループ 調査役 宮原幸作氏に、Komgo社への出資及び協業の背景を伺った。

貿易取引が抱える長年の課題

国を跨いで行われる貿易取引では、取引に関わる関係者が非常に多く、そこでやり取りされる書類も多い。

「輸出入者だけでなく、輸出入者双方の金融機関、運送業者、保険会社などが関わる複雑な業務フローの中で、信用状、船荷証券、インボイスなど多くの書類をやり取りするので、取引の透明性や不正リスク、そして事務処理の負荷が大きな課題でした。一説によると、1回のコモディティの輸出入取引に際し、36の原本書類、240ものPDF書類が、27にも及ぶ関係者の間を行き来すると言われています。これら取引の中で発生する書類の突合・確認作業や、郵送による紙書類の授受は、貿易取引が長期化する一つの要因となっています。こういった業界の慣習は半世紀前からほとんど変わっていません。」

以前から貿易取引におけるデジタル化の取り組みはPoC(概念実証)を中心に行われていたものの、貿易実務における規則や慣習が国ごと、業界や企業ごとに異なっているため、データ連携やルールの統一が難しく、実用化・商業化に至らないケースがほとんどであったという。貿易金融にかかわらず、ブロックチェーン等新技術の導入にあたっては、機能の充実と標準化の両立が大きな壁となっている。

そうした長年の課題に対して世界中のコモディティファイナンス業界の主要プレイヤーが集結し、解決を目指して設立されたのがKomgo社である。

貿易金融の主要プレイヤーが集うスタートアップ企業Komgo社とは

2017年にABNアムロ銀行、コモディティ商社のマキュリアなどが集まり、貿易金融のデジタライゼーションに関するPoCが始まった。2回のPoCを経て新会社設立と商業化が決定し、15社の共同出資により、スイスのジュネーブに本社を置くKomgo社が設立された。三菱UFJ銀行も主要プレイヤーが集う本プラットフォームの将来性を感じ取り、綿密なデューデリジェンスを経て唯一のアジア系企業として立ち上げ時に参画した。Komgo社のボードメンバーは出資元の各企業から選出されて経営に携わっており、三菱UFJ銀行からも1名選出されている。

「Komgo社の一つの大きな特徴は、金融機関のみ、あるいは事業会社のみで主導している企業ではなく、コモディティファイナンスに係わる各分野の主要プレイヤーが株主である点です。ビジネスの豊富な実績を有し、実務にも精通する業界の主要プレイヤーが株主として力を合わせ、主体的にコモディティファイナンス業界のデジタル化を推し進めています。」


(画像出典:Komgo社ウェブサイト)

現在komgoには、「konsole」「market」「check」「trakk」の4つのプロダクトがある。信用状、スタンドバイ信用状、売掛債権の買取を含めた、輸入者・輸出者双方をサポートする多岐に亘る貿易金融商品のデジタル化を実現している他、本人確認(KYC)手続き専用のデータルーム、そして取引書類の認証・追跡といった機能を提供している。プラットフォーム上でやり取りされるデータや情報は全てが暗号化され、セキュリティの向上も実現している。

「幅広い貿易金融のニーズに、一気通貫で対応できる充実した商品ラインナップもkomgoの特徴です。多くのデジタル貿易金融プラットフォームは、単一プロダクト(あるいは2つ)を提供していますが、Aのプラットフォームは信用状のみ、Bのプラットフォームは売掛債権の買取のみ、を提供している場合、ユーザーは商品毎に異なるプラットフォームにアクセスする必要があり、効率的とは言えません。その点komgoは、大半の貿易金融のニーズに応えることができると思います。」


(画像出典:Komgo社ウェブサイト)

ブロックチェーン技術を活用したtrakkとは

三菱UFJ銀行は2020年7月、Mercuria Energy TradingがGunvor Groupから原油を購入した際の取引において、初めてtrakkを利用したことを発表した。

参考:First MUFG trade using blockchain to mitigate fraud for commodity trade finance transactions

komgoのプロダクトの一つであるtrakkは、デジタル書類の登録、閲覧に加えて、書類の受け手は確認、承認、支払い済等のステータスや署名を追加することが可能である。そしてブロックチェーンの技術の活用により、trakk上に登録された書類及びその書類に紐付く取引履歴は、一切の改ざんが不可能である。

「trakk上に登録された各書類は、固有のコードで管理され、PDF書類でありながら、ユニークな唯一無二の書類となり、極めて原本に近い形で取り扱うことが可能です。ペーパレスで利便性が高くスピーディーに取引ができるというだけでなく、ブロックチェーンを活用することでデジタル書類の信憑性を担保し、二重融資や不正リスクを回避することができます。また取引関係者は現時点の書類のステータスが把握可能で、取引の透明性が格段に上がります。」

また、trakkの特徴として「ブロックチェーンの活用による高いセキュリティの実現だけでなく、実務に即したユーザーフレンドリーなUIが強みです」と宮原氏は語る。実際のコモディティファイナンスのプレイヤーである出資企業がテストを行い、システムのブラッシュアップを繰り返すことで、現場の声をサービスに随時反映していったという。

「本件trakkも、COVID-19の影響で在宅勤務が広まり原本書類の取り扱いが難しくなる中で、信用が担保されたデジタル書類へのマーケットの急激なニーズの高まりに対し、Komgo社と株主で相談を繰り返しながら、開発、リリースされた商品です。」


(画像出典: trakk画面イメージ Komgo社提供)

自分たちが必要なものを、自分たちの手で作り出す。高い機動性をもつ社員約40名のスタートアップKomgo社と出資企業である大手の主要プレイヤーとの連携を活かした、Komgo社ならではの強みとも言えるだろう。

komgoはKomgo社設立からわずか2年で世界各国の金融機関24社、事業会社140社以上に導入実績があるという。(2020年10月末時点)

三菱UFJ銀行が株主として担う役割

komgoを通じた貿易金融取引のデジタル化において、三菱UFJ銀行は株主として「提供するサービスへの企画段階からの参画」及び「アジア圏へのkomgoの利用拡大」という役割も担っていると宮原氏は説明する。

「Komgo社の株主である当行では、同社が提供するkomgoを業界のスタンダードにすべく、テスト運用の段階から現場の声を届け、サービスのブラッシュアップに繋げています。例えば、本人確認のシステムであるcheckは、我々の声が強く反映されたものです。」

また、三菱UFJ銀行は、Komgo社の出資企業の中で「唯一のアジア系企業」として参画しており、アジア圏でのkomgoの利用拡大の推進において重要な責務を担う。

自社や自国内で完結することができない貿易金融の性質上、同一取引に係わる関係者がすべてkomgoを導入することがよりスムーズな取引へと繋がり望ましい。そのため三菱UFJ銀行では、既に導入済のロンドン支店顧客への展開はもちろん、シンガポール支店を足がかりに在アジア企業への導入支援や、国内の大手商社などへ声がけを行っている最中だという。

Komgo社の方針では、まずは欧州やアジア圏を中心にマーケット拡大を目指しながら、北米市場への本格的な進出も視野に入れている。
「私どもとしても、komgoを通じて、行内のデジタライゼーションを更に加速させるとともに、同社のアジア展開、そしてグローバル展開を支援していく方針です。」

「デジタルとビジネスの両方を深く理解した人材」の必要性


三菱UFJ銀行 ロンドン支店 欧州投資銀行部 貿易金融グループ 調査役 宮原幸作氏

三菱UFJ銀行では2018年より行内での導入に向けたプロセスがスタートし、2019年12月、本邦金融機関初のkomgoを利用したデジタル信用状の発行を行った。行内初のブロックチェーンの実装に際し行内調整に奮闘した宮原氏は、「導入決定までは約1年間の時間を要し、行内の15部署以上を巻き込む大掛かりなものでした。」と振り返る。

前例のない中で行内の理解を得て導入を進めるためには、ブロックチェーンの深い知識が必要であると感じた宮原氏は、ブロックチェーンに関するオンライン受講プログラムを約4ヶ月かけて履修したという。
「欧州企業のシステム導入のスピードは日系企業よりも早いです。変化の激しい時代の中で、世界中のお客さまに価値を提供するため、当行もさらにスピード感を持って対応していかなければなりません。
デジタルとビジネスの両方を深く理解した人材が、当行としても業界としても求められていると思います。」と、インタビューの最後に宮原氏は語った。

デジタライゼーションを中期経営戦略の最重要施策の一つに掲げる三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)では、eラーニングによるデジタル研修を実施するなど、全社員のデジタルリテラシーの向上や、既存の社内プロセス自動化による業務効率化を目指す。Komgo社との協業による貿易金融取引のデジタル化が、今後のMUFGのさらなるデジタライゼーションの進展につながるものとなることを期待したい。

参考:今さら聞けない「ブロックチェーン」とは何か?~その基本的なメカニズムと進化の方向を探る

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