ウィズ/アフターコロナで変わるビジネス領域とそれを支えるテクノロジー~省人化・無人化、リモート化の今~

ウィズ/アフターコロナで変わるビジネス領域とそれを支えるテクノロジー~省人化・無人化、リモート化の今~

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2020/10/20

新型コロナウイルス(以下、COVID-19)によって、既にITを活用してきた業界にとどまらず、あらゆる企業においてビジネスのあり方を大きく見直すことが余儀なくされている。その解決の一助になるのが「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」だ。

このDXの中で無人化・リモート化を取り巻くテクノロジーは大きな役割を果たしている。

本稿では様々な業界における省人化・無人化・リモート化の取組の浸透について、特にコロナ禍を経て大きく変化した事例を中心に紹介する。

不動産テックが住宅の買い方から保守までを一新

「不動産テック」(PropTechとも呼ばれる)は、コロナ禍においてビジネスの手法を一新した分野のひとつだ。基本的に不動産ビジネスは「実物」ありきの業界であり、一般的には実際に足を運び物件を見て、その評価や売買、あるいは設備の保守などを行う。だが、今回のコロナ禍の影響下で可能な限りバーチャルかつ無人でビジネスを進める手法が開発され、注目を集めている。

住宅売買は所有者と顧客がフルオンラインで完結


(画像出典:Ohmyhome社ウェブサイト)

2016年にシンガポールで設立されたOhmyhome社は、家主とテナント、売り主と買い主それぞれにとって、シンプルかつ迅速に不動産取引を行うことが出来るプラットフォームを提供している。現在ではマレーシアやフィリピンにも事業を拡大中だ。CEOのRhonda Wong氏は、姉のRace Wong氏と共に同社を創立し、不動産界では数少ない女性リーダーとして「Women of the Future Awards Southeast Asia 2020」を受賞している。

同社のプラットフォームは「DIYプラットフォーム」という住宅所有者とユーザーを無料でつなぐ機能や、専門的な支援を必要とする顧客のためのエージェント機能などを低価格で提供するサービスだ。

同社はこれまでテクノロジー企業として自動化、リモート化を常に推進してきており、2020年5月からは、住宅所有者がプラットフォームにツアー動画をアップし、オンライン上で物件を案内できるようになった。その取組が功を奏して、ユーザー数は同年3月比で約3倍に増加している。

「iBuyer」の分野は海外・国内とも好調


(画像出典:Opendoor社ウェブサイト)

アメリカではこの数年で、AIを活用した不動産の直接買取再販(不動産を買い取り、リフォームなどを施して再販すること)モデルである「iBuyer」が台頭している。通常、不動産は買い手が見つかってから売却するが、AIアルゴリズムが不動産価格を即時に査定し買取再販業者が買い取ることで、売り手は不動産をスピーディーに現金化できる仕組みである。その先駆者が、米サンフランシスコに本社を置くOpendoor社だ。

同社はロサンゼルス、アトランタ、ラスベガスなど全米21の都市で営業しており、従来、数ヶ月かかっていた不動産の査定から売却までのプロセスを2日ほどに短縮するという画期的なビジネスで一気に事業を拡大し、ソフトバンクグループをはじめとする投資家から約13億ドル(約1,394億3,800万円)の資金を調達した。現在このAI不動産再販の分野にはZillow、Redfin、Offerpadといった多くの競合が参入しており、激しくせめぎ合いつつ市場が拡大している。

COVID-19の影響を受け、2020年3月には一度住宅売買を停止したが、同年5月にはサービスを再開している。先述のバーチャルツアーによる売買サービスはもちろんのこと、住宅住み替え時の二重支払いを防ぐため、現在の住居の解約が決まるまで、料金を支払うことなく引っ越し先を確保できる「Home Reserve」という新たなサービスも開始している。

AI不動産再販分野には日本企業も続々と参入しており、その代表格とも言えるサービスが「すむたす」である。2020年2月には大手ベンチャーファンドWiLより約4億円の資金調達を発表して注目を集めた。


(画像出典:株式会社すむたすウェブサイト)

同社は2018年10月から中古マンション向けのオンライン買取サービス「すむたす買取」を開始し、AIによる累計査定金額700億円、累計査定件数2,500件を突破している。

コロナ禍での動きとして同社は2020年4月、税理士や弁護士向けに非対面型で不動産価格を算出するシステム「すむたす買取PRO」を開発し、無料提供を開始した。これにより税理士や弁護士が不動産の売却依頼を受けた際、オンラインで迅速に買取査定ができる。ニッチな分野ではあるが、このような不動産売買の方法は日本でも広がりを見せる可能性がある。

不動産保守の領域でもテクノロジーが活躍

建物の運用管理ソリューションはCOVID-19の影響でニーズが増した領域だ。建物の中に入って行う必要があった作業のリモート化、あるいはロボットの力を借りるサービスが現れている。


(画像出典:Enertiv社ウェブサイト)

ニューヨークを本拠地とするEnertiv社は、スマートフォンのアプリを使ってビルの機器や屋内環境の監視を行い、オンラインで施設を管理するソリューションを提供している。COVID-19感染拡大に伴い、システムの導入や使い方のレクチャーまでリモートで対応できることもあり、今やリモートで不動産を管理するシステムとして注目されている。


(画像出典:VergeSense社ウェブサイト)

米国のスタートアップVergeSense社は、オフィスの環境をモニターする有線と無線のセンサー・プラットフォームを提供している。簡単に取り付けられるセンサーによって、部屋にいる人の数や密度をリアルタイムに把握し、人の動きに基づいて清掃計画を指示するなどの機能は、ソーシャルディスタンスが求められる状況下で大きな効果をもたらしている。

2020年5月、同社はセキュリティ大手Allegion社のコーポレートVCファンド、Allegion Venturesがリードする900万ドル(約9億6,534万円)の戦略的投資を受けたと発表している。資金面での支援も得て、今後、ますます活躍の場が広がりそうだ。


(画像出典:Keenon Robotics社ウェブサイト)

不動産保守の省人化・無人化という事業モデルでは、ロボットによって建物内の設備監視や清掃、消毒などを行う事例もある。

上海のロボットメーカーKeenon Robotics社は、従来から飲食店のデリバリーロボットや案内ロボットなどをリリースしていたが、今回のCOVID-19感染拡大下で自動消毒ロボット「N2」を発表し、中国の病院で感染拡大を防いだ。この成果を受けて、日本でも販売を開始している。消毒ロボットビジネスには各国のメーカーが参入しているが、このロボットは自力で充電ユニットに戻ることができる点が大きな特徴だ。また、8時間稼働が可能で、顧客からは、他のロボットよりも稼働時間が長いという評価も受けている。

パンデミックが後押しする医療テック系企業


(画像出典:Elektra Labs社ウェブサイト)

COVID-19感染拡大で、医療テックも著しく変化している。特に注目を集めているのが、遠隔医療だ。2017年に設立され、米マサチューセッツ州ボストンを拠点とするElektra Labs社は、リモートでバイタルサイン(生命兆候のこと。主に「呼吸」「体温」「血圧」「脈拍」を指す)をモニタリングすることができるキットを提供することで、コロナ禍における医療現場を支援している。

2020年6月、同社は、COVID-19感染患者の状態をリモートでモニタリングするキットを、臨床医や研究者が無料で活用できるようにすると発表した。COVID-19のように感染力の強いウイルスの場合、病院に足を運ばず治療ができることは感染拡大防止に役立つ。無料活用を通して多くの現場でこのシステムが導入されることにより、遠隔医療のデータが蓄積され、モニタリングキットの性能改善や、遠隔医療そのものの信頼性向上にも役立つ。


(画像出典:Microsoft Cloud for Healthcareウェブサイト)

またマイクロソフト社は、2020年5月に医療機関向けクラウドサービス「Microsoft Cloud for Healthcare」を発表した。オンラインでの予約、医師の紹介、リマインダーの管理、請求書の支払いなど、病院と患者とのやり取りを円滑に行う機能を持つほか、ビデオ通話アプリによる診察、チーム間での患者の情報共有など、医療提供者がよりスムーズに仕事を遂行するためのさまざまな機能を備えている。

このように医療テックがめざましく進歩する中、2020年6月には、三菱UFJ銀行と三菱UFJキャピタルが総額100億円の「MUFG メディカルファンド」を設立すると発表した。12年間のファンドで、COVID-19対策を含む創薬・創薬基盤・再生医療・医療機器等を中心としたベンチャー企業を支援することを目的としている。資金調達の道を広げることで、医療テックをさらに活気づけることが期待されている。

ロボティクスを用いて工場をアップデートするFactorytech

工場が抱える課題を解決し、業務を効率化する技術が「Factorytech」(ファクトリーテック)である。COVID-19の影響を受け、リモートでの業務効率化やロボットによる工場業務実行などの分野で成果を上げている。


(画像出典:Fetch Robotics社ウェブサイト)

米カリフォルニア州サンノゼを拠点とするFetch Robotics社では、工場や物流倉庫で荷物を運搬する自律走行型の物流支援ロボットを開発し、日本を含む世界22カ国で事業展開している。作業そのものの自動化だけではなく、クラウド管理によるロボットの一括制御や、作業によって収集したデータの分析による業務効率化支援などを行なっている。

材料の自動輸送はもちろんのこと、ロボットが従業員の代わりを務める、あるいはソーシャルディスタンスに配慮して工場人員を配置することが出来るので、感染対策としても活用可能だ。

2020年6月には、米ニューメキシコ州アルバカーキ市航空局と共同で、物流支援ロボットをベースに開発した自律走行型の消毒ロボット「Breezy One」を発表するなど、工場向けソリューションを異分野に応用し、活躍の場を広めている。


(画像出典:Sight Machine社ウェブサイト)

米カリフォルニア州シリコンバレーに本拠を置き、製造業に特化したデータ分析プラットフォームを提供するSight Machine社もまた、COVID-19感染拡大を機に注目を集めている企業の1つだ。

同社のプラットフォームでは、部品、機械、ラインをすべてリアルタイムかつリモートで監視できるので、従業員は出勤の必要がない。COVID-19感染拡大後、同社のプラットフォームの使用率は劇的に上昇した。ある大手アルミ缶メーカーでは、マネージャーがリモートで工場のパフォーマンスの監視や現場の労働者のトレーニング、機械の稼働状況などの分析をリアルタイムで行い、現場に足を運ばずとも工場の課題解決ができるようになった。

これらの例のように、工場の現場においてFactorytechの重要性が増している。

ウィズ/アフターコロナでの無人化・リモート化の必要性

ウィズ/アフターコロナ下の対応に苦戦する企業もある一方で、ウィズ/アフターコロナへの対応への活用を梃子に、更なる成長にチャレンジする企業もある。その多くは、以前から地道に省人化・無人化やリモート化に取り組んでおり、今回、それが多くの注目を浴びることになった。

感染拡大の第二波、あるいは第三波に対して警戒は続く中、働き方やビジネスのあり方への変革への手綱は緩めることはできない。これを機に、ビジネスの省人化・無人化・リモート化を推進する取組や、それらの取組を支えるテクノロジーにますます磨きがかかることが期待される。

(※為替レート:2020年7月13日現在)

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