MUFGメディカルファンドが目指す医薬品創出の要とは

MUFGメディカルファンドが目指す医薬品創出の要とは

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2020/08/21

COVID-19が世界各地で猛威を振い、世界規模で大きな課題となっている。果たしてCOVID-19はいつ収束に向かうのか。

2020年6月、MUFGの子会社である株式会社三菱UFJ銀行と三菱UFJキャピタル株式会社(以下、三菱UFJキャピタル)は、COVID-19対策を含む、創薬・再生医療等に取組むベンチャー企業の支援を主な目的とする総額100億円の「MUFGメディカルファンド」を設立した。
MUFGでは、社会機能の維持に不可欠な金融インフラとして、医療機関への寄付や学生及び芸術活動への支援など、COVID-19の拡大に対する活動の支援をグループ一体となって実施しているが、より踏み込んだ支援策として設立されたのが「MUFGメディカルファンド」だ。

そこで今回は、「MUFGメディカルファンド」を運営する三菱UFJキャピタルのライフサイエンス部 長谷川 宏之 部長と企画部 酒井 徹 次長の両名に、この度新設されたばかりの「MUFGメディカルファンド」について話を伺った。

日本のバイオベンチャー設立に立ち塞がる多くの課題

三菱UFJキャピタルは、2009年にライフサイエンス室(2017年からはライフサイエンス部)を立ち上げ、製薬会社出身で薬剤師免許をもつ長谷川氏を筆頭に、同じく製薬会社や医療機器会社出身で薬学・農学・工学・生命科学の修士や博士のバックグラウンドを持つ業界経験・知見豊富なメンバーで構成されている。
室発足以降、ライフサイエンス分野における投資実績は60社以上で、そのうち既に6社の上場が実現しているほか、資金供給以外にも一部の投資先に対しては社外取締役として経営に参画するなど、様々な経営支援の実績を有する。
2017年に立ち上げた同分野における国内最大規模の専門ファンドとなる「三菱UFJライフサイエンスファンド」の運営実績を活かし、今回はその3号ファンドとして「MUFGメディカルファンド」を設立するに至った。本ファンドを通して、COVID-19のワクチン・治療薬開発に取組むベンチャーを含む、創薬・創薬基盤・再生医療・医療機器等のライフサイエンス分野のベンチャー企業への支援を行う。

日本における創薬のエコシステムを円滑に構築していくには、①大学発のベンチャーである「アカデミア創薬」と、②製薬会社からの特定技術や疾患領域の切り出しを行う「カーブアウト」の2つが特に重要であると長谷川氏は語る。


(画像出典:三菱UFJキャピタルウェブサイト

アカデミア創薬では、例えば、埼玉大学発の創薬ベンチャーで、三菱UFJライフサイエンスファンドから2019年に投資を行った株式会社Epsilon Molecular Engineering(埼玉県さいたま市)は、2020年5月にCOVID-19に対して北里大学・花王株式会社安全性科学研究所の研究グループとの協業により感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功し、治療薬や診断薬の開発に繋がることが期待される注目のベンチャーだが、他の多くのケースでは、大学の研究は基礎的な範囲に留まるのが実状だ。実際の上市(製品やサービスを市場に出すこと)にあたっては、それを実現できる人材や機能が大学には不足しがちであると長谷川氏は語る。例えば、特許取得、非臨床試験パッケージの提供、製造/CMC、開発戦略、医療ニーズなど、大学だけでは解決できない課題は多い。

三菱UFJキャピタルでは、専門ファンドによる資金供給に加え、充実したアドバイザリー機能を有している。製薬会社OB等との顧問契約は他のVCでもよくみられるが、投資先ごとに領域は異なり、非常に専門性が高い分野であるため、適材適所に応じたアドバイスを得られるかが、投資前の検討段階だけでなく投資後の経営支援において非常に重要となる。


(画像出典:三菱UFJキャピタルウェブサイト

また、製薬会社からのカーブアウトに関しても、近年大きな動きが見られる。自前主義の時代は終わりを告げ、外部との提携により新薬の開発を目指すベンチャー企業が現れ始めたのだ。製薬会社が抱える開発品や技術・チームが、組織改編等により外部に出る機会が増え、そこにVCをはじめとする投資家による資金供給が行われ始めたことが大きな理由の一つだ。例えば、武田薬品工業株式会社に所属していた、癌領域創薬研究のメンバーにより創業されたChordia Therapeutics株式会社(神奈川県藤沢市)に対しては、三菱UFJライフサイエンスファンドのほか、多くのVCが投資を行っている。

このような製薬会社発のベンチャーは欧米では増加傾向にあり、米国では新薬の約6割がベンチャー発だとも言われる。その背景には起業家、大手企業、大学、投資家、国などが密接に結びつき、「ヒト」「モノ」「カネ」のエコシステムが形成されていることが大きい。しかし日本ではここ5年でようやく目立ち始めてきた段階で、成功事例はまだまだ少ない。その原因として「カネ」と「ヒト」の不足、さらに国による「規制」に課題があると厚生労働省発表のレポートでは指摘されている。通常10年以上の年月がかかる創薬において、日米間の遅れを取り戻すのは容易なことではない。裏を返せば、将来的にそれらが揃えば製薬会社発のベンチャー設立が促進されるともいえる。そのため、国もここ数年でベンチャー支援に本腰を入れ始めており、日本におけるバイオベンチャーに対する風向きは大きく変わりつつある。

「アカデミア創薬」と「カーブアウト」は、それぞれVCとして求められることは異なる点もあるが、双方に対して積極的に取組んでいくことこそが、ライフサイエンス分野に対するMUFGメディカルファンドの関わり方ではないかと長谷川氏は語る。

(三菱UFJキャピタル ライフサイエンス部 長谷川氏)

withコロナ下でのMUFGメディカルファンドの強気な姿勢

リーマンショック後、日本の創薬ベンチャー株が早期回復したという興味深いデータがある。今回のコロナショック以降も一部の銘柄は大きな値動きを繰り返し、期待値の高さを窺うことができる。世の中が混乱し社会や経済の不透明さが強まった時にこそ、ライフサイエンス関連銘柄の強みが発揮される時なのかもしれない。

MUFGメディカルファンドでは既に複数社の投資候補先は選定済みだが、合わせて20~30社程度の投資を予定している。酒井氏曰く「銀行系VC特有の少額分散投資のイメージを打ち破る、強気な投資も今回は視野に入れている」とのことだ。

先述の株式会社Epsilon Molecular Engineeringのように、すでに開発済でCOVID-19に転用できる技術を保有するベンチャー企業への投資も積極的に行っていく予定だ。特に現在、国からの助成金などの後押しも多く、既存技術の転用という観点から既存投資先含めて期待できる案件も多いという。
また、コロナ禍において、遠隔医療技術などの規制緩和が少しずつ始まっている。さらにこの5年、10年で日本の医療体系が変わっていく中で、自分たちの開発する薬や医療機器が世の中の役に立つという熱い想いを持つパートナーとの出会いを、MUFGメディカルファンドは求めているのだ。

もちろんこれは医療分野以外に関しても同様で、そちらに対しては様々な分野に投資を行っている基幹ファンドにて投資を行い、三菱UFJキャピタルとして支援を行っていくという。「COVID-19の影響による不況の中でも安定的な資金提供が可能であるという強みを活かした、良い意味で期待を裏切る投資ができるのではないか」と酒井氏は語る。

(三菱UFJキャピタル 企画部 酒井氏)

MUFGメディカルファンドの願うライフサイエンス市場の未来とは

世界的パンデミックの裏側で、バイオ市場への注目が急激に高まり始めた。それは人々の大きな期待でもあり、不安の現れなのだろう。しかし現時点で、治療薬はなく、今後も変異や新たなウイルスの出現の脅威も拭いきれない。世界中で製薬会社、大学、創薬ベンチャーなどが開発競争を始める中、MUFGメディカルファンドは設立されたが、ファンドの設立構想は一朝一夕のものではない。日本の大学の基礎研究のレベルは非常に高く「それらを活かした事業化を進めていくことが、アフターコロナの世界における日本のライフサイエンス分野への注目へと繋がっていくであろう」と酒井氏は語った。コロナショックを追い風とし、VCとして今できることをやるという意気込みにも感じた。

(三菱UFJキャピタルの企画部 酒井氏)

時に状況は、誰しもが予想しえなかった世界へと様変わりする。目まぐるしく変化する時勢の中で、MUFGとして何ができるのか。メディカルファンドとして何を果たすことができるのか。最後に「逆境こそチャンスだ」と酒井氏が力強く語ったのが非常に印象的だった。

※本取材はリモートにて行われました。

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