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EdTech企業が変えるオンライン学習の体験とは~これからの学校教育におけるイノベーションを追う

EdTech企業が変えるオンライン学習の体験とは~これからの学校教育におけるイノベーションを追う

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2020/08/06

2000年代初頭から「e-ラーニング」という言葉が使われ、Skypeなどのコミュニケーションツールを使った語学教室なども広く行われてきた。しかし学校教育のオンライン化は、日本においては未だ不充分である。

今回、新型コロナウイルスの感染拡大により休校期間が長引き、諸外国においても子どもたちの教育環境の整備が問題となった。

ただ、アメリカのような海外においてはここ数年、掲示板や課題提出などの学習管理システム「Google Classroom」を導入する学校が増加したり、オンライン講座などを活用し、学校へ通学せず自宅で学習を行う「ホームスクーリング」を選択する家庭が一定数いたりしたことで、オンライン授業へスムーズに切り替えられた国・地域もある。

このような環境整備に欠かせないのが、教育(Education)+技術(Technology)の「EdTech」といわれる分野の企業が先進的な教育テクノロジーだ。EdTechはオフラインの学習を単に補うだけでなく、オンライン独自の付加価値も提供する。

本稿では、国内外のEdTech企業と、それらがコロナ渦の社会でどのように学校教育に活かされるか、その可能性について紹介していきたい。

リアルタイムのコミュニケーションができるライブスクール、Outschool

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(画像出典:Outschoolウェブサイト

米国サンフランシスコを拠点とするスタートアップOutschoolは、熱心なゲーマーかつゲーム開発者だったCEO兼共同創設者のAmir Nathoo氏と、初期のAirbnbでリードエンジニアを務めたNick Grandy氏によって2017年に設立された。同社は子どもたちに対して、ビデオチャットを用いた学習コンテンツを提供している。語学、数学などから音楽、美術、生活スキルなど1万5千以上のクラスから選び、同じクラスで学習するユーザー同士でコミュニケーションを取りながら勉強することができる。

このプログラムは主に子どもたちの放課後や週末の学習教材として利用されていたが、Nathoo氏はホームスクーリングをしている保護者たちと連携し、Outschoolのカリキュラムをホームスクーリング用のプラットフォームとして利用することも推進している。

3月に全米で学校が閉鎖されて以来、Outschoolのユーザー数は閉鎖前の11倍に増加しており、学校教育の代替プログラムとしても利用されている。経済的に困窮している家庭に対して、1家族200ドル(約2万1,400円)分の無料コンテンツ提供や、学校としてオンライン授業を提供できない地域に対するOutschoolコンテンツの無料提供などに取り組む。また、夏休みのサマーキャンプ(アメリカでは多くの子どもたちが夏休みの間スポーツ、芸術などのキャンププログラムに参加する)のオンラインプログラムについても提供し始めており、ホームスクーリングの世界と学校の世界をつなぐ存在となっている。

インド最大のオンライン学習プラットフォームBYJU’s

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(画像出典:BYJU'sウェブサイト

IT人材など世界中で優秀な人材を多数輩出しているインドは、受験競争が厳しく、有名大学に進学するために都市部の受験予備校に通うことも多い。金銭的な負担から、高度な教育を受けられるのは富裕層の子息が中心だ。その教育格差を解消するべく生まれたのが、インド最大のオンライン学習プラットフォームBYJU’sだ。当初は大学入試や公務員試験対策の予備校としてスタートし、その後、中高生向けの教育サービスにも進出した。インド全土で低価格な動画授業や教材、模擬テストなどのコンテンツを提供している。

オンライン動画では3Dコンテンツを使った授業が人気だ。またユーザーの学習データ分析を基にパーソナライズされた学習プラン提案サービスも提供するなど、オンラインならではのフォローも欠かさない。

新型コロナウイルスの影響でインドでも休校が相次いだが、BYJU'sでは無料のオンライン学習プランを提供しており、4月は750万人の新規ユーザーを獲得した。

同社がサービスを開始した2015年、インターネットにアクセスできる人口はインド全体の4分の1に限られていたが、現在は人口の半分以上がアクセスできるようになっている。同社では、現在ヒンディー語と英語対応のアプリを他の地域の言語でも提供するほか、恵まれない子どもたちのために無料で受講できるモデルも計画している。

3Dプリンターを用いてSTEAM教育を推進するSkriware

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(画像出典:Skriwareウェブサイト

Skriwareは2015年にポーランドのワルシャワで生まれた企業だ。現在、初等教育ではイノベーションを起こせる人材としてSTEAMスキル(Science―科学、Technology―テクノロジー、Engineering―エンジニアリング、Art―芸術、Math―数学、を統合的に学ぶ)の教育が注目されている。同社ではロボットのプログラミングなどを通してSTEAMスキルを伸ばせるカリキュラムを提供し、さらに比較的安価な3Dプリンタでロボット製作を可能にするなど、小さな子どもでも楽しめるサービスを提供している。

新型コロナウイルス感染拡大に際しては、ロボットを使った教育プログラム「Skriware Academy」をすべてオンラインで提供できるようにした。また、同社は子どもたちだけではなく、このプログラムを教えるための教師向けリソースも準備している。YouTubeチャンネルでの3Dモデリングのレッスン提供や、Facebookで教師たちのためのコミュニティも作っている。現在これらは主にポーランド語で提供されており、ポーランド国内におけるオンラインSTEAM教育に貢献している。

人工知能が数学、科学の問題を解答、日本でもサービス拡大中のMathpresso

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(画像出典:Mathpressoウェブサイト

Mathpressoは2015年に韓国で設立された。「最も効果的な教育を、世界のすべての学生が受けられるようにすること」をミッションとして、「クァンダ」という人工知能を使った小中高生のための数学、科学の学習用アプリケーションを提供する。現在まで日本・韓国・ベトナムを含めた5つの国と地域で、毎月150万人以上が利用している。韓国ではすでに全学生の3分の1が利用している。

同社のサービスには、大量の数学の問題のデータが蓄積されている。解けない問題があった際、生徒が写真を撮ってアップロードすると、AIアプリが、解答や解き方が記載されている画像データ自動で探し出して表示してくれる。アプリ内に登録されていない問題は、オンライン上の講師が解き方を教えてくれる。

同社は2018年、2019年と資金調達に成功し、これまでの総調達額は2,100万ドル(約22億5,603円)に上る。

クァンダが提供しているサービスは、個々の生徒に合わせてカスタマイズされ、学校の勉強の補習として使われている。このような学習法が効果的であることが証明されれば、今後、学校教育に取り入れられる可能性も高まるだろう。

AIを使ったタブレット教材Qubenaを提供する株式会社COMPASS

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(画像出典:Qubenaウェブサイト

日本でもAIを使った教材を提供する企業は現れている。株式会社COMPASSが提供するQubena(キュビナ)のような教材がその一例だ。AIが子供たち一人ひとりの得意・不得意を解析した上で学習内容を最適化し、「解くべき問題」を自動的に出題することで効率的に学習できる仕組みだ。

教材は小学生向け算数と、中学・高校生向け数学の教材となっている。学習はタブレット上で手書きで行うため、定規・コンパス・分度器を使った作図や、関数、グラフ作成など、これまでオンラインでは操作が難しかった問題にも対応している。

これらのサービスは個人へのアプリケーション提供のほか、学校や学習塾でも使われており、千代田区立麹町中学校(東京都)や岡山県立和気閑谷高校(岡山県)では以前から導入されている。

また、今回、新型コロナウイルスの影響で休校になったことを受け、学校用のAI型タブレット教材「Qubena」と、個人用の「Qubena Wiz Lite(キュビナ ウィズ ライト)」を休校要請期間中に無償で提供している。こうした取り組みは、日本のオンライン教育の普及を後押しするとともに、新しいテクノロジーの活用を促進するきっかけにもなるだろう。

英語とプログラミングのデジタル教育を提供するD-SCHOOLオンライン

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(画像出典:D-SCHOOLオンライン・ウェブサイト

プログラミング学習が必修の時代において、子どもたちが英語とプログラミングをオンラインで学ぶことができるのがD-SCHOOLオンラインだ。プログラミング学習を通した問題発見能力、問題解決能力、論理的思考力などを身につけることに最も重点を置いている。運営するのは、東京のエデュケーショナル・デザイン株式会社で、小中学生向けデジタルスクールをオンライン、オフラインで提供する。

現在はゲーム感覚でプログラミングを学ぶコース、英語とプログラミングを同時に学ぶコースなどのほか、マンツーマンの「オンライン個別指導コース」の提供も始まっている。個人向けの講座だけでなく、静岡聖光学院と業務提携して学校向けのデジタル教育にも進出している。

休校中の支援としては月額プラン無料、オンライン個別指導のコース割引などに加えて、一般向けにプログラミング講座の無料ライブ動画配信をするなどの取り組みも行っている。

まとめ

このように、教育の分野はe-ラーニングの進化に伴い、テクノロジーを活用し、従来の授業以上の体験ができるサービスも数多く提供されている。そしてEdTech企業は、コロナ渦の社会においてより一層の需要を得ており、サービスを拡大している。

日本においても、多くの企業がEdTech市場に参入し、そのニーズは高まりを見せているが、現段階ではあくまでも学校教育の補習という位置付けのモデルが多い。学校教育のオンライン化は、例えば生徒が利用するデバイスの支給やネットワーク環境の整備、授業についていけない生徒のフォロー体制などの課題もある。

オンライン教育をけん引するEdTech企業の実情を注視し、日本でもさらなる普及や技術革新が起こることを期待したい。

(※為替レート 2020年6月12日現在 107.34円/ドル)

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