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スペースX、Amazonなどビッグプレイヤー達が狙う「衛星コンステレーション」構想の現在

スペースX、Amazonなどビッグプレイヤー達が狙う「衛星コンステレーション」構想の現在

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2020/07/14

近年、世界中で人工衛星のビジネス活用への注目度が高まっている。2017年時点での世界の宇宙産業の市場規模は約38兆円といわれ、そのうち「衛星利用サービス」「衛星製造・打ち上げ」「地上インフラの整備」等、人工衛星ビジネスが全体の約7割を占める(参照:SIA/BRYCE「2018 State of the Satellite Industry」)。

現在、地球の周回軌道上には小型のものを含め約2,000基以上もの観測衛星が運用されている。その中でも安価な小型衛星を多数打ち上げ、それらをネットワーク化する「衛星コンステレーション」構想や、そこから得た観測データを他産業へと活用する「衛星ビッグデータ」関連ソリューションなどが注目されている。現在もロケット打ち上げ目的の9割強が人工衛星ともいわれ、ニーズの高さをうかがい知ることができる。

特に「衛星コンステレーション」構想においては、全世界から利用が可能な衛星インターネットブロードバンド網を構築するビジョンを掲げる企業が現れ、OneWeb(新型コロナウイルスのパンデミックの影響もあり2020年3月に破産申請)、イーロン・マスク率いるスペースX、Amazon、フェイスブックなどのビッグプレイヤーが多数参戦し、衛星通信インフラを巡る競争が激化しつつある。

衛星コンステレーション構想のメリットとデメリット、各社の思惑とは

人工衛星による通信サービスは、航空機内でのインターネット接続、テレビのBS放送など現在も様々な場面で用いられている。現在これらのサービスは赤道上の高度3万6,000キロメートルの静止軌道に配備された大型衛星(静止衛星)により実現されている。しかし衛星と地上からの距離が遠いため、通信速度のラグや遅延が大きいという欠点がある。

一方、衛星コンステレーションの場合、高度数百~2,000キロメートルの低軌道帯へ小型衛星を配置するため、静止衛星よりも高速かつ低遅延を実現することが可能と言われている。

また、全世界人口77億人(2019年時点)のうち、インターネットを利用できない人々が約30億人以上存在しているといわれている。国の政策上の都合で利用できない地域なども存在するが、多くの場合はインフラ整備がなされていない地域だ。基地局や通信回線の整備などの膨大なコストがかかるため、インフラ整備を実現できないエリアが地球上には約1/3存在する。しかし人工衛星によるインターネット通信であれば、衛星からの電波を受信する機器のみの設置で済むため、地上インフラ整備を行うより低コストで設置が可能となる。

反面、衛星網を構築するために大量の衛星を軌道上へ投入することにより、将来的なスペースデブリ(宇宙ゴミ:使用済みの人工衛星やロケットの部品が宇宙空間を漂い続け問題となっている)化への懸念や、小型・軽量化設計のために衛星本体のスペックダウンが行われており、静止衛星よりも寿命が短いなどのデメリットもある。

現在、地球上でインフラを整備できていない地域に住む人々が、今後インターネット接続可能になることを考慮すると、潜在的なインターネットユーザー数は2050年時点で10億人規模になるともいわれている。将来的には現在の先進国と同様のデバイスや通信費、Eコマース事業や広告ビジネス、新たなビッグデータの獲得など様々な事業展開が可能となり、衛星インターネットサービス事業の覇者となるべく各社の思惑が入り交じる。

スペースX、Amazonなど衛星インターネットサービス提供へと名乗りを挙げるビックプレイヤーたち

衛星コンステレーションによる、インターネット接続提供を目指す企業は米国を中心に増えているが、現在はサービスインしていない企業が多く、各社がこぞってプロジェクトを始めている状況だ。

スペースX

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(画像出典:Starlinkウェブサイト

イーロン・マスク氏率いるスペースXでは「Starlink」という衛星コンステレーションプロジェクトが進行中だ。2020年4月時点で約420基以上の衛星を打ち上げ済みで、最終的には1万2,000基の人工衛星を扱う予定だ。打ち上げ済みの衛星を用いて行ったテストでは、航空機内で約600Mbpsの通信速度が確認されている。

同社はトップランナーであるものの、2020年2月のカンファレンスにてイーロン・マスク氏が「Starlink」プロジェクトが経済的に厳しい局面にあることも認めており、自社での衛星打ち上げが可能な同社ですら苦戦を強いられているという現状がある。

OneWeb(※2020年3月破産申請)

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(画像出典:OneWebウェブサイト

2012年に創設されソフトバンクグループが19億ドル出資し、株式の5割近くを保有していた。衛星650基を用いた衛星ブロードバンド計画を予定していたものの、2020年3月に経営破綻。その時点で打ち上げ済みの衛星は74基にとどまり、競合であるスペースXに打ち上げ数に関して大きく引き離されている状況だった。

Amazon

2019年4月に地球全体にブロードバンドを提供する「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」を発表し、3,000基を超える通信衛星を打ち上げて地球の全人口の約95%のインターネットアクセスをカバーする衛星ブロードバンド計画を発表。米Amazon CEOジェフ・ベゾス氏率いる「ブルーオリジン」が打ち上げに協力するとの噂もある。

Facebook

子会社であるポイントビューテックが「Athena(アテナ)」プロジェクトを発表。スペースXのStarlinkよりも10倍高速なインターネットを提供する人工衛星を開発中。

その他、ボーイング社、Telestela社、LeoSat社など様々な企業が参入している。

衛星コンステレーションの構築をめぐり立ちふさがる資金調達と採算化への障壁

2020年3月、650基以上の衛星でインターネットブロードバンド網を提供すると計画したOneWebが、新型コロナウイルスによる影響も重なり、連邦破産法11条の適用申請の準備に入ったことが明らかになった。これは日本の民事再生法に相当し、裁判所が受理すれば負債の整理や契約見直しを行い、企業の再建を目指すことになる。資金調達の計画が頓挫したことなどによる資金繰り難が要因だといわれている。

1999年にも、66基から成る衛星コンステレーションを構築し衛星電話サービスの運用を行っていたイリジウムが破産申請を行った。軌道衛星を使ったインターネットブロードバンドサービスを提供予定だったテレジック社も、2002年に同じく破産申請をしている。現在よりも遥かに人工衛星が高額だった時代に数十基による衛星システムを維持することはコスト上難しく、大規模な衛星コンステレーションの構築に成功した企業はいまだない。

大規模な衛星コンステレーションの構築には衛星の打ち上げが必須だ。現在1基あたりの打ち上げコストが数億円程度まで抑えられつつあるものの、衛星を打ち上げ、その運営を続けるためには莫大な資本が必要となる。さらに投資を回収できるまでに時間がかかることが、各社を悩ます要因の一つと言えるだろう。また、実際にサービスインに漕ぎ着けたとしても、コスト回収のためにサービス価格が高騰してサービスが普及しなければ、イリジウムと同じ道を辿る可能性もある。

現在もスペースX、ブルーオリジン、ロケット・ラボなどが、ロケットの再利用や3Dプリンタを使った衛星開発などで、打ち上げコストの低廉化を目指している。今後もいかに輸送機を安く作り、宇宙へのアクセシビリティを高められるかが衛星ビジネス市場の拡大と密接な関係にあり、衛星インターネットブロードバンドサービスの実現には必要不可欠な要素となってくる。

2030年には小型衛星の打ち上げ数は約16倍になるともいわれる。今後衛星の打ち上げ・開発コストが徐々に下がることで、将来的にこの分野を制すプレイヤーが現れるのかもしれない。

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