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自動運転時代の交通安全を支えるテクノロジーとは~交通事故防止のソリューション提供への取り組み~

自動運転時代の交通安全を支えるテクノロジーとは~交通事故防止のソリューション提供への取り組み~

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2020/07/09

2020年4月1日、改正道路交通法と改正道路運送車両法が施行され、ついに日本でも「レベル3」といわれる条件付きの運転自動化が認められることとなった。

政府広報オンラインの記事「ついに日本で走り出す! 自動運転“レベル3”の車が走行可能に」によると、「レベル3」では高速道路上など一定の条件のもとでシステムがすべての運転操作を実行し、緊急時は人が運転を引き継ぐ。「レベル2」までは運転の主体はあくまでも人であるが、「レベル3」では運転の主体がシステムになる。このハードルを越えた意味は非常に大きい。

経済産業省と国土交通省による「自動走行ビジネス検討会」は最新のロードマップにて、早ければ2022年には限定された空間で無人自動運転を開始できるだろうと発表している。

海外では、米国のWaymoなどが既に「レベル4」といわれる、緊急時も含めシステムがすべての運転操作を行う自動運転の実証実験を始めている。レベル4においては、レベル3では人が担う「緊急時の対応」もシステムが行うという点が特徴だ。

自動運転は人への運転の負担を軽減し、操作や判断ミスによる事故を減少させることが期待される。

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(画像出典:国土交通省

一方、自動運転の交通事故に対し懸念がいまだ残っていることも事実だ。2018年には米国アリゾナ州でUberの自動運転車による歩行者の死亡事故が発生した。

こうした過去の事故事案を教訓に、自動運転車の事故防止の技術開発が各国で進んでおり、その進歩には目覚ましいものがある。

例えば、スウェーデンの自動車メーカーであるボルボ社は、米国のLuminar社と提携して「LiDER(ライダー)」と呼ばれる高性能レーザー光のセンサーを共同開発し、2022年にはLiDER搭載車を発売すると発表している。LiDERとはレーザー光を照射し、周囲の物体の反射にかかる時間を測定することで、物体との距離や方向、形状を認識することができる技術だ。自動運転では「カメラ」「ミリ波レーダー」「LiDER」の3種類を組み合わせて周囲を認識しながら運転するという方法が一般的で、LiDERは自動運転に必須の技術といえる。

またイスラエルのMobileeye社は、LiDERを使わず複数台のカメラだけで自動運転を行う試みを発表。コストがかかると言われるLiDERが不要になることで、安全な自動運転の普及に繋げる狙いだ。

その他にも、自動運転時代に挑戦する企業が多く現れている。本稿では、自動運転における交通事故防止のソリューションを提供するスタートアップを3社紹介する。

人とビッグデータとAIで安全に貢献するSupervaisor

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(画像出典:Supervaisorウェブサイト

エストニアのスタートアップであるSupervaisor社では、道路の危険物や交通状況のデータを収集し、その膨大なデータをAIで解析することによって事故防止に役立てようとしている。同社は2019年3月に日本のベンチャーキャピタルMIRAISEを含めた投資家から120万ユーロ(約1億3,900万円)の資金調達を成功させ、エストニア国内で実証実験を行っている。CEOのSilver Keskkula氏はSkypeの初期リサーチャーでもあり、移住先を見つける都市マッチングサービスの「Teleport」を作ったことでも有名な人物である。

Supervaisorは、車そのものを改造するのではなく、AIによるディープラーニングを使って事故を減らすことに挑戦している。具体的には、スマートフォンアプリが道路の状況や違反を録画し、AIが集計・分析する仕組みだ。

ユーザーが運転中、アプリが一定の時間間隔で自動録画を行う。運転終了時にユーザーがアプリのボタンを押すと、録画したデータがSupervaisorのサーバーへアップロードされる。

アップロードされた動画から危険な状況をAIがピックアップし、次に人の目で判断される。その結果、障害物がある場所や交通違反の多い交差点などの危険が特定され、警察など交通取締当局の注意喚起やポリシー変更に役立てる。

ちなみにプライバシーの観点から、ユーザーの運転状況は記録されない。音声データを省き、さらに人物の顔が特定できないようにすることで、プライバシーに配慮している。またユーザー側のメリットとして、定期的にデータを送れば自動車保険が割引になるプログラムを始めている。

IT大国であるエストニアは、バスや物流の自動運転などにいち早く取り組む自動運転大国でもある。Supervaisorのサービスは、現在、エストニア国内のみで実施されているが、今後世界に広がっていくことを期待したい。

歩行者のスマートフォンを検知して事故を防ぐViziblezone

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(画像出典:Viziblezoneウェブサイト

歩行者と車の事故にフォーカスして問題に取り組んでいるスタートアップがイスラエルのViziblezoneだ。既存の車載センサーやカメラによる歩行者検知の機能では、夜間や障害物がある場合に検知が難しいことがある。そこで同社が提供するのは、歩行者がスマートフォンのアプリを入れることにより、車が歩行者の存在を検知する仕組みだ。

創設者兼CEOのGabi Ofrir氏は、長らく米通信機器会社モトローラ社でD2D(端末から端末への通信)のスペシャリストとして活動していた人物だ。Visiblezoneのソリューションは、D2D技術を活用し車と歩行者の端末が直接通信をすることによって歩行者の安全を確保できるようになっている。

具体的には、歩行者側がViziblezone専用のアプリをインストールする。それが車に搭載されているシステムに連携され、歩行者が車両に近付くと車にアラートが届く。ちなみに自転車の場合も、自転車の運転者がこのアプリをインストールしたスマートフォンを携帯していれば、歩行者と同じように検知される。

自動運転車の場合は、アラートを検知すると車を停止させることもできる。特別な機器を購入することなくアプリのインストールによって仕組みを提供できるので、迅速で安価に展開することが可能だ。さらに時間帯や車の視界状況、障害物の有無を問わず対応できるため注目されている。

同社は2020年2月から、フィンランドでモビリティ関連の実証実験を行う団体Jätkäsaari (イェットカーサーリ) Mobility Labと共同でパイロットプログラムを実施している。首都ヘルシンキの西港に隣接する新しく開発された都市Jätkäsaari地区には1万2000人が住んでおり、官民共同でさまざまなスマートモビリティの実証実験が行われている。

住民にこのサービスを利用してもらった結果、アラートだけではなく、道路を横断するときに何人がスマートフォンを見ているか、横断歩道で信号が青くなるまで待機する人がどれくらいいるか、など歩行者の行動データも集計できた。これは交通インフラの改善を目指す自治体にとって貴重なデータとなり、長期的には交通事故の防止にもつながると期待される。

また、新型コロナウイルスが流行する中、最近ではこの技術を応用したウイルス感染者との接触をアラートする機能を発表した。

インフラ側から交通の最適化を図るNoTraffic

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(画像出典:NoTrafficウェブサイト

交通の流れの最適化により事故防止をはかるのが、イスラエルで2016年に設立されたNoTraffic社だ。同社の調査によれば、交通事故の40%は交通量の多い交差点で発生している。そこで、交通量をコントロールし事故防止に繋げるため、AIを搭載した交通信号プラットフォームを開発した。

彼らのソリューションの核となるのが、信号機の支柱に設置するAIセンサーデバイスである。オフィスの机に載るコンパクトな大きさで、設置は1時間ほどで完了する。このデバイスは、歩行者、自転車、乗用車、トラック、緊急車両などの道路利用者を判別し、その情報を、匿名化したうえでNoTrafficのデータベースに送信する。また、マイクロモビリティ(軽自動車より小さい乗り物で1~2人が乗車できる車両)や除雪車・ゴミ収集車なども判別可能だ。車両の種類を判別することにより、速度や動きの特性がわかりコントロールに役立つ。

収集されたデータは同社のデータ解析テクノロジーによって処理され、都市全体の信号をコントロールし、交差点の交通量の最適化をはかる。例えば、交通量の増加が予想される場合は、青信号の点灯時間を長くすることで渋滞を防ぐ。このように、交通渋滞や事故を減少させ、あらゆる道路利用者にとって安全な環境を提供することで、自動運転車でも安心して走行できる道路を作り出す。

同社はすでに本拠地のイスラエルのみならず、米国でも本格的に事業を展開しはじめている。2019年には日本の自動車部品メーカーデンソーがオハイオ州で立ち上げたスマートモビリティプロジェクトにパートナーとして参加しているほか、アリゾナ州とも提携して実証実験を始めている。さらに2020年3月にはEye-Net Mobile社と協業し、同社が持つスマートフォンでの事故防止ソリューションとNoTraffic社のソリューションを連携、北米を皮切りに世界で商用化していくと発表している。

道路というインフラを最適化する試みは、機器設置の手間やコストがかかることが多かったが、このように短時間で設置できる比較的簡易なソリューションを採用することで、解決への道筋が見えてくる可能性もあるだろう。

自動運転が牽引する交通事故のない社会へ

以上のように、自動運転による事故のない社会を作るための技術はさまざまな観点から開発されている。今回紹介した3社のソリューションはまだ日本には導入されていないが、Supervaisor社は日本のVCが投資しているため、協業や実証実験が行われる可能性も考えられる。

ちなみに、SUBARUの運転支援システムの先駆けである「アイサイト」の事故削減効果について、アイサイト搭載車の1万台あたりの事故発生件数は、非搭載車と比較し61%減だった。

自動運転の技術が進化することで交通事故の減少が期待されるが、今回紹介したように交通インフラ全体で事故防止をはかる取り組みが加わることで、その効果が増すことが期待される。

自動運転車が正しく交通状況を把握し安全に運行することで、より良い自動運転の世界の実現に近づくことを期待したい。

(※為替レート:2020年5月15日現在)

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