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グリーンテックとは~環境ビジネスで注目のスタートアップを紹介~

グリーンテックとは~環境ビジネスで注目のスタートアップを紹介~

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2020/06/26

市場調査会社Allied Market Researchのレポートによれば、2018年のグリーンテック市場規模は68億5,000万ドル(約7,331億円)と言われており、2026年までに446億1,000万ドル(約4兆7,742億円)に達すると予測されている。

グリーンテック(クリーンテックとも呼ぶ)とは、太陽光発電やハイブリッド自動車などの、再生不能資源を利用しない、もしくは利用量を抑え作られた製品・サービスやプロセスのことを言う。

地球温暖化や環境汚染などを背景にSDGs(持続可能な開発目標)の達成が求められている中、環境に配慮しながら経済的・社会的発展に貢献するグリーンテックの推進は重要かつ急務となっている。

グリーンテックがカバーする範囲は、環境汚染や農作物のモニタリング、資源の保護、環境に負荷をかけない製品の製造技術や建築など多岐にわたっている。

注目のグリーンテックファンド、Breakthrough Energy Venturesとは

現在グリーンテック分野には、北米を中心にGeneral ElectricやIBMなどの大企業を含め様々な企業が参入している。その中で注目されているのが、2016年に設立されたグリーンテックファンド「Breakthrough Energy Ventures(以下BEV)」。同ファンドは、ビル・ゲイツ氏やジェフ・ベゾス氏など著名な企業人が参加している再生可能エネルギー推進団体「Breakthrough Energy Coalition(BEC)」の投資機関だ。

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(画像出典:Breakthrough Energy Venturesウェブサイト

BEVは10億ドル(約1,070億円)以上の資金を投入し、20年間に渡り、温室効果ガスの削減効果がある電力、輸送、農業、製造業、建設等の分野で有望なベンチャー企業に投資するとしている。また基金として自ら企業を設立することや、他の研究機関への資金提供なども同時並行で実施している。

本稿では、最近BEVが投資を決めたスタートアップ5社を紹介し、グリーンテックの可能性を見ていくと共に、日本で誕生しているグリーンテック企業についても触れていきたい。

従来の換気の概念を変え、圧倒的な省エネに置き換えるenVerid

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(画像出典:enVerid Systemsウェブサイト

enVerid Systems社は、米国マサチューセッツ州を拠点として2010年に創業した換気テクノロジー企業。2020年4月にBEVを中心とする投資家から2,000万ドル(約21億4,000万円)を調達し、製品開発への新たな投資を強化して販売パートナーを拡大すると発表したばかりだ。

通常の空調システムでは、1~2時間ごとに外気を取りこみ室内の空気を入れ替えるが、そのために多くのエネルギーを必要とする。また、汚染された室内の空気が外部に放出され、大気汚染の原因にもなる。

しかし、enVeridの「HLRテクノロジー」といわれるシステムは、室内の空気の循環プロセスで汚染物質を安全かつ効率的に除去できるため、外気を取り入れる頻度を60%~80%減少させ、省エネと共に大気汚染の抑制にも貢献できる。

ポイントとなるのは、同社独自の吸着剤カートリッジだ。揮発性有機化合物(VOC)、二酸化炭素、ホルムアルデヒドといった有害物質を吸着させることで、室内の空気の循環をクリーンなものにする仕組みとなっている。

省エネと大気汚染の解決策となる同社のビジネスの今後の成長が期待される。

農業に欠かせない「窒素」をクリーンに作るPivot Bio

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(画像出典:Pivot Bioウェブサイト

米国カリフォルニア州バークレーに本社を持つPivot Bio社は、窒素を生産する微生物製品「Pivo​​t Bio PROVEN」を主軸として、農業における環境保全の確保に取り組んでいる。

窒素は農作物の成長に必要な栄養素の1つである。窒素をまかなうため、現在は合成窒素肥料が広く使われているが、それが土壌に残ることで窒素化合物となり、河川に流れて水質汚染の原因となる。

「Pivo​​t Bio PROVEN」は、植栽時に土の中に入れると、植物の根に微生物が付着し、適度な窒素を供給してくれる。その結果、合成窒素肥料を使用することなく植物に窒素を供給し続けられるのだ。

この製品は2018年から米国10州のトウモロコシ農家で実証実験を行い、2019年には市販製品となった。2019年と2020年には、米国ビジネス誌『FAST COMPANY』が選出している「World’s Most Innovative Companies for 2020(世界で最も革新的な企業)」の中に名を連ねた。

同社はBEVから2018年10月に7,000万ドル(約74億9,140万円)の投資を獲得した後、2020年4月に投資ラウンドシリーズCにて1億ドル(約107億200万円)を調達した。アメリカの大規模な農業生産の領域で市販商品として軌道に乗り始め、農作物の収穫と環境保全を両立できていることは大きな成果といえるだろう。

森林破壊につながるパーム油を人工的に生産するC16 Biosciences

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(画像出典:C16 Biosciencesウェブサイト

アブラヤシの果実から取れるパーム油は石鹸、化粧品から菓子類まで生活用品の50 %近くの製品に含まれている油である。しかし、パーム油の農園開拓のために行われる森林伐採が、生態系の破壊や温室効果ガス増加の原因のひとつとなっている。

そうした事態を改善するために、世界では持続可能なパーム油の栽培方法が研究されており、米国ニューヨークを本拠地とするC16 Biosciences社は人工的なパームオイル代替品を生産している。

同社は2017年に設立され、2020年3月、BEVが主導する投資ラウンドシリーズAにおいて2,000万ドル(約21億4,000万円)を調達したと発表した。彼らのソリューションは特殊な酵母を発酵させることでパーム油の代替品を抽出する技術で、化学的にほぼパーム油と同じ組成の物質が生成できる。

この技術によって生成された代替オイルを、まずは化粧品やスキンケアの分野に応用する予定だ。また今回、資金調達に成功したことで、スタッフの拡充もしていく方向だ。

市販化まではまだ少し時間はかかりそうだが、発酵プロセスを使って持続可能な方法でパーム油代替品が生産できれば、天然パーム油の生産過程で生じる森林伐採などの抑制に繋がるであろう。

リチウムを圧倒的短時間で抽出するLilac Solutions

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(画像出典:Lilac Solutionsウェブサイト

現在、充電可能な製品の多くに搭載されているリチウムイオンバッテリー。Lilac Solutions社は、電気自動車の増加などによって、リチウムイオンバッテリーの需要が今後10年間で約4倍になるだろうと予測している。

しかしリチウムを抽出するためのプロセスは非常にコストと手間のかかる作業だ。抽出には、南米などの塩湖のかん水を用いる。さらに、一般的に天日蒸発・濃縮を行うために広大な土地が必要であり、天候にも左右される。

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(画像出典:Lilac Solutionsウェブサイト

そこで、バッテリー技術のエキスパートだったDavid Snydacker氏は2016年、米国カリフォルニア州でLilac Solutions社を設立した。同社では新しいイオン交換技術を開発し、短時間でリチウムを濃縮できるようにした。

同社の技術は、リチウム抽出までの期間を通常の2年間から2時間に短縮できるとしており、これが実現できればリチウムの生産に大きな希望をもたらすことになる。2019年にはアルゼンチンや米国ネバダ州などで実験が行われ、いずれも従来の抽出方式より短期間で高濃度リチウムが抽出できるという結果を出している。

同社は2020年2月、BEVが主導する資金調達ラウンドAシリーズにおいて2,000万ドル(約21億4,000万円)の調達に成功した。今後は増産やエンジニアリングチームの拡大により、このソリューションを世界に広げていくとしている。リチウムの大幅なコストダウンは電気自動車の普及にとっても後押しとなりそうだ。

再生可能エネルギー源の利用を向上させるフローバッテリーのESS

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(画像出典:ESSウェブサイト

米国オレゴン州に本拠を置くESS社は、持続可能なフローバッテリーを開発している企業だ。フローバッテリーというのは、長寿命かつ発火性の材料を用いないため安全性が高く、電力系統用の蓄電池などに使われているバッテリーである。

ESS社のフローバッテリー「Energy Warehouse」は、リサイクル可能な鉄ベースの電解質を使用しており、メンテナンスをほとんど必要とせず、400kWh(概ね一般家庭の1ヶ月分の電力消費量に相当)を蓄電できるのが特長だ。また、入手しやすい鉄を使用することでコストも下げることができる。再生可能エネルギーを貯蔵し安定供給できるため、通常の電力が届かない遠隔地においても電力を届けることが容易になる。

同社はすでに北米市場をはじめラテンアメリカ、ヨーロッパ、アフリカでも事業展開を始めており、2019年10月にはBEVとソフトバンクグループのSBエナジーが主導する資金調達ラウンドCシリーズにおいて3,000万ドル(約32億1,000万円)を調達した。

低コストで環境負荷も少ないフローバッテリーが普及すれば、地域の電源は地域の資源で賄う、といったマイクログリッド(同一地域内にエネルギー供給源と消費施設を持つ小規模なエネルギーネットワーク)またはオフグリッド(電力会社に頼らず電力を自給自足している状態)な社会が実現し、電力供給モデルの変化が期待できる。

日本のグリーンテック事例

BEVが投資している各社は資金調達規模が数十億円に上る。日本ではこの規模の資金調達をしているグリーンテックのスタートアップはないものの「環境問題を解決し経済的・社会的発展に貢献する」という点では多くのスタートアップが挑戦している。

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(画像出典:エナーバンクの運営するエネオクウェブサイト

例えば、2016年に電力小売りが自由化されて以来、大手からスタートアップまで様々な企業が電力市場に参戦した。その中で興味深いイノベーションを起こしている企業が2018年に創立されたエナーバンク株式会社(本社:東京都中央区)である。

同社は、法人向け電力オークション「エネオク」を運営している。エネオクはサービス開始から10ヶ月で総取扱額が27億円を超えるなど、好調なスタートを切っている。

その他にも、グリーンチケットという証明書を発行し再生可能エネルギーを企業や個人に購入してもらう仕組みの提供や、オウンドメディア「電力バンク」の運営、株式会社シェアリングエネルギーと共同でエネルギー市場向けコミュニティ「エネルギーテック勉強会」を主催するなど意欲的な活動を見せ、日本の再生可能エネルギーの普及をサポートしている。

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(画像出典:Green Earth Instituteウェブサイト

一方で、研究所発ベンチャーとして植物を原料としたバイオマス燃料やグリーン化学品を開発しているのがGreen Earth Institute株式会社(本社:東京都文京区)だ。公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)で生まれた「RITEバイオプロセス」と呼ばれる原料の発酵法により、効率の高い方法で非石油化学品を作り出している。

同社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発補助金への採択や、株式会社東京大学エッジキャピタル、MBCベンチャーキャピタル株式会社、米国ファンドなどから、複数回の資金調達を実現しているところからも注目の度合いがうかがえる。

2020年4月には日本航空との協業で製造していたバイオジェット燃料が国際規格に合格し、商用に利用できるようになったこともあり、今後の市場展開の加速化の動向が注目される。

以上のように、グリーンテックの分野は世界中で注目されており、環境問題を解決に導く企業が国内外ともに数多く現れている。今後、日本からもさらにイノベーティブな企業が生まれることを期待したい。

(※為替レート:2020年5月18日現在)

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