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キーワードは「再利用」と「低価格」。宇宙ビジネスの起点となるロケット開発・打ち上げの今

キーワードは「再利用」と「低価格」。宇宙ビジネスの起点となるロケット開発・打ち上げの今

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2020/06/18

スペースX、ブルーオリジン、宇宙へのアクセスをめざすベンチャー企業の台頭

2000年代初頭、アメリカで相次いで起業した宇宙ベンチャー、スペースXとブルーオリジン。宇宙ビジネスを語る上で欠かすことのできない両社の登場により、従来よりも低コストのロケット打ち上げが可能となり、以降の宇宙ビジネスに多大な影響と可能性を与えている。

宇宙ビジネスの起点となるロケット開発、打ち上げ産業において、従来の100億円とも200億円とも言われる打ち上げコストは長年の課題だった。宇宙ビジネス市場拡大のためには、輸送機を安く作り、宇宙へのアクセシビリティを高め、宇宙への輸送コストを下げることが必要不可欠だと言われている。

2030年代には、世界規模で70兆円にまで達すると言われる宇宙ビジネス産業は、ロケット開発、打ち上げ分野の重要性に多くの企業や投資家が注目している。

官から民へ、アメリカの宇宙ビジネスのパラダイムシフト

ロケット開発、打ち上げビジネスは、もともとNASAなど各国の国家機関が担い、関連する宇宙産業は国からの発注を請け、民間企業を中心に開発を行う請負型がほとんどだった。

宇宙ビジネスの大きな転換期と言われるのは、2000年代。欧米などの先進国では宇宙政策の産業化・商業化が加速した。特にアメリカのNASAは2004年、老朽化するスペースシャトルの退役を発表し、後継機の開発や国際宇宙ステーションへの物資輸送を含めた計画として「商業軌道輸送サービス(COTS)」「商業補給サービス(CRS)」を発表。これは、国際宇宙ステーションへの輸送を企業がNASAから受注するという能力開発支援プログラムで、スペースシャトルの開発や運用が公共事業から民間企業完全委託型へと切り替わることを意味した。NASAの目論見は、民間の資金投入によって競争原理を生む仕組みづくりを行い、一顧客として民間サービスを購入するという構図を作るというものだった。

参入する民間企業は、輸送に必要なロケットの製造開発を自前で行う必要があった。そこで、シリコンバレーの投資家たちを巻き込む形で、ロケット開発のための莫大な資金を調達。その結果、ヒト・モノ・カネの3つが揃い、宇宙ベンチャーによる技術開発が大きく進むこととなった。

加えてオバマ政権下の2010年に掲げられた国家宇宙政策においては、国家がなすべきこと民間に任せるべきことが明確に切り分けられた。これにより、これまでは一部の企業が独占していたロケット打ち上げ業務への参入チャンスが、宇宙ベンチャーにも与えられ、関連企業を含めた宇宙産業の枠組みに大きな地殻変動を与える動きとなった。

こうした動きに呼応する形で、2000年以降創業したネット通販アマゾンCEOジェフ・ベゾス氏のブルーオリジン、電気自動車テスラCEOのイーロン・マスク氏率いるスペースXなどが、国の政策に後押しされる形で成長していった。

再利用型vs使い捨て~進む大型ロケット打ち上げのコストカットの波

大型ロケットの開発、打ち上げ市場は、1980年に欧州主要国政府の共同出資で設立されたアリアンスペースが5割強のシェアを占めているものの、後発の宇宙ベンチャーであるスペースX、ブルーオリジンの2社が迫るという構図になっている。

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(画像出典:スペースXウェブサイト

特に2002年創業のスペースXは、創業からわずか数年でロケット「ファルコン1」を開発し、2006年に初打ち上げ、2008年には打ち上げを成功。現在は国際宇宙ステーションへの物資輸送サービスをNASAから受注し、商業衛星打ち上げや次世代GPS打ち上げも受注するなど、急激に存在感を高めている。

スペースXが大きくシェアを伸ばす理由は、開発力、マーケティング力、オペレーション力など多岐に亘るが、最も注目を集めているのがロケットの再利用だ。

老舗アリアンスペースなどが採用している従来の使い捨てロケットと異なり、スペースXでは、機体の一部または全部を再利用することで、資源の節約や輸送コストの低下が期待されている。すでに、再利用目的で「ファルコン9」の第一段ロケットの回収、国際宇宙ステーションへの貨物補給サービスを担う「ドラゴン宇宙船」の第一段ロケットの打ち上げ後の回収を実施した。

スペースXはその他にも、量産を前提としたIT開発スタイルを採用し、エンジンやコンポーネント、小型部品の自社開発を行い、他社からの部品購入はほとんど行わない。さらに製造工程の分析や見直しにより効率化を図っている。これは従来のロケット開発においてなかった視点である。

こうした企業努力により、スペースXの打ち上げ費用は60億円程度となり、通常のロケット打ち上げ費用100億~200億円と比較すると大幅なコストカットが実現可能とされている。

スペースXは、再利用を軸にさらなるコストカットを目標に掲げ、今後も回収後の整備期間の短縮や第二段ロケットの再利用など、段階的な再利用化を目指している。

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(画像出典:ブルーオリジンウェブサイト

ただし、再利用化によりロケット打ち上げコストの価格競争が進む一方で、信頼性と低コストを両立できるかは運用してみないとわからない部分も多い。そのため老舗アリアンスペースでは、使い捨て方式を選択し開発を進めている。

価格競争に打ち上げ頻度~競争が激化する小型衛星打ち上げ市場

近年、地球上の観測データの取得や通信サービス事業、取得したデータ分析に基づくコンサルティング事業を展開する小型衛星ベンチャーが数多く現れている。2012年から2017年の間で700機以上の小型衛星が打ち上げられているとされ、低軌道への小型衛星打ち上げニーズが高まりつつある。

小型衛星の従来の打ち上げ方法は、以下の通りだ。
①大型衛星打ち上げ時のロケット空きスペースを活用した相乗り
②国際宇宙ステーションからの放出
③複数の小型ロケットをまとめて大型ロケットで打ち上げ

しかし従来の方法では、打ち上げ費用が高額であること、打ち上げ時期が年単位で延びることなど課題も多く、昨今の小型衛星打ち上げニーズに対応しきれないという課題が生じていた。

この課題にいち早く取り組んだのが2006年創業のロケット・ラボ。約150キログラムの小型衛星を低軌道に打ち上げる「エレクトロン」を開発した企業だ。

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(画像出典:ロケット・ラボウェブサイト

同社の強みは3Dプリンターを活用したエンジン製造。これによりコストの削減と打ち上げ頻度増加に成功し、約6億円で小型衛星を打ち上げることができるようになった。

また、同社の競合とされるヴァージン・オービット(ヴァージン・ギャランティックより分社化)は、改装したジャンボジェット機を利用し衛星を打ち上げるサービス「ランチャーワン」を開始予定だ。

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(画像出典:ヴァージン・オービットウェブサイト

これは、客室のないジャンボジェット機からロケットを発射し、小さな人工衛星を軌道に乗せるというもの。実用化が可能となれば約13億円で衛星の打ち上げが実現できる予定だ。

前述のスペースXも、2020年2月、webサイトでの衛星打ち上げ予約サービスを発表。同社のロケット「ファルコン9」の打ち上げに際し、相乗り形式で小型衛星を搭載できるというもの。料金は約1.1億円で、従来の方法による同社の打ち上げ費用約70億円と比較すると随分と低価格に抑えられている。

こうした小型衛星打ち上げ市場の価格競争の盛り上がりの背景には、アメリカ国内での打ち上げ手続きの簡略化により、技術開発衛星や試験機などの打ち上げが行いやすくなったという背景がある。

宇宙ビジネス市場の拡大のために必要不可欠な輸送コストを低価格化

スペースXやブルーオリジン、ロケット・ラボ等の宇宙ベンチャーの参入により、ロケットの打ち上げコストはこの20年で低価格になったもの、現状もまだ手軽とは言い難い価格であることは事実だ。

火星行きを目指すイーロン・マスク氏は、輸送コストを一般人が使えるレベルに落とさない限り、ロケット利用は促進されないと語っている。現段階では、再利用や開発コストの削減などの企業努力により、少しずつコストを抑えている途中だと言えるだろう。

2018年時点で約40兆円(Space Foundaion参照)と言われる宇宙ビジネス市場のうち、ロケットや人工衛星の製造に関する市場(宇宙インフラ市場)は全体の6%弱にあたる約2兆円。衛星関連ビジネス、地上設備、宇宙ステーション、宇宙旅行等、すべての宇宙ビジネスがまず宇宙へのアクセスを起点とすることから、さらなる宇宙ビジネス市場の発展には輸送コストの削減が今後も課題となるだろう。

(※為替レート:2020年3月31日現在)

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