tr?id=1970953653177752&ev=PageView&noscript=1

フィンテック系スタートアップ6社におけるAIの活用事例

フィンテック系スタートアップ6社におけるAIの活用事例

1,888view

2020/06/10

ディープラーニングをきっかけにAIが急速に発達してきた2000年代以降は第三次AIブームと言われている。この背景のひとつにはIoT、モバイル端末、クラウド環境などが普及したことにより、膨大なデータを集める環境が整ったことがある。
AIによる自動音声認識・対話など、実際に生活の中で使われているサービスも登場し、より身近な存在として認知されつつある状況だ。
業界を問わずAIを活用したデータの分析・利活用が進んでいるなか、フィンテック領域においてはどのようなスタートアップが登場し、サービス提供をしているか事例をまとめた。

審査、信用度評価 におけるAIの活用

金融業務へのAI活用のひとつとして、融資審査に用いる信用度スコアが注目されている。これは、データから個人や企業の信用度を測定するものであり、融資の判断に必要な信用度をAIが算出する。審査の仕事は銀行の数ある業務の中でも最も重要な仕事のひとつだが、その自動化が進むことで審査プロセスの効率化が期待される。

また、AIによって信用度評価を精密にできるようになれば、例えば、新規の融資対象の発掘や積極的な融資の推進などが期待できる。

審査や信用度評価についてAIを活用している事例として、以下の2社を取り上げる。

Oriente

20200610_02.png
(画像出典:Orienteウェブサイト)

Orienteは香港に本社を構える、2017年に創業した金融サービス・テクノロジー会社だ。Orienteのミッションは新興アジア地域でのファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)の普及だ。ファイナンシャル・インクルージョンとは、経済活動のチャンスを捉えるため、また、経済的に不安定な状況を軽減するために必要な金融サービスにすべての人々がアクセス・利用できる状況を指す。

同社は2018年11月28日付で、1億500万ドル(約165億円)の初回資金調達ラウンドを完了したと発表した。この金額はアジアのスタートアップによる初回資金調達ラウンドとしては最大規模だ。調達資金はテクノロジーや商品開発の加速、新規市場への展開に活用されており、成長するアジア地域経済圏において数百万人規模の新たな顧客獲得に繋がっている。

同社事業は、フィリピンにおいて、Cashaloというモバイルアプリを展開からまず初めにスタートした。このアプリを使えば電話番号と勤務先などのプロフィールを送信するだけで、簡単に銀行口座を作成できることに加え、収入などに基づき個人に信用スコアが付与され、ユーザーはスコアに応じてお金を借りることができる。

その後、インドネシアにも進出しFinmasというモバイルアプリをリリース。こちらも個人の信用力を活用して資金の貸し出しをするサービスだ。アプリに身分証明書と顔写真を送信するだけで信用スコアが付与され、付与されたクレジットで買い物を楽しむことができる。

機械学習をはじめとする人工知能、データサイエンスといった技術を活用し、このようにユーザーごとにカスタマイズされた金融サービスの提供を実現している。

Datanest

20200610_03.png
(画像出典:Datanestウェブサイト)

Datanestは、企業が人工知能を使用して行うデータ分析をサポートする、インドネシアのスタートアップだ。2018年にフィンテックニュース香港のアジアで注目すべき11のFintechスタートアップ企業として選ばれただけでなく、5,000社以上のスタートアップが集まったTech in Asia Jakarta 2018では準優勝に輝いた。

機械学習やAIはいまや積極的に活用すべきIT技術と認識されているが、どうやって事業に取り込んでいけばいいのかわからないことが多い。また、機械学習やAIを熟知している技術者を確保するのも難しい。そんな顧客にDatanestは、AIと機械学習ソリューションをサービスとして提供している。

主軸の事業は、企業のニーズと要件に合わせて特別に設計するカスタムAIソリューションの開発だ。データを分析しやすく加工し、Datanestが持つプラットフォームでデータ分析をして結果を出す。DatanestはWebベースで構築されているため、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)で自社のシステムに連携させることもできる。

その他にも2つサービスを提供している。ひとつはTruescoreと呼ばれるサービスで、API接続により金融機関のデータを照会・取得し、過去のローン履歴や給与額に基づいて個人の返済能力の算出やクレジットカードの限度額の設定を効率的に行うものだ。

もうひとつはDemand AIというBtoBサービスだ。カスタマーの行動データに基づく需要予測や営業マンの訪問スケジュールサポート、在庫がなくなる前の自動通知などの機能を持ち、カスタマーのニーズに合わせた事業者のサービス提供を可能にする。
その高度な技術は大企業の信頼も得ており、Google AIやパブリッククラウドの雄であるAWSをはじめとした数多くのパートナーやクライアントを抱えている。

セキュリティにおけるAIの活用

膨大な量のデータを学習し、通常と異なる傾向を検知するのはAIの得意分野だ。この特性を情報セキュリティ分野に応用するための試みが世界的に進行している。

これまでの人によるセキュリティ対策では、専門の技術者によってパターンを検知し、それに対応するファイルを作成し、利用者へ配布する流れが一般的だった。しかし、これでは対応経験のないパターンが発生した場合、適切な対応が遅れ、完全な防御ができず、対応方法がわかるまでの間は無防備な状態になってしまう可能性がある。

こうした事態はなんとしても避けたいが、そこで注目されているのが、攻撃された際に素早く察知し対処するためのAIによるパターン検出だ。AIでのシステムやログの統合管理と相関分析を行うことで、サイバー攻撃を素早く検知し対処することが可能だ。

その事例として、以下の2社を取り上げる。

NetGuardians

20200610_04.png
(画像出典:NetGuardiansウェブサイト)

NetGuardiansは、2007年にスイスで設立されたフィンテック企業であり、スイス以外にもナイロビ、ワルシャワ、シンガポールにオフィスを構える。設立後、9年間で2回の資金調達を行い、60億ドル(約6,610億円)という巨額の資金調達に成功している。

また同社は、地域の企業などが最先端技術で現代の課題に取り組むことを支援するために開催されている国際的イベント、Finastra Universe(フィナストラユニバース)のパリとフランクフルトのスポンサーでもある。

同社は、詐欺を防止するために銀行向けに設計されたソリューションを提供している。金融機関のスタッフや顧客の動きを「問題のないデータ」として覚え、その行動パターンと違う動きがないか監視し、見つければそれを詐欺師の動きとして検知する仕組みだ。

取引を監視し、ハッカーによる乗っ取りや個人情報の盗難、振り込め詐欺、CEO詐欺(経営幹部になりすまし金銭を搾取する詐欺)を特定する。また、従業員が共謀して行う内部詐欺に対しては、全ての従業員の行動を監視し内部不正をリアルタイムで防止する。

日本ではあまり見られない詐欺防止をメインの事業に据え、AI技術を活用して銀行のセキュリティを強固にしている。

Fraugster

20200610_05.png
(画像出典:Fraugsterウェブサイト)

Fraugsterは、AIを使用してオンライン小売業者の詐欺を防止するソフトウェア会社だ。2014年にドイツで設立された。
2016年からは世界中で事業を展開しており、大手決済会社によって国際的に使用されるなど厚い信頼を得ている。

また、協力企業には世界有数の再保険会社の1つであるミュンヘン再保険が名を連ねており、同社のデータアナリストはFraugsterの自己学習アルゴリズムをテストしたところ全て目的に適合し信頼に値すると評価している。Fraugsterのサービスを導入しているクライアントはすでに世界中のオンライン販売の約4%を占め、その金額は約1,000億ユーロ(約12兆円)にのぼっている。

オンライン小売業者が被害を受ける詐欺といえば、不正なクレジットカードで注文を受け決済をしてしまうことだ。その不正な注文を、FraugsterはAIのテクノロジーを活用して防止する。

Fraugsterは、さまざまな業界や地域の何百万もの取引データの機械学習により、独自のAIプラットフォームを開発した。注文時に入力する名前やメールアドレス、請求先、配送先住所などの数千の追加データポイントを収集・監視して、ユーザーの行動に関する洞察を強化している。

15ミリ秒以内に取引が不正かどうかの正確な判断を下せるとしており、不正を最小限に抑えるとともに、オンライン小売業者の収益最大化をサポートするサービスとなっている。

独特のサービスを展開するAI活用企業

ここでさらに、AIを活用し独自のサービスを展開するFintech企業を2社取り上げよう。

会計文書管理技術

parashift

20200610_06.png
(画像出典:Parashiftウェブサイト)

Parashiftは、2018年に起業したスタートアップ企業であり、スイスの有名な企業投資家からの資金調達に成功している。 世界的な経済誌であるForbesも、ヨーロッパで最も有望な30のフィンテックスタートアップの1つとしてParashiftについて言及している。

ParashiftはAIを活用し、請求書や領収書などのあらゆる種類の会計文書の画像を高精度で読み取り、数字や文字としてシステム上に抽出できる機械学習ベースのクラウドソリューションだ。自社内での研究により数多くの特許や独自技術を生み出している。ちなみにTransparency Market Research の市場レポートによると、文書抽出ソフトウェアの世界市場は2027年までに年間売上が126億ドル(約1兆3,880億円)に成長する有望な市場だ。

日本でも大企業が取り組んでいるペーパーレス化を推し進めるソリューションだが、Parashiftの場合、今やブームとなっているサブスクリプションモデルを採用しているため、使った分だけ費用が発生する仕組みでコストを最低限に抑えることができるのも特徴である。

Parashiftは紙からデータを抽出するだけではなく、指定した項目にデータを割り振ってくれるため管理もしやすい。手動でデータを入力する必要がないため時間を節約でき、データ入力に関わるコストを削減することが可能だ。 多くの企業が手動で行っていたデータ入力と会計作業の完全な自動化が可能であることもあり、注目を集めている。

投資家と創業者のマッチメイキング

Fundsup

20200610_07.png
(画像出典:Fundsupウェブサイト)

Fundsupは、スタートアップの起業家と投資家をプラットフォーム上でマッチングさせ、初期段階の資金調達をサポートする企業だ。2018年3月に設立され、その後1年間で2,400名を超える新しい創業者がFundsupのサービスを利用している。

もともとは2011年に設立したCapital On Stageの活動で、投資家、創業者を結びつけるイベントをヨーロッパ、アジア、アメリカで実施していた。その経験から、より効率的に投資家・創業者のマッチメイキングを可能にするために、データを駆使したプラットフォームを構築している。

なお、同社はこれまでに匿名のエンジェル投資家から170万ユーロ(約2億400万円)の資金を集めた。

Fundsupを利用すれば、投資家は事前に設定した条件に一致する新しいスタートアップ企業の通知を即座に受け取り、会社やチームの詳細を調べることが可能だ。そして、興味があれば創業者と直接チャットで会話をすることができる。また、最終的に承認される前に、業界の専門家によって手動でスクリーニングと検証がなされ、詳細な会社およびチームの情報を匿名で閲覧することができる。

創業者側はAIによって関連する投資家にレコメンドしてもらえるので、資金調達を自動化し時間とお金を節約できる。投資家との接点が少ないスタートアップ企業にとっては大変便利な仕組みだ。

有料プランでは、投資家はより早く自分の設定に合致するスタートアップ企業を紹介してもらうことができ、一方、創業者は関心のある投資家へ自社の情報を通知することができる。

終わりに

今回紹介したスタートアップ以外にも、フィンテック領域におけるAI活用の動きは今後も加速していくことが見込まれる。その一方で、AIと人との共存領域が必要になることも予想される。いかに正確に、業務の効率をあげ、より生産性を高めるか。
それを具体化するスタートアップは、これからも続々と生まれてくる可能性がある。

(※為替レート:2020年2月27日現在)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

INNOVATION HUBの最新情報をお届けします

プログラム

コラボレーションによるイノベーション創出の場

  • MUFG SPARK

スタートアップ・アクセラレータ

  • MUFG DEGITAL ACCELERATOR

月間記事ランキング

MUFG関連記事

Facebook公式ページ