tr?id=1970953653177752&ev=PageView&noscript=1

自動運転車開発の現在そして未来~なぜスタートアップが存在感を増しているのか

自動運転車開発の現在そして未来~なぜスタートアップが存在感を増しているのか

1,819view

2020/06/09

米ニューロが公道走行許可を取得

2020年2月、自動運転車を利用した配送サービスの実現を目指すスタートアップの米ニューロが、米運輸省道路交通安全局から公道走行許可を取得した。走行許可がおりたのは、同社が開発した「R2」と呼ばれる車両だ。人間が乗って運転するスペースはなく、カメラとLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging、レーザーを照射することで対象までの距離を測定する技術)を搭載し、自動運転で走行することができる。

同社はGoogleのエンジニアだった2人が立ち上げたスタートアップ企業で、2016年に設立されたばかり。米道路交通安全局への公道走行許可は大手の米GM(ゼネラル・モーターズ)も申請を行っていたが、ニューロが先んじて許可を取得することになった。

20200609_02.png
(画像出典:Nuro Blog

同社はヒューストンでR2のテスト走行を行う。R2は住宅地での走行を想定しており、食料品の配達や料理の出前に活用できるよう設計されている。米国においてはUber EatsやInstacart、Postmatesといった宅配代行サービスが広く浸透しているが、自動運転によって宅配できるようになれば、マーケットに大きな影響をもたらすと予想される。

テクノロジーの分野では、アイデアと技術力、そしてスピードが揃うスタートアップが存在感を発揮しており、自動運転の分野もその例に漏れない。今回は、自動運転分野で輝くスタートアップ企業を見ていく。

自動車メーカーと協業するスタートアップ企業

GM(ゼネラル・モーターズ)を支えるクルーズ

20200609_03.png
(画像出典:Cruise公式サイト

前述の通り、GMは米運輸省道路交通安全局に自動運転車の公道走行許可を申請している。同局は2020年3月15日、GMに公道走行許可を与えるかどうかについて、意見の公募を行うことを発表した。GMが開発を進めるのはヒトを乗せるロボットタクシーで、「クルーズAV」と呼ばれる車両だ。低速でモノを運ぶニューロとは異なり、ヒトを運ぶためのより厳格な安全基準が適用される。

クルーズAVには5つのLiDAR、16台のカメラ、21個のミリ波レーダー(対象物の位置情報や移動速度を測定する技術)が搭載されている。専門性の高い高度な技術で、GMの自動運転分野への進出を支える。

GMは2018年までに自動運転のレベル3(高速道路など特定の場所で自動運転を行い、緊急時などはドライバーが対応する)技術を確立し、2018年にはレベル4(特定の場所で全ての操作を自動化する)を満たす自動運転車としてクルーズAVの生産準備を整えたことを発表した。

GMの自動運転車開発は、GMグループの子会社であるクルーズ社が手がけている。同社は元々、2013年にサンフランシスコで設立されたスタートアップ企業だ。AirbnbやDropboxを輩出したアクセラレーターのYコンビネータ出身の企業でもあり、2016年にGMが5億8,100万ドル(約643億9,000万円)で買収、2018年からはソフトバンクグループも出資を行なっている。

同社は2020年1月、より多人数を収容できる「Cruise Origin」を発表している。ハンドルやペダル、ルームミラー、ワイパーなどは搭載していないため、車内空間が広く取られており、ライドシェア用に提供される予定だ。

テスラがスタートアップと組む理由

イーロン・マスク氏が立ち上げた米テスラも自動運転開発に取り組んでいる。テスラは、2019年10月に自動運転スタートアップの米DeepScaleを買収した。買収額は明らかにされていないが、DeepScaleは設立4年で1,800万ドル(約20億円)を調達していた。

DeepScaleが開発するのは知覚システムと呼ばれる、自動運転車がリアルタイムで周囲の状況を認識し、事故の回避行動を取るための重要なシステムだ。自動運転レベル2(人間のドライバーによる運転をステアリング操作と加減速の両面で補助する)からレベル5(全ての操作において人間のドライバーを必要としない完全自動運転)まで対応できる技術の幅広さが売りだ。

自社で一から開発を行うのではなく、重要だがニッチな分野の開発に専門的に取り組んできたスタートアップをチームに加えることで、よりスピード感を持って開発を進めることができる。

イーロン・マスク氏は、2020年1月に配信したテスラのファンコミュニティ向けのインタビュー動画で、「自動車産業はスローペースで進化することに慣れてしまっている」と、現在の自動車業界の変化のスピード感に疑問を呈した。一方で、「いつの時代も新規に業界に参入した者がイノベーションをもたらす」と、スタートアップへの期待を口にしている。自身もかつてはスタートアップの経営者であったマスク氏は、スタートアップとの協業によって自動車産業を変えようとしている。

自動運転車開発を支える世界のスタートアップ企業を紹介

次に、自動運転車の開発を行う各国のスタートアップ企業の動きを見てみよう。

【イギリス】政府と協業するFIVE

英FIVEは2020年3月、4,100万ドル(約45億4,000万円)の調達を達成した。FIVEは英国発のスタートアップで、イギリス政府が立ち上げ、政府資金を投じた自動運転の公道実験プロジェクトをリードする企業だ。2019年にはイギリス最大規模の走行実験を行ない、ロンドン内の19キロメートルを超えるルートで計数百名の乗客を運搬することに成功した。

FIVEはこれまで全自動のロボタクシーの開発を手がけてきた。走行テストで技術力の高さを実証したが、2020年からは自動運転車のテスト走行における、精度確認を行うソフトウェアの開発に注力していく。次のレベルに進むには1社で取り組むことは困難と判断したためで、自動運転車の実用化に向けて他社との協業を視野に入れる。スタートアップならではの迅速な意思決定が行われた格好だ。

イギリスでは、政府が自動運転車の実現を強く後押ししている。政府が主導する形で、前述のロンドンの公道を使った走行テストを実施している他、2018年7月には「自動運転と電気自動車に関する法律」が可決され、自動運転車も強制自動車保険の対象に含むなど、法整備も進めている。

【中国】新石器の自動配達に集まる注目

20200609_04.png
(画像出典:新石器公式サイト

自動運転の開発を進めているのは欧米だけではない。中国のスタートアップ新石器(Neolix)はモノを運ぶ自動配達自動車を開発、すでに一部の都市でEC事業向けに実用化されている。

この自動配達ロボットは、新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた地域への医薬品や食料の配達にも活用されるなど、急速に需要が高まっている。道路の消毒作業にも利用されており、災害時など、人手を動員できない非常事態下での自動運転車の活用法の好例と言える。

新石器は、2020年3月に2,900万ドル(約32億円)を調達、これまでにファーウェイやアリババといった国内企業に計225台を販売したと発表している。2020年中に1,000台の販売を目指す。

中国もまた、国をあげて自動運転車の実用化を推進している。2015年に発表された、産業政策方針「中国製造2025」では、新石器が提供するような「自動運転システム等の特殊ロボット」を重点助成対象に指定している。

【中国】トヨタと協業する小馬智行

中国では、スタートアップの小馬智行(ポニー・エーアイ)がヒトを乗せる自動運転車のソフト開発に取り組んでいる。小馬智行は、2019年8月に日本のトヨタ自動車との提携を発表し、上海と北京市の公道でトヨタの車両を利用した自動運転の実験を行った。

2020年2月には、トヨタが小馬智行に4億ドル(約442億8,000万円)を出資することを発表した。これまで行ってきた提携の有効性が確認されたことが理由で、その目的は中国での自動運転開発を加速することだ。

中国では公道を利用した自動運転の実証実験が可能で、2019年には自動運転走行テストのガイドラインを発表し、公道での走行テスト前に公共のエリア以外での事前試走を義務付けるなど、法整備も進めている。河北省の雄安新区では、自動運転を核にしたスマート・シティ化が進む。

このように中国では自動運転に対する政府の後押しがある中、スピード感のある開発が持ち味のスタートアップがその存在感を増している。

【日本】物流×テクノロジーのGROUND

20200609_05.png
(画像出典:GROUND公式サイト

日本でも自動運転技術に取り組むスタートアップは登場している。2015年に設立された物流技術スタートアップのGROUNDは、2019年8月までに17億円を調達、ソニーも投資に加わっている。

GROUNDの標語は「物流にテクノロジーを」。開発を手がけるAMR(=Autonomous Mobile Robot、自律走行型搬送ロボット)の「PEER」は、倉庫内でオーダーを受けた商品をピックアップする作業に活用されている。

ラストワンマイル(物流において、ものやサービスを最終拠点からカスタマーに届ける最後の配送工程)や施設内のロボットへの自動運転技術の活用は、注目を集めている分野の一つだ。AMRは公道での実験が難しい国でも開発を進めることができる上、人手不足に悩む流通業界に大幅な業務効率の改善をもたらす可能性がある。

【アメリカ・日本】PerceptInが挑む実証実験

シリコンバレーで創業したPerceptIn(現在の本社は香港)の日本法人は、2019年9月に福岡で低速自動運転マイクロモビリティ(2人乗り)の実証実験を実施した。実験を行なったのは福岡市の貝塚公園で、九州大学、UR都市機構、福岡市、福岡地域戦略推進協議会の協力によって実現した。

次いで、2019年10月には半導体などの電子部品を製造・開発を行う株式会社マクニカと合同で、自動運転の「マイクロ・ロボットタクシー」(8人乗り)を使用した実証実験を行っている。奈良県の平城宮跡歴史公園で行われたこの実証実験は、2020年1月に富士通株式会社と共同でさらに進化。貝塚公園ではトランシーバーを持った職員が連絡を取り合うことで配車を行なっていたが、平城宮跡歴史公園での実証実験では、利用者とマイクロ・ロボットタクシーをマッチングする「オンデマンド交通サービス」を活用した配車が行われた。

ちなみに、PerceptInは富士通が実施するスタートアップ支援プログラムのFUJITSU ACCELERATOR 第7期に参加している。このプログラムへの参加をきっかけに、富士通が提供するオンデマンド交通サービスと組み合わせた実証実験が行われた。各社が得意とする技術を持ち寄った自動運転開発における協業は、ここでも成果を上げている。

PerceptInは、観光やラストワンマイルへの低速自動運転マイクロモビリティの利用を目指す。公道での自動運転車の実験ができない日本でも、マイクロモビリティについては国土交通省が公道走行を可能とする認定制度を設置している。現段階で普及は進んでいないが、マイクロモビリティの活性化に期待が集まっている。

トヨタが進める「コネクテッド・シティ」プロジェクト

最後に、日本でも進んでいる自動運転車に関する大規模な取り組みを紹介しておこう。

トヨタは2020年1月にラスベガスで行われた電子機器の見本市 CES 2020で、「コネクテッド・シティ」プロジェクトを発表した。自動運転車が走る街「コネクテッド・シティ」を「Woven city」(ウーブン・シティ)と名付け、静岡県裾野市の東富士に建設する。「実証都市」と称されるウーブン・シティにはトヨタの従業員やプロジェクトの関係者が実際に住み、人が住む環境の中で自動運転をはじめとする最新技術の実証実験を行う。

2020年3月、トヨタはNTTとの業務提携を発表、2,000億円規模の相互出資を行い、スマート・シティの推進に取り組むことが明らかになった。自動運転車の実現には、道路上にある大容量の情報が瞬時に行き交うことのできる通信技術は生命線だ。業界を越えた協力体制によって、街づくりを更に進める。

更にWoven cityのイメージCGにも描かれているような、「空飛ぶタクシー」を開発している米スタートアップのジョビー・アビエーションにも約430億円の出資をするなど、トヨタとスタートアップとの具体的な協業も発表されている。
スマート・シティのような「場」を作ることで、住民や行政も含め、自動運転を始めとする最新技術に関係する多くの人々が集まることになる。日本の自動運転車開発は大きな転換期を迎えていると言える。

以上のように、世界の多くの国々で、大企業や行政を含めた様々なプレイヤーが自動運転車の開発に携わっている。現在は自動運転技術を活用したビジネスやサービス、プロジェクトが新しく生まれるフェーズであり、その情勢の変化にスピード感を持って対応できるのがスタートアップの強みだ。自動運転の実用化に向けてスタートアップの果たす役割は、ますます大きくなると思われる。

(※為替レート:2020年3月24日現在)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

INNOVATION HUBの最新情報をお届けします

プログラム

コラボレーションによるイノベーション創出の場

  • MUFG SPARK

スタートアップ・アクセラレータ

  • MUFG DEGITAL ACCELERATOR

月間記事ランキング

MUFG関連記事

Facebook公式ページ