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イーサリアムによるIPOも…トークンでの株式発行と資金調達の今

イーサリアムによるIPOも…トークンでの株式発行と資金調達の今

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2020/05/27

スイス初のイーサリアムによるIPO

スイスのブロックチェーン企業の「オーバーフューチャーSA」(OverFuture SA)がイーサリアムによるIPOを実施する。スイス金融市場調査局(FINMA)が、ブロックチェーン上で通常のクラスA株式を保有できるようにする定款をはじめて承認したことによる。

OverFuture SA

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(画像出典:OverFuture SAウェブサイト

同定款では、株式はトークン(デジタル形式の株式)で発行され、株主はブロックチェーンを使用して記録・保存される。また、所有権の移行は、ブロックチェーン上のトークンの移転のみで行われ、トークンを所有していることにより株主としてのステータスを示すことができる、としている。

株式は、ERC-20トークン(イーサリアムのプラットフォーム上のみで使用されることを目的に設計されたトークン)を使用してイーサリアムブロックチェーンで発行される。

目論見書によると同社は、EURO DAXX(スイスの都市Zugに拠点を置く欧州デジタル資産取引所)が提供するイーサリアムのスマートコントラクトを使用し、イーサリアムブロックチェーン上で8,399,000株の「普通株式セキュリティ・トークン」を公開する。売り出し価格は1株につき1.25ユーロ(約150円)だ。
事業の目的としては、主に「コンサルティングサービス、IoTおよびIIot(産業分野で使われるIoT)デバイスのアセンブリと統合、およびビッグデータの処理と分析、AIに基づく機能を提供するクラウドベースのコンピューティングプラットフォーム」としている。

イーサリアムでIPOする理由とは

IPO(Initial Public Offering)とは、未上場企業が新規に株式を証券取引所に上場し投資家に株式を取得させることで、企業が金融市場から直接資金調達することを言う。通常は、証券会社や銀行、ブローカー・ディーラー、中央預託システムなどの第三者機関を介して株式を投資家に配分する。

しかし今回、オーバーフューチャーSAのIPOが承認されたことにより、同社は第三者機関を介さずして株式をブロックチェーン上で公開することが可能になった。もちろん、これまでもブロックチェーンを活用したIPOがなかったわけではないが、そのほとんどが、参加するために一定の条件を満足させなければならないパーミッション型(許可型)のブロックチェーンだった。オーバーフューチャーSAのIPOは、パーミッション型ではないパブリックチェーンであるイーサリアム上で行われることに意味がある。

中間業者を省くことで、取引に要する時間とコストを大幅に低減でき、以って株式取引の活性化にもつながり、円滑に資金調達を実行できると予想される。同社のアドバイザーを務めるAndriotto Financial Services社のプレスリリースによると、「従来の仲介者のエコシステムとブロックチェーンとを比較した場合、最も大きな違いが現れるのは、コストと時間、そして販売量だ」としている。

こうしたブロックチェーン上での株式発行は、Swiss Digital Exchangeなどのスイス国内の主要な取引所も採用する予定だと言われており、今後同様の形式でのIPOを目指す企業が増える可能性がある。

トークンによる資金調達ICO、IEO、STOそしてETO

ブロックチェーンを利用したトークンの発行による資金調達には、かつてはICO(Initial Coin Offering)があり、その後、IEO(Initial Exchange Offering)、そしてSTO(Security Token Offering)、最近ではETO(Equity Token Offering)という手法が現れている。

ICOは詐欺的なプロジェクトが乱立してマーケットに不安が広がり、各国も規制強化に乗り出したこともあって現在は徐々に活気を失っている。その教訓もあって現れたIEOは、取引所が参加を認めたプロジェクトがトークンを発行し、販売の責任は取引所が追うため、投資家は法のもとに保護される。

一方、トークンを純粋に「金融商品」として発行して資金調達するのがSTOだ。STOにおけるトークンは、株式や債券、商品、あるいは不動産といった資産の裏付けがなされて証券化した有価証券を、ブロックチェーンを用いてデジタル化したものであり、有価証券に分類されるためセキュリティ・トークンと呼ばれる。有価証券同様、所有権、配当を受ける権利を有することを証明する価値を持つ。

参考: ブロックチェーン技術による資金調達法STOとは何か?~資産のトークン化が実現する新しい経済圏~ | MUFG Innovation Hub

ちなみに日本では、2019年5月に参院本会議で可決・成立した金融商品取引法の改正案により、ICOやSTOは金融商品取引法の規制対象として位置づけられる。そのため、これらは証券会社などの第1種金融商品取引業者が取り扱うことになるとみられており、STOは2020年4月に施行される金融商品取引法に基づいて実施される予定だ。

そして、そのSTOの派生系とも言えるのがETOだ。国の規制に準拠した上で、企業が株式をエクイティ・トークンとしてブロックチェーン上で発行し売買する。エクイティ・トークンはセキュリティ・トークンの一種だ。

ETOを介して株式を売却しようとする企業は、それが健全な投資であることを証明するために、サードパーティの規制当局あるいは投資銀行によるデューデリジェンスを受ける必要がある。また、ETOによって上場を希望する企業は、ETOの起ち上げに先立ってETOの目論見書を発行しなければならない。この点は、IPOと同様だ。

そのETOのプラットフォームとして名を馳せているのが、ベルリンに本拠を置くNeufundだ。

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(画像出典:Neufundウェブサイト

2016年設立のNeufund自身が、2018年に世界で初めてETOを実行し、37人の投資家から3,387,752ユーロ(約4億830万円)の資金調達に成功している。2019年3月には、ヨーロッパで最も有望なアーリーステージのブロックチェーン・スタートアップ10社に選ばれた。

同社は、「株式投資をより良く、流動的で、簡単に、ダイレクトに、そしてデジタルにする」とスローガンを掲げて、これまでの株式投資のあり方を変えようとしている。膨大な書類や仲介業者を排除し、たったひとつのインターフェースで直接取引したり情報を得たりするシステムを提供している。

ブロックチェーンを利用することでコストや時間をかけることなく、エクイティ・トークンをダイレクトに友人や家族、ビジネスパートナーに送ることも可能だ。もちろん、Neufundのエクイティ・トークンはパブリック・チェーンに記録され合法的に処理される。

また、暗号通貨取引所のBinanceやBlocktrade、Bitbay、マルタ証券取引所などとも提携しており、数回のクリックだけでより流動的に取引できる。しかも、最少10ユーロ(約1200円)から取引が可能だ。

参考:
取引所を超える取引所、物議をかもすBinance | MUFG Innovation Hub
ブロックチェーン開発者向けの学習プログラム「Binance X」とは何か | MUFG Innovation Hub

「Neufundはセキュリティ・トークン業界全体にとって大きな前進をもたらす。個人投資家の参入障壁を低くしながら、民間企業がブロックチェーンIPOを効果的に使用できることを証明している。Neufundは未来の証券取引所であり、111か国から11,000人のグローバルな投資家ベースを有し、依然、その数は増えている」と、NeufundのCEO兼共同ファウンダーのZoe Adamovicz氏は語っている。

Neufundのプラットフォームを利用している事例をいくつか見てみよう。

Greyp Bikes

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(画像出典:Greyp Bikesウェブサイト

記憶に新しいところでは、昨年、2019年12月に、電動モビリティ企業のGreyp Bikes社のETOに対し、世界の34ヶ国の1,017人の投資家から目標額の179%の金額を集めることに成功した。

the nu company

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(画像出典:the nu companyウェブサイト

ドイツのライプチヒ発祥のthe nu companyは、保存料や添加物のない健康的な食品を提供するとともに、地球への長期的なダメージを最小限にとどめる食生活を提案している企業だ。近日、公開の予定。

mySWOOOP

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(画像出典:mySWOOOPウェブサイト

mySWOOOPは、新品および中古の電子機器を売買するオムニチャネルのプラットフォームだ。リアルタイムで現在の市場価格を自動的に決定し、ユーザーにとって魅力的なマージンを保証している。こちらも、近日公開の予定。

パブリック・チェーンが実現する金融包摂

昨今、企業がパブリック・チェーンを活用し、時間とコストを抑えて資金調達する事例は増加傾向にある。今後、さらにブロックチェーン技術が進歩すれば、パブリック・チェーンでトークンを公開するIPOも増えるものと予想される。

Neufundの例を見ても明らかなように、ブロックチェーンをうまく活用することで株式市場はよりオープンになり、旧来のさまざまな手続きを不要とし、誰もがより簡易にマーケットに参加できるようになってきている。

とりわけ興味を引くのは、同社が、将来的には株式の他に債権や不動産などあらゆる種類の資産をトークン化して、直接取引できるようにすると表明していることだ。誰もが手軽なコストで金融サービスにアクセスできるという、まさに金融包摂の構築を目指している。

テクノロジーが開く未来は多くの障壁を取り払い、そのコミュニティに参加する者をダイレクトにつなぐ。そこに生まれる新たな価値こそがパブリック・チェーンの真の価値だろう。

(※為替レート:2020年3月29日現在)

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