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オンライン本人確認「eKYC」と金融機関認証APIで実現する顧客拡大

オンライン本人確認「eKYC」と金融機関認証APIで実現する顧客拡大

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2020/05/26

金融庁がフィンテックを活用したイノベーションを推進させる目的で2017年9月に設置した「FinTech実証実験ハブ」は、フィンテック企業や金融機関の懸念課題に対し、省庁が実証実験を支援するスキームだ。
その支援案件の1つとして、金融機関等が共同で顧客の本人確認手続きを行う仕組みが検討された。実証実験の概要は、いずれかの機関で本人確認済の顧客は、再度の本人確認が不要となるというものだ。
その中でクローズアップされているのが、「eKYC」だ。eKYCとは「electronic Know Your Customer」の略で、オンラインで完結する本人確認方法のことを言う。本稿では、そのeKYCについて紹介する。

オンライン本人確認「eKYC」とは何か?

「KYC」(Know Your Customer = 顧客を知る)は、金融業界では一般的に使われてきた言葉だ。文字通り、その顧客がどういう人物であるかを特定するという意味だが、その背景には「犯収法」がある。

「犯収法」とは「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」のことで、マネーロンダリングやテロ組織への資金供与の防止を目的とする。金融機関に対しては「取引時確認」「取引記録の保存」「疑わしい取引の届け出」などが義務付けられている。

参考:犯罪収益移転防止法の改正による銀行APIへの期待

金融業界はこの法律に則り銀行口座開設などで本人確認を行い、顧客の取引を監視することで犯罪行為を未然に防ぐよう努めている。

そして、そのKYCを電子的に実行するのがeKYCだ。eKYCでは、金融機関などが対面や書類の郵送などの物理的な本人確認の手続きの代わりにパソコンやスマートフォンを利用したオンライン完結の本人確認を行う。

新しく口座を開設し、金融サービスを利用しようとする顧客は、わざわざ窓口に行くことも煩わしい書類作成をすることもなくなり、サービスを利用できるまでの時間を大幅に短縮できる。

また、サービスを提供する事業者にとっても、スピーディーな手続きにより新規顧客獲得のチャンスを逃さない上、転送不要郵便を発送する手間などが不要になるため、事務コストを減らすことができる。まさに、サービスの利用者と提供者の双方にメリットをもたらす仕組みだ。

eKYCが一定の範囲で可能となったのは2018年11月の犯収法の改正による。金融庁は「オンラインで完結する自然人の本人特定事項の確認方法の追加」として、以下の4つの方法を規定している。

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(画像出典:金融庁,https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181130/01.pdf

このうち、「1.本人確認書類の画像+本人の容貌の画像送信(6条1項1号ホ)」と「2.ICチップ情報+顧客の容貌の画像送信(6条1項1号へ)」では、顧客がスマホカメラを使って自分で画像を撮り送信することで本人確認をする。

画像送信によるeKYC

画像送信によるeKYCでは、ウェブブラウザを使用して、サービスを提供する事業者のサイト上で行う方法と、スマートフォンにダウンロードしたアプリによって行う方法がある。金融庁の公表したガイドラインによると、いずれにおいても以下の要件を満たす必要がある。

  • 画像が加工されないこと
  • 顔写真や本人確認書類の写真が鮮明であること
  • 撮影直後に送信されたものであること
  • 書類の厚みを確認でき、撮影されたそれぞれが同一の書類であることを保証し、検証できること
  • 撮影時にランダムなポーズの要求などを行い、実物が撮影されたことを保証すること

画像送信によるeKYCは、大手金融機関だけではなく、例えばメルペイやLINE Payでも2019年4月に相次いで導入されている。

メルペイではeKYCに対応した「アプリでかんたん本人確認」を提供している。顔認証技術を活用し、顧客の顔の映像と身分証の写真が同一人物であり、かつ、顧客本人がその場で撮影していることをチェックしている。前述の「書類の厚み」や「ランダムなポーズ」とは何かについては、以下の動画がわかりやすい。

参考動画:
メルペイ「アプリでかんたん本人確認」の撮影方法の紹介【メルカリ公式】

LINEのアプリでも必要情報を入力し、身分証の撮影データをアップロードした後、画面の指示に従ってスマートフォンのカメラで身分証と自分の顔を撮影することで、送信された情報をもとにLINE Pay側で本人確認書類と照合し、最短で数分ほどで確認が完了する。

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(画像出典:LINEウェブサイト

それまでLINE Payでは、本人確認を行うためにはLINE Payから各金融機関のウェブサイトにページ移動して情報を入力する必要があり、手続きにかなりの時間を要していたが、eKYCの実用化によりユーザーにとって利用しやすいものになった。

こうした画像送信による本人確認を実現するのがAPIと呼ばれる技術だ。APIとは、プログラム同士が機能を共有するための仕様を指し、API技術の活用により、外部のデータなどを連携できる。以下にeKYCのAPIをいくつか紹介しよう。

LIQUID eKYC

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(画像出典:LIQUIDウェブサイト

LIQUID eKYCを開発提供している株式会社Liquidの主な事業領域は、生体情報、生体行動に特化した画像解析・ビックデータ解析だ。こうした技術的な裏付けをもって、精度の高い画像照合率で、本人確認をオンラインで完結している。

LIQUID eKYCは、金融機関、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者などの特定事業者へASPサービス(インターネット経由で提供するサービス)として提供されている。主な導入先としては住信SBIネット銀行やLINE証券の他、クレジットカードのクレディセゾン、株式投資型クラウドファンディングのFUNDINNO、不動産投資クラウドファンディングのCREALがあるが、オンラインショップでの後払い決済サービス「Paidy」とも提携している。

Digital KYC

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(画像出典:Digital KYCウェブサイト

前述のLINE Payが採用しているのが、NEC(日本電気株式会社)が提供しているDigital KYCだ。生体認証の標準規格「FIDO」に準拠し、本人の顔と身分証の顔画像を高い精度で認証する技術を提供することで、なりすまし対策もされている。

実は同社は1970年代から生体認証に取り組んでおり、現在までに、顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響の6つの生体認証技術を有している。これらの生体認証を「Bio-IDiom(バイオ イディオム)」と称して、さまざまなソリューションを提供しているが、Digital KYCもそのひとつだ。

LINE Payでは、キャッシュレス化の鍵を握る個人間送金を推進するためには、精度の高い認証システムを提供することで本人確認の手間を省き、ユーザーのストレスを解消する必要があると考えていた。Digital KYCが導入された理由はそこにある。

また、じぶん銀行はDigital KYCの導入によって、口座開設機能を搭載した「じぶん銀行スマートフォンアプリ」を提供している。このアプリによって、口座開設の申込みからキャッシュカード発送までの期間を最短3営業日に短縮、将来的にはキャッシュカード到着前からの口座利用開始や、画像による本人認証で振込や残高照会サービスの提供を目指すとしている。

次に海外の事例を挙げておこう。

onfido

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(画像出典:onfidoウェブサイト

2012年にイギリスで設立されたOnfido社は、世界の1,500以上の事業者にAIを活用した本人確認システムを提供しており、ロンドン、パリ、サンフランシスコ、ニューヨーク、リスボン、シンガポール、ニューデリーなどにオフィスを構える。

主なクライアントはカーシェアリングのZipcar、海外決済・外貨両替および送金サービスのRevolut、インターネットサービスプロバイダーのOrange UK、ブロックチェーンで分権的にIDを発行し管理するプラットフォームを提供するCivicなどで、ビットコインを扱う投資家のためのモバイル・バンキング・アプリを開発するModeとも提携関係にある。

なお、同社は2019年4月にSBIインベストメント、Salesforce Ventures、M12(旧Microsoft Ventures)などから5,000万ドル(約53億9,500万円)を調達している。

Veriff

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(画像出典:Veriffウェブサイト

エストニア発祥のVeriffも顔認証技術とAIによって本人確認を行う。世界中の190ヶ国以上の国が発行するIDドキュメントをリスト化しており、35ヶ国語をサポートしている。

導入先企業は、暗号通貨ウォレットのBlockchain.com、債権仲介プラットフォームのMintos、それと海外送金サービスのTransferWiseなどだ。ちなみにCEOのKaarel Kotkas氏は、TransferWiseの元社員であり、米ベンチャーキャピタルのY Combinatorの卒業生でもある。

金融機関認証を活用したeKYCのメリット

先ほど述べた、犯収法施行規則として定められている本人確認方法のひとつに「銀行等への照会(6条1項1号ト(1) )」がある。

これは、「免許証等本人確認書類の画像またはICチップ情報」と「銀行API等を利用した顧客情報の照会」を組み合わせることで行う本人確認で、本人確認書類のチェックに加えて、過去に銀行等の金融機関において本人確認済みであるという事実を利用して認証するものだ。この場合、容貌画像の送信は行わず、事業者側のアプリ等を通して銀行等に顧客情報を照会する。

既存の銀行口座にひもづけされた個人情報をもとに、銀行のAPIを使って本人確認する「金融機関認証」を活用したeKYCであり、金融機関が外部事業者にサービスを提供する格好だ。通常、銀行は口座開設の際には厳格な本人確認を行う。口座にひもづいた個人情報は銀行ならではの付加価値だ。

これまでも銀行口座を使っての本人確認は可能ではあったが、口座振替による連携をしておく必要があった。銀行の提供するAPIを使う場合、そのような手続きは必要なくなる。顧客は自分で画像をわざわざ撮らなくていいことに加えて、時間的ロスも少なくて済むことから顧客の獲得機会を逃さない。

2019年5月、三菱UFJ銀行がメガバンクの先陣を切って金融機関認証のeKYCに乗り出した。「本人確認サポートAPIサービス」と名付けられたこのサービスの対象となるのは、インターネットバンキングサービスである三菱UFJダイレクトの契約者で、その数1,800万強を数える。

同行はサービス開始当初、利用シーンとしては下図のようなインターネット証券会社の口座開設時の活用などを想定していた。

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(画像出典:MUFGウェブサイト

その狙いは的中し、マネックス証券への導入では、「顔撮影よりも金融機関認証の方が手続きに慣れている分、金融機関認証を選ぶケースが多い。その結果が申込み件数の増加に繋がった。APIを使う金融機関認証という選択肢を提供できたことが功を奏している(マネックス証券株式会社 システム開発部 企画・設計グループ 田村氏,下記参照)」と、着実に成果を上げている。

参考:
eKYC対応で先行するマネックス証券、銀行APIを使った金融機関認証導入で得た成果

eKYCの需要拡大で注目される金融機関認証

こと金融業に限らず、ウェブ上での取引があらゆるビジネスにおいて当たり前になる現代では、不正防止は常についてまわる課題であり、海外の事例を見ても活用できる領域は広い。

そのための事業者もあれば、APIの導入によって本人確認する事業者もあるが、大手金融機関の保有する膨大なデータベースを活用して新たな事業を立ち上げる事業者が現れるのも想像に難くない。

2020年5月7日には、NECが株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行などとマルチバンク本人確認プラットフォームの提供に合意した。

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(画像出典:NECウェブサイト

金融機関のAPI活用は国としても重要な施策としており、今後多くの銀行がAPIの開発、公開に動く可能性があり、金融機関認証のさらなる拡大が見込まれる。

(※為替レート:2020年3月28日現在)

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