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第4期「MUFG Digital アクセラレータ」実施レポート|プログラムを通じて自社ソリューションの拡大を目指した上海橙感信息科技有限公司(チェンガン)(参加時名:Wabi Project)

第4期「MUFG Digital アクセラレータ」実施レポート|プログラムを通じて自社ソリューションの拡大を目指した上海橙感信息科技有限公司(チェンガン)(参加時名:Wabi Project)

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2020/05/19

第4期プログラムに参加した上海橙感信息科技有限公司(以下、チェンガン)※英語表記:Taeltech(当時はプロジェクト名「Wabi Project」として参加)。日本ビジネス開発責任者の高山靖弘氏にインタビューを実施した。同社が手がけるサービスの概要と、プログラムを通じて得たものについて紹介する。

MUFG Digital アクセラレータについて

「MUFG Digital アクセラレータ」は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)が2015年に設立した邦銀初のスタートアップアクセラレータ・プログラムだ。MUFGが総力をあげてベンチャー・スタートアップを支援するこのプログラムは、参加者にとって数多くのメリットがある。プログラムを通じて受けられる具体的な支援は、事業プランのブラッシュアップやプロトタイプの構築支援、事業プランの方向性に合わせたパートナー選定、アライアンス提携など、多岐にわたる。2019年3月から7月にかけて実施され、8社が参加した第4期のキーメッセージは「本気と本気は、響き合う」だった。

ホンモノを証明するという価値

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チェンガンは、小売店舗・ECサイトで販売される商品が偽造品ではないことを証明する「ホンモノ保証」というサービスを手がけている。海外、特に中国では日本製の商品が人気だが、それに比例して偽物・偽造品も多い。同社のサービスは主に高価格帯の食料品や生活用品など偽物であることで人体に悪影響を及ぼす商品を中心とし、RFIDチップとブロックチェーン技術によってホンモノであることを保証する(以下、「ホンモノ保証」)。同社の「ホンモノ保証」を使えば、一般の店頭に並んでいる商品が本物かどうか、消費者自身が確認できる。また、消費者にとってのメリットはそれだけではなく、RFIDチップをスキャンすると、「WaBi」という仮想通貨によってポイントが付与されるのだ。同社のサービスは安心感とお得感の2つの要素で、消費者のモチベーションを喚起する。

このように、消費者にとって魅力的な仕掛けを持つ同社の「ホンモノ保証」。ユーザー数は数万人規模になってきたという。また、商品としては日本・オーストラリア・ニュージーランドを原産国とする食品・消耗品に使われているそうだ。同社が世の中に広く浸透しているQRコードではなく、近年普及し始めたRFIDを使うのは、QRコードは改ざんできるというデメリットがあるため。RFIDは画像認証ではなく、電波によって情報を読み取る。さらにチェンガンの「ホンモノ保証」はブロックチェーンによって情報を記録することで、RFIDタグが付いた商品の開封確認ができる。つまり、パッケージや容器の使い回しや中身の入れ替えを防ぐことで偽造品の製造・流通を回避する仕組みだ。

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「ホンモノ保証」が解決する課題

高山氏は、プログラムの最終発表会にあたるDEMO DAYにて、次のようなスピーチを行った。

――「2008年、中国では、偽物の粉ミルクが流通したことで、数十万人の赤ちゃんが腎臓結石を発症するなどの健康被害を受けた。10年経った現在でも、人体に害を及ぼすような偽物商品が出回っている」

こうした本来食してはならないものを口にすることで、人体に悪影響を及ぼす事故・事件は後を絶たない。同社の「ホンモノ保証」はこのような偽造品に対して、製造元が立ち向かう手段になるとともに、消費者が自分の身を守ることができる画期的なツールになるだろう。

チェンガンがアクセラレータで得たもの

チェンガンは、「ホンモノ保証」が実用化され、すでにユーザーからの支持を得ている段階でプログラムに参加した。MUFG Digitalアクセラレータに何を求めたのかという質問に対し、高山氏は「新たな取引先の獲得」と答えた。特に、大手メーカーとのつながりが欲しかったという。まだスタートしたばかりのサービスだったがゆえに、大手メーカーとの実績を作り、自社の信用性を高めることが必要だったが、自社単独で提案するよりも、MUFGを経由したほうが効率的に目的を達成できると考えたという。

プログラムは取引先の獲得として機能したか

「取引先の獲得」を目指し、MUFG Digitalアクセラレータに参加したチェンガン。その成果について、高山氏は「結果的に国内・海外含め10社近くのつながりを持てた」という。4ヶ月の期間中、MUFGから紹介された企業に加えて間接的な広がりを見せたルートもあり、多くの企業と接点が生まれた。なかにはDEMO DAY後に状況が進展した企業もあるとのこと。DEMO DAYでのプレゼンは来場者やその関係者に、自社と自社サービスをアピールする場として機能したと振り返った。

なかでも、「合成皮革・産業ゴムの大手メーカーと、そのパッケージを作成している会社の紹介につながったのは大きかった」と高山氏。プログラム中、新規取引に向けた大手メーカーとの打ち合わせのなかで、製造元に「ホンモノ保証」を導入してもらうための障害を実感できたのだという。製造工程をRFIDに対応させるための単価が高い(QRコードの約2倍といわれる)ということはもともと認識していた。しかし、メーカーの実際の声から聞こえてきたのは、むしろオペレーション面での課題だった。

たとえば、すでに同社の「ホンモノ保証」が採用されたとあるニュージーランド産のサクランボは、パッケージに1つ1つ手作業でRFIDタグを貼り付けている。しかし、生産量が膨大な大手メーカーの場合、それぞれの商品に対して手作業で対応するということは現実的ではない。ではどうするのかと検討したことで、この問題を解決するためには箱自体を変える必要があるという結論に至った。結果的に同社は印刷会社と協業し、スマートパッケージの開発に乗り出したのだという。「このような新たな取り組みの起点となったという点で、今回のプログラムに参加してよかった」と高山氏は、MUFG Digitalアクセラレータについての感想と、得た成果をまとめた。

チェンガンのこれから

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MUFG Digitalアクセラレータを終えたチェンガンは今後何を目指すのか。同社はこれから「ホンモノ保証」のサービス展開を加速させるとともに、事業の多角化を図っていく計画だという。

「ホンモノ保証」のさらなる展開

同社が今進めている展開の1つに、ちょうど5月8日に発表された、小田急百貨店との連携がある。渡航前と帰国後の中国人に対するプレ・ポストインバウンド施策を見据えて、5月13日からまずは中国の消費者向けに越境ECサービスを開始した。現段階では新型コロナウィルスの影響で人の動きが停滞しているが、状況が収束次第、小田急百貨店と提携して海外からやってくる富裕層のインバウンドニーズに、「ホンモノ保証」をむすびつけて、帰国後も百貨店の商品の購入を促す狙いだ。また、将来的には「ホンモノ保証」を中国で使用したユーザーが獲得できるポイントの使用先として、小田急百貨店の店内やその他の店舗やサービスについても、さらなる拡大を目指している。現在は自社のECサイトのみで使用できるポイントを、将来的には街の小売店やエステ、サロンなどでも使えるようにしたいと高山氏は語った。

(参考: 小田急百貨店、WeChatミニプログラム「橙感(チェンガン)」を通じた中国向け越境ECを開始

マーケティングサービスの拡充

今回のインタビューでは、「ホンモノ保証」のサービスはそれ自体がゴールではないという話も聞くことができた。同社がもともと目指していたのは、「ホンモノ保証」を通じて取得できるデータを、BtoB的側面で活用することだという。具体的には、RFIDチップを読み取る際にマーケティングデータを収集し、商品の製造元であるメーカーに販売するという展開を見据える。また、消費者からより詳細なデータを引き出すためのアンケート機能についても、今後新たに対応していく予定だという。さらに、A/Bテスト(たとえば、「10%オフ」と「3個を2個分の価格で購入できる」という2つの特典はどちらのほうが効果的なのかといった検証をするもの)の実装も計画している。ポイント付与という消費者にとってのメリットにとどまらず、今後は収集したデータを活用し、メーカーにとってもメリットが大きなサービスへと発展していく。同社が最終的に目指すのは、オンライン・オフライン横断型プラットフォームとしての展開だという。これまでは特定のプラットフォームでしか取得・活用できなかったユーザーデータを、オンライン・オフライン問わず様々なシーンで集め、提供することができれば、それは他のサービスにはない強みとなるだろう。高山氏はマーケティングサービスを拡充することによって、「オンラインのものを、オフラインを含めた全商品・全販路で適応させたい」と語った。

スマートパッケージの開発

合成皮革・産業ゴムの大手メーカーと接点を持ったことで、必要性を実感したというスマートパッケージ。同社は今後、このスマートパッケージを通じて、商品の生産者に付加価値を提供していきたいと考えている。具体的な機能としては、スマートパッケージを導入することで、本物であることを証明することに加え、商品情報やストーリー、関連商品などを消費者に伝えられるようになる。パッケージが生産者と消費者をつなげて、離れた場所にいながらコミュニケーションをとる橋渡しの役割を担っていく。現在進行中のプロジェクトとしては、ある酒蔵の日本酒を輸出する際に、「ホンモノ保証」のアプリを使用することで、杜氏の酒造りへの思いやその酒が歩んできた歴史を知ることができるようにするものがある。大手印刷会社やパッケージ制作会社と協業して開発を進めている最中だという。

今回のチェンガンへのインタビューを通じて感じたのは、MUFG Digitalアクセラレータが幅広いニーズを満たすプログラムだということだ。過去の実績を見ても、同社のようにすでにプロダクトを持っている企業もあれば、法人化していない個人チームでの参加もある。これからなにかを成し遂げたいという思いがあるなら、組織・チームの状態にとらわれず、MUFG Digitalアクセラレータにエントリーしてみてはいかがだろうか。(第5期プログラムは新型コロナウィルス感染症拡大に伴い延期が決定、詳細はアクセラレータHPご参照)

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