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スタートアップのエグジット戦略であるIPO・M&A・バイアウトの動向と2019年の国内事例を紹介

スタートアップのエグジット戦略であるIPO・M&A・バイアウトの動向と2019年の国内事例を紹介

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2020/02/17

起業に際しては、事業目的を設定し、達成のためのステップを考えていくものだ。しかし、最初から事業の成功を前提としてIPOという大きな目標を立てたり、M&Aなどを見据えて事業の立ち上げや展開を行ったりする起業家も増えてきている。本稿では、IPO・M&A・バイアウトという起業家のエグジット戦略について解説していく。

VB(ベンチャービジネス)の主なエグジット

これまで、日本では自社株式を市場に新規公開する「IPO」がエグジットの主流だったが、最近ではM&Aを利用して、創業者以外の企業や人物に自社株式を売却する手法も増えている。

海外ではM&Aが主流となっており、MRI(三菱総合研究所)が「ベンチャー白書2018」をもとに作成した資料によると、米国では9割近くのVBやスタートアップがエグジットの手段としてM&Aを利用している。

それでは、それぞれの手法を詳しく見ていこう。

IPO

IPOとは株式公開、つまり、未上場の会社が株式市場に上場し、市場での売買を可能にすることだ。日本では現在もエグジットの主流であり、前述の「ベンチャー白書2018」によると65%を占めている(2017年度)。

M&A

M&Aは海外では主流のエグジットだ。前述の通り、米国ではベンチャー投資先の9割以上がM&Aでエグジットを行っている(2017年)。

M&Aとは企業の合併や買収の総称で、「Merger and Acquisition」の頭文字をとってM&Aと呼ばれている。M&Aにはさまざまな手法があるので、エグジットの方法としてM&Aを検討する時は、目的を明確にする必要がある。

資金調達したいのか、従業員の雇用維持を優先するのか、将来の事業展開につなげたいのか、大手企業とのパイプを入手するのかなど、自社の目的にあったM&Aを行う必要がある。それでは、代表的なM&Aの手法について見ていこう。

「株式譲渡」

株式会社では、株式を全て売却することにより、会社の経営権を譲渡することが可能だ。株式譲渡はM&Aでよく用いられる。

株式譲渡は売り手と買い手の当事者間の合意で成立する。売り先の選定や譲渡価格の設定などもオーナー(株主)の意向を尊重しながら進めていくことが可能だ。

また、保有株式の一部のみを譲渡することも可能なので、保有株式を段階的に譲渡したり、譲渡先を検討したりするなど、オーナーの意向に応じた柔軟な設計を行うことができる。

「合併」

合併とは、一社あるいは複数の会社が、他の会社に権利義務のすべてを承継させることだ。合併には、合併する当事者となる会社が解散して新しい会社を設立する「新設合併」と、当事者となる会社の1社が存続して、その他の会社は存続する会社に吸収される「吸収合併」の2種類がある。

吸収される会社の株主は、新設会社もしくは吸収する会社の株式を取得するのが通常だが、現金交付も認められているので、エグジット型のM&Aとしても利用できる。

「会社分割」

会社分割とは、会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、他の会社に包括的に承継させるM&A手法で、「新設分割」と「吸収分割」の2つに分類できる。

「新設分割」は、会社の一部事業を切り離して新しい会社を設立する。一方、会社の一事業を切り離して既存の会社に吸収させるのが「吸収分割」だ。

「新設分割」をした後に新会社の株式を売却したり、「吸収分割」において株式の代わりに現金を交付する形で行ったりすることによって、エグジット型のM&Aとして利用することも可能だ。

「株式交換」

株式交換とは、自社の株式を対価として他社の発行済株式すべてを取得する手法を言う。株式交換後には、対象会社に対して100%の完全支配関係が生じる。

取得する側の企業は、自ら資金を準備しないで企業を買収することができる一方、取得される側の株主は株主総会で反対して、当事会社に公正な価格での株式買取請求を行うことも可能だ。

取得する側の企業は、株式に流動性がある上場企業の場合が多く、取得される側の企業にとっても換金が容易な資産を取得できるという点で、エグジットの1つの手法として使われている。

バイアウト

バイアウトとは、経営権の獲得を目的とした企業買収のことで、通常、発行済株式の半数以上を買収することで企業の経営権を得る手法だ。M&Aには、株式取得や会社分割、合併などさまざまな手段があるが、「バイアウト」もM&Aの一種だ。

ただし、日本ではスタートアップの創業者が事業をセルアウト(売却)する意味でバイアウト(買収)という言葉を使うことがあるが、それは前項のM&Aの一種なので注意が必要だ。ここでは、一般に投資業界で使われるバイアウトについて説明する。

バイアウトは、誰が買収するかによって次の3つに分類できる。

「MBO(マネジメント・バイアウト)」

MBOとは、会社の経営陣が株主から自社株式を譲り受けたり、事業部門統括者が事業部門を事業譲渡されたりすることによって、オーナー経営者として独立することだ。

MBOは、買収前からの事業内容、経営者、従業員などの体制を継続しやすいという利点があり、「友好的M&A」とも言われている。日本の企業風土にも順応しやすい手法と言えるだろう。

「EBO(エンプロイー・バイアウト)」

EBOは、会社の経営陣ではなく、従業員が株式等を取得し、事業を買収したり経営権を取得したりする取引のことだ。一般に、中小企業などで後継者がいない場合に利用されている。

「LBO(レバレッジド・バイアウト)」

LBOでは、買収対象企業の資産を担保にして資金を借りることができる。米国では1970~1980年代にLBOを利用した敵対的買収がブームになった。日本では、2005年に起こったライブドアのニッポン放送買収の際に利用されたことで有名だ(ただし、その買収は失敗した)。

IPOではなくM&Aが増えている理由

最近は、日本でもIPOではなくM&Aが増えていると言われるが、実際はどうなのか、現状分析してみよう。

ベンチャービジネス(VB)と大・中堅企業とのコラボレーションの状況

2018年のベンチャー白書では、大企業・中堅企業とコラボレーションしているVBは56.8%を占め、将来行いたいと回答した12.3%と合わせると、70%近いVBが積極的であることがわかる。

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(画像出典:ベンチャー白書2018

しかし、VBの47.1%がIPO(新規公開)を考えている一方で、M&Aを検討しているのは7.8%に留まる。特にベンチャーキャピタル(VC)の出資を受けているVBでは、72.6%がIPOをしようと考えている。日本では、まだM&AよりもIPOをメインに考えている起業家が多いのが現状だ。

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(画像出典:ベンチャー白書2018

日米におけるIPOとM&Aの比較

日本と米国では、そもそもベンチャー企業数に大きな差があるが、IPOとM&Aの比率も大きく違う。日本では6~7割がIPOなのに対し、米国では9割がM&Aによるエグジットである。

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(画像出典:中小企業白書2018年

ただし、日本でもM&Aの占める割合は以下のように増加傾向にある。

・2014年 24%
・2015年 31%
・2016年 42%

最近では、大企業の資金力や資産を生かし、成長速度を上げることを目的に、大企業の傘下入りを選ぶベンチャーやスタートアップ企業が増えていることがその理由だ。

日本のM&A助言のレコフによると、2017年の国内スタートアップ企業の買収件数は49件で、2016年の2.5倍と急伸した。スタートアップに対するM&Aが増えたのは、大企業が「アクハイヤー」に動いたことが大きい。

アクハイヤーとは、優秀な人材を獲得することを目的とした企業買収のことだ。「acquire(買収する)」と、「hire(雇用する)」を掛け合わせた造語で、有能な経営陣や高度な専門性をもつ技術者を有して急成長しているスタートアップ企業などが対象とされることが多い。

米国では、米マイクロソフトが2016年に買収した米リンクトインの幹部をCTO(最高技術責任者)として起用するなど、アクハイヤーも定着している。日本の起業家でも、大企業に移り、新規事業の立ち上げなど重責を担う人材が増えていくことが予想される。

ダイレクトリスティング(直接上場)が増える米国市場

ここで、最近話題となっているダイレクトリスティング(直接上場)についても解説しておこう。

通常、株式を上場する際には資金調達のために新株を発行するが、直接上場とは、上場時に新株を発行せずに、既存の株式だけを上場する手法だ。

従来のIPOでは、証券会社は新株発行の手続きに加え、既存株式を引き受けて販売する。投資家のニーズを見極めるブックビルディングを行い、公開価格が決定する。こうした手続きを依頼するため証券会社に多額の手数料がかかる上、一定期間、株式売却を制限するロックアップ期間も設定される。

しかし直接上場の場合、新株を発行しないため、新株発行手続きやブックビルディングの必要がなく、証券会社に支払う手数料を抑えられる。また、既存株主に対してロックアップがないので、市場で株式をすぐに売却できるというメリットがあるのだ。

今年の上場で注目されたスウェーデンのスポティファイ・テクノロジー(Spotify)や、米スラック・テクノロジーズ(Slack)は新株を発行せず、ダイレクトリスティングを選択した。上場前に、すでに十分な資金を調達していたからだ。

また、ネット企業は大がかりな投資が不要で、多額の資金を必要としないケースも見られる。

企業の上場の目的は、知名度の向上や人材の採用など多様化しており、必ずしも資金調達が目的とはなっていないケースもあるという事例であろう。

2019年スタートアップM&A事例

2018年の中小企業白書によると、M&Aの件数は2017年に3,000件を超え、過去最高となっている。あくまでも公表されている数字においてだが、日本でもM&Aが活発化していると言えるだろう。

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(画像出典:2018年 中小企業白書

また、中小企業のM&Aも増えている。公表されていないケースも多いが、東証一部上場の3社(日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズ)の成約件数を集計したものが下図である。

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(画像出典:2018年 中小企業白書

3社による中小企業のM&A成約件数は、2012年の157件から2017年の526件と3倍超に増えている。中小企業のM&Aにおいては、仲介機関を介さないケースもあるが、増加傾向であることが分かる。

それでは、2019年の国内スタートアップ企業のM&A事例を見ていこう。

株式会社メイション

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(画像出典:メイションウェブサイト

・買収企業:株式会社パートナーエージェント
・売却企業:株式会社メイション
・売上:36億5,200万円
・設立:2003年6月
・事業内容:ライフデザイン事業、イベント事業、メディア事業
・買収金額:15億円
・買収後持ち株比率:100%

2019年1月21日、パートナーエージェントは、連結子会社であるライジングが結婚式のプロデュースサービス「スマ婚」などを展開しているメイションの株式を取得し、グループに迎え入れることを発表した。

メイションは、ブライダル業界で新たな結婚式スタイルを創造し続け、適正価格で提供できる挙式披露宴「スマ婚」を立ち上げ、全国展開している。

パートナーエージェントは、中核事業である結婚相談事業とブライダル領域は相乗効果が高く、婚活から成婚後までのサービスを提供することで、顧客利益の最大化が図れることを見込み、今回の買収を行った。

株式会社アイドラ

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(画像出典:アイテック(アイドラ親会社)ウェブサイト)

・買収企業:PKSHA Technology
・売却企業:株式会社アイドラ
・売上:44億5,800万円
・設立:2012年8月
・事業内容:駐車場機器の製造販売等
・買収金額:28億200万円
・買収後持ち株比率:100%

PKSHA Technologyは、6月19日に株式会社アイドラの全株式を取得することを発表した。

アイドラは駐車場機器の製造・販売と駐車場運営受託を通じて、全国に10万台以上のIoT機器を設置し、各種データをクラウドで蓄積・管理している。PKSHA は同社を傘下に収め、将来期待されるMaaS(Mobility as a service:サービスとしての移動手段)領域での取り組みを強化することが目的だ。

ラクサス・テクノロジーズ

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(画像出典:ラクサス・テクノロジーズウェブサイト)

・買収企業:株式会社ワールド
・売却企業:ラクサス・テクノロジーズ株式会社
・売上:13億7,900万円
・設立:2006年8月
・事業内容:サブスク型ブランドバッグレンタル
・買収金額:43億1,200万円
・買収後持ち株比率:163%

ワールドは2019年10月25日、ブランドバッグのサブスクリプションサービス「ラクサス」を展開するラクサス・テクノロジーズを約43億円で子会社化した。100億円規模の資金を支援する他、ワールドの顧客をラクサスに誘導して会員基盤の強化を図り、5年後には150億円の売上高を目指している。

まとめ

今回は、スタートアップ、ベンチャー企業のエグジットについて解説した。あらためて、エグジットには主に次の3つがある。

・IPO
・M&A
・バイアウト

ただし、上述の通り、日本のスタートアップ業界で言う「バイアウト」は、創業者が事業をセルアウト(売却)することを意味しているので、本来はM&Aの一種だ。

日本ではいまだIPOが主流だが、事業を売却して大企業の傘下に入るスタートアップも増加傾向にある。米国のスタートアップ投資の資金回収にあたる出口戦略の9割以上がM&Aで、アクハイヤーも定着しており、今後、日本でもどのような取組や事例が出てくるか、その動向は、引き続き、注目していく必要がありそうだ。

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