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意外と知られていないスタートアップの共同創業者達~互いに補い合うファウンダー達に見るスタートアップ成功の鍵

意外と知られていないスタートアップの共同創業者達~互いに補い合うファウンダー達に見るスタートアップ成功の鍵

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2020/01/15

成功した企業の裏に共同創業者の姿

世界のスタートアップの中でも、CEOが一人で築き上げた企業が成功するという事例は思いの外少ない。例えカリスマ経営者がいたとしても、それを支える人材の助けがなければ、事業を成功に導くことが難しいことを示している。

スタートアップにとっては「何をやるか」と同様、もしくはそれ以上に、「誰とやるか」がその成否を分けるとよく言われる。事業を成功させるために必要なのは、ただ気の合う仲間ではなく、事業に込められた理念と情熱を共有し、互いに補完し合える共同創業者の存在だ。

ソニーが盛田昭夫氏と井深大氏という二人の創業者によって創業されたことはよく知られている。天才技術者であった井深大氏は国民の生活を豊かで便利なものにすることを理念に置き、13歳年下の盛田昭夫氏はトランジスタラジオやウォークマンといった革新的な製品を次々と世界に売り出した。この二人のように、それぞれの得意分野を活かしたコンビネーションが企業を成長させていく。

今回は、世界のユニコーン、そして一流IT企業を築き上げたファウンダーたちの中から、意外と知られていない共同創業者の存在を紹介しよう。

Square ── Twitter創業者を支えたもう一人の職人

Twitterの共同創業者として知られるジャック・ドーシー氏は、2006年にTwitterの前身にあたるObvious社を立ち上げた。そして、Twitterが軌道に乗った後にドーシー氏が取り組んだプロジェクトが、スマートフォンをクレジットカードの決済端末に利用するサービスのSquareだ。

モバイル端末のオーディオジャック(イヤホンジャック)にカードリーダーを差し込むことで決済を可能にするSquareのデバイスは、Twitterのファウンダーが仕掛けた新たな一手として注目を集めた。Squareはその後、非接触式カードにも対応した新たな端末を扱っている他、暗号通貨事業にも参入し、同社のアプリを通してビットコインの販売を行なっている。

Square誕生のきっかけは、ジャック・ドーシー氏ではなく、その共同創業者であるジム・マッケルビー氏だ。IBMで従事した経験もあるプログラマーである一方、ガラス職人としても活動していたマッケルビー氏は、ある時、自身のガラス工房で2,000ドル(約22万円)の価値があるガラス製の蛇口を製作した。

だが問題は、この時マッケルビー氏がクレジットカードでの支払いを受け付けるデバイスを持っていないことだった。マッケルビー氏の工房を訪れた女性客がその蛇口を買おうとしたが、彼女の持っていたアメリカンエキスプレスのカードで決済ができず、結果取引は成立しなかった。

売れる可能性のある商品が、決済の術を持たないために売ることができない――ジム・マッケルビー氏がこの課題を相談したのが、ちょうどTwitterでの業務から離れていた旧友のジャック・ドーシー氏だった。不便を解決するのがスタートアップの本領だ。そこにビジネスチャンスがあると見た二人は、わずか1ヶ月でプロトタイプを作り上げる。

ソフトウェアを利用したクレジットカードの読み込みを提案したジャック・ドーシー氏に対して、ジム・マッケルビー氏はハードウェアとしてのプロダクトにこだわった。結果、Twitterを作り上げたドーシー氏がソフトウェアを開発し、プログラマーのマッケルビー氏がクレジットカードを読み込むためのハードウェアを生み出した。

試作品を完成させた後、ジム・マッケルビー氏は中国に移住する。量産モデルを作り出すためには中国の企業と組む必要があったからだ。職人的なこだわりと、必要とあればすぐさま行動に移すマッケルビー氏のスピード感が功を奏し、Squareは創業からわずか6年後の2015年にIPOを果たしている。今では世界的なフィンテック企業の一つだ。

2019年11月現在、ジャック・ドーシー氏はSquareのCEOとして、ジム・マッケルビー氏は取締役として同社に留まっている。マッケルビー氏は2013年に立ち上げた非営利組織LaunchCodeで代表を務め、才能あるプログラマーたちを業界トップの企業に斡旋する事業に注力している。その傍で、2017年からはセントルイス連邦準備銀行の取締役も務めており、一流フィンテック企業を生み出した才覚をいかんなく発揮している。ガラス職人でもあるマッケルビー氏が2002年に設立したガラス工房のThird Degree Glass Factoryは、現在もセントルイスで営業中だ。

Squareの事例は、ソフトウェアとハードウェアという異なる領域でキャリアを積んできた共同創業者が、互いにカバーし合うことで新しい価値が生まれることを示している。

Grab ── CEOとCOOのコンビネーション

東南アジア発のライドシェア(オンライン配車サービス)スタートアップで、評価額が100億ドルを超えるメガユニコーンとなったシンガポールのGrabは、CEOのアンソニー・タン氏とCOOのタン・フーイ・リン氏の二人によって設立された。

共にマレーシア生まれでハーバード・ビジネススクールに通っていた二人は、同校で構想した戦略を元に、マレーシアに戻ってGrabを起ち上げた。2012年にスタートしたGrabは、日本のソフトバンクグループやトヨタ自動車など、アジアの名だたる企業が出資する巨大ユニコーンへと瞬く間に成長した。

アンソニー・タン氏は、CEOとして公の場でスピーチしたり、メディアで著名なビジネスリーダーたちと対談したりすることも多い。Grabが今ほど名を知られていない頃から、地元の労働組合との交渉や地域コミュニティとの対話を通して、ライドシェアという顧客接点に強みを持つスーパーアプリを有するプラットフォーマーとしての全く新しいビジネスモデルを創造してきた。

一方で、COOのタン・フーイ・リン氏は、最高執行責任者として社内の業務をまとめる役割を担ってきた。CEOのアンソニー・タン氏はマーケティングと資金調達において優れた能力を持っているが、その力が発揮できるのは社内における実務が滞らずに遂行されてこそだろう。リン氏の堅実な統括能力と、タン氏の華々しいカリスマ性――リン氏が「陰と陽」と形容するほど全く違う個性を持つ二人がいてこそ、Grabの成長があると言える。

この共同創業者たちがどのようにしてGrabを東南アジア初のユニコーン企業に育て上げたかについては、以下の記事に詳しい。

Grabはいかにしてメガユニコーンになり得たのか~ライドシェアからフィンテックまで展開するその戦略とは

Averon ── COOが顔役に

CEOが表舞台に立ち、COOが内部の指揮を担当するというGrabの逆パターンとも言えるのが、2015年にアメリカで設立されたコンピュータセキュリティ企業、Averonの共同創業者コンビだ。Averonはブロックチェーンを用いたサイバーセキュリティ・プラットフォームのDAA(直接自立検証システム)を2018年に発表するなど、設立間もないにもかかわらず業界をリードする企業として名高い。

Averonの共同創業者のひとりは、これまでに複数のテクノロジー企業を起ち上げ、成功に導いてきたウェンデル・ブラウン氏だ。ブラウン氏は、シリコンバレーのエンジェル投資家としてもよく知られている。

そしてもうひとりはハーバード・ビジネススクール出身のレア・タルノフスキ氏だ。タルノフスキ氏は、Averonの共同創設者としてCOOの座につくまでは、米Morgan StanleyやノルウェーのNorthzoneなど投資の世界でキャリアを積んできた。Northzoneではインベストメント・ディレクターとしてイギリスのArtfinder、デンマークのTrust Pilot、後にPaypalが22億ドル(約2,400億円)で買収したスウェーデンのiZettleなど、ヨーロッパのスタートアップへの投資をリードしてきた。

GrabのCOOタン・フーイ・リン氏が裏方に徹していたのに対し、AveronのCOOレア・タルノフスキ氏は積極的にイベントやメディアの前に現れる。投資家でもあるCEOのウェンデル・ブラウン氏のメディアへの露出は最小限にとどまり、サイバーセキュリティの重要性やAveronの取り組みを積極的に発信するのは専らタルノフスキ氏の役割だ。

また、レア・タルノフスキ氏は、IT界の女性人材の育成に熱心に取り組んでおり、女性ビジネスリーダーとしてインタビューを受けることも多い。どのような場でも明快かつフレンドリーに、インタビュアーの質問を褒めながら話をする彼女の姿からは、飛び抜けたコミュニケーション能力の高さがうかがえる。

当然ながら最高執行責任者であるCOOは、企業全体の理念や重点を置いているポイント、強みや魅力を理解している立場でもあるが、どのような立場にあったとしても、共同創業者がそれぞれの適正に基づいて役割を分担することは重要だ。

Zuora ── アイデアを聞く姿勢

サブスクリプションモデルを採用する企業向けにSaaSアプリケーションを提供する米Zuoraは、2007年に創業され、2018年3月にIPOを果たしている。今ではBoxやHBO、Fordなどにもサービスを提供する大手企業だ。

ZuoraのファウンダーでありCEOでもあるティエン・ツォ氏は、2007年に同社を創業してから10年以上一貫してCEOの座に就いている。ゲイブ・ワイザート氏との共著『サブスクリプション──「顧客の成功」が収益を生む新時代のビジネスモデル』(ダイヤモンド社)は日本語訳も発売されており、ツォ氏はまさにZuoraの顔と言える。IPO時にニューヨーク証券取引所でオープニングベルを鳴らす同氏の姿はメディアでも大きく取り上げられた。

だが、ティエン・ツォ氏もまた、たった一人でZuoraを立ち上げたわけではない。Zuoraの創業前、ツォ氏は米Salesforce.comの黎明期のメンバーだった。ここでツォ氏は、後にZuoraの共同創業者となるK・V・ラオ氏とチェン・ゾウ氏に出会う。特にZuoraの立ち上げに大きなヒントを与えたのが、現在は前述のAveronのアドバイザーも務めるラオ氏だった。

Salesforce.comの創業者であるマーク・ベニオフ氏も交えたこのミーティングで、ラオ氏がある重要な提案を行った。ラオ氏は自社で請求システムを構築することのコストの高さに着目し、請求業務を代行するビジネスの可能性に言及したのだ。彼らはその後も数ヶ月間にわたって議論を続けたが、この際、ラオ氏はサブスクリプション課金に特化したSaaS企業を提案している。

一方で、ツォ氏はSaaS企業だけでなく、あらゆる業界のサブスクリプションビジネスに対応するビジネスモデルを構築できると考えた。現在では自動車や飲食店など、さまざまな業界にサブスクリプションモデルが普及しており、Zuoraはそれらの企業に対して料金の徴収システムを含むサブスクリプションの運用管理サービスを提供している。

ツォ氏の予測は正しかったと言えるが、もしK・V・ラオ氏の問題提起と提案がなければZuoraは誕生しなかったかもしれない。ラオ氏はZuoraの最高戦略責任者として同社を成功に導いた後、2012年に意思決定科学(Decision Science)によってセールスとマーケティングを改善するスタートアップ企業であるAvisoを立ち上げている。実は、ラオ氏はNASAのロケット科学者としてキャリアをスタートさせた理論派だ。ラオ氏のロジックを、後にCEOとなるツォ氏がより広い視野で昇華させた結果が現在のZuoraの姿だと言える。

現代では、CEOが自らのアイデアで事業を率いて成功する企業ばかりではない。Zuoraの事例は、共同創業者が互いの意見に耳を傾け、アイデアを出し合い、構想を練り上げていくことの大切さが分かるエピソードだ。

Slack ── 共同創業者は意外なところに

2019年6月にIPOを果たした米Slackは、スチュワート・バターフィールド氏、カル・ヘンダーソン氏、エリック・コステロ氏、セルゲイ・ムーラチョフ氏の四人によって、2009年に創業された。CEOのスチュワート・バターフィールド氏は、Slackの代表として数多くのイベントや製品説明会に登壇し、講演を行なっている。同氏は、写真共有サイトFlickrを生み出したLudicorpの創業者としても知られる実業家だ。

Slackはビジネス向けのチャットツールを提供しており、日次アクティブユーザーは1,200万人以上、有料プランを利用する企業数は10万社以上にのぼる。Slackは元々、スチュワート・バターフィールド氏が社内向けに開発したコミュニケーションツールが原型になったというのは有名な話だ。

四人の共同創業者の内、CEOのスチュワート・バターフィールド氏と共に、今でも経営陣の一人として同社に留まっているのがCTOを務めるカル・ヘンダーソン氏だ。同氏は、Flickrのエンジニアリングチームを築き上げたことでも知られている。つまり、ヘンダーソン氏はSlack設立前からバターフィールド氏の下で敏腕プログラマーとして活躍してきた人物なのだ。

バーミンガムシティ大学でコンピューターサイエンスを学び、オープンソースのコミュニティで積極的な活動を続けていたヘンダーソン氏がスチュワート・バターフィールド氏のLudicorpで働き始めたのは2003年だ。LudicorpはGame Neverendingというオンラインゲームを開発する会社だった。ヘンダーソン氏は当時、このゲームのファンサイトを運営する熱心なブロガーであり、プログラマーだった。

そのカル・ヘンダーソン氏は、なんとLudicorpのEメールサーバーに侵入し、自分を社内のメーリングリストに追加した。その後、自ら名乗り出て能力の高さを証明したヘンダーソン氏を、スチュワート・バターフィールド氏はLudicorpに雇い入れた。

奇妙な出会いだが、このスチュワート・バターフィールド氏の判断が後に重要な発明を生み出す。Ludicprpに加わったカル・ヘンダーソン氏は、オンラインゲーム内で画像をアップロードするサービスを作り出す。ゲームをしながらチャットで会話をするだけでなく、写真も共有できればコミュニティが盛り上がると考えたのだ。まさにユーザー目線のアイデアだと言える。

このサービスにヒントを得たスチュワート・バターフィールド氏は、2004年に画像共有サービスのFlickrを立ち上げる。開発の指揮を執ったカル・ヘンダーソン氏は、Eメール経由で画像をアップロードできるシステムを考案した。これにより携帯電話から写真をシェアできるという当時としては画期的な機能が加わった。瞬く間に人気サービスとなったFlickrは、2005年に米Yahooo!が買収している。

カル・ヘンダーソン氏は、2009年まで買収元のYahoo!でFlickrのエンジニアリングディレクターを務めた。そして、前述の通り、スチュワート・バターフィールド氏は社内で利用していたコミュニケーションツールをビジネスツールとして利用することを思いつく。この経緯は、ヘンダーソン氏が開発したオンラインゲームのコミュニティ向けサービスをFlickrへと生まれ変わらせたエピソードと重なる。

Slackを起ち上げる際、カル・ヘンダーソン氏はスチュワート・バターフィールド氏に再合流しCTOとしてSlackの共同創業者となった。10年以上が経過し、IPOを終えた今もCTOを務めている。この二人は、元はと言えばCEOとプロダクトのファンという関係だった。未来の共同創業者はいつどこから現れるか分からない。

成功を収めた企業の歴史を紐解けば、そこには必ず、要となる人材同士が出会うストーリーが存在する。これらに共通項があるとすれば、いずれの企業のCEOも人に助力を仰ぐことを恐れず、共同創業者とともに事業を育ててきたということだろう。理念と情熱を共有し、お互いの得意とする領域で補完し合える共同創業者は貴重な存在だ。

スタートアップは、こうしたパートナーを見つけ出すところから始まると言っても過言ではない。CEOは「何をやるか」だけではなく「誰とやるか」を判断する能力も身につけておきたい。

(※為替レート:2019年11月10日現在)

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