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2019年 ロボットの進化はどこまで進んだのか~6つの分野で活用されるロボットの現在地

2019年 ロボットの進化はどこまで進んだのか~6つの分野で活用されるロボットの現在地

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2019/12/25

ロボットと共存する未来社会の可能性

科学技術の発展が著しい昨今、自律的に活動できるレベルのAIを開発する動きも活発になってきている。汎用型のAIであるAGI (Artificial General Intelligence) の研究がそれだが、AGIは特定の分野に特化したAIではなく、幅広い問題解決能力を持ち、自律性を兼ね備える。

自ら状況を学習し、起こりうる問題を予測し、解決することができるため、幅広い分野において能力を発揮できる。AGIプロジェクトが目指す知能レベルは人間と同等のものであり、「人間と並ぶ」AGIが登場しようとしている。

こうして、AIは人間への依存を低減させ、自律的に行動できる領域に足を踏み入れようとしている。そして、AIと同様に進化しているのが、これまでの常識を覆す次世代型のロボットたちだ。「人間と並ぶ」という言葉に複雑な思いを抱くかも知れないが、自律的な“強いAI”がロボットに活用され、あらゆる面で人間をサポートしてくれると考えればむしろ心強い。

2019年現在、AIの進化を含むテクノロジーの発達によって、どのようなロボットが登場しているのか。各分野におけるロボットの進化を見てみよう。

ヒト型ロボットが支える生活

ヒト型ロボットは古くから映画や漫画などを通して人々に親しまれてきたが、2019年現在、その成長はどこまで進んでいるのだろうか。ソフトバンクが開発したヒューマノイドロボットPepperが2014年に登場してから早くも5年が経過した。今では家電量販店などでも見かけるようになり、さまざまなPepper用アプリの開発も進んでいる。

長野県長野市でWebシステム・ロボットアプリ開発を行うロゴスは、初のAI搭載Pepper用介護アプリを2019年11月に発売した。AIによる機械学習によって高齢者との会話をクラウド上に記録し、過去の会話から質問に対する回答を導き出すことができる。このように、Pepperはソフトウェアの開発と共に進歩を続けている。

では、ハードウェアの方はどうだろう。2018年にソフトバンクが買収を完了したロボット開発ボストン・ダイナミクスは、2019年9月に自社のヒト型ロボットAtlasによるパルクール動画を公開した。前転し、飛び跳ねるAtlasの姿は、不安定なイメージの強かった二足歩行のヒト型ロボットの開発が次のフェーズに進んでいることを示している。

そして、気になるのはヒト型ロボットが一般家庭においてどのように実用化されるかという点だ。トヨタの研究機関であるトヨタ・リサーチ・インスティチュート (TRI) は、2019年10月にさまざまな家事作業を担うことができる家庭用汎用ロボットの動画を公開した。顔型のカメラと両腕が実装されたこのロボットは、戸棚の扉を開け、ものを掴み、運ぶといった作業を行うことができる。

動画中には、ロボットが扉を開けて庭にいた犬を室内に入れる様子や、スポンジでテーブルを拭く姿も収められている。こうした細々とした動作は、事前にプログラミングしておくのではなく、人間がVRを利用してロボットを動かし、ロボットに学習させることで、多様なシチュエーションに柔軟に対応できるように設計されている。

また、一台のロボットに一つの動作を一度教えるだけで、機械学習による調整が行われるだけでなく、他のロボットもこの学習結果を共有することができる。TRIはこの技術をfleet learningと呼んでいる。

この機械学習を取り入れた家庭用汎用ロボットの開発に携わっているのが、TRIのロボット研究所でバイスプレジデントを務めるラス・テッドレイク氏だ。

ラス・テッドレイク氏はMIT出身で、かつてトドラー(幼児)という名のヒト型の二足歩行ロボットを開発している。2005年に発表されたトドラーは、センサーで周囲の状況を認識し、一歩ごとにパラメータを調整することで初めての場所でも転ばずに歩けるという能力があった。当時としては自律的に行動できるという点で画期的な発明だった。

トドラーは、ただ「歩ける」ということがその特徴だったが、14年後の現在、ラス・テッドレイク氏が率いるTRIが開発を進めているのは人々の生活を支えるための汎用型ロボットだ。そして、パルクールの実演を見せているAtlasがその仲間入りをする日も近いかもしれない。

工場の産業用ロボットも新たなフェーズへ

工場に導入されている産業用ロボットの進化にも目を見張るものがある。

三菱電機は産業用ロボットに、同社が開発したAI技術のMaisartを搭載している。産業用のアーム型ロボットが組み立て作業を行う際には、精密機器を扱うこともあるため、どうしても慎重にならざるを得なかった。

だが、高性能AIのMaisartは最も素早く動けるプロセスを瞬時に見つけ出し、無駄な動きも迷いもなく実行に移す。通常のロボットはプログラミングに従って稼働するが、Maisartを搭載したロボットは機械学習で自らの動きを自動調整していく。わずか5分で最適な動きを見つけ出すことができるので、作業スピードは通常のロボットの2~3倍にまで引き上げられた。

ドイツのミュンヘンに本社を置くシーメンスは、1847年に創業された製造業界のコングロマリットで、ドイツ政府が掲げるIoTやAIを利用した新たな産業革命計画「インダストリー4.0」に参加している。同社の工場では作業の多くをロボットが担っており、工場内を走るフォークリフトは無人だ。

シーメンスの工場で自動作業を行うアーム型のロボットたちは、約3万種類のモーターを製造するために、工程の異なる精巧な作業に従事する。この作業を可能にしているのが、デジタル・ツインという技術だ。「デジタルの双子」というその名前の通り、デジタル空間で現実空間と同じ状況を作り出し、工程作業のシミュレーションを行うことができる。シミュレーション上で失敗しても、当然、現実のロボットや部品には影響が出ない。全てのロボットと部品がデジタル化されているため、最適な製造プロセスを見つけ出し、工場の自動化を促進することができる。

それでもシーメンスの工場は、まだ完全に自動化されているわけではない。全自動で工場の運営が行えるスマートファクトリーの実現に向けて、着実に歩を進めている段階だ。

意外な形で登場した自動運転ロボット

自動運転技術もまた、ロボットに活用されている。自動運転技術は自家用車や公共交通機関だけで利用されるものではない。米ドミノ・ピザは、DRUと呼ばれる自動運転の小型ロボットを2016年に発表、オーストラリアの一部のドミノ・ピザ店舗から1キロ圏内の配達に実用化されている。

DRUは四輪走行で冷蔵・保温両方の保管用ケースを備えており、前方に取り付けられたセンサーで障害物を検知、回避して走ることができる。開発を担ったのは、オーストラリアのスタートアップ企業であるMarathon Targetsで、元々は四輪で自動走行できる射撃訓練の的を開発していた企業だ。大きな車両を動かしたり、緻密な技術を利用したりしているわけではないが、小型の自動運転ロボットにピザの配達という活路を見出した。

ちなみにドミノ・ピザはその他にも、店舗の天井に取り付けられたカメラ付きのロボットでピザの出来を確認するDOM Pizza Checkerや、ドローンを利用したピザの自動配達など、テクノロジーを積極的に取り入れている。

自動運転ロボットで宅配されるのはピザだけではない。米ロボマート社はスマートフォンアプリで呼び出した無人の店舗型車両から欲しい商品を取り出すだけの自動運転車両、Robomartを開発した。

Robomartは電子機器の見本市であるCES 2018に出展され、同年7月に試験運用が開始されたが、2019年9月に粘着ラベル材料やインレイタグなどを生産、販売する米Avery Dennisonとの提携が発表された。同社のRFID技術(ID情報を埋め込んだタグから無線通信によって情報を送受信する技術)を利用し、商品の代金はアプリを介して自動で引き落とされる。

Robomartの構想は、町中にRobomartの車両があり、顧客がアプリで呼び出せばシェアライドのUberのように最も近くにいる車両が顧客の前に現れるというものだ。移動型のコンビニエンスストアとも言える。米農務省が2015年に発表した統計によると、アメリカに住む人のうち3,300万人が毎日外出して日用品を購入しているが、Robomartの取り組みはその労力を軽減しようとするものだ。

ただし、米国ではRobomartが想定する形での自動運転車の商業利用は認められていない。そこでRobomartは法改正を待たず、車両を遠隔操作(リモートコントロール)式に変更し、サービスを開始する構えだ。自動運転に関する法整備が整うまでに、Robomartが街に溢れている状態を作り出すことができれば、同社は優位なポジションに立つことができるだろう。

義手の分野で技術力を発揮する日本

日本が技術力を発揮しているのは義手の分野だ。サイボーグ技術の開発を進める株式会社メルティンMMIは、生体信号処理技術、ロボット機構制御技術という二つの技術を基礎に、実用可能な筋電義手を開発した。

筋電義手はバイオニックハンドとも呼ばれ、義手を人間の腕に接続すると、センサーが筋肉の動きによって現れる生体信号を検知する。この信号を義手に伝えることによって、義手は装着者が意図した動きを再現することができる。

メルティンMMIは、この筋電義手にも利用される技術を基に脳波でロボットを操作する技術や、アバターロボットの宇宙利用に向けた技術の研究開発に取り組んでいる。2018年11月に公開された東野圭吾原作の映画『人魚の眠る家』にメルティンMMI社製のロボットハンドが登場するなど、その注目度は高い。

2018年10月には、メルティンMMIは大日本住友製薬、第一生命などから計20億2,000万円の資金調達を行った。この資金は同社の持つロボット技術を応用した医療機器などの開発に充てられ、2020年には量産モデルを完成させる計画だ。人体とロボットを文字通り「繋ぐ」技術が、日本で着実に育っている。

医療分野では手術支援とナノロボットが鍵に

医療の分野においても、日本のロボット実用化が進んでいる。1999年に米Intuitive Surgicalから発売された手術支援ロボットのダ・ヴィンチは日本の医療機関で広く活用されている。術者(医師)はサージョンコンソールと呼ばれる機械を利用し、3Dモニターの画面を見ながら、複数のロボットアームを操作して手術を行うことができる。

術者はモニターでリモート操作による手術を行うことができるため、術着を着る必要はない。座ったまま作業ができる他、手ぶれの防止や突発的な動きを制御する機能が備えられているため、術者の負担は大きく軽減される。日本は、2025年に国民の3分の1が65歳以上の高齢者となる「2025年問題」を抱えており、医療業界における人手不足の深刻化も懸念される中、医師の負担を和らげるロボットの活用は期待されるところだ。

同社は、この手術支援ロボットの分野において、圧倒的な技術力で市場を独占してきたが、ダ・ヴィンチの投入から20年の時を経て、今や続々とライバル企業が登場しており、2019年がターニングポイントになろうとしている。

同社の共同創業者フレデリック・モール氏は2003年に独立した後、医療用ロボット会社のオーリス・ヘルスを設立し、2018年には肺の生検を支援するロボットでFDA(米食医薬品局)の承認を得るなど、着実に成長を続けている。

その他にも、アイルランドの医療機器メーカー・メドトロニックや、米Googleや米ジョンソン・エンド・ジョンソンなどが手がける合弁会社バーブ・サージカルなども、手術支援ロボットの開発に乗り出している。

また、Intuitive Surgicalが押さえるいくつかの特許も期限切れが迫っている。2019年11月には上海でMicroPort社が65歳の患者の前立腺癌手術を無事に終え、手術支援ロボットを利用した初めての手術に成功した。85%以上をアメリカ企業が押さえる手術支援ロボット市場に、中国から一石を投じた格好だ。

手術支援ロボットとは異なる形で期待がかかるロボットが、ナノロボット(nanorobot)だ。日本ではナノマシンとも呼ばれるこの技術は、極小サイズの機械装置のことを指す。人体に取り込むことができるため、医療分野での研究開発が進んでいる。

ドイツのマックス・プランク研究所は、約3.5ミリで自由に動くことができる板状のロボットを開発した。このロボットは長方形のゴム板のような形で、磁力を利用してその体を曲げたり伸ばしたりしながら人間の体内を進むことができる。芋虫とクラゲの動きから着想を得ており、跳ねることや水の中を泳ぐこともできる。ものをつかむこともできるため、体内で薬を運び、患部に直接投与するといった活用法が期待されている。

マックス・プランク研究所は、ナノプロペラと呼ばれるナノロボットの研究所開発も進めている。こちらは体内ではなく眼球の中を移動する。同研究所は、世界で初めてナノロボットに目の硝子体(眼の水晶体と網膜の間に位置するゼリー状の組織)を移動させることに成功した。ナノプロペラはプロペラのように螺旋状の形をしており、やはり磁力で移動する。眼球の中の患部に薬を投与する目的での研究開発が進められている。

また、ナノロボットではないが、マサチューセッツ工科大学で開発されたその名もオリガミロボットは、熱に反応して自動で動く極小サイズのロボットだ。熱に反応して起動すると、プログラミングされた通りに行動する。また、液体に浸かることで溶解し、自己消滅させることもできる。

2015年に登場したオリガミロボットは、体内に薬を運ぶ役割などが期待されていた。MITは翌2016年、シェフィールド大学、東京工業大学との共同で、素材に豚の腸を利用したインジェスティブル・オリガミロボットのデモを発表した。水分を含むと起動し、誤飲したボタン電池を体内から取り出す仕組みの開発を進めている。インジェスティブルとは「摂取可能」を意味する言葉だが、今後ロボットのミクロ化・ナノ化が進む中で、重要なキーワードになりそうだ。

ペットロボットはセキュリティと一体化

ペットロボットの分野は、その技術の向上によりセキュリティの分野と合流することも想定される。ソニーが2018年1月に発売し、12年ぶりの復活を果たした犬型ロボットのaiboは、クラウドと常時接続して機械学習を行わせることでaibo自体が成長していく。90日間で家族の顔を見分け、1年経てばaiboにそれぞれの個性(性格)が生まれる。

そして2019年2月、ソニーはセキュリティとエンターテインメントを結合させた「セキュリティメント」なる造語と共に、新サービス「aiboのおまわりさん」を導入した。aiboが室内をパトロールし、部屋や家族の状況をレポートしてくれる。この新サービスの発表では、セコムとのパートナーシップ締結も発表され、日本の高齢化社会に対応する取り組みとしてペットロボットであるaiboを活用していくことが明らかになっている。

ペットロボット以外でも、掃除ロボットのルンバには、2015年に発売された「ルンバ 980」以降、部屋の特徴を捉えてマッピングを行うためのカメラが搭載されている。また、Google HomeやAmazon Echoには、“主人”の音声を認識するためのマイクが搭載されている。どれも防犯に利用できるものだが、機械学習ができるAI、カメラ、マイク、スピーカーを兼ね備えているペットロボットは、確かにセキュリティとの相性が良い。

一方、アメリカのイリノイ州では、aiboに実装されている顔認識システムに対する規制によりaiboを販売することはできない。また、会話から得たデータをクラウド上に記録するという点に対しても、プライバシーの侵害を懸念する声が上がっている。aiboとの会話自体が記録されることはないが、そこから派生したプライベートなデータがクラウドにアップロードされるということに漠然と不安を抱いている人々がいるのもまた事実だ。

これは国や地域による考え方の違いがあるのかもしれないが、日本がもし「セキュリティメント」の分野を成長させる素地を持つ場所だとすれば、日本のペットロボットの研究開発は更に勢いを増すだろう。

このようにロボットは各分野で着実に進化を続けているが、一口に「ロボット」と言っても、AIの発達によって更に高度な動作が可能になったものから、IoTを活用した新たなサービスの出現まで、その進化の行程は多岐多様だ。ロボットと共存する豊かな未来社会の姿を想像しニーズに応えていくことが、スタートアップにとっても成功の鍵になるだろう。

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