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AI搭載により進化し続けるドローンの現在と未来~ドローンビジネスの可能性を探る

AI搭載により進化し続けるドローンの現在と未来~ドローンビジネスの可能性を探る

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2019/12/11

テレビの空撮シーンでぐっと身近になったドローン。AIの進化によってドローン活用の幅が広がると共に、ドローンビジネスという新たなビジネス領域が注目されている。今回はAIを活用したドローンの現状と未来について紹介する。

意外に古いドローンの歴史

ドローンの歴史は意外に古く、第二次世界大戦中の1944年、アメリカ軍により軍事用として開発された無人航空機「BQ-7」が最初のドローンとされている。

産業用ドローンでは1987年にヤマハ発動機が販売した農薬散布用ラジコンヘリがその先駆けとも言えるが、一般的には2010年フランスのParrot社が発売した「AR Drone」となる。この製品名からドローンが通称になった。4つのプロペラを持ちスマートフォンで操縦出来るタイプのドローンだ。その後ドローンにはAIの搭載が進み、短期間で劇的な進化を遂げている。

AIでドローンの何が変わるのか

今やAI搭載のドローンが玩具にもなる時代だが、AIによるディープラーニングはドローンをどう変えるのだろうか。

まず一つは、今後のドローンに必須の機能とされる「目視外飛行」だ。人間が目視出来ない場所や遠距離での飛行においては、予めプログラミングされた運行行程にはない想定外の鳥やヘリコプターなどの回避、あるいは突然の風雨などに対応する必要がある。AIは、搭載されたカメラや各種センサーから得たデータをリアルタイムに計算し、飛行速度や方向、高度などの変更を指示する。

もう一つは、「人間の目の代わり」だ。これまでもドローンは、高所や災害現場など危険な場所、立ち入り困難な場所での空撮、センサーによるデータ収集に活躍してきたが、AIはさらにカメラやセンサーで入手した情報を解析し、様々な行動を行うことを可能にした。

農業の例を挙げると、以前は農薬や肥料を散布するに留まっていたドローンが、カメラやセンサーで農地全体を撮影、土壌温度のデータ収集などを行った上でAIが解析し、生育状況が悪い地帯にピンポイントで散布出来るようになる。

他方で、このようなAIによるディープラーニングのドローンにおける活用には、エッジコンピューティングの技術が必要だ。

特にリアルタイムな演算処理が必要とされる目視外飛行においては、クラウドコンピューティングでは複雑なネットワーク網から計算結果を受け取る際に遅滞が発生する恐れがあり、そのために障害物との衝突や、墜落などが生じないかといった懸念が残る。

また、エッジコンピューティングを活用する場合、インターネット環境が整っている地域であれば最寄りのデータセンターでの演算処理で間に合うが、インターネット環境がない地域ではドローン自体で処理する必要がある。そのためにはAIチップをドローン本体に搭載する必要性が生じるが、そのサイズや電力消費において飛行に支障をきたすような高負荷なものにならないようにAIのアルゴリズムの軽量化が課題となっている。

空の産業革命に向けたロードマップ

次に、ビジネスシーンにおけるドローン活用に関しての政府の取り組みについて紹介する。

我が国においてはドローンの運行について主に安全面での制限が多いが、経済産業省は、2015年12月に「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」を起ち上げ、11回開催している。また、ドローンを使った産業について、小型無人機の安全な利活用のための技術開発と環境整備を示した「空の産業革命に向けたロードマップ」を公表し、2016年から年一回更新している。そこでも重視されているのが、AIの活用だ。

ドローンの運用に関しては、目視内飛行から無人地帯での目視外飛行、さらに有人地帯での目視外飛行まで4つの飛行レベルに分けており、2022年度以降に目指す「有人地帯での目視外飛行」は、人口の多い都市部での自律飛行を指し、AIの活用と進化が不可欠となっている。

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※画像出典:経済産業省「空の産業革命に向けたロードマップ2019」(※パワーポイント文書のダウンロード)

このロードマップでは、ドローンの運用に関して以下の物流、災害対応、農林水産業、インフラ維持管理、測量、警備業の5つに分類されており、その分類に沿って、既に開始されている実証実験例を紹介する。

参考:経済産業省「空の産業革命に向けたロードマップ2019」(※パワーポイント文書のダウンロード)

・物流

離島、過疎地、山間部等での荷物配送ビジネスのサービスを拡大し、陸上輸送困難地域への生活物品、医薬品等の配送、都市を含む地域での荷物配送。

離島や過疎地域を含む地方自治体では、各企業とアライアンスを組み実証実験が進められている。事例としては、長崎県五島市とANAホールディング、NTTドコモなど4社が行う離島間の無人物流、島根県美郷町の過疎地域での町内ドローン物流網構想などが挙げられる。配達困難地域への物流コストの削減、地域が抱える少子高齢化による物流の担い手の代替手段として期待されている。

かかる取組みには、ドローンの運搬能力もさることながら、海上での海鳥や大型船の回避、急な悪天候、山間部での樹木などの回避を実現するためのAIによる目視外飛行技術の向上は必須だろう。

参考:
ドローンによる長崎県五島市の離島間無人物流の実証
島根県美郷町「空の駅構想」

・災害対応

災害対応時のドローンによる状況把握の自動化・現場導入の加速。災害現場でのより高度な資器材搬送等による活動支援。

実証実験では、2019年10月長野県平谷村にてEDAC(一般社団法人 救急医療・災害対応無人機等自動支援システム活用推進協議会)が、位置情報付きリアルタイム情報配信システム「Hec-Eye」とドローンを連携した実証実験を行った。

災害時の被災地の早期状況確認、被害者の把握、行方不明者の捜索の際、人間に代わって危険な場所へ上空よりアプローチできるドローンの有用性は以前より実証済みだが、AIによってより正確な情報を関係機関、団体に一斉にリアルタイムで届ける事が可能になる。

参考:
EDAC、長野県平谷村にて講演・実演会『有事および平時におけるドローンの活用 ~Hec-Eyeで情報収集と共有をさらに効率化!~』を実施(PRTIMES)

・農林水産業

農作物の農地ごとの生育状況を広域に確認、農薬散布面積の拡大(100万ha)、受粉技術の実装・普及、収穫物等運搬技術の実装・普及、鳥獣捕獲のための誘引の自動化、全森林管理局での森林被害の把握、カワウによる漁業被害の防止、鯨類の調査技術開発など。

NTTグループ、ふくしま未来農業協同組合、株式会社エンルート、日本農薬株式会社が行う実証実験では、AIによりドローンの自律飛行と農作物の生育状況の解析を行い、ピンポイントでの農薬、肥料の散布を可能にする。また、測位に衛星からの情報を利用し、精度を上げている。2021年3月まで福島県相馬市で実証実験を行い2022年のサービス開始を目指している。

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(画像出典:NTTグループ ウェブサイト

農薬、肥料のスポット散布はすでに実用化されているが、衛星により位置情報の精度を上げている点や、情報を営農支援プラットフォームに蓄積することにより組合員と情報共有を可能にしている点が新しい。

参考:
準天頂衛星みちびきに対応したドローン及びNTTグループのAI技術を活用したスマート営農ソリューションの実証実験を開始

・インフラ維持管理

人の手では確認困難な橋梁、送電線、建物等の広域点検、砂防施設維持管理のための点検の自動化と導入の加速。

ジャパン・インフラ・ウェイマーク社が2019年10月24日から開始する平城宮跡歴史公園における国土交通省主導の社会実験「パークスマートチャレンジ」では、空撮した公園内外の設備画像をAIで解析し、それらデータの管理台帳システムとの連携、公園内植生物を解析するドローンの運用、天候に合わせた全自動でのドローン運行などの実証実験を行う。

高度経済成長期に建設されたインフラ設備が老朽化しているが、あまりにもその数が多く維持管理が困難なためドローンの活用が注目されている。AI活用により、高度な調査機器類と同等の性能を持ったドローンが、大型建造物での高所作業など、危険な場所での安全で精度の高い調査を可能にする。

参考:
ジャパン・インフラ・ウェイマーク、国営平城宮跡歴史公園における国土交通省主導の社会実験「パークスマートチャレンジ」に参画

・警備業

敷地内侵入監視・巡回監視を、市街地等有人地帯の侵入監視・巡回監視に拡大。画像解析技術の高度化。

この分野では、2020年のオリンピックでのドローンの活用が期待されている。KDDI株式会社、テラドローン株式会社、セコム株式会社が実証実験を行っている「AI スマートドローン」は、高所専用ドローンが俯瞰撮影する映像からAIを活用した人物検知機能で不審者を発見し、巡回用ドローンが現場に急行するとともに警備事務所に連絡をする。

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Youtube動画

ただ、現時点(2019年10月)では、法的な制限によりオリンピック会場周辺でのドローン運行が禁止されているため実際の運用は難しい。また、人物検知には個人情報保護法に抵触する可能性もあるなど、実用化に向けて解決すべき課題が多々ある。

参考:
国内初、人物検知可能なスマートドローンによるスタジアム警備の実証に成功

AIとドローン、スタートアップの事例紹介

続いて、ドローンがAIを活用することによりどういった事が可能になるのか、次世代のドローンとはどういうものなのかについて、スタートアップによる取組事例を中心に紹介する。

Neurala:エッジAIにも活用されるローパワー高処理AI

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(画像出典:Neuralaウェブサイト

ボストンに本拠を置くNeurala社は、AIによる画像認識ソフトウェアをドローン用にも提供している。同社のソフトウェアは処理に必要なパワーが比較的少ないため、ドローンに搭載することも可能となり、Wifiや4Gなどネット環境がない環境でもリアルタイムなディープラーニングにより外部環境に適応することができる。この技術を使うことで障害物を回避するとともに、画像認識ソフトウェアが空撮にも力を発揮し、次のようなことを実現する。

・360°Orbit:撮影対象にピントを合わせながら360°の円軌道飛行
・Follow Me:距離と高度を保ちながらの撮影対象の自動追尾
・Land on Hand:人間の手を認識し、手の上に着陸
・Sideways Dolly:横向き飛行によるホイール付きドリーカメラの再現
・Gesture Controls:手・腕によるジェスチャーでの操縦

このAI技術はイギリスExtreame Fliers社製のローコストで小型のドローンMicroDrone4.0にも採用され、クラウドファンディングIndiegogoで話題を集めた。

また、オランダのドローンスタートアップAerialtronics社に、AI用チップの大手、米NVIDIA社とともにAI技術を提供、Aerialtronics社が販売する高度な産業用ドローンによる携帯電話の基地局、送電線、風力タービンなどのインフラの安全点検に、同社のAIによる画像認識技術が活用されている。

Airlitix:農作物の総合管理AI

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(画像出典:Airlitixウェブサイト

カリフォルニア州サンノゼに本拠を置くAirlitix社が開発した農作物管理用AIは、高度で多機能なプログラムを実装している。主な仕様は以下の通り。

・ドローンに搭載したカメラ、センサーで温室内の温度、湿度、二酸化炭素レベルに関するデータを収集、植物にとって最適な環境かどうかをレポートする。
・生態系の測定に加え、農産物の収穫サイクルの開始時に、土壌サンプルレポートを作成する。カルシウム、マグネシウム、カリウムのレベルと栄養能力を示す事ができ、種まきのパターンや土壌改良の判断材料となり、収穫量の増加やコスト削減につながる。
・可視光と近赤外線(NIR)を植物に照射し、反射光のスキャン結果から植物の健康状態を示す画像を生成・解析する。
・高度なコンピュータービジョン(コンピューターに取り入れた画像情報を処理して、必要な画像情報を取り出す技術)により害虫や病気を検出する。

この技術はアメリカの国有林の管理への応用が期待されている。

Clobotics:危険な作業とコストの削減、レポートのスピードアップ

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(画像出典:Cloboticsウェブサイト

上海とシアトルに本拠を構えるClobotics社は、インフラ維持管理に自律制御のドローンとAIとを連携した外観検査のソリューションを開発した。

風力発電に用いられるタービンの検査は、通常、5人の技術者がロープとハーネスを使って100mの高所で6時間かけて行われる。Clobotics社のAIにより自律制御されたドローンは、ドローン本体に搭載されたコンピュータービジョン用チップ、AI、データアナリティクスのソフトウェアを使い、長さ40~80mのブレードを全面的に検査し、極めて高い精度で損傷箇所を検知(3mmのヒビ割れを検知できる)する。認識されたイメージはクラウドプラットフォームに送られ、AIによる解析処理後、対応が必要な損傷箇所をレポートする。

既に、中国最大級の発電機メーカーであるShanghai Electric Group社、風力タービンの製造と保守サービスの会社Luoyang Sunrui Wind Power Blade社との戦略的提携契約が締結されている。

ドローンビジネスの将来

インプレス総合研究所の「ドローンビジネスの市場規模に関するデータ」によると、経済産業省が発表したレベル4(有人地帯での目視外飛行)となる2022年のドローンビジネス市場規模は3,463億円と予測している。これは、2018年度の931億円の約3.7倍だ。

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(画像出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネスの市場規模に関するデータ」

このうち機体市場(ハード市場)は758億円となっているが、現状では中国DJI社が70%以上のシェアを占めており、この市場への参入障壁は高い。

サービス分野では、インフラ維持管理の拡大が見込まれており、中でも点検サービス、測量サービスが注目されている。

点検サービスは、前述の通り、高度経済成長期に設置されたインフラの維持管理、高層化が進む建造物の維持管理にドローン活用が見込まれる。

測量サービスでは、これまで専門家が高価な測量機器を用いて測定し図面化するなど時間をかけて行っていたものや、精度が落ちる航空写真からの映像を図面化していたものが、ドローンとAIの活用によりローコスト・短時間で行えるようになったため需要が増えている。

また、農業分野でのドローンの需要も増すだろう。高齢化、人手不足などの課題を抱えている産業であり、さらなる効率化が期待されている。広大な敷地においても活躍できるドローンとAIの活用により、人手不足の軽減やコストの削減につながる。

AIがさらに進化すれば、当然、産業用ロボットとドローンを組み合わせることも考えられる。現状では、ドローンは人間の“目”に代わる機能が主だが、これに“手”に代わる機能が加われば、高所や危険な場所での点検、監視から修理、製作までこなせる。農業では、種植、収穫なども可能となる。そうなれば、建設業界、メンテナンス業界、農林水産業だけでなく、あらゆる産業でドローンの活用が進むことが期待される。

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