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AIのパーソナル化をもたらすエッジコンピューティング~その現在と未来

AIのパーソナル化をもたらすエッジコンピューティング~その現在と未来

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2019/11/27

AIを支えるエッジコンピューティングとは何か?

現代では、多くのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスがAI(Artificial Intelligence:人工知能)を搭載するようになっている。

IoTデバイスが利用するAIは、ディープラーニングによりビッグデータの中から最適な答えを見つけだす。これには複雑かつ膨大な演算処理が伴うため、演算処理を行うコンピュータの性能が高いほど早く答えを導き出すことが可能になる。

早く正確にデータを処理するためには、大容量で高性能なコンピューティングシステムが必要だ。だが、いくら高性能であっても、コンピューティングシステムが遠隔地にある従来のクラウドコンピューティングでは、ネットワークの伝送ロスが発生し、回答を得るのに時間がかかってしまう。そこを解決するのが、エッジコンピューティングの技術だ。

エッジとはユーザーの持つモバイル機器などのデバイスやユーザーに近い無線基地局などを指す。デバイスから遠隔地にあるクラウドに直接接続するのではなく、エッジ側でデータ処理することをエッジコンピューティングと言う。

エッジコンピューティングは主にデータ転送時間の短縮を目的とされたシステムで、リアルタイムでの対応が可能になる他、従来のクラウドコンピューティングなどの一箇所集中型の膨大なデータ送信によるシステム全体への負荷を低減し、通信コストも削減できるなど利点が多い。

そして、IoTデバイスを利用するユーザーのよりパーソナルなニーズに即時に対応するための技術がエッジAIだ。

AIのパーソナル化を進化させるエッジAI

エッジAIとは

エッジAIとは、エッジコンピューティングとAIを合わせた造語だ。昨今、IoTデバイスがAIを搭載し、スマートフォンやスマートスピーカーなど、クラウドコンピューティングを通じてデータを処理するシステムが増えてきた。

これらはインターネット環境が整った場所で機能するものだが、ユーザーが常にインターネットに接続出来る場所にあるとは限らない。その結果、期待したパフォーマンスを得られないことも当然起こり得る。

例えば、スマートカーがそうだ。走行中、急に人が飛び出してきた時には、事故を回避するために即時に対応する必要がある。この場合、複雑なインターネット網を介するクラウドコンピューティングでは即時に対応できない可能性がある。

そこで、ネットワークとは関係なく、デバイス自体にエッジコンピューティングを組込む、あるいは地理的に近いエッジコンピューティング・データセンターでリアルタイムに処理させるように考案されたシステムをエッジAIという。

エッジAIの現状

産業用や医療用のデバイスにエッジAIを組み込む場合、比較的、サイズやコスト、使用電力量にゆとりが持てるが、よりパーソナル化されたIoTデバイスでは、小型、ローコスト、省電力が条件となる。

ディープラーニングに使われるAIチップは、スマホなどに使われる小型省電力のSoC(System on Chip:CPU以外にGPU、WiFiなどの機能を追加したチップ)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッサ)などの他、産業分野ではFPGA(Field Programmable Gate Array:米XLNXザイリンクス社が開発)が利用されているが、今後はより専用化したチップであるASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)の利用が望まれており、開発に米Google社、米Intel社など大手ベンダーも参入し、ドローン、ロボット、スマートカメラ、VRなどに搭載されはじめている。

また、AI用チップの開発に合わせて、アルゴリズムもIoTデバイス用に演算処理量を大幅に削減する技術が開発されている。IoTデバイスに使われる技術は、産業用、医療用に開発された技術を軽量化し、IoTデバイス用の限られた演算能力の中で高性能を発揮する必要がある。

NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と沖電気工業株式会社は2019年9月、「ディープラーニングモデルの新たな軽量化技術を開発」として、画像、音声認識の分野において既存のベンチマークとなる高精度モデルに対し、認識精度劣化1%、演算量と処理時間を約20%に軽減する技術を発表した。これはあらゆるIoTデバイスへのエッジAIの実装を可能とする技術として注目されている。

IoTとAIを活用したサービスの分類

IoTとはインターネットに接続したモノを通して人間の行動、バイタルデータ(脈拍、血圧、体温など、人体から取得できる情報)、可視データ、音声データなど様々なデータをリアルタイムに取得、蓄積する技術のことだ。そしてAIは、IoTデバイスで収集されたビッグデータの規則性、相関性を解析し、結果として高精度な予測、最適なアドバイス、効率的な機械制御を実現する。

AIを活用したIoTデバイスはすでに多くの分野で活用されており、総務省は大きく3つに分類している。

(1)活用技術(「活用技術(AI)」と「分析結果の活用空間」の視点での分類)
機械学習、画像認識、音声認識、自然言語処理などの技術を活用したサービス分野。身近なところではスマートフォンやスマートスピーカーなどで利用されている。IoTによりデータのさらなる収集が進む中、AI技術の進展により、今後さらに精度が向上していくと考えられる。

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(画像出典:総務省ウェブサイト

(2)技能レベル(「技能レベル」と「分析結果の活用空間」の視点での分類)
各分野の専門家など一定の技能レベル以上の人材が必要な場面で活用されはじめている。また、一般人でもできるレベルの内容においても大量の情報を瞬時に判断、自動化できるため、労働力不足や生産性の向上につながっていると考えられる。特に、これまで専門家の知識・経験に依存していた農業分野や各種予測においても利用が拡大している。

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(画像出典:総務省ウェブサイト

(3)データの収集(サイバー、リアル)空間(「サイバーの収集空間」と「分析結果の活用空間」の視点での分類)
IoTデバイスの普及、進展により収集された様々なデータは、労働力不足や生産性の向上といった課題を解決するための活用の広がり等から多様な分野で活用されている。今後、収集された情報をもとにしたリアル空間での物理的な動作の実現や、各種ロボットの発展によって、AIの適応範囲や効果の拡大が期待される。

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(画像出典:総務省ウェブサイト

IoTにAIを活用した事例

(1)AI搭載ドライブレコーダーで交通事故削減
2019年6月、DeNA社とJVCケンウッド社は、運送業、タクシー業などにおける「交通事故」「渋滞」「高齢化」「運転時間」といった4つの課題の解消のために、商用車向けの交通事故削減支援サービス「DRIVE CHART(ドライブ チャート)」を共同開発し提供を開始した。

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(画像出典:DRIVE CHARTウェブサイト

「DRIVE CHART」は2つの車載カメラを使い、車両前方とドライバーを同時に撮影し、映像を車載加速度センサー、GPSなどの情報と組合せ、潜在的な危険性をAIが検知し可視化するサービスだ。実証実験において、トラックで48%、タクシーで25%の事故削減効果があった。

(2)マグロ養殖事業の2つの課題をIoTとAIで解決
双日株式会社は、マグロ養殖事業を営む100%子会社の双日ツナファーム鷹島において、IoTとAIを利用した「給餌の最適化」「尾数の自動カウント」の実現を試みている。

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(画像出典:双日ウェブサイト

給餌の最適化に関して、いけすに各種センサーを設置し、いけすごとに給餌量を変え、センサーで収集したデータとマグロの成長との関連を分析して、マグロ養殖コストの60%を占めるエサ代の削減に取り組んでいる。「尾数の自動カウント」については、水中カメラとAIでカウントすることで精度向上を試みている。

(3)アスリートの育成支援を行うIoTボール
KDDI社、KDDI総合研究所、アクロディア社の3社は、アクロディア社が開発した「センサー内蔵型サッカーボール」を活用し、「スポーツ行動認識AI」で分析、フォームの改善などスポーツ選手の育成を支援するシステムを開発している。

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(画像出典:KDDIウェブサイト

スマートフォンなどのカメラで撮影された動画から「スポーツ行動認識AI」が選手の大まかな骨格、目や鼻の位置を認識後、手足の関節など65箇所の骨格の動きから選手のフォーム、身体の使い方をリアルタイムに解析。「センサー内蔵型サッカーボール」に内蔵されたセンサーと連携し選手の動きがボールに与える影響を分析する。

エッジAIのパーソナル化がもたらす未来

IoTデバイスとエッジAIの現状と将来

パーソナルユースを目的としたエッジAIは、AIの技術がふんだんに取り入れられているスマートフォンを例に挙げるとわかりやすい。例えば「Googleアシスタント」がそうだ。

クラウドコンピューティング派であった米Google社は、ここに来てエッジコンピューティングに力を入れはじめている。「Googleアシスタント」では、現在のところ音声の解析と命令の理解に約100GBのモデルデータを必要とし、処理の多くをクラウドコンピューティングで実行しているため応答速度が課題だった。次世代のスマートフォンではこのデータを300MB程度にまで削減し、スマートフォンにエッジAIチップを実装することでオフラインでの利用も可能になるとしている。

また、障がいがある方のアクセシビリティの向上にもAIが活用される。米Google社は2019年10月、音声テキスト化と音声合成の技術により、耳の不自由なユーザーに音声付きデジタルコンテンツを伝える「Live Caption」機能を、「Pixel 4」で利用可能にすると発表した。

これは、スマートフォンで再生される音声をリアルタイムでテキスト化する技術で、音声メッセージだけではなく、Youtubeなどの動画にもテキスト化された字幕が表示される。処理はスマートフォン本体で行うためオフライン環境でも利用可能。まずは英語のみだが、サポート言語は徐々に拡大していく計画だ。

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YouTube動画

また、「Live Relay」も開発した。通話相手の音声をリアルタイムでテキスト化し、入力した文字を音声として合成し相手に伝えられる。こちらもインターネット環境がないオフライン環境での利用が可能だ。

さらに、様々な障がいで発声しづらく聞き取りにくい音声をAIに解釈させる研究にも取り組んでいる。

IoTとエッジコンピューティング、クラウドコンピューティング

IoTデバイスのAI化にともない、エッジコンピューティングの需要が大きくなってきているが、その一方でクラウドコンピューティングは廃れてしまうのかというとそうではない。

AIを搭載したIoTデバイスは、リアルタイムの処理が必要な場合はデータセンターを使ったエッジコンピューティングを行い、リアルタイムな処理が不要な場合はクラウドコンピューティングで対応出来る。つまり、それぞれを環境により使い分けるということだ。

なお、デバイス内蔵型のエッジAIでは、IoTデバイス自体でAI処理を行うためオフラインとリアルタイム性が長所である一方、躯体の搭載スペース、コスト、処理能力に課題がある。また、データセンターではリアルタイム性は担保できるものの、ネット環境が必要であり、現時点では環境が整った場所での利用に限られる。

なお、クラウドコンピューティングに関しては、リアルタイム性に劣るものの、高度なディープラーニングが期待できる。このことから、クラウドコンピューティングで蓄積した学習データをエッジコンピューティング側のデバイス、または、IoTデバイスに実装し、リアルタイムでの予測や判定を行っているのが現状だ。

エクサ級も搭載される近未来のエッジコンピューティング

今後、IoTデバイスの普及とAI化の拡大により、クラウドコンピューティングのみでは遅滞を招く可能性がある。5G通信でインターネット網の改善が見込まれるとはいえ、現在の一極集中型からエッジコンピューティングの分散型に移行するであろう事が予測される。

その場合、エッジコンピューティングのデータセンターのサーバー群にも高度な演算処理が求められる。米Hewlett Packard LabでAIチーフテクノロジストを務めるSorin Cristian Cheran氏は、2019年9月「HPE HPC&AIフォーラム 2019」にて、5~10年先のエッジAIにおいては、エクサ級(現在最高速のスーパーコンピュータクラス)の性能が要求されるだろうと発表した。

よりパーソナル化が進むエッジコンピューティングがもたらす未来像は、果たしてどのようなものなのか。その進化から片時も目が離せない。

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