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ブロックチェーン技術による資金調達法STOとは何か?~資産のトークン化が実現する新しい経済圏~

ブロックチェーン技術による資金調達法STOとは何か?~資産のトークン化が実現する新しい経済圏~

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2019/11/22

「スマートコントラクト」を実現したイーサリアム

ヴィタリック・ブテリン氏が開発したイーサリアムによって、ブロックチェーン上でアプリケーションのプログラムコードが実行できるようになり、取引がブロックチェーン上に記録できるようになった。その最たる成果が「スマートコントラクト」だ。

そして、今やイーサリアム上で運用されるさまざまなプロジェクトにおいて、ブロックチェーンを利用した「独自通貨=トークン」を発行され、「トークンエコノミー圏」を構築されるようになっている。

そして、スタートアップの事業資金調達にも、そのトークンが大いに活用されている。ICO(Initial Coin Offering)、IEO(Initial Exchange Offering)、そしてSTO(Security Token Offering)と呼ばれるのがそれだ。今回は特に、今後、大きな成長が見込まれるSTOについて紹介する。

トークンによる3通りの資金調達方法

2017年~18年頃から、スタートアップ企業の資金調達の手段としてトークンの公開買い付けを行うICO(Initial Coin Offering)が一時流行した。ただ、ICOに関しては法規制が不十分な状況で様々なプロジェクトが乱立しマーケットで不安が広がったこともあり、現在は各国で規制強化の動きが強まっている。

そこで現れたのがIEO(Initial Exchange Offering)だ。これは企業自らがトークンを発行するのではなく、トークンを特定の取引所に委託して資金調達する。この場合、委託した取引所にアカウントを持つユーザーがその対象になる。この取引所は国によっては認可が必要であり、投資家保護の観点からもICOに比して有効と考えられている。

さらには、トークンを純粋に「金融商品」として発行するSTO(Security Token Offering)という資金調達方法が登場した。この場合は、有価証券に分類されるトークンという意味でセキュリティ・トークンという。

セキュリティ・トークンは株式や債券や、商品、あるいは不動産といった資産の裏付けがなされた資産を証券化した有価証券を、ブロックチェーンを用いてデジタル化したものなので、有価証券同様、所有権、配当を受ける権利を有することを証明する価値を持つ。従って、明確に米国における証券法や証券取引法、日本における金融商品取引法等の証券関連の法規制に準拠した形で取引されることが前提であり、投資保護が担保される。

ちなみに、証券取引であるかどうかの判断は、米国では「Howey Test」として知られる次の要件を満たしているかどうかで定義される。

1.金銭の投資に関することであり
2.投資先から利益を得ることを期待している。
3.投資先が共同事業(法人)である。
4.発起人もしくは第三者の努力による成長が見込まれる。

セキュリティ・トークンは、イーサリアムのブロックチェーン上でプログラム可能である「スマートコントラクト」によって、より透明性の高い証券取引が行える可能性がある。さらに対象となる資産を小口化することで、より多くの投資家から資金調達しやすくなる一方、投資家にとっても取引上のコストを低く抑えることができる可能性がある。

このようにして、STOは従来のICOの不安要素を払拭できる可能性があることから年々、その案件数を増やしつつある。

2019年上半期におけるトークンによる資金調達

2019年上半期のトークンによる資金調達の実態を、ICO、IEOおよびSTOに関する研究を行うInWara社の最新レポートから見てみよう。

この6ヶ月のICO、IEO、そしてSTOによる資金調達案件総数は583件、そのうちICOが69%、IEOが21%、STOが10%だ。これを国別で見ると、下図のようにアメリカがトップで66件、次いでシンガポールが52件、UK(イギリス)が50件、そして中国が30件と続く。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

ICO、IEO、STOの案件数は、前年と比べてみると、1,570件だったICOが今期は403件と激減している。一方、IEOは昨年の2件から123件と大幅に増加。STOも、昨年の49件から57件と増加傾向にある。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

次に、投資対象になる事業分野別に見てみると、昨年に続いて「商業・投資」系が最も多い。続いて、「金融」「ブロックチェーン」「暗号通貨」と、やはり資産運用系が目立つ。一方、「ヘルスケア」「Eコマース」「メディア・エンターテインメント」などの分野でもトークンによる資金調達が行われるようになってきている。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

そして、このオファーに対する調達総額は33億9,000万ドル(約3,680億円)だった。ICOは昨年比91%減の13億2,930万ドル(約1,445億円)、IEOは実に5,300%増の16億2,580万ドル(約1,767億円)、STOは51%増で4億1,990万ドル(約456億円)だった。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

これを国別に見てみると、中国が11億8,000万ドル(約1,280億円)で全体の33.2%を占める。ちなみに、ブロックチェーン系のスタートアップに対しては全体の10%にあたる3億3,800万ドル(約367億円)が投資されている。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

ちなみに、2018年第1四半期から2019年第1四半期にかけての1年間のICOの件数は縮小傾向にあり、前年同期比79%減少している。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

そして、徐々にその数を減らしつつあるICOと入れ替わるように活性化しているのがIEOとSTOだ。

この6ヶ月間のIEOによる資金調達額の推移を表したのが下図だ。概ね成長過程にあり前述の通り16億2,580万ドル(約1,767億円)を調達している。5月単月だけでも、16件の案件に対し調達額が10億ドル(約1,080億円)を突破した。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

一方、STOによる資金調達の推移は興味深い。月間の案件数はまだ多くはなく、3月以降は減少傾向であるにも関わらず、調達金額が急激に伸びている。この間の調達総額は4億1,990万ドル(約456億円)だった。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

この理由を、事業内容に優れた少数の案件が投資家の関心を引いたのではないかとInWara社は分析しているが、前述の通り、証券関連規制を遵守して発行されることから投資家が保護されることも大きく関係していると思われる。このように、STOはまだ規模は小さいもののトークンによる資金調達の方法として着実にその存在感を増しつつあり、今後の成長も期待される。

なお、2018年のSTO案件の中では、金融系のスタートアップが調達総額2億6,100万ドル(約283億円)で最も多く、投資系のスタートアップが1億7,300万ドル(約188億円)でそれに続く(2018年12月5日時点)。

また、国別件数で見ると、アメリカが113件で最も多い。それに、スイス26件、UK(イギリス)24件、シンガポール12件、エストニアとロシアが各10件、と続く。これらの国には確かに金融、投資系のスタートアップが多い。ただし、調達額で見ると、やはりアメリカがトップで5億9,800万ドル(約650億円)、2位のスイスが1億5,500万ドル(約168億円)、3位がカナダで次いでUAE(アラブ首長国連邦)だった。

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(画像出典:InWaraウェブサイト

なお、同社レポートによると、2018年12月時点でのSTOの案件数は328件で、そのうち資金調達に至らなかったのはわずか12件(3.65%)だった。ICOの15%に比べても、いかにSTOのシステムが健全な資金調達のプラットフォームになりつつあるかが伺える。

では、次にそのSTOのプラットフォームを提供している企業を紹介する。

セキュリティ・トークンのプラットフォーム

tZERO

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(画像出典:tZEROウェブサイト

tZEROは、2014年に暗号通貨を受け入れた最初の大手ネット通販会社であるOverstockの子会社だ。この年、同社はブロックチェーン技術によるフィンテックを開発する完全子会社であるMedici Venturesを設立したが、これが後のtZEROであり、以来、tZEROはブロックチェーンによってセキュリティ・トークン取引のためのプラットフォームを提供し、資本市場の効率と透明性を向上させる取り組みを続けている。

実はそのtZERO自身が、2017年11月にSTOを発表し、2018年第3四半期に1億3,400万ドル(約145億円)を調達している。

そして、これまで適格投資家(アメリカの場合、1億ドル以上の純資産を持ち、年収20万ドルを超えていることが条件)のみを対象にしていたが、2019年9月より一般投資家も取引可能となった。トークン所有者には四半期ごとに利益の10%を配当するとしている。配当は、米ドル、ビットコイン、イーサー、または追加のセキュリティ・トークンで支払われる。

同社はセキュリティ・トークンにより次のメリットを提供できるとしている。

・資産の流動性の向上
・確実かつ即時の決済
・取引に対する規制当局の監視のし易さ
・プログラムの組み込みによるセキュリティ・トークンのカスタマイズ性

これまでの証券市場にありがちだった煩雑な手続きを排除すると共に、所要時間とコストを削減し、かつ法規制に準拠した透明性のある取引を実現するプラットフォームは、STOで資金調達する企業にとっても有益な場となる。これらのメリットが、前述のようなSTOの成長を裏付けているのは容易に推測できる。

なお、同社はブローカーディーラー(証券の売買を代行する会社、日本で言うところの証券会社)であるSpeedRoute社を買収するなど、STOを行うためにアメリカ証券取引委員会 (SEC)が掲げるあらゆる法規制をクリアしている。

同社はまた、そのビジネス領域を着実に広めるために、他の証券取引所やブローカーディーラーとの戦略的パートナーシップやライセンス供与などにも積極的だ。2018年11月には、同じくイーサリアム上に構築されたセキュリティ・トークン発行プラットフォームであるPolymathSecuritizeとのシステム統合を発表している。

また、2019年6月にスマートフォンアプリもリリースし、法定通貨と仮想通貨によってセキュリティ・トークンを購入できるようになった。加えて、投資家へ人工知能によって資産管理・運用のアドバイスを行うサービスも提供するなど、徹底した投資家サポートが強みだ。

Securitize

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(画像出典:Securitizeウェブサイト

前述のtZEROはトークンを取引するためのプラットフォーム(取引所)を提供しているが、Securitizeは専らそのトークン(証券)を法律に準拠してイーサリアムのブロックチェーン上で発行するためのプラットフォームだ。

トークン発行者には管理ツール提供、税務処理などのサポートはもちろんのこと、ブローカーディーラーの適性確認や、法定通貨や仮想通貨での払込・払出、およびスマートコントラクトのカスタマイズにも対応している。

2019年5月には、そのSecuritizeが開発したDSプロトコルをtZEROが導入すると発表した。DSプロトコルとは、投資家保護の目的でAML(Anti-Money Laundering/マネーロンダリング対策)やKYC(Know Your Customer/本人確認義務)に対応したセキュリティ・トークンの発行を実現する技術だ。

この提携により、Securitizeの発行するセキュリティ・トークンをtZERO社のプラットフォーム上でより安全に取引できるようになるわけだが、STO業界におけるこうしたエコシステムは加速度的にそのネットワークを広げつつあり、STOが活況を呈することが予想される。

あらゆる資産をトークン化するSTO事例

STOは、株式、不動産、投資資金、あるいは美術品などの資産をトークン化して法規制に準拠しつつ取引することだが、最後に興味深い事例をあえて金融、投資系以外から紹介しておこう。まず、アート分野でいま注目なのが、monartだ。

monart

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(画像出典:monartウェブサイト

monartは、パリ、北京、ジュネーブ、マルタ、サンフランシスコに拠点を持つアートのマーケットプレイスだ。2019年8月時点で社員は27名。年間670億ドル(約7兆2,500億円)のアート市場と3兆ドル(約325兆円)のアート資産を対象に、ブロックチェーン上に大規模なプラットフォームを設け、芸術作品やコレクションをトークン化し販売することで、アート資産の流動性を高めようとしている。

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(画像出典:monartウェブサイト

STO情報サイトのListIcoによると、同社は、2019年9月30日から11月4日までSTOを行っている。

注目なのは、その作品の「一部」でもトークンとして取引できるという点で、投資家はその作品を100%所有しなくてもいい。トークン所有者には、オンラインアートプラットフォームでのすべての取引手数料の10%が配当される。

もうひとつは広告だ。

HYGH

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(画像出典:HYGHウェブサイト

HYGHは、パブリックディスプレイの所有者と広告主をダイレクトに繋げるプラットフォームを提供している。 2018年にスイスで設立され、現在、開発はベルリンで行っている。2019年10月時点で社員は26名。

同社は、2022年には屋外広告ビジネスの市場規模は6,000億ドルを超えるとしており、レジのタブレット、小規模店舗のテレビから、ホテル、レストラン、屋外の大看板まで、あらゆる画面を広告スペースに変えることができるアプリが強みだ。

投資家は500ドル(約54,000円)から投資することができ、トークンの所有者にはHYGHプラットフォームで発生する税引後収益の9%が四半期ごとに支払われる。

ちなみに、同社は2018年10月には“Crypto Challenge Forum in London”(ブロックチェーン・テクノロジーをテーマにした3日間に渡るヨーロッパ最大のフォーラム)で“STO of the Year”に、2019年1月にも、ダボスで開かれた世界経済フォーラムにおいて“Best STO of Davos 2019”に選ばれている。

参考:STOを予定しているスタートアップは以下のサイトでチェックできる。

STO List | Security Token Offerings | STO Listing - STOAnalytics
STO List | List of Security Token Offerings 2019
BEST STO List: Security Token Offering | Info 2019

ただし、STOもまだ発展途上

ブロックチェーンの革新的な技術により新たな経済圏を作ろうとするこの動きは今後さらに拡大していくだろう。ただし、未だ発展途上であることには変わりなく、現時点で有効であるさまざまな方法論が、将来も同じように通用するとは限らない。

STOを活用して事業者は事業資金を得ることができ、投資家は相応のリターンを得ることができる。新たな価値を社会に還元できる可能性がある仕組みとして、今後の動きに注目したい。

※為替レート:2019年10月16日現在

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