tr?id=1970953653177752&ev=PageView&noscript=1

古くて新しい課題に挑戦するイギリスのユニコーン4社に学ぶ~着実な資金調達を可能にするビジネスモデルとは何か

古くて新しい課題に挑戦するイギリスのユニコーン4社に学ぶ~着実な資金調達を可能にするビジネスモデルとは何か

922view

2019/10/09

未上場で時価評価額が10億ドルを越える世界のユニコーン企業のうち、11.5%がヨーロッパ圏にその本拠を置いている。その中でもイギリス(UK)が最も多く、Tech Nationによれば、2019年9月時点で75社のユニコーンがリストアップされている。

また、イギリスのスタートアップ系投資会社SEEDLEGALSが、2001年以降に設立されたイギリスのユニコーンの中でIPOの可能性のあるスタートアップとして以下の18社を独自にピックアップしている。この18社はユニコーンとなった現時点まででトータルで54億7000万ポンド(約7,370億円)を調達しており、1社あたりの平均は、409億円に上る。

BenevolentAI
BrewDog
Darktrace
Deliveroo
FarFetch(イグジット済み)
Funding Circle(イグジット済み)
Graphcore
Improbable
Just Eat(イグジット済み)
Monzo
OakNorth Bank
OVO Energy
Oxford Nanopore
Revolut
Skyscanner(イグジット済み)
The Hut Group
Transferwise
Zoopla(イグジット済み)

なお、5社がすでにイグジット(投資資金の回収)を果たしている。5社のうちJust Eat、Zoopla、Farfetch、Funding Circleの4社がIPO、Skyscannerは買収による。Just EatとZooplaは、そのIPOの過程でユニコーン評価を得た。

イギリスでは、創業からユニコーンとなるまでに平均6.4年かかっているが、徐々にその年数は短くなっている。事実、2012年以降にユニコーン化した9社は平均3.8年だ。

創業時のメンバー数は平均2.5名で、最も多い企業では5名。1名で起業したユニコーンは3社だった。また、その事業領域は、旅行、不動産、エネルギー、食品、ゲーム、サイバーセキュリティ、Eコマース、AIなど、多岐にわたっているが、比較的バンキングないしはファイナンス系が多い。

今回は、そのUKユニコーンの中でも、いま注目の4社を紹介する。

Deliveroo

1009_01.png
(画像出典:Deliveroo ウェブサイト

Deliverooは2013年にロンドンで設立されたフードデリバリー企業だ。利用客がスマートフォンのアプリで料理を注文すると、Deliverooが料理のできあがり時間を予測し、配達地域にいる配達スタッフをマッチングする。現在では10,000店を越えるレストランをリストアップし、注文から平均30分以内に料理を宅配している。

配達スタッフはスマートフォンとバイクやスクーター、自転車等を用意して、自分の空き時間に宅配の仕事をする。同社では最新のテクノロジーを導入して、安全かつ最速のルートを導き出して配達している。同社のCEOで投資銀行出身のウィリアム・シュー氏は、創業当初は自身でも自転車で配達していたという。

同社は、2016年8月、米国における投資ラウンドから2億7,500万ドル(約297億円)の資金調達の後、初めてユニコーンとなった。2017年9月に同じく4億8,200万ドル(約521億円)を調達した時点での評価額は20億ドル(約2,160億円)だ。

そして、2019年5月にDeliverooは、アマゾンの主導で同じく米国投資ラウンドから5億7500万ドル(622億円)の資金調達を実施したと発表、その後、エジンバラに本拠を置くソフトウェア開発会社Cultivateを買収している。ちなみにそのアマゾンは、イギリスで展開していたフードデリバリーサービス「Amazon Restaurants UK」を2018年12月に終了している。

Cultivateは元々、Deliverooの決済や、一日何百万件にも及ぶ注文を処理するシステムの開発を担当していた。この買収により、Deliverooはエジンバラにソフトウェアの開発拠点を設立し、よりパーソナライズされたユーザー体験を提供すべく、高度なスキルを持つエンジニアを、今後3年以内に50人採用する計画だ。その計画には、エンジニアのほか、プロダクトマネージャー、データサイエンティスト、なども含まれる。

さらにDeliverooは、その事業領域を一般ユーザーだけでなくレストランにまで拡げようとしている。Deliverooが新しく開発した材料調達プラットフォームにより、レストランはより新鮮な食材をより安価に調達できる。同社によると、このプラットフォームを通じてレストランは食材費を20%以上、小規模の飲食店であれば40%節約できるという。

同社ではレストラン向けのサービスを拡大し、Deliverooが単なる配送手段ではなく「戦略的パートナー」の役割を担うことを企図している。これらの事業展開は、先のアマゾンによる資金調達によるものと考えられる。フードデリバリー業界には、Uber Eatsをはじめ競合がひしめき合っているが、積極的な資金調達によってさまざまな業態とアライアンスを組むことは、スタートアップにとっては必然だろう。

なお、DeliverooはUK全域のほか、オーストラリア、フランス、シンガポール、香港、ベルギー、アイルランド、イタリア、オランダ、スペイン、台湾、クウェート、アラブ首長国連邦など、12の国の200以上の都市でサービスを展開しており、約80,000店のレストランと契約し、60,000人の配達スタッフ、2,500名の従業員を擁すると伝えられているが、2019年8月に突然ドイツからの撤退を発表した。(ドイツには1,100人の配達員がおり、2,000店以上のレストランが同社のサービスを利用していた)

突然の撤退表明にギグ・エコノミー(隙間時間で仕事をオンラインで請け負い、収入を得る働き方)で生活費を得ていた配達スタッフは混乱した。こうした従業員の雇用問題は、前述のUberを筆頭に世界中で課題になっている。Deliverooが今後もスケールするために解決しなければならない課題は、テクノロジーだけではないかもしれない。

TransferWise

1009_02.png
(画像出典:TransferWiseウェブサイト

TransferWiseは、2011年1月に金融コンサルタントのクリスト・カーマン(Kristo Käärmann)とSkypeの最初の社員であるターヴェット・ヒンリクス(Taavet Hinrikus)によって設立された海外送金サービスのスタートアップだ。

ロンドンが本拠地だが、世界中に12の拠点を持ち、500万人以上のユーザーに利用されている。毎月の送金額は40億ポンド(約5,380億円)に上る。

これまで、国境を超えて銀行間で送金する場合、送金手数料や海外中継銀行手数料、さらに為替レートに上乗せした為替手数料など、高額な手数料を必要とした。TransferWiseでは格安の手数料でユーザーの海外送金をサポートしている。

まず、同社ではGoogleなどでも簡単に確認できるリアルタイムの為替レートをそのまま適用している。そこにわずかな手数料を加算するだけなので、通常の銀行送金よりも最大8分の1の手数料で済む。この透明性が高い料金設定によって、利用者に不利なレートを提示することなく金融サービスを提供している。ちなみに、口座の開設費用や維持費用もかからない。

では、どうやってコストを大幅に削減できているのだろうか。その秘密は、実際には海外送金を行わない特異な仕組みにある。

例えば、ドイツに住むAがUKに住むBに送金したいとする。今までなら、Aが持つドイツの銀行口座からBが持つUKの銀行口座へ送金していたが、TransferWiseの場合、Aがまずドイツ国内にあるTransferWiseの口座にユーロを送金する。すると、UKにいるBにはUK国内のTransferWiseの口座からポンドが入金される。

これを実現しているのは、双方の国にいるAとB以外のTransferWiseユーザーだ。上記の場合、Aと逆の方向で、UKから送られてきたポンドをユーロで受け取りたいCがドイツにいる場合、UKのAがポンドで入金、ドイツのCにユーロが入金される。つまり、TransferWiseには数多くのユーザーがいるため、実際にはドイツとUKの間の海外送金を行わずに、こうした逆方向の送金をするユーザーをマッチングさせ、いわば国内送金することによって、安価な手数料で海外送金サービスを実現している。

この発想は創業者二人の実体験がルーツだ。ターヴェットがエストニアの企業Skypeで働いていた頃、給料はユーロで支払われていたが、勤務地はロンドンだった。一方、クリストはロンドンで働いていたが、エストニアの住宅ローンをユーロで支払っていた。そこで彼らは簡単なスキームを思いつく。

毎月、その時の為替レートをロイターのサイトで確認し、ユーロとポンドの適正な為替レートで、お互いの支払いを、それぞれの国で行ったのだ。

やり方は単純で、クリストがターヴェットの持つUKの銀行口座にポンドを送金し、ターヴェットは逆にクリストの口座にユーロで送金した。彼らは銀行に「隠れたコスト」を支払う必要もなく、また、適正なレートでお互いの通貨を交換した。そこで彼らは気がつく。「私たちと似たようなことをしている人は多いはずだ」。こうしてTransferWiseが生まれた。

TransferWiseは、2016年5月に米国における投資ラウンドから2,600万ドル(約28億円)を調達した段階でユニコーン入りした。2017年11月に同じく2億8,000万ドル(約302億円)を調達、今年(2019年)5月にも同じく2億9,200万ドル(約315億円)を到達し、これまでの調達額は7億7,200万ドル(約834億円)に上る。現在の時価評価額は35億ドル(約3,700億円)だ。

同社のミッションは「国境なき金融の実現を目指す」とあるが、コスト構造に透明性を持たせることと、ユーザーをいわばクラウドソース化しお互いの協力体制を作り上げることでこれを実現している点は、シェアリングエコノミーの一面も持っていると言えるかもしれない。

なお、同社は企業の海外送金にも対応しており、60ヶ国以上の受取人に1,000件を越える送金をするといった一括送金や、デビットカードの発行も行っている。同社によると、海外送金時に要する着金までの時間とコストは、一般的な銀行と比較すると最大7分の1に削減できるとしている。ビジネスユースへの進出が今後の事業展開に大きな意味を持つのは言うまでもない。

また、事業者が自社のサイトに組み込んでさまざまな資金移動をするためのAPI(外部のソフトやアプリと連携し機能を共有するためのインターフェース)も発行している。TransferWiseのAPIを利用すると、請求書の支払いや定期的な送金、給与計算の自動化などのほか、TransferWiseを支払いオプションとしてWebサイトに追加することもできる。もちろん、為替レートの変換を自動化してくれる。これも、あらゆる送金シーンにおいてユーザーを取り込み、競合の多い業界で優位にビジネスを成長させる戦略と言えるだろう。

Checkout.com

1009_03.png
(画像出典:Checkout.comウェブサイト

Checkout.comは、企業が国境を超えて決済処理を行うためのソフトウェアを開発、提供している。現時点で、150以上の通貨が使用可能で、8社のクレジットカードとデビットカードが使える他、Apple PayやGoogle Pay、PayPalにも対応している。実はこの記事でも取り上げているDeliverooやTransferWiseも同社のクライアントだ。

また、ShopifyやWooCommerceなどのEコマース事業者にもAPIを提供して連携するなど、こちらも他社とのアライアンスによってライバルの多いフィンテック業界の優位なポジションを確保することに余念がない。

同社の設立は2012年だが、そのルーツはギヨーム・ポサズ氏が2009年に創業したOpusPayments社に遡る。2017年に米国における投資ラウンドから2億ドル(約216億円)を調達した際に、それまでヨーロッパの記録保持者であったチャレンジャーバンク(銀行業務ライセンスを取得し、モバイル上で従来の銀行と同等のサービスを提供するスタートアップ)のOakNorth の記録を塗り替えた。そして、今年(2019年)5月に同じく2億 3,000万ドル(約248億円)を調達した際に20億ドル(約2,160億円)の評価を得てユニコーン入りした。

ところで、Checkout.comは、過去にTechNationが運営するFutureFifty Acceleratorのプログラムに参加している。UKには2019年6月時点で180社以上のアクセラレータがあるが、TechNationはそのトップ5に入ると言われており、FutureFiftyではUKの急速に成長するデジタル・テクノロジー企業50社をエンパワーするためにさまざまなプログラムを用意している。

Checkout.comはそのFutureFifty の2年間のプログラムを通じて、メンタリングをはじめ、技術的専門知識の習得やTechNationが提供するさまざまなネットワーク(その中にはUK政府も含まれる)に参加した。

このFutureFiftyプログラムには、2013年にスタートして以来、127社のスタートアップが参加している。冒頭でイグジットの事例として紹介したJust Eat、Zoopla、Farfetch、Funding Circle、Skyscannerもこのプログラムの卒業生だ。

Tech Nationによると、2013年から2018年の間にこのプログラムに参加している企業が、VCと資本市場を通じて合計80億ドルを調達している。その調達金額も、2013年の米国における投資ラウンドからの1億9,900万ドル(約215億円)から2018年の25億ドル(約2,700億円)と、毎年、着実に増加している。

今年(2019年)のFutureFiftyプログラムに新たに参加する24社が3月に発表されたが、その平均利益額が900万ポンド(約12億円)、平均調達額が3,750万ポンド(約50億円)、トータルの調達額が14億ポンド(約1,886億円)、平均成長率が187%と数字の上でも有望ぶりが伺える。そして、その大部分(84%)がロンドンの企業だ。

1009_04.png
(画像出典:TechNationウェブサイト

また、50社の事業領域は以下のグラフの通りだ。

1009_05.png
(画像出典:TechNationウェブサイト

やはり金融街であるロンドンに本拠を置く企業が多いせいかフィンテック系が目立つが、金融のデジタル化は世界共通のニーズであり、ユニコーンになる可能性も高い。それだけに、日本においても有能なフィンテック企業をサポートするアクセラレータの存在が、今後、益々、重要視されるのは明らかだろう。

Babylon

1009_06.png
(画像出典:Babylonウェブサイト

そして、今回紹介する中で最も新しくユニコーン入りしたのがデジタル・ヘルスケアのBabylon だ。

2019年8月に米国における投資ラウンドから5億5,000万ドル(約594億円)を調達し、時価評価額が20億ドル(約2,160億円)となった。主導したのはサウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)で、累計資金調達額は6億3,500万ドル(約686億円)に達した。

ロンドンに拠点を置くこのスタートアップは、モバイルアプリを介した3つのサービスでユーザーのヘルスケアをサポートしている。

まず、チャットで症状を伝えるとユーザーがどういう健康状態にあるか、もしくはどういう病気の可能性があるかをAIが教えてくれる。Babylonでは、これはあくまでも情報であって診断ではないと説明しているが、機械学習によって得られたデータを活用している。

次に、日時を指定しておけば、スマートフォンで直接、医師と話すことができる。365日、24時間対応で、ビデオチャットでも音声のみでも可。必要であれば事前に写真も送っておける。Babylonでは経験豊富な医師や専門家、セラピストを人選してくれる。また、医師はユーザーの選択した薬局に処方箋を送ってくれる。あるいは、薬を直接自宅に配送することも可能で、ほとんどの場合、1時間以内に届けられる。

3つ目はヘルスチェックだ。ライフスタイルや家族の病歴などに関する質問に答えると、Babylonが情報を分析して現在の健康状態を可視化してくれる。これも多くの医師や科学者が開発に関わっており、医療に関する世界最大のデータベースも活用している。

このアプリは現在、世界中の430万人に利用されており、1日あたり4,000件の医療診断を行っている。また、2018年4月以来、同社は中国のTencent、韓国のサムスン、カナダのTeleco Telusとパートナーシップを結んでおり、2019年8月現在、世界に約1,000人の従業員がいる。

ただし、アメリカへの進出にはいくつかハードルを超えねばならないという観測もある。その理由の一つに競合が多い事が挙げられるが、特に、マイクロソフトが今年(2019年)2月に提供を開始した、AIを利用したヘルスケアのチャットボット・サービスは強力な競合となるだろう。

なお、Babylonという社名は、2,500年前の古代都市バビロンに因んでいる。当時、市民は医療に関するアドバイスを求めて広場に集まり、病気に関する情報を互いに共有していた。これこそが、最も初期の民主化されたヘルスケアであり、古代社会から現代に伝わる「長く人生を楽しみたい」という想いが、このサービス名を想起させたという。このエピソードが示唆するものは、ユニコーンを目指すスタートアップにとっては意味深い。

フードデリバリー、海外送金、決済システム、そして健康管理と、その分野はさまざまだが、いずれも古くから変わらずに存在する課題に対し、新たなアイデアと技術によってソリューションを提供したビジネスだ。今も変わらないユーザーの不満、不便がどこにあるのか、それに気づき解決した者がその分野の、いわばBabylonになるだろう。

(※為替レートは2019年9月19日現在)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

INNOVATION HUBの最新情報をお届けします

プログラム

スタートアップ・アクセラレータ

  • MUFG DEGITAL ACCELERATOR

コンテスト/ハッカソン

  • 三菱UFJ銀行 FINTECH CHALLENGE 2018
  • 三菱UFJ銀行 FINTECH CHALLENGE 2016
  • 三菱UFJ銀行 FINTECH CHALLENGE 2015

月間記事ランキング

MUFG関連記事

Facebook公式ページ