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ブロックチェーン登場から10年~「スマートコントラクト」が実現する新しいビジネスの形とトークン経済圏とは

ブロックチェーン登場から10年~「スマートコントラクト」が実現する新しいビジネスの形とトークン経済圏とは

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2019/10/02

ブロックチェーン技術登場から10年

現在、世界中のあらゆる業界に革新をもたらしているブロックチェーン技術。2019年は、その登場から10年目の節目となる。電子情報を記録するための新たな仕組みであるブロックチェーン技術は、サトシ・ナカモトという正体不明の人物が暗号通貨ビットコインを開発した際に発明したものだ。

ブロックチェーンは「自律分散型台帳」とも表現され、非中央集権化かつ自律的な運用を実現しており、極めて改ざんが難しいシステムを構築できるという特徴を持っている。

ブロックチェーンが「インターネット以来の発明」であるという評価は、とりわけIT業界においては広く認知されているが、国内外を問わず、ブロックチェーンを利用したプロダクトやサービスの開発を目指すスタートアップも増加傾向にある。

例えばドイツ政府などが推進する第4次産業革命(Industry 4.0)では、AI、IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)等と共に、今後、産業のオートメーション化を推進する中核技術としても期待されている。

今回は改めて、ブロックチェーンがどのような業界、分野で実用化されているのか、その事例とともにブロックチェーンを活用したビジネスの開発ポイントについて解説する。

あらゆる分野のオートメーション化を促進

もともと暗号通貨のために開発されたブロックチェーンだが、その用途はそれだけにとどまらず、インターネット、IoT、AIとの組み合わせで、あらゆる分野の自動化を促進することが可能だ。

前述の通り、改ざんが難しいということは、人によるデータの管理工数が逓減されるということだ。人間同士の取引の場合は例えば印鑑や署名という形で証明できる。一方、これまでもAI同士が情報のやり取りを行い、契約を交わすことは技術的には可能だったが、その取引が改ざんされていないということを証明する必要があった。

ブロックチェーンは、契約の締結と履行を自動化する「スマートコントラクト」と呼ばれる技術を生み出した。これをブロックチェーン上で機能させることによって、契約後に契約内容の変更や改ざんが行われる懸念がなくなった。すでに、不動産業界では、スマートコントラクトを利用した不動産契約を取り扱う米Propyが、2018年3月に初めて自動的に取引を成立させた。

また、ドイツ政府が実現を目指すスマートファクトリー構想では、“人のいない工場”の建設が進められている。スマートファクトリーでは、受注、生産、出荷までを全自動で行う。工場のAIが小売店からの発注を受け、「工場長」であるAIが工場内の機械に生産の指示を出す。取引をすべて「スマートコントラクト」で行い、ブロックチェーン上に記録すれば、人が関与する必要はない。人の介入なしに取引が確定しモノが自動的に生産される世界が、ブロックチェーンの登場によって実現可能になろうとしているのだ。

ブロックチェーンによるオートメーション化の促進では、管理コストの削減効果も期待されている。今まで当然のコストとされていた人件費、管理費、手数料などがなくなれば、そのリソースは他に投下することができる。さらに、人が担っていた管理や監視、偽造の防止といった作業から解放されることになれば、より創造的な活動に集中して取り組むことができるようになる。

トークンとはなにか

「スマートコントラクト」を実現したイーサリアム

ビットコインをはじめとする暗号通貨は、ブロックチェーン上にデータを保存し管理することで、銀行などの通貨の発行主体を持たなくても機能した。そして、この技術を大きく前進させたのがイーサリアムの登場だ。

ヴィタリック・ブテリン氏が開発したイーサリアムのブロックチェーン上では、アプリケーションのプログラムコードを実行することができる。つまり通貨の取引だけでなく、あらゆる取引がブロックチェーン上に記録できるようになったのだ。前述の「スマートコントラクト」が実現したのはこの技術による。

「スマートコントラクト」を利用したさまざまなプロジェクトがイーサリアム上で運用されるようになったが、それらのプロジェクトではイーサリアム・ブロックチェーンを利用して独自通貨=トークンを発行し、その運営に役立てられている。

トークン経済圏の形成

この、通貨でも株でもない新たな概念をもたらしたトークンは、ビジネスやプロジェクトに関わる人々の間で独自の「トークン経済圏」を形成するようになり、地域通貨や企業内通貨など、さまざまなシーンでの展開の可能性を秘めている。

特に、サービスの提供者と利用者のマッチングを行うことでビジネスの新たなエコシステムを作り上げるシェアリングエコノミーにおいては、トークンの活用に期待がかかっている。既存のライドシェアサービスでは、例えばArcade City(米)やLa`Zooz(イスラエル)などではそれぞれ独自のトークンで利用料金を支払うことができ、VVShare(中国)ではそのトークンを法定通貨と両替することが可能だ。

ライドシェアサービスの新たな潮流?ブロックチェーンを活用したライドシェア

ブロックチェーンはどのようなプロダクトに適しているのか

記録に関わるあらゆる分野に

改ざんが難しいこと、それに伴い管理コストを削減できることから、ブロックチェーン技術は記録に関わるあらゆるプロダクトに応用が可能だ。金融の分野はもちろん、トラッキングが不可欠な流通、前述のスマートファクトリーに代表されるような工業においても「スマートコントラクト」が応用できる。

フィンテックの分野にブロックチェーン技術を利用する発想は、今や王道とも言える。有形無形の財産を扱う金融の分野では、決済システムにおけるブロックチェーン技術の利用によってデータの改ざんが難しいという信頼性を確保できるとともに、トランザクションの自動化によってチェック機関であるサードパーティのコスト削減にもつながり、加えてトランザクションの効率化が期待できる。

流通の分野においては、既に米小売最大手のウォルマートが「スマートパッケージ」と呼ばれるプロダクトの開発を進めている。「スマートパッケージ」では、顧客から預かった荷物がどこでどのように取り扱われたかが自動的に記録されていく。生鮮製品のパッケージが保存された部屋の温度や、パッケージに与えられた衝撃も記録することができる。そしてその効果は、運送会社も含む責任の所在を明らかにすることで、そのパッケージの流通に関わるスタッフ全体のモラルを向上させるとともに、運送会社等との紛争発生に起因するコストを削減することにある。

また、IBMやSamsungといった大手グローバル企業は、ブロックチェーンを国際物流に活用する動きを見せている。通関業務などの複雑な事務処理に加え、複数の企業をまたいで大量の取引を日々処理する必要がある国際物流には適した技術だと言える。

IBM、Samsung--国際IT企業が築くブロックチェーン国際物流システムから見たスタートアップ活躍の糸口

スマートファクトリーへの応用にも見られる通り、ブロックチェーン技術から派生した「スマートコントラクト」はこれからも多くの場面で活用される可能性が高い。決済のみならず、不動産、法律、エージェント業に至るまで、日々、膨大な数の契約を結ぶビジネスシーンにおいては重宝されるシステムになるだろう。

AI、IoT、ブロックチェーンスタートアップが生み出す新たなビジネスモデル

マジックワードに注意

ただし、プロダクトやサービスによっては、ブロックチェーンを利用する必要がないものも当然存在する。

システム自体がクローズドで誰が改ざんを行ったかがすぐに判明する場合や、記録を改ざんしたとしても、その結果得られる利益がない(少ない)場合など、そもそも改ざんを行うことにインセンティブが働かない状況下では、わざわざブロックチェーンを使う必要はない。

従って、「ブロックチェーン」というマジックワード(状況を変化させるために便利な言葉)に、開発者自身が惑わされないことが肝要だ。「ブロックチェーンを使っている」と言えば聞こえは良く注目も集めやすいが、導入や維持のためのコストも無視できない。「本当にこのプロダクトやサービスにブロックチェーンは必要か?」という視点を失わず、冷静に判断を下すことが求められる。

ブロックチェーンの開発は簡単にできるのか

開発に必要不可欠な専門知識

最後に、ブロックチェーンの導入やブロックチェーンを利用したプロダクトの開発に際して、どのような知識が必要かという点を押さえておこう。

結論から言うと、ブロックチェーンの開発は簡単ではない。開発にあたっては、各用途に応じたプログラミング言語(イーサリアムはGo言語、スマートコントラクトはSolidityなど)に加え、例えばブロックチェーンをフィンテックに活用する場合には金融に関する知識など、それぞれの分野の専門的な情報も当然必要になる。実のところ、これらの専門知識に精通している技術者は少なく、結果、ブロックチェーン・エンジニアを採用するコストは高くなる。

また、こうした人材を育成する際にも、相応のコストと時間が必要だ。ブロックチェーン技術自体がまだ発展の途上にあり、一般化されていないため、ブロックチェーンに対応したライブラリ(汎用性の高いプログラムのコードをまとめたデータ)や開発ツールが少ないという問題もある。ブロックチェーンを利用したサービスやプロダクトを専門的に扱う開発会社に委託する方法もあるが、この場合もコストは決して安くはない。ブロックチェーンの導入に際しては、専門知識と開発コストを十分に検討する必要がある。

世間の理解と知識のアップデート

また、ブロックチェーンを利用したプロダクトを公開できたとしても、確実に成功するわけではない。社会においてブロックチェーンのもたらす新しい価値を正しく理解し、信頼を得るまでにはいま少し時間を要するだろう。

現在はインターネットの存在を知らないという人は少ないだろうが、登場した時にはネットでお互いに常時接続されている未来など、多くの人は予想していなかった。しかし、その技術がもたらす新しい社会が理解されるに従って市民権を得るようになった。ブロックチェーンの開発に取り組む場合においても、ブロックチェーン自体の本質的な価値を人々に認知させ、信頼を得る努力を怠ってはいけないだろう。

なお、ブロックチェーンにも弱点がないわけではない。悪意を持ったマイナーが過半数を超えた場合に改ざんが可能になる「51%攻撃」や、自社トークンを暗号通貨取引所に上場した際に取引所自体がハッキング被害に遭う危険性など、さまざまな攻撃を受ける可能性を考慮しなければならない。

スーパーコンピュータの数千倍の処理能力を備える量子コンピュータが実用化されれば、ブロックチェーンのデータが改ざんされてしまうという予測もある(一方で、量子コンピュータ対策を施した仮想通貨も複数登場している)。ブロックチェーン技術を過信せず、常に情報と知識をアップデートしていくことが重要だ。

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