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ワーケーションが世界を相手にするスタートアップにとって意味するもの~巨大なビジネスチャンスへの入り口となる可能性

ワーケーションが世界を相手にするスタートアップにとって意味するもの~巨大なビジネスチャンスへの入り口となる可能性

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2019/09/17

昨今、「働き方改革」が提唱される中、「リモートワーク」や「テレワーク」という勤務形態を多くの企業が導入しはじめているが、さらに「ワーケーション」という働き方が注目され始めていることをご存じだろうか?「ワーケーション(Workation)」とは、「ワーク(Work=仕事)」と「バケーション(Vacation=休暇)」を合わせた造語で、オフィスを離れて旅行先や帰省先など、どこか別のところでゆっくり休暇を楽しみながらもネット環境を利用して仕事をするワークスタイルを言う。

日本でワーケーションがなぜ注目されているのか?

従来、フリーランサーやデジタルノマドの働き方であった「リモートワーク」(オフィス以外の場所でインターネットを利用して業務につく働き方、勤務形態)を企業が採用する背景としては、自社の重要な人材として層を厚くしてきているミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた人)の価値観が多様化してきていることが大きい。

この世代の優秀な人材ほど、自分のワークスタイル、引いてはライフスタイルを優先できる「働き方」を選び、勤務地や勤務時間などを必ずしも尊重しない傾向が強い。しかし、有能な人材を社内に確保しておきたいのは言うまでもない。

このリモートワークを可能にしたものは、インターネットをはじめとするテクノロジーの進歩だ。最新技術をうまく活用することで、社員の労働環境を充実させ、かつスムーズに業務を遂行できる。まさに、どこででも仕事ができる時代に突入したわけだが、休暇と仕事をミックスする形のワーケーションは、いわばそのリモートワークの発展形とも言える。


日本の企業で徐々にワーケーションが実行されるようになってきた背景には、社員が自由に長期休暇を取れないという日本独特の福利厚生上の課題も大いに関係している。

昨年エクスペディア(米オンライン旅行会社)が実施した「世界19ヶ国有給休暇・国際比較調査2018」によると、日本の有給休暇消化率は50%と、3年連続で世界最下位だった。加えて、「自分は今より多くの有給休暇をもらう権利がある」と考える人は54%で、こちらも同じく世界最下位だ。

この状況を改善するために労働基準法が改正され、2019年4月より全ての企業において、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の労働者(管理監督者を含む)に対し、毎年5日、年次有給休暇を確実に取得させることが義務づけられるにいたった。

その一方で、内閣府が2017年にまとめた調査結果(※1)では、社員が有給休暇取得に対してためらいを感じる理由として「皆に迷惑がかかると感じる」、「職場の雰囲気で取得しづらい」などが挙げられている。

企業に対して有給休暇の支給が義務付けられたとしても、取得する社員側にためらいがなくならなければ有効な解決策とはならないし、当然、有給の消化率改善には繋がらない。

しかし、企業が「ワーケーション」を制度として導入することで、日常業務に支障をきたす(つまり、同僚に迷惑をかける)心配もなくなるため、誰に気兼ねすることなくリフレッシュでき、社員の満足度もアップする。

また、企業側からすれば、社員の満足度をあげることで、離職防止や有能な社員採用につながる。また、自然災害や大火災などの緊急時において企業が事業を継続あるいは早期復旧するための方法、手段を取り決めておくBCP(事業継続計画)においては、本社以外に拠点を持ちリモートワークをすることで平時と変わらない業務を行うことが可能となるが、ワーケーションはそのための予行演習になるなど、福利厚生以外の効果も大きい。

徐々に増えつつある国内のワーケーション事例

国内では、日本航空が2017年7月から8月の間で、最大5日間のワーケーションができる制度を取り入れて話題となった。ワーケーションの開始時と終了時に上司に通知した上で、滞在先で働いた時間を勤務時間とみなし、規定の給与が支払われるという制度で、有給休暇と組み合わせることも可能とした。

同社はその後、2018年11月から12月にかけて鹿児島県徳之島町の「徳之島ワーケーション実証事業」にも参画した。社内で希望者を募り、10名がこの島で3泊4日のワーケーションを体験したが、滞在中は半日を通常業務にあて、それ以外の時間は観光や地元の人々との交流など、その地でなければ体験できないことを楽しんだ。

自然に囲まれた環境に身を置いて仕事をすることで、精神的にもゆとりが生まれ、また新しい事業アイデアが生まれるきっかけにもなったと同社は報告している。

このように地方自治体が企業とのコラボレーションによってワーケーションの環境を整備し、利用企業を誘致するプロジェクトは全国各地ではじまっている。

中でも和歌山県白浜町はその先駆と言える。同町の企業誘致スタートは2004年に遡るが、2015年、総務省のテレワーク推進のための地域実証事業委託先に採択されたのを機に、セールフォースなど米IT企業の日本法人が続々と入居した。

同町は2018年6月、「平草原公園」内にある公園管理事務所を建て替え、1階部分に公園管理事務所および公園の休憩所兼コワーキングスペースを設け、2階部分(4室)をオフィスとした「白浜町第2ITビジネスオフィス」を新たに開設した。

そこに三菱地所が今年5月より同施設内でワーケーションオフィスとして「WORK×ation Site(ワーケーション サイト) 南紀白浜」を開業。ここには、NTTコミュニケーションズの他、三菱UFJ銀行も入居しており全国でもワーケーションの先駆けとなる場所となっている。


なお、三菱UFJ銀行は7月、軽井沢町の自社施設内において自社行員のためのワーケーション施設も新設している。同行は2018年度にサテライトオフィスを全国6ヶ所に設けるなど、大手企業の中でも特に、リモートワーク、ワーケーションに積極的に取り組んでいる。

その軽井沢町のある長野県と前述白浜町のある和歌山県は、7月に「ワーケーション自治体協議会(通称:ワーケーション・アライアンス・ジャパン:WAJ)」の設立に向けて動き出した。ワーケーションを普及させることで地方を活性化しようという趣旨に、7月19日時点で全国の40自治体が賛同を表明している。

今後、東京五輪・パラリンピック、大阪万博など大きなイベントと絡ませて地方でのワーケーションを盛り上げる方針だが、地方都市が連携して情報発信することでより普及速度が増すことも予想される。

海外でのワーケーション事情

さて、こうしたワーケーションの海外での動きはどうなのだろうか。

滞在先でも仕事をすることで、休暇を楽しみつつ生産性を維持するという目的は同じでも、実はその概念には大きく違いがある。まず根本的に、社員が休暇を取ることに対する感覚が日本と異なる点がその一つとしてあげられる。

先のエクスペディアの調査によると、ブラジル、フランス、スペイン、ドイツ、香港、タイの有給休暇取得率が100%、イギリスが96%、メキシコ、シンガポール、韓国が93%、カナダが88%、台湾が86%、イタリア、ニュージーランド、インド、マレーシアが75%と、その休暇日数に多少の差こそあれ、日本の50%とは大きく開きがある。


さらに、ワーケーションについても、社員が自らスケジュールとロケーションを設定して実行しており、企業がお膳立てするというケースはほとんど見受けられない。

一方、現時点で日本の企業においては、ワーケーションはあくまで仕事が前提であって、施設は移動先のオフィスという位置づけだ。従って、会社が認定した場所に到着した後は、その場を動くことは想定されていない。かつ、同じ会社の社員が何名かグループとなってそこへ向かう。言い換えればサテライトオフィスにバケーションの要素が加えられた格好だ。

海外の場合、ワーケーションはあくまで休暇が前提であり、仕事をする場所は滞在先にある施設を利用する。企業が段取りするわけではないので、その行き先は各自が好きに選び、移動することもあり得る。業務を遂行できる環境であれば、海外旅行先も想定内だ。

日本では、いつものオフィスを飛び出したとしても、会社が用意した施設である限り、当然、会社の管理下にある。一方、海外ではそもそも休暇を取るという権利意識が当然にあるので、社員の自主性、自律性がある程度尊重される。

このことを文化の違いと言い切ってしまうのは簡単だが、むしろ、ワーケーションによって、日本人の「休みを取りづらい」という意識改革がなされるとするならば、そこに大きなビジネスのニーズがあると考えられる。

そのヒントとして、海外のコワーキングスペースが参考になる。

海外のコワーキングスペースで行われている「コワーケーション」

海外のワーカーが旅先で仕事をする施設として利用するのが、コワーキングスペースだ。コワーキングスペースは、その地域のさまざまな人が利用するワーキング・コミュニティだが、同時に地域外のワーカーの一時的な拠点としても十分に機能する。そうして、多様な人材が交差することでコワーキングの価値が高められる。

海外のコワーキングスペースの中には、長期滞在するワーカーのためのプログラムを用意している場合がある。それを、コワーキング・リトリート(Coworking Reterat)、もしくはコワーキング・バケーション(Coworking Vacation)とも言うが、ワーケーションに対して「コワーケーション(Coworkation)」と呼ぶ場合もある。つまり、「コワーク(Cowork=ともに仕事する)」+「バケーション(Vacation=休暇)」だ。

基本的にはワーケーションとほぼ同じで、旅の滞在先で休暇と仕事を両立させる環境を提供している。ただし、同じ会社の同僚が一同に集結するというのとは事情が違う。さまざまな職種のワーカー達が友好を深めつつ、各自の仕事をする。

現時点で独自に確認ができている限りでは、いま世界には約70のコワーケーションを提供する事業者がいる。これは3年前と比べてほぼ倍増しており、主に東南アジア、中南米、南ヨーロッパなど、比較的温暖で自然に恵まれ、かつ物価の安定している地域に集中している。長期滞在が前提であるワーカーにとって、これらは必須条件だ。

複数のロケーションを提供している事業者もあれば、一箇所のコワーキングスペースを提供している場合もある。また、通年でいつでも利用できる場合と、利用できる期間をあらかじめ設定しておいてシーズンごとに予約を受け付けるパターンがある。

わかりやすい例をいくつかあげておこう。

UNSETTLED (アメリカ)

・ロケーション:バリ、ブエノスアイレス、バハマ、ニカラグア、コロンビア、ギリシャ、レバノン、ケープタウン、コスタリカ、東京など
・利用期間:期間限定型(1週間、2週間、1ヶ月単位)

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(画像出典:UNSETTLED WEBサイト

Coworkation (インドネシア)
・ロケーション:バルセロナ、タイ
・利用期間:期間限定型(3日、4日、1週間単位)

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(画像出典:Coworkation WEBサイト

Unleash Surf (ペルー)
・ロケーション:ペルー
・利用期間:期間限定型(2週間、1ヶ月、2~3ヶ月単位)※2・3・4月のみ

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(画像出典:UNLEASH WEBサイト

Selina (イギリス)
ロケーション:アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、ギリシャ、グアテマラ、メキシコ、ニカラグア、パナマ、ペルー、ポルトガル、イギリス、
利用期間:通年型(1日単位)

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(画像出典:Selina WEBサイト

DojoBali (インドネシア)
・ロケーション:バリ
・利用期間:通年型(1週間、1ヶ月単位)

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(画像出典:DojoBali WEBサイト

Outpost (インドネシア)
・ロケーション:バリ、カンボジア
・利用期間:通年型(1日、1週間、4週間、12週間単位)

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(画像出典:Outpost WEBサイト


いずれにせよ、滞在中の宿泊施設と仕事をするためのワークプレイス(=コワーキングスペース)がパッケージになっており、オプションとしてその地ならではのさまざまなアクティビティが用意されている。このアクティビティ体験が、コワーケーションをより有意義なものにしてくれる。

このプログラムの利用者は、もともとはフリーランサーやデジタルノマドなど、Web環境さえあればどこででも仕事ができるワーカー達だった。しかし最近では、テクノロジーのおかげでリモートワークが一般企業にも普及するにつれ、ユーザー層も多様になってきている。

中にはビジネスオーナーである起業家が、新たな人材とアイデアを求めて各地のコワーケーションをハシゴしながら次の事業プランを立てていく、いわゆるリモートプレナー(Remotepreneur=移動起業家)なる人種も現れている。

利用者は平均2週間から1ヶ月、長い場合は2ヶ月以上滞在する。コワーケーションにおいて長期の旅行でも仕事ができるという現実は、いま、日本で広がりつつあるワーケーションの今後の可能性を示している。

というのも、海外におけるコワーキングスペースのビジネスは、コワーケーションを境にすでに次のフェーズに入っているからだ。

コワーキングスペースがスタートアップとして評価される時代

上記の事例の中にあるバリ島のコワーキングOutpostは、2019年5月にVC(ベンチャーキャピタル)から130万ドル(約1億3,780万円)を調達し、6月に同じバリで運営していたRoam(アメリカ)のコリビング事業を買収した。コリビングとは、いわばコワーケーションの長期版であり、だいたい6ヶ月から1年、あるいは2年程度の滞在型コワーキングを言う。

個室があり、入居者が共同で利用できるリビングやダイニングなどがあるが、コワーキングスペースも用意されていて、ただコストを抑えるだけでなく、ワーカーたちが、同じような価値観でつながり、場合によっては役割分担して共同で活動する拠点となる。前述のリモートプレナーなどのベースキャンプにもなりうる。

Roamは世界各地でコリビングを運営しており、今回、そのうちのバリの施設をOutpostが買収したわけだ。Outpostはもともと宿泊施設を自社で保有していなかったが、コワーケーションの需要が増加するにつれ、この買収話となったのだろう。Outpostの新しいコリビングは9月オープンの予定だ。

ちなみに、世界4大コンサルティングファームのひとつPwC(プライスウォーターハウスクーパース)は、有能な人材を引き寄せるためにはリモートワークが有効としている。また、過去20年以上に渡って約60,000人の有能な個人事業者を4,000社以上の企業に紹介している米MBO Partnersの2018年の調査によると、アメリカ人の約500万人が自らをデジタルノマドと呼び、更に加えて1,700万人がいずれどこにいても仕事ができるようになりたいと望んでいる。

Outpostは2025年に世界の労働人口の75%がミレニアル世代になると見込んでいて、今回の買収もそれを見越しての投資だと考えられる。

また、前述のDojoBaliはHubud(インドネシア)を吸収する形で2019年3月に合併した。これも増え続ける需要に対応するためと見られている。Hubudは、開業後5年を経過した2018年8月時点で、海外からの利用者がすでに85ヶ国から延べ8,000人を超え、コワーケーションの利用者は毎月200人に達していた。

なお、Hubudは施設を提供するだけではなく、起業家育成のための講座や、利用者同士を結び付けてビジネスリレーションシップを実現するノウハウがあるなど、ソフト面でも充実している。

単に設備を提供するにとどまらず、ビジネスパーソンをサポートする体制を整えるのも、コワーキングスペースの価値を決める重要な要件だが、日本のコワーキングスペースでそれが出来ているところは少ない。言い換えれば、それができればビジネスとしての価値は上がる。

ワーケーションがスタートアップにとって意味するもの

日本におけるコワーキングスペース事業からはにわかに連想できないかもしれないが、これはリモートワークが実現する新しいライフスタイルが、来るべき未来においてどのようなビジネスを可能にするかという、あくまでひとつの形態に過ぎない。

国内においてコワーケーション、またはコリビングを標榜する事業者も現れはじめているが、まだその規模は小さい。しかし、前述のごとく、ミレニアル世代が労働人口の大半を占める時代にあって、彼らの多様な価値観とライフスタイルをサポートするビジネスは有望分野の一つと考えられる。

スタートアップのPMF(プロダクト・マーケット・フィット)が数年先のマーケットをターゲットとするならば、日本で芽生え始めたワーケーションは、巨大なマーケットへのほんの入り口に過ぎないのかもしれない。世界ではコワーキングはスタートアップとしての評価を得る時代に入っており、日本でもそのトレンドを着実に捉えたスタートアップが登場することを期待したい。

(為替換算は2019年9月4日現在)

※1 仕事と生活の調和レポート2017 第3章 - 内閣府

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