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【後編】DPRIMEプロジェクトリーダーに聞く情報銀行の目指す未来~スタートアップとの協業で生まれる新しい価値とは

【後編】DPRIMEプロジェクトリーダーに聞く情報銀行の目指す未来~スタートアップとの協業で生まれる新しい価値とは

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2019/07/30

(三菱UFJ信託銀行株式会社 経営企画部FinTech推進室 齊藤達哉氏)

【前編】DPRIMEプロジェクトリーダーに聞く情報銀行の目指す未来~スタートアップとの協業で生まれる新しい価値とは

イノベーションを生み出すMUFGのシステム

――DPRIMEを始動するにあたって、社内ではどのようなプロセスを経て、このプロジェクトが立ち上がったのでしょうか。

MUFGのプロジェクト開発には、二つの“モード”があります。そもそもイノベーションの定義としてよくあるのは、「0→1」を指してイノベーションを指していることが多い。私は「0→1」を生む“クリエーション”に、「1→N」を生み出す“オペレーション”が足されなければ、本当の意味での大きな変革は起こせないと思っています。適切なオペレーションがなければクリエーションも途絶えてしまう。イノベーションを社会変革という意味で捉えると、大きく成長させるという話も伴わなければ事業としては意味がない。

しかし、この二つはそもそも文化が異なります。クリエーションの文化では、結果的に失敗に終わったとしても、フィードバックを持ち帰り、次に活かさなければいけない。「失敗=NG」ではない文化です。対照的に、オペレーションの方は、「失敗したら終わり」という文化です。しかし、イノベーションを起こすにはこの二つの組み合わせが必須になるので、ここをどう橋渡ししていくかということが、本質的には重要になると思います。

先ほど申し上げたMUFG内の“二つのモード”というのは、モード1がクリエーション、モード2がオペレーションです。最初からオペレーション重視でクリエイティブな取り組みはできないため、「0→1」から「1→N」の間には大きな隔たりがあります。オペレーションでリスクを取れないということであれば、モード1の段階でリスクを確認してから、モード2に進める。リスクが不確定な状態であれば、それに備えるための投資が必要ですが、クリエーションの段階でその資金を投入できるかというと、通常は難しい。リスクがある程度見えてくれば、徐々に資金を使えるようになっていきます。

私たちの場合は、企画段階から内部でプロジェクトを管理して、モード2がコストを負担する。クリエーションにコストを負担させるとまず着手ができない。着手しないことには一連のサイクルが生まれません。なので、最初は着手するために資金を投入します。このサイクルをこなして崖を越えると、モード2のオペレーション主導に移っていきます。

その時点でプロジェクトは各部門の所管になるのですが、FinTech推進室も引き続き関わり続けます。プロジェクトが自立できればその限りではないのですが、プロジェクトマネージャーの機能も必要です。例えば、投資の負担具合は全額部門負担なのか一部負担なのか、もしくは向こう3年間は様子を見たほうがよいのか、というような部分は案件次第で決定していきます。

まず種を生み出す、その種を部門で育てていく。オペレーションの世界は四半期ごとに業績を評価し、効率を上げながら成長させていくという考え方が合っていると思います。クリエーションをオペレーションの段階へ到達させるまでのハードルがかなり高いので、このような仕組みを作っています。

――こうした仕組みの中からDPRIMEのようなプロジェクトが生まれているのですね。

そうですね。正式には2016年12月にFinTech推進室ができたのですが、このスキームは2017年の春から走り始めました。モード1で何度もサイクルをこなし、可能性があるプロジェクトの実証実験を進めていきました。現在は複数の案件が同時に動いています。この仕掛けが健全にワークするためには、それなりのバジェットが必要です。モード1については資金調達の主体として説明責任を背負っているという感覚で仕事をしています。

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(三菱UFJ信託銀行株式会社 経営企画部FinTech推進室 齊藤達哉氏)

――こうした仕組みはどのように生まれてきたのでしょうか。

元々はこのような仕組みがなく、モード2(オペレーション)だけがある状況でした。しかし、部分的な取組みだけではイノベーションはなかなか上手くいかない。もう少しスコープを広げてビジョンドリブンで取り組んでいく案件を作っていくべきだと考えました。現場で議論するうちに社内横断的な役割を担う組織としてFinTech推進室を作った方がいいのではという話になり、実現する運びとなりました。上層部は話を聞いてくれますし、そういう意味ではMUFGは現場の発言力が強くボトムアップの会社だと思っています。

スタートアップの立場に立つと、信託銀行は協業相手としては「堅い」と思われるかもしれませんが、このようなボトムアップの文化があります。外部のメンバーも分け隔てなく、同じプロジェクトチームの一員という気持ちで取り組んでいます。例えば、スマートフットウェアの実証実験では、私もno new folk studio社の社員だと思ってプロジェクトに携わっていますので、柔軟に、色々なことに挑戦できます。

企業側が情報銀行から得られるメリット

――では、企業側にはどのようなメリットがありますか。現時点でどのような企業が興味を持っているのでしょうか。

具体的な協業先としては昨年発表した10社*があります。前述のウェアラブルデバイスを展開するno new folk studio社、個人資産管理アプリを提供するマネーツリー社をはじめ、各社とも行動履歴をスマホ本体が持つGPS機能から集約するという構想になっています。

*DPRIME β版の実証実験に参加した10社(五十音順、敬称略)

株式会社アシックス
株式会社NTTデータ
Japan Digital Design株式会社
テックファーム株式会社
東京海上日動火災保険株式会社
株式会社no new folk studio
マネーツリー株式会社
株式会社三菱UFJ銀行
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ
レイ・フロンティア株式会社

企業側が得られるメリットは二種類あります。まずスタートアップのような新興企業については、MAU(Monthly Active Users)を持っている情報銀行から彼らのプロダクトやサービスに送客することができます。

例えばデータの保有企業が対象となるスマート製品をオファーし、サイトやイベントに誘致して実際の商品を手に取っていただく。スタートアップシーンを盛り上げつつ、ユーザーにとっては新しい体験により生活が便利になり、そこから新たなデータも生まれ、更にそのデータが価値に変わるというパターンが一つです。

もう一つは、データを持っている企業が、データはあるけれど自分たちではどうすればいいか分からない、というケースです。自分たちが保有するデータが提供され、その利用度合いに応じて収益が還元されるとなると、それまで収益化できていなかったデータが新たな価値を生むということになります。

――確かに、データはあるけれど、そもそもデータの使い方が分からないという企業は多いようですね。今後は、コンサルティングのような事業もされていくということでしょうか。

中央でプラットフォームを運営する立場としては、情報を利用する企業や団体の方々に対しそうした提案を行っていく必要があるとは考えています。情報を利用したいと考えられる方々は、戦略的な意図を持っていると同時に、経営課題を認識されている方々だと想定しています。

金融機関はこれまで財務的なお悩みに応えてきましたが、信託では加えて年金や、不動産、証券代行など、必ずしも財務だけではないお悩みにもお応えしてきました。情報銀行は、事業そのものに直接タッチして、どのようにデータを活用できるかという疑問に応えていく役割も担うことが可能です。ですので、情報集約や利用を希望される企業・団体に対するコンサルテーションも、どこかと協働する選択肢も持ちながらですが、将来的には検討するべきだと考えています。

スタートアップとの協業の可能性

――DPRIMEがスタートアップと協業をしていくにあたって、なにか条件は定められていますか。

まずデータを利用する意図を持っている企業・団体については、ある一定のガイドラインが設けられています。私たちは一人一人の生活者の立場で仕事をしますので、生活者ドリブンで物事を考えています。データの流出への対策など、データ流通における安全性が重要になりますが、個々人がデータの利用企業を一社一社調査するのは事実上難しい。その部分を私たちが一部代替できると考えています。

本当に同意した目的にしか使わないのか、データを渡して保管する上でサイバーセキュリティ上の安全基準を満たしているかなど、情報銀行の認定ガイドラインに沿って、生活者のために入念なチェックを行います。

一方、今のところ、データを集約する対象となる企業についてのガイドラインは設けていません。それこそがオープンイノベーションの世界だと思っていますので、情報銀行に繋がる入り口というのは常に用意しておく。希望される方は門を叩いていただいて、どんどん繋がっていけるようにすると、生活者にとって有用なラインナップの充実という要件も満たされていくと考えています。

MUFGが生み出す、独自のイノベーションの今後に期待

情報銀行がある生活は、ユーザーにとってはいわば未知の世界だ。DPRIMEはこの未知の世界をより多様で質の高いものとするために、スタートアップとの協業に積極的に取り組む姿勢を見せている。そして、イノベーションを生み出すことを可能にするMUFGのシステムがその取り組みを下支えしている。今後、DPRIMEが多様なスタートアップとの協業によりユーザーの生活にどのような変化をもたらすのか、今後の展開に注目したい。

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