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【前編】DPRIMEプロジェクトリーダーに聞く情報銀行の目指す未来~スタートアップとの協業で生まれる新しい価値とは

【前編】DPRIMEプロジェクトリーダーに聞く情報銀行の目指す未来~スタートアップとの協業で生まれる新しい価値とは

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2019/07/24

(三菱UFJ信託銀行株式会社 経営企画部FinTech推進室 齊藤達哉氏)

三菱UFJ信託銀行が運営する情報銀行のプラットフォーム、DPRIME。個人が自らの意思でパーソナルデータを管理・提供し、データを活用したい企業からオファーを受ける。利用者には、どのデータをどういった目的で利用するのか、どのような対価を受け取れるのかがあらかじめ明示され、個人の意思に基づいたデータの提供、運用が行われる。

2018年11月には、アシックス、NTTデータ、マネーツリーをはじめとする企業10社と共に、1,000人規模の実証実験を行った。実証実験に参加した10社には、MUFGが主催する「MUFG Digitalアクセラレータ」に参加したスタートアップ、no new folk studio社も名前を連ねた。

信託銀行がパーソナルデータを扱うという革新的な試みが広がれば、人々のライフスタイルは大きく変わる。だが、そもそもこのアイデアはどのような背景を持って生まれ、どのような仕組みでどこまでプロジェクトが進んでいるのか、そしてスタートアップはどのような形でこのプラットフォームに参加できるのか――。DPRIMEのプロジェクトリーダーで、三菱UFJ信託銀行経営企画部FinTech推進室の齊藤達哉氏に、現在の状況、そしてプロジェクトが生まれた背景を聞いた。

伝統的資産を守る信託銀行。デジタル資産の価値も、守りながら増やしていきたい

――まず、なぜ信託銀行が情報銀行のプロジェクトを始めることになったのかお聞かせください。

「なぜMUFGがデータの分野に?」というご質問をよく頂きます。“伝統的資産”と呼ばれる資産があるのですが、これは皆様が普段利用されている金銭や債権、有価証券や不動産といった、普段「資産」と言った時に想起する資産のことです。信託銀行は、長年にわたって、受託者責任に基づき、この受託した資産を保管して価値をお守りしたり、例えば投資信託のように価値そのものに付加価値をつけて増やしたりといった業務を行ってきました。

【後編】DPRIMEプロジェクトリーダーに聞く情報銀行の目指す未来~スタートアップとの協業で生まれる新しい価値とは

まず、この伝統的資産自体が、電子化によってデジタル化されつつあるという流れもあります。また、最初からデジタルなものが資産として生まれる場合もあり、いわば“デジタル資産”と呼ばれるものが増えてきています。日本政府が提唱するSociety5.0においては、このデジタル資産が爆発的に増えていくということを想定しており、暗号通貨またはトークンと呼ばれるものや、今回のプロジェクトの対象としている、個々人の本来的な所有物であるパーソナルデータといったものもデジタル資産の例として挙げられます。

私たちがこれまで伝統的資産の分野で担ってきた、価値を守る、移転する、あるいは付加価値をつけるといったいわばインフラとしての機能は、デジタル資産においても価値を発揮することが可能であろうと考え、「情報銀行」を構想しました。

個人へ発信される広告やレコメンドは、多くの「匿名データ」から生まれている

――では、情報銀行というシステムを通じて、実現したいことは何ですか?

情報銀行のメリットとして、パーソナルデータの提供によって対価が得られるという点がクローズアップされがちです。しかし、私たちが本質的な価値と考えているのは、個人の同意を得てパーソナルデータが適正な形で流通することで、個人の生活がより便利で豊かになるということです。例えば、ジムに行った時に自分に合ったパーソナルトレーニングのメニューが出てきたら、便利だと思いませんか? 私たちとしては、そうした一つ一つのユースケースをいかに作っていくかということが、情報銀行の成否を分けると認識しています。

現状のデータ流通のあり方はCRM型と呼ばれており、Cはカスタマー(Customer)、RMはリレーションシップ・マネジメント(Relationship Management)を意味します。この場合、主語は「企業」になっており、企業が顧客(=個人)のデータを管理するためのデータ流通の形となっています。実際には、企業Aが個人Bに対して何らかのサービスまたはアプリを提供し、利用規約を読んでいただいた上で同意を得るということです。

ただ、個人Bからすると、サービスを一刻も早く使いたいという気持ちから、実際には、規約文を読み飛ばして同意ボタンを押す、ということもあり得ると思います。個人情報の観点で言うと、認識外でデータの利用に同意している、ということになります。個人情報の利用目的は規約に記載されているのですが、その内容を正しく認識しないままサービスを利用しているわけです。

企業Aからすれば、このようにして同意を得ているものの、認識外の同意である可能性についても考慮しつつ、データを収集しているというのが実情です。企業Aは、集めたデータを、個人情報保護法に抵触しないように匿名データに加工して企業Cに融通します。このような形で収集されたデータはどこまで行っても匿名なので、「この人はこういう属性だろう」という推測で区分けを行います。その区分けに基づいて個人Bへ広告かレコメンドが返ってくるというのが、ビッグデータの世界です。

しかし、そもそも認識外の同意に基づいてデータが提供されてしまっている上に、それらが断片的な情報に過ぎないために、結果的に、個人Bに返ってくるものがあまり望んでいない広告、的外れなレコメンドになってしまっているケースも多いと思います。ある意味、企業と個人の間で円滑なコミュニケーションが行われていないというのが現状だと思っています。情報銀行が実現を目指している状態とは全く違う世界だと考えています。

パーソナルデータを個人が全て管理する時代が来るが……

――現状では、個人情報が企業主導で管理されているということでした。では、今後はどのように変化していくとお考えでしょうか。

ビッグデータのCRM型に対して、今後実現するであろう個人起点のデータ流通はVRM型、ベンダー・リレーションシップ・マネジメント(Vender Relationship Management)型と言われています。ここでは主語が個人=生活者になります。個人が主導してベンダー、つまり自身がデータを提供する企業を管理するという構図で、先ほどのCRM型とは立場が逆転します。

欧州ではGDPR(EU一般データ保護規則)という形ですでに実現しており、パーソナルデータの扱い方が完全に個人主導となります。先ほどのケースで言うと、VRM型では、個人BがPDS(パーソナル・データ・ストア)と呼ばれる場所で自身のデータを全て管理します。企業Aから企業Cにデータを受け渡すということを全て自分で確認・管理した上で、金銭も含めた対価が全て自身に返ってくるというのが、VRM型データ流通の世界です。

VRM型は個人が起点であり、パーソナルデータの開示先を全て自分でコントロールします。しかし、その問題点を一言でいうと「手間がかかる」ということです。例えばA社のポイントを貯めるために、自分に対するA社のレコメンドの精度を上げたいと思ったとして、C社のサイトから購買履歴のデータをダウンロードして自分のPDSに保管し、これを取り出してA社のサイトにアップロードする、ということを個人がやるかというと、ちょっとイメージしにくいですよね。

DPRIMEが目指すのは、パーソナルデータの管理を一元化して代理で行うプラットフォーム

――たしかに、個人情報の管理をすべて個人が行うのは難しそうですね。

私たちが提案している情報信託型というのは、開示先は全て個人がコントロールし、対価は個人が受け取るという点ではVRM型と同じですが、個人が管理していくにはハードルの高い領域を私たちが仲介者としてお手伝いすることを想定しています。デジタル資産におけるインフラとして、私たちが想定している役割は大きく分けて二つあります。

① 個人のパーソナルデータを保管しておく場所の管理、保全を行う。

② 実際に個人に関するデータを集めて誰かに渡すというデータの仲介役を担う。企業Aから情報を取ってきて企業Cに渡してくださいという指図を私たちへいただければ、指図通りに執行する。

0724_2.png (図1:スキーム概要)

これは、今まで信託銀行が行ってきたことと良く似ていると考えています。例えば、お客さまからお金をお預かりしてお客さまの指図に基づいて運用するような業務を行っていますが、このお金がパーソナルデータに置き換わったに過ぎません。この管理と運用の部分をお手伝いするのが、情報信託型の仕組みです。個人=生活者主導であるということを担保しつつ、データの管理や開示先を統制するというコントロールの部分は、信託銀行が下支えしていくということです。

実際に提供するインターフェイスは、DPRIMEというアプリです。お手元のスマホにあるDPRIMEのアプリを通して、信託銀行に指図を行って頂く。お預かりする対象の一つがパーソナルデータです。今回のDPRIMEにおいては私たちが利用企業としてデータを利用することはありませんので、データを入れるDPRIMEのPDS(パーソナルデータストア)は、いわば貸金庫のようなものです。信託銀行のサーバー上に個人のパーソナルデータがあるものの、私たちは中身を見ることはできないという状態です。

そして、パーソナルデータを提供した結果として受領する金銭的な対価も、信託銀行が管理します。データを渡したのに対価が個人に返ってこないということが起きないように、提供するパーソナルデータと受領する対価の双方を私たちが管理・保全するという点がDPRIMEの特徴です。

情報銀行は、個人とデータ利用者を適切にマッチングして双方に利益を生み出す仕組み

――具体的には、どのような流れで個人情報のやりとりが為されるのでしょうか。

DPRIMEに関わるのは、ユーザー・データ保有者・データ利用者、そしてDPRIMEを運営する三菱UFJ信託銀行です。アプリのユーザーは、個人=生活者です。普段使っているECサイトに購買履歴が残っていたり、スマートウォッチで心拍数を記録していたりと、色々なところにパーソナルデータは分散しています。そのような状況の中で、ユーザーは、DPRIMEアプリを通じて各種サービスからのデータ集約を指示します。私たちは個人の同意のもとに、データの集約を行います。

データ保有者は、ECサイトやスマートウォッチを販売している会社など、様々なサービスを提供している事業者です。これらの、個人に関するデータを分散して持っている各企業に対し、個人の同意に基づき開示請求を行います。個人に関するデータは先ほどのPDSという貸金庫のようなサーバーに入っていきます。このデータは基本的には毎日更新されていくものですが、全て自動的に行いますので、個人は都度自分で更新するよりも楽に管理できます。

データ利用者として想定しているのは、調査やマーケティング、新商品・新サービスを開発する意図を持った企業や、調査を行う研究機関、公共サービスなどです。例えば、公共サービスについては、住所変更のように、個人のデータが書き換わると、他のサービスにも連動して自動的に反映されることにより手続きを簡略化するサービスや、相続が発生した時の複雑な事務処理をデータ共有によって簡略化する、というような仕組みを目指している機関を想定しています。

――パーソナルデータを適切に活用することによって、日々の生活がより便利になるのですね。

DPRIMEは、私たちの裁量で運営を行うのではなく、「個々人がデータの提供をする前に必ず確認を行う」という、透明性を重視した仕組みになっています。個人の同意をあらかじめ得ていますので、データ利用者も正々堂々と本人が承諾済みのデータを受け取ることができ、ユーザーの属性を推測する必要もなく、的確なマッチングを行うことができるのです。

パーソナルデータの対価として個人に返ってくる対価には二種類あります。一つは金銭で、前述の通り信託銀行として私たちが管理・保全させて頂く部分です。もう一つは、個々人に最適化した生活の質を向上させるサービスが提供されるということです。これが、情報銀行が介在する本質的な価値です。これまで個人は、匿名データに基づいた多くの望まない広告、的外れなレコメンドを受け取っていました。しかし、データ利用者が最初からパーソナルデータの提供を受けることができれば、精度の高いレコメンドができるようになります。新しいイノベーションを生むためのインフラとして、信託銀行が機能できるのではないかと考えています。

行動履歴・資産状況……集約することで利用者に「気付き」を与える

――DPRIMEアプリのインターフェイスは、どのようなものですか?

0724_3.png (図2:自動で集約・蓄積するデータを一覧から選択)

実際のアプリ画面のサンプルが図2です。重要なポイントは、どのデータを情報銀行に蓄積するのかということについても、個々人の意志が働くということです。いずれにしても、私たちはデータを勝手に見るということはできませんが、情報銀行に集約したくないデータは、アプリで情報集約をオフに設定すれば、集約自体を行いません。

0724_4.png(図3:集約したデータを多角的に可視化し、自分自身のことをよく知る(行動履歴))

図3のライフログのドーナツグラフでは、どこで、何時間、どんな活動をしていたかということが示されています。最初はある程度手動で入力する必要がありますが、学習が進むと、この場所にいれば働いている、この場所にいれば寝ているというように、自動で入力されるようになります。「詳細」をタップすると、ロケーション名やそこで何をしていたかなど、生活のカテゴリーと時間配分がわかります。これだけでも、仕事のスタイルや余暇の過ごし方等、データ利用者にとっては個人の属性がわかるデータになります。

また、個人にとっては、提供するデータの具体的な内容をあらかじめ認識できなければ、第三者に安心してデータを渡すことは難しいですよね。例えば、○月○日から×月×日までの行動履歴データの提供オファーがあった時に、その中に渡したくないデータが含まれていれば渡さない、と判断ができるように、データを可視化しています。

例えば個人資産管理アプリでは、分散している金融機関の口座、ポイントなどを纏めて「総資産」という形で可視化することで、お金に関する“気付き”を提供しています。私たちは、資産状況だけではなく、行動履歴等のデータも収集し、ユーザーにとって、自身に関する総合的なデータ集約の結果がわかるようにしていきます。自分に関するデータが統合され、可視化されるというだけでも、新たな気付きを与えてくれるという価値が生まれると思っています。

0724_5.png(図4:集約したデータを多角的に可視化し、自分自身のことをよく知る(歩行・走行データ))

例えば、MUFGのアクセラレータプログラムで協働したno new folk studio社のスマートシューズは、履いていると自動的に自分の歩き方のクセや歩数、スピード、着地の仕方等が自動で計測できるようになっています。これもあえてデータを可視化することの意義の一つです。

例えば、行動履歴で労働時間を計測し、さらに総資産データや入出金データなどを掛け合わせることによって、労働時間と給与の関係も計算できます。このように、データを集めることで初めて分かる部分でも、気付きという価値を掛け算式に増やしていくということが可能になります。

ラインナップの充実に注力。スタートアップとの協業も

――これらの一般の消費者へのメリットについては、現時点でどの程度まで見通しが立っているのでしょうか。

今、ご説明した内容は、リリースの時点で全て実装する予定です。データの集約と可視化、それと並行してオファーが届き、応諾すると対価を受け取るという流れは、全て実現可能です。目下、注力しているのは、集約対象データを充実させるための各社との個別の調整です。例を挙げると、資産情報について、データを集約してくる対象が三菱UFJ銀行しかないということでは、ユーザーにとって便利とは言えませんので、個人資産管理アプリを提供するマネーツリー社に加わっていただいています。

その一環として、スタートアップの方々との協働が挙げられます。すでにお伝えしていますが、昨年のno new folk studio社との協業は理想的でした。私たちはシューズメーカーでもセンサーメーカーでもありません。ウェアラブルデバイスからデータを自動的に作っていくという部分は、no new folk studio社に一日の長があります。

単にセンサーが入った靴というだけではなく、靴自体がブランドとして魅力的で、その靴を履くこと自体を続けたいと思っていただかないと、ユーザーは離れてしまいます。個々のサービスを提供する企業で大変工夫されているところですので、信託銀行だけで取り組むのではなく、そうした企業との掛け算で組み合わせの例はたくさん生まれると思っています。

一方で信託銀行に一日の長があるのは、データの提供を受けたい企業とのコネクションと、データの保管場所としての信頼感です。私たちには、これまで信託銀行として先人が築き上げてきたサイバーセキュリティ、守りの堅さがありますので、スタートアップの方々とは、お互いの強みを活かして補い合えると考えています。

【後編】DPRIMEプロジェクトリーダーに聞く情報銀行の目指す未来~スタートアップとの協業で生まれる新しい価値とは

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