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感情認識AIは表情・文章・声から感情を読み取るテクノロジー~ディープラーニングが可能にするビジネスの可能性

感情認識AIは表情・文章・声から感情を読み取るテクノロジー~ディープラーニングが可能にするビジネスの可能性

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2019/06/27

感情認識AIは遠い未来の話?

「AIが人の感情を認識する」と聞いて、あなたはどう思うだろうか。遠い未来の話のように思うかもしれないし、現実離れしていると思うかもしれない。だが、現在、感情認識AIはすでに実用化・商用化の段階にあり、様々な分野での活用が始まっている。決して遠い未来の話ではなく、いま注目するべき最新テクノロジーの一つなのだ。

そもそも、感情認識AIとはどのようなテクノロジーを指すのだろうか。感情認識AIとは、その名の通り、人間の感情を人工知能で読み取るシステムのことで、英語では簡潔に「Emotion AI」と呼ばれることが多い。一言で「感情認識」と言っても、分析の対象となるのは、ターゲットの表情や文章、声など様々だ。「快」と「不快」を判別するだけのシンプルなシステムもあれば、喜怒哀楽やストレスの度合いを読み取るものも開発と実用化が進んでいる。

参考:感情はプログラムできるのか? ペッパーにみる感情エミュレーションのリアリティ

ではなぜ、感情の読み取りを人工知能に任せるのだろうか。AIに感情を認識させるプロセスは、主にディープラーニングで進められる。人間がAIに問いと答えを教えていく機械学習では、感情の読み取りには限界が生まれる。人間ですらターゲットの感情を正しく判断できるとは限らないからだ。

与えられたデータを材料にAI自身が学習を進めるディープラーニングを用いることで、人工知能は人間では捉えられない表情や声の機微を認識できるようになる。ある感情を抱いた人間に共通する特徴が、普通の人間では捉えきれないほど細微なものだったとしても、AIに自己学習させることで自動的に読み取ることが可能になる。AIが人の感情認識能力を超えて、これまで及ばなかった領域をカバーしてくれるのだ。

様々な活用方法

感情認識AIの恩恵に与る業界は多岐にわたり、様々な製品の品質を向上させるのに役立つだろう。例えば、自動車や火器などの製品に搭載すれば、利用者が苛立っている時、不安が募っている時など、精神的に不安定な状態にある時に使用を制限する機能を付けることもできる。人工知能による感情認識システムが、顧客の安全を守ることに繋がるのだ。

もちろん、感情認識AIは“制限”だけでなく、人間のサポートにも利用できる。家庭では、インターホンに設置されたカメラで訪問者の感情や緊張状態を読み取り、家主に伝えることができれば、来客対応の一助になる。ATMに設置されているカメラで感情認識を行うことができれば、防犯対策にもなるだろう。

とはいえ、具体的な利用事例がなければ、感情認識AIがどれほど身近なテクノロジーなのかという実感も湧かないかもしれない。現実的な使い道が見えてくれば、感情認識AIの持つ可能性とその現実味が理解できるだろう。現在進行形で開発と商用化が進められている感情認識AIの事例をいくつかご紹介しよう。

感情認識AIの利用事例

Affectivaの多角的戦略――自動運転車にも

Affectiva社の感情認識AIは、FACS(Facial Action Coding System)と呼ばれる顔の筋肉の動きを検知するアルゴリズムを採用している。ここに約70億件の感情データと670万件以上の表情に関するデータを組み合わせることで、対象の感情を読み取ることができる。

Affectivaは2019年4月、車載用の感情認識AIの開発のため、2,600万ドル(約28億8,600万円)の資金調達を完了したと発表した。このラウンドには複数のベンチャーキャピタルが参加したが、リードインベスターは自動車部品メーカーのAptivだ。Affectivaは車内カメラに感情認識AIを搭載することで、ドライバーの安全を確保することを目標に掲げている。例えば、ドライバーの眠気を検知した場合、AIが合成音声でドライバーに話しかけ、音楽をかける、車内温度を調整する、車を停めて休憩を入れるなど、眠気覚ましのための提案を行ってくれる。将来的には同乗者の表情からも感情を検知することで、シェアライドのドライバーを補助する構想もある。

また、2018年3月には、Affectivaは自動運転ソフトウェアを開発するRenovoと共同で、自動運転車に表情検知システムを搭載した実証実験動画を公開した。この実験動画では、自動運転車のドライバーの表情から車の前方に注意を向けているかどうかを検知し、ドライバーがよそ見をしていればビープ音を鳴らして注意を促すなどの対応を行う様子が公開された。

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Renovo Auto YouTubeより

「自動運転車ではドライバーが居眠りやよそ見をしてしまい、緊急対応ができない」という懸念に対し、対策が可能であることが示されたのだ。感情認識AIは、自動化が進む現代に必要不可欠な技術となっていくだろう。

自閉症の児童の学習支援に

そもそもAffectivaはマサチューセッツ工科大学のMITメディアラボから誕生した企業だ。MITメディアラボでは自閉症を抱える人々を支援するための研究開発に取り組んでおり、Affectivaの感情認識AIも自閉症を抱える児童との意思疎通を促進する目的で開発が進められていた。Affectivaは神経テクノロジーを扱うBrain Power社と共同で、自閉症を持つ児童の感情認識学習をサポートするAR(拡張現実)スマートグラスシステムを開発。“ブレインパワー・システム”と名付けられたこのウェアラブルデバイスは、ゴーグルに写った相手の表情から、その感情を読み取る。

ブレインパワー・システムを装着している子どもは、その相手の感情を「怒っている」、「笑っている」などの二択から正解だと思う答えを選択する(この作業は全てゴーグルに映し出されたAR上で行われる)。児童がうまく感情を読み取ることができれば、ポイントが与えられる仕組みで、ゲーム感覚で相手の感情を読み取る訓練を積むことができる。

感情認識AIは、顧客の感情を認識してそれに応じたサービスを提供するだけではなく、感情を先読みして答えを教えるという形で人間の学習を補助する役割を果たすこともできる。ビジネスの世界においても、近年は知能指数を示すIQよりも、心の知能指数を指すEQ(Emotional Intelligence Quotient)を重視する傾向が強くなっている。相手の感情を読み取る力は、電子化の時代を迎え、現実世界での繋がりが希薄になりがちな現代でこそ求められているスキルだ。感情認識AIは、感情認識の判断をAIに「任せる」だけでなく、人間の感情認識能力を「伸ばす」ことにも役立つのだ。

マーケティングへの活用

Affectivaの感情認識AIは、すでに商用利用が始まっている。広告代理店の東急エージェンシーは、2018年6月に動画評価ウェブ調査サービスのEmotion Captureの販売を開始した。このEmotion CaptureにはAffectivaの市場調査用感情解析サービスAffdex Market Researchが採用されている。感情認識AI・Affdexを搭載したこのサービスは、動画や広告を閲覧している視聴者の表情から、その感情の変化を正確に読み取る。Emotion Captureでは21の表情、7つの感情、2つの表情指標を分析し、動画の製作者はその推移をグラフとスコアで数値化された情報として取得することができる。

このデータをもとに、映画やコマーシャルのどのシーンで視聴者は感動しているか、どの俳優が登場した時に気持ちが高揚しているか、どういった展開で飽きを感じているかなど、より細かな分析が可能になる。このデータに回答者の性別や年齢といった属性を追加することで、マーケティングの精度を高めることもできる。

これまでの自己申告によるレビューでは、製作者に対する視聴者の気遣いが結果を左右したり、視聴者本人ですら視聴中の感情を忘れてしまうこともあった。調査協力者の脳波を測る高度な調査方法も存在していたが、専用の機器が必要な上、協力者には会場まで出向いてもらう必要があった。スマホやノートパソコンのインカメラとソフトウェアだけで消費者の感情の機微を数値化できる感情認識AIを利用すれば、調査対象者は自宅からでも調査に協力することができる。今後このシステムの利用が広がれば、マーケティングのあり方も大きく変わっていくだろう。

店舗の広告メディアなどを通して“インストア・メディア・ソリューション”を提供するMOOD MEDIAは、来店した顧客の表情から“喜び”や“不快”といった感情を読み取るシステムを開発した。このシステムにより、店舗で商品や広告を見ている顧客の表情から、リアルタイムのリアクションを取得することができる。もちろん、データの取得は顧客の同意が前提だが、このシステムの実用化が進めば、これまで実現できなかったマーケティングが可能になる。

例えば、スーパーを訪れた顧客が、パッケージを見て棚から商品を手に取る。次に、裏面に表記されているカロリーの数値を見て、その商品を棚に戻す。顧客はパッケージを評価したが、カロリーの数値を見たときに不快感を覚えた――これまでであれば、このデータを取得するために相当数の人員を投入して調査を行う必要があった。人工知能による感情解析は、実店舗においても力を発揮することになりそうだ。

“文字”から感情を読み取るユーザーローカル

感情認識AIが読み取る対象は、表情だけではない。ユーザーローカル社が提供するWebサービス、“ユーザーローカル感情認識AI”は、入力されたテキスト情報から感情を判断することができる。

用意されたフォームに文章を入力すると、「喜び」、「好き」、「悲しみ」、「恐れ」、「怒り」の5項目を示したレーダーチャートが表示される。ディープラーニングを用い、数千万件以上のデータをAIに学習させたことで、文章の微妙なニュアンスを読み取ることができるようになった。このウェブサービスは無料公開されており、感情認識AIに触れる機会を広く提供している。

更にユーザーローカルは、2019年4月に静岡県菊川市と共同で、AIを利用したサポートチャットボットの実証実験を開始した。サポートチャットボットとは、チャットの自動応答システムのことで、住民からの問い合わせにボットが自動返信を行う。利用者の質問データを蓄積し、ディープラーニングによって回答の精度を向上させていく。実用化されれば、行政が休みに入る週末や祝日、夜間でも問い合わせに対応できるため、利用者の利便性が向上すると同時に、人手不足への対策にもなる。テキスト情報から感情や意図を読み取る技術は、より身近な課題の解決に繋がるだろう。

音声感情解析の可能性を追求するEmpath

音声から感情を解析するAIを開発するのは、東京発のスタートアップ、Empathだ。2017年12月には富士通の「ロボットAIプラットフォーム」に参加。ユニロボット社が開発を進めるコミュニケーションロボットのuniboに音声感情認識AIを提供した。Empathの感情認識AIは、震災後に被災者支援として利用者の精神状態を検知する目的でも利用され、コールセンターなど顧客の顔を見ることができないビジネスの現場でも活用されている。

2019年1月には、EmpathはコールセンターBPO(Business Process Outsourcing)のTMJ社と事業提携を結んだ。コールセンターでは、①品質の平準化および向上、②離職率の低減、という二つの目的を達成するために音声感情認識AIが利用されている。前者はオペレーターの感情を解析することで従業員の教育に活かすという目的と、顧客の感情を解析することで成約率を向上させるという目的で利用される。

後者の離職率の低減については、オペレーターの精神状態を認識・把握することで、調子の悪いオペレーターを休ませるなど、オペレーターを“守る”目的で利用される。対人業務で抱えるストレスを的確にマネジメントできるこのシステムは、サービス業における働き方を大きく改善する可能性を秘めている。

野球で例えるならば、近年、日本球界ではメジャーリーグで活用されていた弾道解析システムの“トラックマン”が導入された。トラックマンは、米軍で生まれた弾道データの分析技術を応用したシステムで、日本ではIT企業がオーナーである東北楽天イーグルスと福岡ソフトバンクホークスがいち早く導入した。

トラックマンはピッチャーが投じるボールの回転数を計測することができ、このデータにより、その選手の好不調や疲労の蓄積度といった状態をより正確に把握できるようになった。音声感情認識AIの登場は、オペレーターのような感情労働の職に就く人々にとっての“トラックマン”となる可能性がある。管理職の人間がこれをうまく活用することで、サービス業に従事する人々にも、ケアが行き届くようになるのだ。

Empathは、この音声感情認識AIを利用して、アスリートのコンディショニングサポートにも取り組んでいる。2018年1月にはトップアスリートの体調を管理するクラウドサービス、ONE TAP SPORTSを展開するユーフォリア社と業務提携を結んだ。同クラウドに音声感情認識AIを組み合わせることで、アスリートのメンタルサポートにも乗り出している。

スポーツにおいて精神状態がパフォーマンスに及ぼす影響は計り知れない。“トラックマン”のようにパフォーマンスそのものから選手の調子を測るわけではないため、音声感情認識AIはあらゆる競技に応用できるという強みを持つ。メンタルヘルスのケアはあらゆる業界で必要とされているため、今後も利用される領域は拡大していくだろう。

医療の分野でも利用が進む

さらに付け加えると、音声感情認識AIは医療の分野で変革をもたらすテクノロジーとして、大きな注目を浴びている。2019年4月には、音声感情認識AIがPTSD(心的外傷後ストレス障害)の発見に利用できるとする論文が発表された。PTSDの診断は、人間でも判断が難しいとされてきた。この研究結果を発表したのは、医療教育にVRを導入するなど、先進的な取り組みで知られるニューヨーク大学ランゴーン医療センターのチャールズ・マーマー博士が率いる研究チームだ。

129名の男性退役軍人を対象に行われたテストでは、機械学習アルゴリズムの“ランダムフォレスト”を用いた音声感情認識AIが、89%の正確性でPTSDを患っている患者を識別することができた。同研究チームは、人工知能によってPTSDの診断を行うことができるようになれば、患者がスマートフォンなどを用いて、より低価格で手軽に診断を受けられるようになると指摘している。

このように、感情認識AIは様々な領域で利用が進んでいる。今後は、ブロックチェーンやIoTを用いた自動化が前提となるプロダクトやプロジェクトでの活用も進むだろう。人が介入しないことの無機質さや、感情が伝わらないもどかしさといった心配は過去のものとなる。それどころか、電話やテキストでのやり取りといった、私たちがこれまで交わしてきたコミュニケーションをより高度で緊密なものに引き上げてくれる。感情認識AIが人々の生活を支える未来の到来はそう遠くないだろう。

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