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サブスクリプションとは? OODAループと相性が良い、新時代のビジネスモデル

サブスクリプションとは? OODAループと相性が良い、新時代のビジネスモデル

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2019/06/24

“定着”の時代を迎えるサブスクリプションモデル

サブスクリプションモデルとは、顧客が月額ないしは年額の定額利用料を支払い、企業が顧客に対して継続的に商品やサービスを提供するビジネスモデルのことだ。2010年代以降、急速な成長と拡大を見せ、21世紀の新たなビジネスモデルとして“台頭”の時期を終え、今や様々な分野で“定着”に向かいつつある。

世界の経済システムは、モノを作っては売る大量生産・大量消費の時代から、環境にも配慮しつつ、「購入から共有へ」あるいは「所有から利用へ」というスローガンを掲げる時代へと移行している。カーシェアリングや民泊といったシェアリングエコノミーもその一端だが、購入や所有を前提としない現代的な消費者の意識は、サブスクリプションモデルの台頭を後押ししている。古くは新聞やウォーターサーバーなどがサブスクリプションの定番だったが、動画見放題やソフトウェアの定額使い放題など、様々なジャンルでサブスクリプションモデルが取り入れられるようになった。

消費者にとっては、サービスを利用すれば利用するほどお得になり、「満足すれば続けるし、しなければやめる」という選択の自由を保持できるため、商品を購入するよりも心理的ハードルは低い。近年は「初月無料」などのお試し期間を導入する事業者も増加傾向にある。

サブスクリプションのメリットとデメリット

では、事業者側にとって、サブスクリプションを採用するメリットはどこにあるのだろうか。まず、顧客が自社サービスを利用するハードルを下げることができるという点が挙げられる。また、一度サブスクリプション契約を獲得すれば、その後は営業コストをかける必要がないという点も大きい。そして、従来はアイドルやスポーツチームのファンクラブがそうであったように、お金を払ってメンバーシップを得るというプロセスは、サービスを提供する事業者への帰属意識=ロイヤリティにも繋がる。

AmazonやNetflixのように、事業者がプラットフォーム型のサブスクリプションサービスを展開している場合、顧客はその事業者が持つ膨大な量のサービスにアクセスする権利を得ることができる。だが、顧客の中にはAmazonプライムの送料無料サービスだけを利用したいという理由で同サービスに登録する人もいる。また、Netflixではオリジナル映画やドラマを数多く制作しており、「このオリジナル作品だけ観たい」という理由でサブスクリプション契約を結ぶ顧客もいる。

このように、顧客が事業者の提供するサービスの全てを評価していなかったとしても、全ての顧客が均等に“全体分”の料金を支払うことになる。また、当初、顧客が求めていたものが一部のサービスや商品だったとしても、それが他のサービスやコンテンツへの入り口になる可能性もある。

一方で、先に述べた「いつやめてもいい」という“出口”のハードルの低さは、事業者にとってはデメリットとなる。「お試し期間」で顧客を満足させるサービスを提供できなければ、顧客はすぐに別のサブスクリプションサービスに移ることができるからだ。事業者が解約を未然に防ぐためにどのような努力が必要かについては、以下の記事を参照していただきたい。

急成長するサブスクリプションモデル その解約対策に迫る

上記の記事の内容からも分かる通り、サブスクリプションを事業に取り入れるためには解約のリスクをマネジメントする仕組みが要求される。サブスクリプションモデルでは、常にサービスの内容を見直し、改善を繰り返し、新しい体験を顧客に継続的に提供しつづけることが不可欠だ。この課題の解決については、近年注目を集めるあるビジネス戦略理論とサブスクリプションモデルとの親和性について触れておく必要があるだろう。

OODAループとの親和性

昨今、PDCAサイクルに代わり、ビジネスにおいて主流となりうる戦略理論として注目を集めているのが、OODA(ウーダ)ループだ。PDCAは、計画-Plan、実行-Do、チェック-Check、改善-Actというサイクルをたどる戦略だったが、OODAループでは、観察-Observe、方向付け-Orient、決定-Decide、行動-Act というステップを踏んでいく。“計画=P”を最初に置いて事業を進めるPDCAに対して、OODAでは“観察=Observe”から戦略が始まる。市場のニーズがどこにあるのか、チームとしてどれだけのサービスを提供できるのか、という観点が起点になるのだ。

PDCAサイクルは、商品を開発して発売するというビジネスモデルにおいては力を発揮してきたが、最初に設定した計画にない予期せぬ事態が発生した際に、対応が困難になるという欠点があった。スピードを重視するOODAループでは、計画どおりに動くことではなく成果をあげることに主眼を置くため、動き方は流動的で構わない。サブスクリプションモデルでは常に顧客の反応を確かめながら解約抑止の先手を打っていく必要があるため、OODAループとの相性が良い。ビジネス戦略としてOODAループが評価され始めたこともまた、サブスクリプションモデルの定着を牽引しているとも言える。

もちろん、サブスクリプションモデルは常に顧客に新たな体験を提案し続けるというコストを覚悟しなければならないのは確かだ。一方、これまでの商品を売り切る事業モデルでは、継続して収益をあげるために次々と新製品を開発しリリースする必要があった。頻繁にモデルチェンジが行われる仕組みは、消費者と事業者の双方にとって負担が大きいという側面もある。

では、事業者はモデルチェンジのコストと解約抑止のコストのどちらを選択するべきなのだろうか。その答えは、もちろんビジネスの領域と提供する商品やサービスによって異なる。サブスクリプションモデルを導入するビジネス領域は拡大の一途を辿っているが、ここで、現在どのような業態でサブスクリプションモデルが利用されているのかを見てみよう。

サブスクリプションが採用されているサービス・業種

動画ストリーミングからプラットフォームへ

サブスクリプションモデルを利用したビジネスの代表例は、動画のストリーミング配信サービスだ。動画配信のNetflixはベーシックプランが864円、スタンダードプランが1,296円、プレミアムプランが1,944円と、複数の価格帯を用意している。プランによって画質だけでなく、同時に視聴できるデバイスの数が異なり、学生やカップル、家族など、幅広い層の顧客に対応している。いずれのプランも2018年8月に150円~350円の値上げが行われたが、それ以降もオリジナル映画やオリジナルドラマを次々投入。特に、複数のシーズンに跨がるオリジナルドラマやオリジナルアニメを断続的に制作・公開することで、ユーザー数を維持している。

Amazonプライムでは、年会費4,900円で送料無料サービスを受けるだけでなく、動画配信のAmazonプライムビデオを含むAmazonプラットフォームのサービスを利用できる。2019年1月に視聴率行動分析を行うニールセンデジタルが発表した調査結果によると、日本国内で509万人の利用者を擁しており、Netflixの国内会員数が171万人であることを考えれば驚異的な数字だ。Amazonプライムには前述の送料無料サービスの他、音楽配信のAmazonプライムミュージックも含まれているためお得感が強く、顧客が離脱しにくい。また、Amazonプライムの会員はゲーム専用配信サイトTwitchの有料会員機能を利用できるなど、外部サイトとの連携も行なっている。

このように、デジタルプラットフォームを展開する事業者は、幅広い層の顧客にアプローチしつつ、個々のサービスだけでなく、プラットフォームそのものに愛着を抱いてもらえるよう様々な工夫を凝らしている。サブスクリプション契約を結んでからが本当の勝負ということだ。

リアル店舗にも拡大

サブスクリプションモデルは今やリアル店舗にも波及している。2019年4月に名古屋市でオープンしたIZUMI-CAFÉは、「モーニング会員」サービスを実施。月額4,320円でコーヒーと朝食が付いたモーニングセットを毎日注文することができる。売上の変動が激しい飲食店で“常連客”をシステム化するとともに、常連客にとっても通えば通うほどお得感が生まれる仕組みだ。一方で、コーヒーの無料分は1日一杯までに設定されている。店舗としては、顧客に二杯目のコーヒーや追加メニューをオーダーしてもらうための工夫が必要となる。

車もサブスクリプションの時代へ

トヨタ自動車は2019年2月に株式会社KINTOを設立、車のサブスクリプションサービスの提供を開始した。KINTOが提供するのは、3年間1台のトヨタ車を利用できるKINTO ONEと、3年間で6種類のレクサスブランドを利用できるKINTO SELECT。KINTO ONEでは、プリウスやクラウンなどを対象に、価格帯は月額約5万円~10万円に設定されており、レクサスを対象としたKINTO SELECTは月額19万4,400円に設定されている。キャリア形成のステップや働き方も変わり、生活環境の変化も激しくなった現代では、車や家のような大きな買い物に踏み切ることは以前よりも難しくなりつつある。そうした背景もあり、これまで購入することが当たり前だった分野で、時代の変化とともにサブスクリプションモデルの需要が生まれている。

そんな中、レンタカー業界最大手のEnterpriseも、車のサブスクリプションサービスに参入することを発表した。2019年4月に発表されたこのサービスでは、顧客には車のクラスごとに分けられた6種類の価格帯が提示される。月額は本稿執筆時点では未だ発表されていないが、車種にはトラックも含まれるなど、レンタカー会社ならではのバリエーションが魅力だ。幅広い層の顧客にアピールするというプラットフォーム型サブスクリプションの基本を押さえた戦略である。

日本でもSmartDriveCarsやオリックスのカーリースなど、定額カーリースサービスがあるが、Enterpriseが提供するカーサブスクリプションの特徴は、各月に最大で4回まで車種の変更が可能という点だ。メーカーに捉われず様々な種類の車を週替わりで乗り換えられる。やはりここでも、顧客を飽きさせない、新しい体験を提示するというサブスクリプション戦略が垣間見える。

アドビシステムズもサブスクリプションに完全移行

サブスクリプションが活きるのはBtoCだけではない。KINTOのカーサブスクリプションは法人向けサービスも展開しており、様々な社員が利用する企業向けのビジネスとの相性も良い。一方、PhotoshopやIllustratorといったソフトウェアを販売してきたアドビシステムズは、2013年から製品の提供方法をサブスクリプションへ完全移行している。デザインソフトや動画編集ソフトが月額払いで利用できるAdobe Creative Cloudは、法人向けにも提供されており、企業がサービスの加入者になることで、その企業の社員がサービスを利用することができる。

今までは新製品が出るたびに購入する必要があったが、サブスクリプションシステムでは、契約していればその製品は最新の機能へ自動的にアップデートされる。製品を提供する開発側としても定額でサービスを利用してもらうことで、スピード感を持って新製品の開発・リリースに取り組むことができる。前述の通り、現在進行形の事象に対して柔軟に対応するOODAループが活きるシステムなのだ。

意外な領域でもサブスクリプション

一風変わった領域でもサブスクリプションが採用されている。オーストラリアのオーディオメーカーNuraは、2019年4月にヘッドホンのサブスクリプションサービスを発表した。契約は2年単位で、前払金なしで月15ドル(約1,660円)、前払金30ドル(約3,300円)で月12ドル(約1,330円)、前払金100ドル(約11,100円)で月9ドル(約1,000円)という3つの価格帯が設定されている。2年間の契約期間が終了すれば、そのヘッドホンは顧客の物となり、更に契約を更新すれば、次の2年間は再び最新のヘッドホンを利用できる。

このサービスでは、事前にリスニングテストを実施し、個別にカスタマイズされた製品が顧客に届けられる。顧客が継続して利用し続けることで成り立つサブスクリプションという仕組みを採用できるのは、自社製品に自信があればこそだ。手を出しにくい高価な製品を安価な月額料金で提供し、まずは顧客の手元に届ける方法として、サブスクリプションモデルは有効だと言える。

サブスクリプションモデルとフィンテック業界との相乗関係

こうしたサブスクリプションモデルの定着と拡大は、フィンテック業界にも影響を与えている。消費者がサブスクリプションを利用するほどに、ペイメントサービスの利用も増加するからだ。この状況を素早く察知したのが、ペイメントサービスのスタートアップ、SlimPayだ。フランスを拠点にヨーロッパ6各国に展開する同社は、2016年にフィンテック関連企業を対象にした「FINTECH 100」で、新興企業のトップ10にも選ばれている。

SlimPayが2017年に立ち上げたSubscription Labは、サブスクリプションの支払い管理に特化したサービスを提供している。複数のサブスクリプションをダッシュボードで一括管理でき、支払いのタイミングや支払い方法を細かく設定できる。シンプルなサービスではあるが、月々の定額払いが増えて管理が大変になる、という消費者のニーズを的確に捉えている。Subscription Labはサブスクリプションサービスの利用を呼びかけるプロモーションも展開しており、このビジネスモデルの拡大と共に成長を図ろうとしているのが明白だ。

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SlimPay公式サイト

日本では、フィンテックベンチャーのイジゲン株式会社がサブスクリプションサービスのプラットフォーム、always(オールウェイズ)を展開。“サブスクリプション・エコノミー”の到来を見据え、新たなサブスクリプションサービスを求める顧客と、サブスクリプションサービスを提供する事業者とをつなぐショッピングモール型アプリを提供している。エステやヨガ、八百屋の野菜詰め放題サービスなど、地域のリアル店舗が紹介されているほか、ユーザーのライフスタイルに合わせてサブスクリプションサービスをレコメンドする機能も備えている。

様々な分野に浸透していくサブスクリプションモデル。同時に、サブスクリプションサービスの周辺でも新たなビジネスチャンスが生まれている。今回紹介したサブスクリプションのメリットとデメリット、特徴と注意点を押さえておくことで、“サブスクリプション・エコノミー”の時代を生き抜くヒントを得ることができるだろう。

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