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5Gで劇的に変わる通信システム~IoTとの組み合わせが生む可能性と課題とは?

5Gで劇的に変わる通信システム~IoTとの組み合わせが生む可能性と課題とは?

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2019/05/31

通信インフラも次世代へ
4G・LTEをはるかに凌ぐ5G

AI、IoT、ブロックチェーンなど、次の世代を担う技術が次々と登場する中、通信インフラにも次世代の波が到来する。「高速・大容量」、「低遅延」、「多数端末の同時接続」を特徴とする第5世代移動通信システム、通称5Gは、現在主流の4G・LTEをはるかに凌ぐ可能性を秘めている。3Gから4Gへの移行時は通信スピードの向上が最たる利点だったが、5Gではデータの高速ダウンロード、遅延の少ないリアルタイム通信、100万台以上のデバイスの同時接続など、これまでとは比較にならないほどの進化を遂げる。

IoT、VRの鍵は5G!? 次世代移動通信はこれまでの通信技術と何が違うのか

2019年は“5G元年”

2019年4月3日、アメリカの通信事業会社ベライゾンが世界初のスマホ向け5G通信の提供を開始した。韓国では同国最大手の通信社KTが4月5日にサービスを開始した。日本では2019年に5G通信のプレサービスを開始、東京オリンピックまでに本格利用を開始する予定。世界各国で5G通信のサービスが開始する2019年は、まさに“5G元年”なのだ。

5Gで何が変わる?

総務省の「平成30年版 情報通信白書」によると、5Gの通信速度は4G・LTEと比較して約100倍にもおよび、遠距離通信における遅延は1ミリ秒以下となる。携帯端末に限らず、あらゆるモノ同士を高速かつ大容量で接続できるようになる。では、5Gの登場によって具体的に何が変わるのだろうか。

よく耳にする5Gの恩恵は、テレビ電話も遅延なくリアルタイムで会議ができるようになるといったものだ。遅延なく膨大なデータを送受信できるようになることで、離れた場所にいても、例えば外科手術や重機の操縦といった精密な操作を遠隔で行えるようになる。AIの進歩によって自動運転車の実用化が現実味を帯びたように、5Gの登場によってこれまで近未来の世界の出来事のように思われていた様々なシステムが現実のものになるかもしれない。

自動運転×5Gで何が変わる?
センターからの管理が可能に

さらに、5Gにはどのような活用方法が考えられるのだろうか。今、5Gとの組み合わせで最も注目を集めている技術の一つが自動運転だ。自動運転車はAIによって自律走行をさせることが前提だが、バスやトラックなどのように、特定の目的を持つ商用車として運用する場合、中央からの管理統制が必要になる。

5Gを利用すれば、リアルタイムで大量のデータを送受信できるため、全国各地に配備された自動運転車の動きをセンターから一括管理することができる。離れた場所からも遅延なく操作ができるため、緊急時にはセンターから自動運転車を操作して制御することも可能になる。

また、膨大な数の車両から顧客データを収集したり、逆にセンターから車両へリアルタイムで広告データを配信したりすることもできるだろう。車両の管理のみならず、生産性を高めるためにも5Gは有効活用できるのだ。

通信キャリア3社が実証実験を開始

NTTドコモとソニーは2019年3月、共同で5G遠隔走行車の実証実験を開始した。ソフトバンクは同年2月、ダイナミックマップ基盤と共同で、高精度3次元地図「ダイナミックマップ」(自動走行や安全支援システムの実現に向けて、中核を担う重要な要素として、静的情報、準静的情報、準動的情報、動的情報を組み込んだデジタル地図)を生成する実証実験を開始している。

高精度3次元地図には車線の位置や道路が交差するポイント、停止線や横断歩道など、道路周辺のあらゆる情報が含まれる。これをAIが認識可能なデータとして取り込むことで、自動運転車が道路状況を先読みし、安定した自動走行を実現できる。

これまでは、この3次元地図の生成に4Gを利用していたが、今後は5Gを活用することで、より大量のデータに基づいた高精度な3次元地図情報を生成することができ、同時に超低遅延の特徴によってリアルタイム性の向上にも貢献する。例えば、車両の近くを自転車が通っているという情報は、自動運転車にとっては事故を回避するための重要な情報だ。こうした情報はリアルタイムに近ければ近いほど、自動運転の安全・安定性を向上させる。

一方でKDDIは、KDDI総合研究所、アイサンテクノロジー、損保ジャパン日本興亜、ティアフォー、岡谷鋼機、名古屋大学と共同で、2019年2月から5Gを利用した自動運転の実証実験を開始している。KDDI が開発した遠隔自動運転車を走行させ、ティアフォーは自動運転ソフトウェアを提供する。

注目すべき点は、損保ジャパンがこの実験でリスクアセスメントを行い、その結果を保険商品の開発に活用するということだ。5Gが生み出す劇的な変化は、今後もあらゆる業界の関係者を巻き込んでいくだろう。

運転補助システムに5Gを

実は自動運転の一歩手前で、すぐに実現できそうな5Gの活用方法も考案されている。総務省が開催した「5G利活用コンテスト」では、優秀賞に「濃霧の高速道路でも安全に走行できる運転補助システムの確立」が選ばれた。他の入賞者には研究者や研究所、企業の名前が並ぶが、この運転補助システムを考案したのは大分県だ。

また、同コンテストでは、福井県の永平寺町総合政策課が「同時多接続と低遅延が可能とする近未来の雪害対策」で地域課題解決賞を受賞しており、事故の発生件数や地域の課題を誰よりも把握している行政の側から、5Gを防災・事故防止に役立てようという提案が行われた。

大分県が提案した「濃霧の高速道路でも安全に走行できる運転補助システムの確立」では、5Gの特徴を活かし、ドライバーの運転をサポートする情報をリアルタイムで提供する。晴天時と同レベルの安全性を確保することで、濃霧による高速道路の通行止めを避けることができる。気象条件に左右されない円滑な交通を実現することで、地方都市にもたらされる経済効果は少なくない。

この運転補助システムへの具体的な5Gの活用方法はこうだ。まず、気象や高精度3次元地図の情報をクラウド上に収集する。そして、その情報に車の位置、速度、車外の映像といったデータを合わせ、車両に情報を配信する。車両にはヘッドアップディスプレイを取り付け、フロントガラスにクラウドから受信した映像を投影する。映し出されるのは、車の前方の様子や車間距離といった情報が補完された車外の映像だ。つまり、車のフロントガラスが巨大なVRゴーグルのようになり、見通しが悪い濃霧の中でもリアルタイムで車外の状況を確認できるのだ。

外部から受信した情報を頼りに濃霧の中を走行しようというのだから、映し出される情報がリアルタイムのものであることは絶対条件だ。自動運転車の実用化には、法整備などクリアしなければならない課題がまだまだ多いが、5Gの特性を活かしてこれまでは踏み込めなかった一歩先の世界に飛び込むことができる。大分県は直面している課題を解決するために、現状の一歩先を行く5Gの活用法を提示した。

5Gの懸念と課題とは…?
管理・監督・防犯との相性

既に触れた通り、5GはVR・ARとも相性が良いため、海外からの仮想体験(ツアー)、セミナーやイベントへの参加などにおいても利用が進むだろう。一方で、上記の利活用例からも垣間見えるように、5Gはリアルタイムで大容量通信ができるという利点から、管理・監督・防犯・防災との相性が良い。農業などの第一次産業や、工場、建築現場等においても防犯対策は欠かせない。このように既存の産業においても、5Gを活用した革新的なプロダクトによってビジネスの構造が大きく変化する可能性がある。

警備会社のALSOKがNECと共同で開発を進めているのは、5Gを利用し、鮮明な4K映像を監視センターに送信するシステムだ。現行の4Gでは、約800万画素という4Kの高画質な映像データをリアルタイムで送信することは不可能だった。だが、大容量のデータを高速で送受信することができる5Gであれば、複数台の防犯カメラから4Kの映像データをリアルタイムで監視センターに送信することができる。

従来は、防犯カメラが事件の映像を捉えていても、画像が粗いため犯人の顔が鮮明に映っていない、あるいは犯行に使用された車のナンバーが読み取れない、といった「惜しい」場面が往々にしてあった。防犯カメラといえば画質が悪いという印象があるが、それは映像データをリアルタイムで監視センターに送信する場合、現行の通信システムではデータの容量に制限があり低画質にならざるを得なかったからだ。

だが、5Gの実用化によって4Kの鮮明な映像を活用することができるようになれば、現場の状況を的確に把握し、犯人の顔を瞬時にデータベースから照合することも可能になる。現場での対応が劇的に改善されることはもちろん、犯罪の抑止にもつながるだろう。

5Gの登場で、本格的に4Kが“目”になる時代が来る。業務用の防犯カメラのみならず、家庭用の防犯カメラからの4K映像も外出先からアプリでチェックできるようになるだろう。そうなると、4Kを見るためのデバイスの需要も生まれる。リアルタイムの4K映像をテレビモニターやモバイルデバイスに映し出せることは大前提だが、ウェアラブルデバイスや壁などへの投影型デバイスも、4K対応が当たり前という時代が来るだろう。

プライバシーへの懸念と5Gの課題を解決するアイデア

一方で、5Gを利用した技術開発において念頭に置かなければならないのは、プライバシーに関する懸念だ。管理・監督に使えるという点も、一歩間違えれば「監視」を強化することに繋がりかねない。防犯や管理にテクノロジーを利用した安心・安全な社会と、あらゆる情報が瞬時に収集される監視社会に境界線を引く作業は簡単ではない。

5Gを巡っては、革新的でありながらも、社会に受け入れられる製品の開発を行うバランス感覚が重要になる。利便性とプライバシーはいつの時代でも相反するテーマだが、とりわけ5Gの時代には包括的にプライバシーを保護するツールやシステムにも需要が生まれるだろう。

カタールのドーハに本部を置くICTプロバイダーのオレドー・グループは、5G、IoT、クラウドテクノロジーにブロックチェーンを組み合わせることを発表している。オレドーは中東・北アフリカおよび東南アジアで5Gネットワークを展開する予定だ。詳細な利用法については明らかにされていないが、理論上改ざんが不可能なブロックチェーン技術を利用することで、透明性と信頼性を確保することができる。例えば、5GとIoTで収集されたデータの閲覧記録がブロックチェーン上に記録されるとすれば、データの不正利用を未然に防ぐことができるだろう。

同様に需要が見込まれるのは、各デバイスのバッテリーだ。Wi-Fiを使わずに大容量のデータを超高速でやり取りするとなれば、スマホ決済に備えて街中に充電器のポートを設置する、というレベルの対策では追いつかない事態になるかもしれない。バッテリーそのものに、大容量の高速データ通信に耐えられるような進化が求められる。加えて、5Gの登場で様々なIoT製品の開発が進んでいくと、その数だけバッテリーが必要になる。進化したバッテリー自体が社会インフラの一つとして利用される日が訪れる可能性さえある。

目には見えないが、確実に私たちの生活を支えている通信システムが大きな転換期を迎えている。今、私たちが日常的に4Gを利用して暮らしているように、5Gが当たり前という社会がそう遠くない未来にやってくる。5Gが世界中のあらゆるモノをリアルタイムでつなぐ世界が実現するとすれば、同時にそれを支える革新的なアイデアも必要だ。

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