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LINEも参入、転換点を迎える分散型予測市場

LINEも参入、転換点を迎える分散型予測市場

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2019/05/20

群衆知を予測に活用する「予測市場」を、ブロックチェーンベースで実現する「分散型予測市場」が大きな転換点を迎えている。本記事では分散型予測市場とは何か、その長所と短所、この分野の先駆けであるEthereumブロックチェーン上の分散型予測市場Augurをはじめとした事例を解説し、今後を展望する。

将来のある出来事の予想を取引する分散型予測市場

遡ること15年前、2004年にアメリカで『The Wisdom of Crowds: Why the Many Are Smarter Than the Few and How Collective Wisdom Shapes Business, Economies, Societies and Nations』(邦題:『みんなの意見は案外正しい』)という題名の書籍が出版された(邦訳版の出版は2006年)。2000年代半ばといえば、当時普及期にあったインターネットから、これまで世間に公開される機会が少なかった一般の意見が活かされるようになったという実感もあり、群衆知が一般に知られるきっかけとなった。

予測市場とは、将来のある出来事の予想を取引する市場である。予測市場で扱われるテーマとして度々引き合いに出されるのがアメリカの大統領選だ。どの候補の勝率が何%かといった数値は主要メディアでも引用される。ただし、その予測は必ずしも正確ではなく、例えば2016年のBrexitでは、多くの予測市場はイギリスのEU残留を予測した。この背景には予測市場参加者の偏りが指摘されている。群衆知は、その対象者が満遍なく収集された場合に限り「案外正しい」と考えられる。

このように予測のミスや参加者の多様性の担保といった課題はあるものの、群衆知の活用は進み、予測市場は中央集権的な運営者のいない分散型予測市場としても進化を遂げようとしている。運営者のいない分散型予測市場というと、管理者不在、ギャンブル性が強い、といったイメージから、あまりポジティブには受け取られてこなかったが、2018年には日本のソーシャルサービス市場で圧倒的なシェアを誇るLINEも、LINE Token Economy構想の一つの柱としてこの分散型予測市場に近い分野への参入を発表している。これが、仮想通貨が低迷した2018年の出来事であることにも注目すべきだろう。

予測市場が分散型であることの長所・短所

分散型の予測市場は他の分散型のサービス同様、ブロックチェーンの性質により、中央集権的な運営者がいないこと、改ざんが限りなく不可能に近いこと、透明性が高いことを売りにしている。運営者がいないことで恣意的に予測結果が操作される可能性が低くなる。また、地理的な制約とそれに基づく法的な制約に縛られる中央集権的な運営者がいないことで、サービスの自由度も高くなる。

パブリックブロックチェーン上でスマートコントラクトが動作し、データが記録されるのであれば、技術的には誰もがプログラムの挙動、予測とその推移、支払いに関するデータを参照できる。そして、それらのデータはブロックチェーンが存在する限り、永遠にブロックチェーン上に存在し続けることになる。

一方で分散型予測市場には短所もある。国や地域によっては、将来の出来事の予測に金銭を伴って投票することが賭博行為とみなされ、予測市場が法規制の対象となる可能性がある。実際、日本国内で分散型市場に参加することは法的にグレーであるという見方もある。

法律に抵触する可能性があり、加えて、仮想通貨を用いているブロックチェーンベースの分散型予測市場は、これら先端技術に馴染みのないユーザーには参加しづらい。参加者に偏りが生じると、前述のBrexitの例のように、「案外正しい」群衆知が期待できない可能性がある。

また、運営者がいないため、より自由に予測を立てられる分散型予測市場では、過去には暗殺や殺人の予測が立ち、賭け金目当ての犯罪行為の引き金となりかねないことに懸念を示す声もあがった。

分散型予測市場の事例

分散型予測市場のサービスとしては、Ethereumブロックチェーン上の分散型予測市場Augurが知られている。2014年にプロジェクトがスタートし、2015年に当時としては大型のICOで500万ドル(約5億6,000万円)相当の資金を集め、2018年7月にサービスが本格的にローンチした。Augurの開発はForecast Foundation(開発者による組織)がサポートしている。Forecast FoundationはAugurを所有するのではなく、オープンソースの分散型予測市場のためのプロトコル開発に徹する姿勢を表明している。

Augur自体はスマートコントラクト群からなるプログラムで、いかなるユーザーでもEthereum上のAugurプロトコルにアクセスできる。Augur同様、Ethereum上の分散型予測市場としてはGnosisも古く、分散型予測市場の代名詞であるが、開発状況を見る限り2019年4月時点ではAugurが一歩先を行っていると言ってよさそうだ。

Augurについては、ステーブルコインDAIの統合を含めさまざまな機能を追加したバージョン2のリリースが予定されている。さらに、AugurのプロトコルとP2P取引のためのプロトコルとを組み合わせ、迅速かつ安価な取引を可能にした分散型予測市場Veilの登場にも期待が寄せられている。VeilとAugurは競合するというよりも、Augurは、Veilのようないわばインターフェイスの登場により、分散型予測市場のためのオープンなプロトコルを提供するプラットフォームとして真価を発揮していくだろう。

新世代の分散型予測市場としては、Amoveoにも注目しておきたい。2018年に誕生したAmoveoは、AugurとAeternityブロックチェーンの初期の開発を担ったZack Hess氏によるブロックチェーンプロジェクトだ。独自のPoW(プルーフ・オブ・ワーク:新しいブロックをブロックチェーンに追加する作業)の高いスケーラビリティーを売りに、予測市場をはじめ、投資、保険契約、デリバティブなどをターゲットにするという。

ここまで海外の分散型予測市場の事例を挙げたが、これだけでは分散型予測市場は仮想通貨、関連技術、フィンテックの知見を持つ開発者やユーザーのためのものというイメージは拭えない。しかし、日本国内ではこの状況を変えうる興味深い動きが出てきている。

2018年、ソーシャルメディア大手LINEが独自のブロックチェーンとLINE Token Economyの構想を明らかにし、その上で稼働する分散型アプリケーションの1つとして未来予想プラットフォーム4CASTを発表したのだ。モバイル限定のサービスで、ユーザーはさまざまな予想に参加し、予想が的中するとポイントを付与される。厳密には、ブロックチェーンを利用した「未来予想プラットフォーム」であり、予想の対象は運営から指定されたもの、オラクルの仕組みは明らかにされていないなど、Augurのような典型的な分散型予測市場とは異なるサービスだが、分散型予測市場のネガティブなイメージを払拭し、ユーザー層を広げるきっかけとなることが期待される。

今後の展望

これまで分散型予測市場はギャンブル性が高いとみなされたり、犯罪行為に関連するものなど物騒な予想が立てられたりしたことから、必ずしも良いイメージが持たれていなかったが、仮想通貨が低迷した2018年を境に大きな転換点を迎えようとしている。

一方でAugurについては、世界最大の仮想通貨取引所Binanceの分析部門Binance Researchが脆弱性を指摘したレポートを発表した。また、Augurに限らず分散型予測市場では、どのように群衆知を集めるのか、オラクルのデザインなど未だ解決策が見つかっていない課題もある。だが、それは新技術や新しいサービスの常でもある。

さまざまな可能性を秘めた分散型予測市場は、今後どう課題を解決し、どのように利用されていくのだろうか。ブロックチェーンの応用の一例として特に動向に注目したい分野だ。

署名: Aki T.

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