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行動報酬としての仮想通貨が新トレンド 歩いて仮想通貨がたまる?

行動報酬としての仮想通貨が新トレンド 歩いて仮想通貨がたまる?

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2019/05/10

2017年末の仮想通貨バブルを経て、2018年は仮想通貨全般が低迷し静かな一年となった。そのような中でも水面下では仮想通貨やブロックチェーンを活用する試みが続いている。「歩く」「安全運転を心掛ける」といった行動の報酬として仮想通貨を付与するサービスは、ユーザーの懐が潤うだけでなく、従来のコアな仮想通貨ファンに限らず、広く仮想通貨が流通し、利用が進むきっかけにもなり得る。本記事では行動報酬として仮想通貨を付与するサービスを紹介し、その将来的な影響について解説する。

行動に対して仮想通貨報酬を与えるトレンド

仮想通貨というと激しい価格変動から投機の対象として見られ、また巨額の流出事件では管理の難しさも浮き彫りとなったことから、未だ多くの人が仮想通貨に親しんでいるとは言い難い。一方で、大切な資産を危険にさらすことなく、煩雑な手続きを経て取引所に口座を開設することなく、コアな仮想通貨ファン以外の個人が仮想通貨を手にする手段が出てきている。ブロックチェーンベースで個人の行動に対して仮想通貨で報酬を付与するサービスだ。日本国内で使えるサービスや日本発のサービスも存在する。

これまでも、ユーザーの良い行動を助けるサービスは存在した。Q&Aサイトのようなサービスもあるが、より明確なものとして、京都大学の学生が始めたゴミ拾いのボランティアSNSピリカがある。2011年の開始当初はサービスが利用されるか疑問視する声もあったようだが、サービスは世界80ヵ国以上で利用され、今現在も運用が続く。アプリに対してはユーザーから「ゴミ拾いを共有できるので寂しくない」といったポジティブなコメントが寄せられ、企業や自治体でも利用されている。

ここから一歩進んで、ブロックチェーンや仮想通貨が注目を集めたのをきっかけに、ブロックチェーン上で発行される仮想通貨をユーザーに行動の報酬として付与しようというサービスが出てきているのだ。続いてその具体例を紹介する。

歩き、書き、清掃し……行動に対する報酬付与サービスの事例

歩くことに報酬を与えるサービスは2017年の仮想通貨バブル以前からリリースされてきた。代表的なものとして、2015年創業のイギリスのSweatcoinがある。現時点ではブロックチェーンベースのサービスではなく、今後ブロックチェーンの利用が検討されているサービスだが、創業以来6.3百万ドル(約7億円)の投資を受け、スマートフォン向けのアプリはこれまでに2,500万回ダウンロードされたという。Sweatcoinを扱う取引所はなく、直接法定通貨に換金することはできないが、様々なサービスや商品、PayPalキャッシュと交換できるほか、寄付も可能だ。残念ながら日本は現在サービス対象外のようだ。

ブロックチェーンベースで歩くことに報酬を付与するサービスとして、2018年にSteemブロックチェーンを利用してリリースされたActifitがある。ユーザーは専用のアプリをスマートフォンにインストールし、ウォーキングをはじめとするさまざまなエクササイズを記録し、AFITトークンを獲得する。その記録をSteemブロックチェーン上のソーシャルメディアSteemitに投稿すると、保有量に応じて、法定通貨と交換できるSteemのトークンSTEEMおよびSBDが付与される(これらは直接法定通貨には交換できずBitcoinを経由する必要がある)。チャリティーにAFITトークンを寄付することもできる。また、Actifit自体がアスリートのスポンサーをするといった活動も見られる。Actifitは国や地域を限らず利用可能だ。

2019年に入ると、日本発のサービスFificも注目を集めた。Fificは仮想通貨NEMのネットワークで発行できる独自通貨モザイクとしてFificコインを発行している。日々の歩数からだけではなく、様々なスポットを訪れることでもFificコインを獲得できる。このようなゲーミフィケーションの要素がSweatcoinやActifitといった先行アプリよりも強い点が特徴と言えそうだ。Fificコインの利用は加盟店でのサービス交換に限られ、さらに交換には仮想通貨NEMが0.05XEM必要となる。Fificコインを貯めるだけでなく利用する場合、ユーザーは取引所に口座を作りNEMを購入しなければならない。

歩く以外にも、投稿に報酬が与えられるブログサービスのようなソーシャルメディアSteemitや、Steemit上で始まった清掃活動に報酬を与えるClean Planetがある。大手企業による取り組みとしては、メルセデスベンツで知られるドイツの自動車メーカーのダイムラーは環境に配慮した運転をするドライバーに同社独自の仮想通貨mobiCOINを付与する実証実験を行なった。シンガポールで配車サービスのTADAを提供し、東南アジアでの勢力拡大を目指す韓国発のブロックチェーンベースのモビリティープラットフォームMass1 Vehicle Ledgerも安全運転やエコドライブをするドライバーを評価し、ポイントを付与する計画だ。

また、日本発のサービスでは、ブロックチェーンを利用して社会貢献活動をスムーズにするactcoinにも注目しておきたい。actcoinのユーザーはボランティアに参加するなどしてコインを獲得する。支援を必要とする団体はactcoinのプラットフォームを利用することでボランティアを見つけやすくなる。ユーザーが貯めたコインは、2019年2月現在ウェブサイト上で「今後順次発表」となっているが、将来的には環境や社会に配慮した商品と交換できるようになるようだ。社会貢献度の可視化を目的としていて、ブロックチェーン上の記録は活動証明として機能するという。

報酬はどう生まれているのか

歩くことに対して報酬を与えるサービスを例にとると、Sweatcoinは自社が投資で得た資金を報酬付与に充てていると考えられる。Actifitは、Steemit上のActifitのアカウントの保有トークンをベースにSteemのトークンSTEEM/SBDを付与している。Fificは店舗やイベントへの集客に対して企業から収入を得るものと考えられる。また、GPSデータを集めているサービスでは誰がどこにいついたか、移動したかといったデータを収益化することもできる。SweatcoinとFificはGPSデータを利用しており、Sweatcoinはデータの取り扱いについて明記していないが、Fificは位置情報を取得してはいるもののデータベースには保存しておらず、位置情報利用の解除も可能だ。

この分野はまだ新しく、ビジネスモデルが確立しきっていないのが現状といえる。ただし、1つ参考になる事例がある。ブロックチェーンSteemは、2016年にICO(Initial Coin Offering)をすることもなく、何もないところからトークンSTEEMとSBDを発行し、法定通貨に換算可能な価値をつけ、Steem上のソーシャルメディアSteemitでユーザーが書くコンテンツに対して報酬を与えてきた。書く以外の行動にもこの動きは広まりつつある。前出のActifitやClean PlanetはSteem/Steemitを利用したサービスだ。

ユーザーの行動に報酬を与えるようなサービスを開発する場合、Steemのような既存のプラットフォームに乗って報酬付与の仕組みを利用し、既存のユーザーにアプローチをするのか、FificがNEMを利用するように既存のプラットフォームを利用しつつも独自のシステムやコインを作るのか、すべて自前で用意するのか、といったサービス構成は、ユーザーにとって本当に価値のあるトークンで報酬を与える鍵となる。現在の各サービスによる試行錯誤を経てベストプラクティスが今後確立されていくだろう。

今後の展望

これまで仮想通貨を手に入れるというと、一般的に、煩雑な手続きののち取引所に口座を開設し、ある程度の金額を銀行から振り込んだ後、価格変動の激しさの中やっとの思いで購入するものであった。しかしながら、本記事で紹介した行動に対して報酬を与えるサービスはこのような状況を変えようとしている。「歩く」「書く」「清掃する」「運転する」など日常の行動に対して仮想通貨が付与されることで、より多くの人が仮想通貨を手にし、間口が広がることで仮想通貨が真に使われ始めるきっかけとなりうるのだ。

さらにブロックチェーン上の改ざん不可能な記録をもとに、健康のために歩く人や優良ドライバーの保険料を値下げするなど他サービスが記録を活用することも考えられる。トークンを獲得してから実際に利用するまでの利便性の向上や、トークンを扱う法制度の整備が待たれる部分もあるが、バズワードにとどまらない「トークンエコノミー」が実現する日はそう遠くないのかもしれない。

署名: Aki T.

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