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LINE、メルカリ、Yahoo フィンテック領域に進出する巨大企業の戦略

LINE、メルカリ、Yahoo フィンテック領域に進出する巨大企業の戦略

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2019/04/23

これまでフィンテック以外の領域で実績を上げてきた国内の巨大企業が、フィンテックの領域に次々と参入している。LINEやメルカリといった新興大企業だけでなく、ヤフーやエイベックスといった巨人もフィンテック事業に参入。日本政府が推進するキャッシュレス化の流れとも連動し、急速にフィンテック業界の勢力図が塗り替えられようとしている。今、フィンテックの領域で、一体何が起きているのだろうか。

LINE Bankを発表したLINEの戦略

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出典:LINE for Business

LINEアプリを活用したLINE Pay

フィンテック外から、いち早くフィンテック領域に参入したのはLINEだ。2014年12月にスマホ送金・決済サービスのLINE Payを公開している。LINE Pay間での送金はもちろん、LINE Payを利用してリアル店舗で割り勘での支払いができる「割り勘機能」を実装した。LINEという友人間で利用することが多いコミュニケーションツールを、「割り勘」というフラットな関係性で成立するカルチャーと連動させたことで、若年層へのアピールを成功させた。

更に、2018年6月から7月にかけて、LINE Payの認知拡大を目的とした「10円ピンポン」キャンペーンを実施。LINE Payで友人に10円の送金を行うと、ローソンとマクドナルドの無料クーポンを受け取れるというものだ。キャンペーンのアンバサダーにはアイドルグループの欅坂46が就任し、送金件数46万件達成で同グループの特別映像を公開した。LINEは2018年末に国内の月間アクティブユーザー数が7,800万人以上となったことを公表したが、LINE Payのユーザー数も既に3,000万人を超えている。キャンペーンを通して実際にユーザーに利用してもらうことで、更なる拡大を図っている。

みずほFGと共同でLINE Bankを設立

そのLINEは2018年11月、みずほフィナンシャルグループと共同出資で銀行業参入のための準備会社を設立すると発表した。2020年のサービス開始を予定するというLINE Bankは、将来的にLINE Payユーザー向けに様々な金融サービスの提供を行うことを掲げている。つまり、LINEアプリを利用する層にも金融サービスを届けることが狙いだ。みずほフィナンシャルグループとしても、LINEの持つ若い顧客層にリーチできる絶好の機会となる。

LINE Payが生み出すエコシステム

LINE Payが2018年6月に消費者庁・インターネット消費者取引連絡会に提出した資料には、LINEが構築を目指すエコシステムについて解説がなされている。同資料では、LINE Payのビジネスモデルは、決済時の加盟店手数料を主な収益源とすると明言されている。一方で、加盟店にとっては、LINE Payが店舗とユーザーをつなぐ役割を果たしてくれることになる。

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出典:LINE for Business

LINE Payで構築されるエコシステムの仕組みはこうだ。
① 顧客はLINE上でキャンペーンの告知を受け取り、
② リアル店舗でLINE Payを利用したスマホ決済を行う。
③ 店舗のLINEアカウントを友だちに追加したり、クーポンやポイントを受け取ったりすることで、顧客とその店舗の間で接点が生まれる。
④ LINEは「LINEビジネスコネクト」と呼ばれる企業向けのOne to Oneコミュニケーションサービスを展開、顧客情報や決済情報をもとに、顧客に個別の広告やクーポンを配信することができる。
① に戻り、この流れは循環する。

前述の「10円ピンポン」キャンペーンでも、ローソンとマクドナルドの無料クーポンをユーザーに配布している点がポイントだ。LINE Payは、LINEアプリを通して顧客に消費を促すことができる。LINEというコミュニケーションツールをプラットフォームとして、コストを負担する加盟店にはこれまで実現できなかったOne to Oneマーケティングを提供する。これがLINE Payが生み出すエコシステムなのだ。

仮想通貨事業による“もう一つのエコシステム”

LINEはみずほとの協業について、ブロックチェーンの活用など、同グループの先進的な側面を強調している。そこで忘れてはいけないポイントが、LINEは既に仮想通貨事業を開始しており、仮想通貨取引所の運営と仮想通貨の発行まで行っているという点だ。

2018年7月、LINEはシンガポールで仮想通貨取引所BITBOXを開設、海外向けのサービスを開始した。2018年9月にはLINEの独自通貨「LINK」(海外向け)と「LINK Point」(国内向け)が発表され、LINE独自のブロックチェーンネットワーク「LINE Chain」上で、「LINE Token Economy」と呼ばれる新たなエコシステムを構築していくことが明らかになった。LINE Chain上でDApp(Decentralized Application、ブロックチェーンを利用した分散型アプリケーション)によるサービスを提供し、この各種サービスの運営に貢献したユーザーへトークンが配布されるという仕組みだ。

LINK Pointは、LINE Payでも利用できるLINEポイントと交換することができるが、LINKポイントをLINE上のサービスで直接利用することはできない。日本国内で無類の強さを誇るLINEアプリと敢えて距離を置くことで、LINEは海外向けの独自のエコシステムを作り出そうとしているのだろうか。いずれにしても、LINEはフィアット(法定通貨)シーンとブロックチェーンシーンにおいて、エコシステムは一つであるべきという常識を打ち破る展開を見せている。

“メルカリ経済圏“の衝撃

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出典:メルペイ公式サイト

マーケットを持つメルカリの強み

着々と準備を進めてきたLINEに対して、2019年2月の発表でフィンテック界に衝撃を走らせたのがメルカリだ。メルカリが展開するメルペイはスマホ決済へ参入し、非接触決済とバーコード決済の両方に対応、メルカリユーザーと相性の良いブランドやサービスに集中して加盟店舗を絞り込むことが発表された。加盟店選びの段階から、メルカリに蓄積されてきた購買データが活用されることが分かる。更にメルペイは、顧客の了承を得た上で、購買データの統計を加盟店舗に提供するプランも発表。LINEとの違いは、実際に年間5,000億円もの金額がメルカリ上で動いている点だ。リアル店舗が求める若年層の購買データをメルカリは既に握っている。

既にマーケットを持つメルカリは、フィンテックの領域に進出することで、これを独自の経済圏へと発展させようとしている。メルカリは既に新たな形の信用創造に着手しており、メルカリで購入した商品の代金を後払いできる「メルカリ月イチ払い」をメルペイで発展させた「メルペイあと払い」サービスの提供を目指している。ユーザーは残高がない状態でも「メルペイあと払い」を利用して商品を購入することができる。その商品をメルカリに出品し売却すれば、商品の金額から売却額を差し引いた価格をメルペイに支払うだけでよい。

そして、メルペイがフィンテック事業の中でも特殊であるのは、後払いのための信用創造のプロセスを、メルカリのプラットフォームを用いて行う点だ。メルカリ上での売買や支払いの履歴が個人の信用ポイントに換算され、「メルペイあと払い」を利用できる顧客を選り分ける。クレジットカードと同様、利用できる限度額にも影響するだろう。ユーザーは信用ポイントを稼ぐために積極的にメルカリのプラットフォームを利用する、というエコシステムが完成する。このエコシステムにリアル店舗を巻き込むことで、商品売買から信用創造までを包括するメルカリ経済圏は更に巨大なものとなるだろう。

IT界の雄 ヤフーの戦略

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出典:PayPay公式サイト

Yahoo!ウォレットの基盤をPayPayに

日本IT界の雄もフィンテックに本格参入した。IT大手のヤフー株式会社は、以前よりYahoo!マネー、Yahoo!ウォレットといった電子決済サービスを提供してきた。かねてよりYahoo!オークション等を主力ビジネスとしていたヤフーは、2002年からYahoo!内の有料コンテンツの決済サービスとしてYahoo!ウォレットの提供を開始。親会社のソフトバンクグループとも連携し、ネットショッピングやスマホアプリ、動画ストリーミング配信サービスの料金を携帯代とまとめて支払える「ソフトバンクまとめて支払い」と連動した展開を見せてきた。ソフトバンクに限ったことではないが、ユーザーの口座から定期的に料金の引き落としを行うスマホキャリアは、「あと払い」を代替するのに最も適したプラットフォームだったのだ。

そのヤフーが、ソフトバンク株式会社との合弁で設立したのがPayPay株式会社だ。2018年10月に電子決済サービス「PayPay」の提供を開始すると、「100億円キャッシュバック」のキャンペーンを展開し話題を呼んだ。このPayPayの大規模な展開を支えていたのが、他でもないYahoo!ウォレットの存在だ。ヤフーは、同サービスで4,000万人以上の登録ユーザーを抱えており、2018年6月にはYahoo!ウォレットを利用したリアル店舗でのバーコード決済サービスの提供を開始。PayPayの展開に布石を打ち、PayPayのサービス公開後にYahoo!ウォレットをPayPayに統合することを発表している。

スポーツ界をも巻き込んだエコシステムに

PayPayはYahoo! JAPAN IDとの連携が可能で、LINEやメルカリ同様、巨大プラットフォーム上にフィンテックを導入し、独自の経済圏を展開していく戦略だ。また、ソフトバンクグループが親会社であるプロ野球・福岡ソフトバンクホークスは、ホームのヤフオクドームでPayPayを利用したキャッシュレス化を推進することを発表している。スポーツファンをも巻き込んだフィンテックビジネスを展開できる点は、巨大企業ならではの取り組みだと言える。

また、かねてより金融サービスを提供していたIT業界のもう一つの雄である楽天は、2008年から決済サービスの楽天ペイを提供している。球場でキャッシュレス化を推進するソフトバンク同様、楽天が親会社であるプロ野球東北楽天イーグルスのホーム球場である楽天生命パーク宮城、Jリーグのヴィッセル神戸の本拠地であるノエビアスタジアム神戸でも、2019年からはキャッシュレス化が推進される。だが、楽天が両スタジアムで仕掛けるのは、キャッシュレス以外の決済手段が利用できない“完全キャッシュレス化”で、両チームのファンを中心に、同社の決済サービスを一気に浸透させる狙いだ。こうして、巨大企業による熾烈なプラットフォーム争いは、既に始まっている。

エイベックスもフィンテック領域に参入

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出典:エンタメコイン公式サイト

その狙いは?

ファンによって形成されたコミュニティが既に存在するエンターテイメント事業は、フィンテックとも好相性の分野だ。音楽や映像など、幅広くコンテンツ事業を手がけるエイベックスは、2018年5月にフィンテックへの参入を表明している。同年6月には100%子会社のエンタメコイン株式会社を設立。独自の電子決済システムを開発し、ライブ会場等での普及を目指す。「エンタメ業界発のエコシステム」の構築を目標に掲げ、クレジットカードや銀行口座を持たない若年層をメインターゲットに据える。エイベックスには、AAA、SKE48等、若年層のファンを抱える多くの人気アーティストが所属する。音楽ファンを顧客としたエコシステムを築こうという独自の戦略だ。

2018年2月にはJリーグのサガン鳥栖とエンタメコインの提携が発表されており、その名の通りエンタメ業界全体を巻き込んだエコシステムを作り上げる可能性も秘めている。エンタメ業に共通しているのは、チケット購入と現場でのグッズ購買だ。リアルに人を動員できる点はエンタメ業界特有の大きな強み。チケットの転売防止を兼ねた個人認証も、顧客側の同意を得る必要はあるが、事業者側にとってはビッグデータに活用できる大きな財産になるはずだ。

エコシステムの“乱立“にソリューションを

ここまで大企業によるフィンテック事業への参入例とその戦略を見てきた。どの企業もそれぞれの強みを活かし、独自のエコシステムを作り出そうとしている。

ここで気になる点は、次々と大企業がフィンテックの分野に参入することによって生じるエコシステムの“乱立”だ。前述の例を見ても、同じプロ野球やJリーグのチームでも、異なるキャッシュレス決済サービスを導入することになっている。ヴィッセル神戸のスタジアムで利用できるキャッシュレス決済は親会社の楽天が提供するサービスのみで、サガン鳥栖のスタジアムでは将来的にエンタメコインが利用されることになる。アウェーチームのサポーターは、ホームチームが採用した決済システムを導入する必要があり、そのスポーツやジャンルそのものを愛して足繁く現場に通っている人ほど、様々な決済プラットフォームとエコシステムを行き来する必要が生じるのだ。

発想を変えれば、スタートアップにとっては、そこにもビジネスチャンスを見出せるだろう。これまでは国家や銀行を中心としたシステムの中で生活していた人々が、突然エコシステムが乱立する煩雑な社会に投げ出されることになる。エコシステム間をつなぐようなソリューションを提供できれば、その“架け橋”には、大きな需要が生まれるだろう。 また、複数の巨大企業が自分たちのプラットフォームへの統合を進めようとするほど、小さな店舗や個人のニーズは見過ごされてしまうかもしれない。個人店舗でのビッグデータの活用や、キャッシュレス導入店舗のスタッフ教育など、フィンテック事業の“足元”をサポートする役割も必要とされるだろう。

海外でも巨大IT企業群がフィンテックに参入

GAFA全4社がフィンテックに進出

大企業によるフィンテック領域への進出は、海外でも進められてきた。Google、Amazon、Facebook、Apple の4社からなる“GAFA”と呼ばれる巨大IT企業群も、全社がフィンテックに参入している。

Appleは、決済サービスのApple Payを積極的に展開。“乱立”の感もある日本のスマホ決済市場においても、海外企業のサービスとしては唯一無二の存在感を示している。Googleは、2018年1月にスマホ決済のAndroid Payと個人間送金サービスのGoogle Walletを統合。Apple Payに対抗するGoogle Payとして、Apple Pay同様のサービスを提供している。

Amazonは、他サイトのネットショッピングでも利用できる電子決済サービスのAmazon Payを提供している。2018年8月には、QRコードを用いたリアル店舗での決済対応を開始している。他の大企業と比べるとフィンテック関連の動きは大人しい印象だが、Amazon.comという巨大なマーケットに膨大な数の消費者と販売者を抱えている。リアル店舗の運営にも乗り出しているAmazonの動向は、世界中のフィンテック関係者が注目している。

Facebookのフィンテック戦略

GAFAの中でも、フィンテックの領域に最も熱心に注力しているのは、世界で最も巨大なプラットフォームを持つFacebookだ。同社は、2018年12月にステーブルコインの仮想通貨開発を進めているとの報道がなされた。ステーブルコインはフィアット(法定通貨)と連動し、価格が比較的安定(ステーブル)している仮想通貨のことだ。価格変動を気にせず、法定通貨とほぼ同じ感覚で保持・利用できる点が特徴で、22億人超の利用者を抱えるFacebookのステーブルコインが誕生するとなれば、その影響は計り知れない。

Facebookにフィンテック関連のニュースが飛び出すのは、これが初めてではない。Facebookは、2016年にはアイルランドで電子マネーの決済ライセンスを取得している。また、2017年に英TransferWise社と提携し、Facebookメッセンジャーアプリを用いて国際送金ができるTransferWise Botを欧米向けに提供していた。

実は、この一連の動きには、ある連続性が存在する。2014年からFacebookメッセンジャーの責任者には、PayPalの前社長であるデビッド・マーカスが就任していた。Facebook周辺でフィンテック関連のニュースが飛び出すようになったのは、まさにこの後からだ。フィンテック畑の人間であるデビッド・マーカスは、Facebookメッセンジャーを送金ができるプラットフォームに育て上げるべく、様々な動きを見せている。

更にデビッド・マーカスは、2017年12月に仮想通貨取引事業を行うCoinBaseの取締役に就任したが、2018年8月には「Facebook内で立ち上げているブロックチェーン事業のため」と、同役職を退いている。Facebookがブロックチェーンを利用した事業を推進していくことを示唆していたところで、前述の「Facebookが仮想通貨開発」のニュースが飛び込んできたのだ。

更にこの仮想通貨は、北米最大のチャットアプリであり、Facebook傘下にあるWhatsAppでの利用が見込まれている。WhatsAppには2018年2月に電子決済機能の「WhatsApp Payment」が追加されている。チャットアプリにフィンテックを導入する流れはWeChatやLINEと同様の戦略だが、すぐに仮想通貨を導入しようとする姿勢は、さすがはFacebookといったところだ。チャットアプリを利用した仮想通貨による送受金・決済サービスの領域を、Facebookが一気に手中に収める可能性もある。Facebookは巨大プラットフォームの実力を、フィンテックの領域においても遺憾なく発揮するだろう。

やはりGAFAは桁違いだ。人々の生活に根付いたプラットフォームにフィンテックを導入し、グローバル規模のエコシステムに作り変えようとしている。日本で誕生するエコシステムを海外に広げる、あるいは海外のエコシステムとつなぐことも、早急に進めるべき課題だろう。日本のキャッシュレス化が進んだ将来、日本がフィンテックで世界と渡り合えるかどうか––––未来を見据えた戦略が必要だ。

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