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IBM、Samsung--国際IT企業が築くブロックチェーン国際物流システムから見たスタートアップ活躍の糸口

IBM、Samsung--国際IT企業が築くブロックチェーン国際物流システムから見たスタートアップ活躍の糸口

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2019/04/18

SamsungやIBMといった国際企業の参入により、国際物流システムへのブロックチェーン技術の導入が加速すると予想される。国際物流システムが変化を遂げる中、大手勢とともに参入し、目覚ましい成長を遂げているスタートアップも存在する。

ブロックチェーン技術の導入により、国際物流システムのリスク軽減

グローバリゼーションとテクノロジーの進化が、最新の船舶や港に大量のデータを用いた高度な取引ネットワークをもたらしたにも関わらず、物流取引そのものは、現在も膨大な紙の文書に依存している。

輸出者や輸入者だけではなく、運送会社、保険会社、税関、金融機関等複数の関係者が、それぞれ手順を踏んで取引するというプロセスの複雑さが、長年にわたる国際貿易の課題の1つとなっている。

書類作成から輸出入通関まで、すべてのプロセスに時間や手間を要する上に、それに伴うミスやトラブルも少なくはない。またリードタイムが長くなればなるほど在庫リスクが高まるが、業務効率化を狙い外部委託を実施すると、プロセスの中に不透明な部分が発生する「物流オペレーションのブラックボックス化」が懸念される。

こうした非効率的なシステムを改善し、国際物流の透明性や信頼性を向上させる手段として、様々な領域で活用が進むブロックチェーン技術の導入が拡大している。プロセスの大幅なスピードアップ、ヒューマンエラーやミスの軽減、コスト削減といったブロックチェーン技術の恩恵が、国際物流の歴史を変えようとしている。

Samsung SDSが挑む「世界初のブロックチェーンベース自動輸出通関サービス」

Samsungのエンタープライズ向けITソリューション部門Samsung SDSは2018年9月、国際物流における不正行為防止と貿易プロセスの大幅な改善に向け、新しい税関システムの構築を発表した。

独自のブロックチェーン・プラットフォーム「Nexledger」を活用した世界初の自動輸出通関システムで、輸出関連の組織や企業が輸出品の税関申告から最終納入プロセスまでの各段階で発生する文書を迅速に共有し、文書の偽造を防ぐ。

韓国における、ブロックチェーンを利用した輸出税関物流サービス事業の推進に向け、韓国税関サービス(KCS)および48社の海運会社や保険会社、政府機関が参加するコンソーシアムとの提携契約のもと、現在開発が進められている。

Samsung SDSとの提携関係を通じ、KCSは民間団体との新たな通関手続きの確立や通関物流サービス業務手順の再設計、変化に対応するための協力体制の整備に取り組む。

Nexledgerを活用した取り組み

同社のNexledgerはリアルタイムの大量取引処理とスマートコントラクト機能、および管理監視システムを備えたプラットフォームで、金融、製造、物流、公共部門などのさまざまな業界に適用されている。

同社はさらに、2019年2月、ブロックチェーンによるトランザクション速度を向上させるアクセレーター技術「Nexledger Accelerator」を発表した。

Nexledger AcceleratorはLinux Foundationが運営するオープンソース・ブロックチェーン技術「Hyperledger」を基盤に、IBMが開発した法人向けブロックチェーン・プラットフォーム「Hyperledger Fabric」にも対応している。2018年12月に「Hyperledger Fabric」を活用したパイロットテストでは、トランザクション速度の大幅な向上が確認された。

開発者共有サイト「GitHub」でホワイトペーパーおよびテストツールを公開するなど、利用拡大に向け、外部の開発者が簡単にアクセスできる環境を提供している。トランザクション速度の改善は、国際物流プロセス全体のスピードアップにも著しく貢献するはずだ。

IBMブロックチェーン国際貿易輸送ソリューション「TRADELENS」

一方IBMは、コペンハーゲンに拠点を置く複合企業、A.P. モラー・マースクと共同で、ブロックチェーン国際貿易輸送ソリューション「TRADELENS」を開発した。

業界での採用推進に向け、それぞれの従業員からなるコラボレーションチームがリードし、開発を発表した2018年8月の時点で、既に94社を超える企業や組織が参加あるいは参加の意向を示していた。現在は週1,000万件以上の出荷取引を処理している。

TRADELENSはスマートコントラクトを使用し、複数の関係者間の連携を実現させる目的で開発された。安全な出荷データの供給源を確保すると同時に、サプライチェーンと並行して企業や当局をサポートし、国際貿易の効率化を図る。同社のブロックチェーン部門責任者マリーウィック氏によると、輸送時間を約40%短縮できるという。

具体的には送信元から直接発行される120以上のリクエストを介して、出荷状況をリアルタイムでより正確に追跡できるほか、ブロックチェーン技術と強力な権限に基づく共有システムにより、データ共有とパートナーとの連携を向上させる。

APIを介して主要な交通管理システムに統合したり、消費者向け画面からアクセスしたりなど、カスタマイズ可能な柔軟性も備えている。

ブロックチェーン電子船荷証券のトライアルも実施

同社は2017年8月、シンガポールの大手港湾運営PSA (International Pte)および出荷・コンテナメーカーPIL(Pacific International Lines)と提携し、ブロックチェーン電子船荷証券のトライアル実施も発表した。

翌年の「IBM Blockchain Platform」を利用した実証実験(PoC)ではブロックチェーンベースのサプライチェーンのテストが行われ、重慶南西部と広西自治区、貴州省、甘粛省を結ぶ南部輸送回廊(Southern Transport Corridor)経由で、重慶からシンガポールへの貨物状況の追跡を成功させた。

主に「透明性・信頼性が高く、規制に準拠したマルチモーダル(道路、航空、海運など複数の交通機関を連携させる交通施策)物流容量予約の実行」、「リアルタイム追跡・エコシステムの参加者によるアクセス制御」を可能にし、国際物流・海運業でブロックチェーンをより幅広く導入することで、業務の効率性、セキュリティ、および透明性が大幅に向上することが立証された。

スタートアップ参入のカギと「国際物流エコシステム」の未来

世界の海上貿易において、コンテナ貿易は全体の約60%を占めており、2017年には約12兆米ドル(約1,320兆円)に達した。1980年の約1億2,200万トンだったコンテナで運ばれる貨物量は、約18億3,000万トンへと著しい増加を記録した。グローバリゼーションとテクノロジーの進化により、需要はさらに拡大すると予想されている。

大手の勢いに流されることなく、自らの革新的なアイデアと技術を武器に活躍しているスタートアップも存在する。例えば2016年にBarclaysとの世界初のライブブロックチェーン取引を完了したイスラエルのスタートアップWaveは、ブロックチェーンを利用した商業用船荷証券ソリューションのリリースに向け取り組んでいる。同社は2018年11月、イスラエルの海運会社ZIMや他の運送会社と共同でパイロットを実施した。

ブロックチェーンベースのSmart B / Lソリューションの独立系サプライヤでもあるスロベニアのスタートアップCargoXは、ブロックチェーンを基盤とする船荷証券プラットフォームを商業用にリリース。Ethereumネットワークに基づく分散プラットフォームを開発し、貨物運送業者とNVOCC(非船舶運航の共通運送業者)間のブロックチェーンネットワークでの電子船荷証券の発行・転送を可能にした。

これらのスタートアップは単独での行動にこだわることなく、大手との提携を成長の糧にしている点が特徴だ。ICOや資金調達ラウンドを通して研究・開発資金を獲得し、大手が不得意とする領域に技術を提供することで、さらなる成長を狙う。

今後も続々と大手企業が、「国際流通システムの信頼性と効率性の向上」という課題に挑戦するだろう。それと同時に、スタートアップとのアライアンスもますます加速するはずだ。将来的にはIT企業、リテール、運輸業者、金融機関など様々な分野のビジネスが統合したまったく新しい国際物流エコシステムが形成されるかもしれない。

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