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【2019年版】ブロックチェーンビジネス事例10選~フィンテック以外での活用も着々と進行中

【2019年版】ブロックチェーンビジネス事例10選~フィンテック以外での活用も着々と進行中

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2019/04/10

加速するブロックチェーンの利用

2019年、ブロックチェーン実用化へ躍進の年に

2008年にサトシ・ナカモトがブロックチェーン技術を公開してから、はや10年以上が経過した。近年は仮想通貨に大きな注目が集まり、2018年には仮想通貨を利用して資金調達を行うプロジェクトが多数現れた。さらに、ブロックチェーンを仮想通貨以外のさまざまなプロジェクトに応用する企業も数多く登場しており、2019年はそれらのプロジェクトが実現し始める重要な年になるだろう。

ブロックチェーンとは?

そもそもブロックチェーンとは「分散型台帳」とも呼ばれるデータベースのことで、ブロックチェーン上に一度記録されたデータを書き換えるには現実的に不可能な量の作業を要するため、理論上改ざんは不可能とされている。その上、P2Pネットワークで取引の真正性を確認するので、ブロックチェーン上で行われる取引には「管理人」の存在を必要としない。これが、ブロックチェーンが「分散型=非中央集権型」と呼ばれる所以だ。

改ざんが理論上不可能で、ハッキングや管理者による不正を防ぐブロックチェーン技術は、ITに「信頼性の確立」という新たな武器を与えた。そして、この特徴を活用してさまざまなプロダクトの開発が進められている。

ブロックチェーンが最も輝くフィンテック

ブロックチェーン技術を最も有効に活用している分野がフィンテックだ。Nasdaqやニューヨーク証券取引所は、既に証券取引の決済にブロックチェーン技術を用いる実験に成功している。改ざんが出来ない確実な取引と記録が可能になることで多くの業務を自動化でき、取引の高速化を実現することができる。

バンク・オブ・アメリカは2018年11月までに、50以上ものブロックチェーン関連の特許申請を行っている。直近でも、米国特許商標庁が公開した特許出願書類の中から、2018年12月25日にブロックチェーンを現金処理業務の改善に活用するための特許を出願したことが明らかになっている。

Bank of America Reveals New Blockchain Patent Targeting Cash Handling

IBMは相殺決済サービスの提供を開始

フィンテック分野での事例として、IBMが提供を開始した新たな相殺決済サービスが挙げられる。IBMは2018年11月28日より、FX決済サービスを手がけるCLSと共同で、ブロックチェーンを利用した相殺決済サービスの提供を開始した。CLSNetと呼ばれるこのサービスは、顧客が持つ複数の機関に対する債務と債権を相殺して一回の決済に振り替えることで整理できるサービスだ。既にゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどがこのシステムを利用している。

これまでの相殺決済サービスは全て手動で行われていたため、そのコストが問題となっていた。CLSNetではブロックチェーンを基盤にすることで、同サービスの自動化を実現した。ブロックチェーンによって改ざんができない=セキュリティが担保されるというだけでも、大きな変革をもたらすことができる。同サービスは120もの法定通貨に対応しており、ブロックチェーンがフィアット(法定通貨)の世界でも、その影響力を見せつけている。

CLS’s DLT payment netting service goes live with Goldman Sachs and Morgan Stanley

フィンテック以外のブロックチェーンのビジネス事例10選(大手5社&スタートアップ5社)

ブロックチェーンが活用されている分野は、フィンテックだけではない。元々はフィンテックの技術として登場したブロックチェーンも、今ではさまざまな分野での応用が進んでいる。今回は、フィンテック以外の分野でブロックチェーンの活用に取り組む注目のビジネス事例を、大手企業5社、そしてスタートアップ5社にまとめた。

ブロックチェーンのビジネス事例 大手企業5社

ウォルマート(生鮮食品の衛生管理、配送システムの管理)

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ウォルマート ウェブサイトより

ブロックチェーン技術の小売業への利用を目指すのは、世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートだ。2018年3月、ウォルマートが「スマート・パッケージ」と呼ばれるブロックチェーンを利用した配送システムの特許を出願していたことが明らかになった。

Walmart Is Using Blockchain to Make Shipping ‘Smarter’

「スマート・パッケージ」ではブロックチェーンを搭載したデバイスが用いられ、荷物の現在地だけでなく、商品の状態や置かれている環境など、詳細な情報の追跡が可能となる。配送システムにブロックチェーンを利用する最大の理由は、やはり「セキュリティの強化」とされているが、ここでは荷物に封入された商品の状態を保護するという意味だ。

ブロックチェーンが解消する配送の問題

ウォルマートは特許出願書の中で、オンラインショッピングにおいて小売業者が抱える「セキュリティ」の問題について述べている。例えば、腐りやすい食品を発送する際に、その食品に対して適切な環境下で配送されるかどうか、小売店にとっては重要だ。小売店から配送業者を介して顧客の手に渡るまで、配送中の商品が置かれている詳細な情報を正しく記録することができれば、責任の所在が明らかになり、サービスの向上にもつながる。

配送においては、その途中で荷物が次から次へとバトンタッチされる。「雑に扱われたりしないだろうか」という不安を感じたことは誰にでもあるだろう。だが、仮に商品の状態の変化やパッケージに加えられた衝撃が、搭載されたブロックチェーン上に自動的に記録されていくとすればどうだろうか。荷物の扱い方は大きく変わるはずだ。

改ざんや削除ができないことを活かし、ブロックチェーンを「管理者による不正を防ぐ」ために利用するというのは発想としては珍しくない。だが、「管理者が入れ替わる」という流通業界独特の構造に着目したウォルマートは、さすがは小売業界の雄といったところだ。「スマート・パッケージ」は、将来的に実現されるであろうドローンや自動運転車など、人を介さない配送にも利用される計画だという。

IBM(医療保険会社の情報共有&非効率性へのソリューション)

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IBMウェブサイトより

前述のフィンテックの事例として紹介したIBMは、フィンテック以外の分野でもブロックチェーンの利用を進めている。2019年1月、IBMは医療保険会社3社との提携を発表した。医療保険業界全体のコスト削減へ向けて、ブロックチェーンネットワークを構築する構想が打ち出されている。

Aetna, other health insurers team up with IBM on blockchain project

具体的なブロックチェーンの利用法については公開されていないが、提携を発表した医療保険大手のエトナは、「ヘルスケアシステムの効率化」を掲げると共に、情報の正確性の向上を実現するとしている。今後構築されるブロックチェーンネットワークでは、医療保険業界が何年間も抱えてきた、情報の共有、顧客名簿の管理、保険金の処理や支払いなどの非効率性といった問題を解決する。

注目すべきは、医療保険業界の競合同士が手を結び、ブロックチェーンネットワークを通じて業界全体の発展、健全化に臨もうとしている点だ。今後数ヶ月で更に複数の医療保険会社とIT企業が、このコラボレーションに参加する予定だという。

IBMは、業界が慢性的に抱えていた非効率性に改善のニーズを見出し、複数の企業を巻き込む形で業界全体にソリューションを提供しようとしている。

デンソー(自動運転車にブロックチェーンを搭載、データの改ざんを防止)

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デンソー公式サイトより

一方、日本の企業も黙ってはいない。自動車業界でブロックチェーンを活用しようとしているのは、自動車部品シェア世界第二位の株式会社デンソー(DENSO)だ。デンソーが独自のブロックチェーンプロダクトを発表したのは、2019年1月8日から11日までラスベガスで開催された世界最大級の技術展示会CES2019。CES2019では、IoTやVRと共に、ブロックチェーンが「テックトピック」として選ばれていた。

自動運転の先に見えたもの。CES2019で見えた未来の車のカタチとは

デンソーが見据えているのは、自動運転車におけるセキュリティの確保だ。車載するデータをブロックチェーン化することで、車の状態や、周囲の状況に関する情報を改ざんから保護することができる。仮に自動運転車が事故に巻き込まれた場合、ブロックチェーンに記録された「改ざん不可能なデータ」が、法的に車の持ち主や自動車メーカーを守ることになる。自動運転車の実用化に向けて議論となっている「車がハッキング被害に遭う可能性」に対しても、一つの答えを提示することになるだろう。

ブロックチェーンで車のバリューを守る

ブロックチェーンが守るのはセキュリティだけではない。車を売りたくなった場合、車載のブロックチェーン上に走行記録やメンテナンスの記録が残っていれば、その車が持つ正当な価値を元に売買できる。これまで、「走行距離の改ざん」は、中古車売買では注意すべき不正の一つだったが、ブロックチェーンを活用することができればそのような心配は不要になる。

デンソーが提示するブロックチェーンの活用法は、車の持ち主やメーカーへの法的な保護とサイバー攻撃からの保護、そして車の正当なバリューを守るというものだ。「ブロックチェーンを車載する」という発想から、自動運転という新技術を利用する際の法的な保護、従来の問題を排除した利益保護までも実現する——“これからのニーズ“と“現在のニーズ”、その「二鳥」を「一石」で仕留める発想だ。

ソニー(著作権をブロックチェーンで管理)

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ソニー ウェブサイトより

日本からもう一社、ソニー株式会社(SONY)が狙うブロックチェーンの利用方法は、コンテンツの管理に関するものだ。ソニーグループは、2018年10月、ソニー株式会社、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント、株式会社ソニー・グローバルエデュケーションの連名で、ブロックチェーン技術を応用したデジタルコンテンツの情報処理システムを開発したことを発表した。

ブロックチェーン基盤を活用したデジタルコンテンツの権利情報処理システムを開発

コンテンツとその著作権の管理においても問題になるのはやはり「管理者」だ。今や誰もがデジタルコンテンツを制作し、発信できる時代になったが、権利情報の管理はこれまで同様、業界団体または作者自身が行っている。クリエイターが増え続ける時代にあっても、膨大な量のコンテンツを効率的に管理する手法は確立されていない。

ソニーは、情報の破壊や改ざんができないブロックチェーンベースの著作権管理システムを作り出すことで、①電子データの作成時期の証明、②改ざんできない事実情報の登録、③過去に登録済みの著作物との照合・判別、④データの生成日および生成者を参加者間で共有・証明すること、の四つを実現する。また、著作物の権利発生を自動的に証明することも可能であるとしている。

ソニーは、このブロックチェーンベースの著作権管理システムについて、教育コンテンツへの活用から開始し、音楽や映画などさまざまなデジタルコンテンツの権利情報処理への応用を検討中だ。教育、音楽、映画などのコンテンツを手がけてきたソニーならではの観点であり、ブロックチェーンを有効に活用することで時代の変化に対応するのみならず、時代ごと牽引しようという勢いすら感じられる。

マイクロソフト(ブロックチェーンベースの個人IDを開発)

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Accentureブログより

IT界の巨人、マイクロソフトがブロックチェーン技術を用いてソリューションを提供しようとしている分野は、ID(身分証明、個人認証)だ。あらゆるデータの中で最も改ざんや偽装があってはならない分野の一つだと言える。だが、通常は政府が取り組むべきIDという分野を、なぜ民間企業が取り組もうとしているのだろうか。

マイクロソフトは自社のウェブサイトで、以下の文章から始まる声明を掲載している。

「投票、ヘルスケア、ハウジング、教育といった基本的人権は、現在は身分証明と紐付けられており、それがなければ利益を享受することはできません。しかし、世界にはまだ6人に1人の割合で、IDを持たずに生活している人がいます。」

Partnering for a path to digital identity

ID2020を支援

マイクロソフトが支援するのは、「ID2020」と呼ばれる人権保護プロジェクトだ。国連、NGO、政府、民間企業が協力してIDを持たない人々にデジタルIDを提供し、人権を保護することを目的としている。出生登録もされておらず身分を証明する書類を持たない難民に対し、政府がIDを発行するのは非常に困難なことだ。そこで、ID2020では、特定の政府のシステムに依拠することなく、独自のエコシステムを作り上げることで、人権が保護されていない人々にも身分証明を与えている。

Accenture, Microsoft Create Blockchain Solution to Support ID2020

マイクロソフトはこのID2020のために、アクセンチュアと共同でブロックチェーンベースのデジタルIDシステムを構築している。2017年7月には、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」上で利用できるデジタルID が公開された。ブロックチェーンが「分散型台帳技術」と呼ばれるその名の通り、「政府ではない」身分証明の拠り所を提供している。

個人認証にブロックチェーンを利用することは、なりすましや改ざんから個人を保護できる上、二重申請を防ぐことにもなる。すでに2017年時点で130万人以上の難民が身分登録を完了しており、医療サービスを受ける際などに利用されている。また、「Azure」上の情報は第三者に渡ることはなく、IDの保有者本人が使用する範囲を決定できる。ブロックチェーン上で運用することで、どんな類の不正アクセスであってもすべてが記録されることになる。「民間企業がIDを発行すること」への懸念は、クリアされつつある。

IT界の巨人マイクロソフトは、国連等と連携し、国際社会が抱える大きな問題の解決に乗り出した。社会的企業として、より大きな視野で世界の要求に応える懐の深さが感じられる。

以上が、大企業によるフィンテック以外の分野でのブロックチェーンの活用例だ。各業界を代表する企業が、新たな時代の到来に伴うニーズの変化に応じて、または、これまで業界を悩ませてきた問題点にフォーカスし、ブロックチェーンを活用したソリューションを提供している。

では、ブロックチェーンプロジェクトを立ち上げたスタートアップたちは、どのようなニーズに対して、どのようなソリューションを提示しているのだろうか。大企業のようなインフラや基盤を持たないスタートアップならではの戦い方が、そこには見えてくる。

ブロックチェーンのビジネス事例スタートアップ5社

Robot Cache(デジタルゲームの中古売買、不正防止)

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Robot Cacheウェブサイトより

スペインに拠点を置くRobot Cache(ロボットキャッシュ)は、2018年1月に設立されたスタートアップだ。同社はデジタルゲーム販売のプラットフォーム構築を目指しており、業界最大手のSteamに挑む格好になる。デジタルゲーム販売は、ソニーや任天堂もそれぞれのプラットフォームを利用した販売戦略を行なっており、勝機はあまりないようにも見える。それでも、Robot Cacheのようなスタートアップが武器にできるのは、ユーザーとメーカー双方のニーズを捉えた大胆なアイデアだ。

Robot Cacheの最大の特徴は、デジタルゲーム販売プラットフォームで中古ゲームの売買を実現しようとしている点だ。中古ゲームの売買は、家庭用ゲーム機が登場した当初から人々が慣れ親しんできたある種の「文化」でもあったはずだ。現在主流になりつつあるデジタルゲームは、ダウンロードして購入できる点が確かに便利だが、遊び終えると自分のデバイスやコンソールの中に収まってしまい、再活用されることはない。

そして、デジタルゲームの中古販売が困難だった理由は、不正に対する技術的な制約とメーカーの権利保護だ。まず、デジタルゲームはパッケージのゲームよりも不正な売買が行われる可能性が高い。売買されるゲームが違法に取得されたデータではないことを証明できることが、中古売買を実現するための条件だ。そして、デジタルゲームの中古売買が実現すれば、店舗を訪れることなくオンラインで取り引きできるため、これまでより手軽に中古売買が行われるようになる。結果、ゲームメーカーとしては新品のゲームを販売する機会が減り、収益減に直結する。

二つの問題を乗り越えるアイデア

だが、そこには確実にユーザーのニーズが存在する。Robot Cacheは、デジタルゲームの中古売買を巡るこの二つの問題点を、ブロックチェーンを用いて同時に解決しようとしている。まずRobot Cacheは、同社のプラットフォームで売買されるゲームのデータにブロックチェーンを利用し、不正な改ざんや複製を阻止する。その上で、Robot Cacheで中古ゲームの売買が成立した際には、その売上からゲームメーカーにも利益を分配する仕組みを導入する。これは、ゲームのデータが不正に取得されたものではないという信頼が確立されてこそ、実現するものだ(仮に、不正に取得されたデータが売買された際にメーカーに利益が生まれるようなシステムであれば、問題になることは明白だ)。Robot Cacheは、中古ゲームの売買がユーザーとメーカーの双方にとって利益となるシステムを構築している。

重要なのは、どれだけのゲーム会社がこのアイデアに賛同してくれるかという点だ。Robot Cacheはこれまで、同社のプラットフォームに参加するゲーム会社を着実に集めてきた。2018年12月の時点で、既に22社、700本以上のゲームがローンチと共に購入可能になると発表されている。Robot Cacheは、投資ファームのMillennium Blockchainから最大700万ドル(約7億8,260万円)のオプション付きで、300万ドル(約3億3,540万円)の資金を調達した。
(為替レートは2019/3/6時点)

Robot Cache secures $3m funding from Millennium BlockChain

Robot Cacheがユーザーのためだけにデジタルゲームの中古売買を可能にしようとしたのであれば、メーカーからこれだけの賛同を得ることはできなかっただろう。従来、中古ゲーム売買では利益を得られなかったメーカーにも利益をもたらすという発想が、自前のプラットフォームを持たない中小メーカーからの支持を得ている。

メーカーとユーザー、その双方に利益をもたらすプラットフォームを作ること——これが、激選区のデジタルゲーム業界に挑もうというRobot Cacheが用意したソリューションだ。実は、中古売買・転売へのブロックチェーン技術の活用は、小売業を手がけるウォルマートが取り組もうとしている領域でもある。Robot Cacheはスタートアップのスピード感を活かし、業界に風穴を開けようとしている。

Civic(個人認証、年齢確認ができる自販機を開発)

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Civicウェブサイトより

前述のマイクロソフトが取り組むブロックチェーンによる個人認証よりも、比較的小さな規模で個人認証システムの確立を目指しているのがCivicだ。アメリカでIDの発行を受ける際には複数の書類を準備した上で政府の機関に出向き、IDを受領するまで数十日待たされる。また、IDの有効期限が切れる度に更新手続きのために同様の作業を繰り返さなければならない。そんな面倒で非効率な現実を解決するためにCivicが目指しているのは、高いセキュリティと安価なコストでID認証を実現できるエコシステムの構築だ。

ブロックチェーンを個人認証に利用することの利点は既に述べた通りだが、ここで注目したいのはCivicが提示するその利用法だ。Civicが、巨大仮想通貨イベントConsensus 2018に出展した際に展示したのは、なんとビールの自動販売機だった。

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Civic Twitterより

大きな注目を集めるCivic

Civicの無料アプリ経由でブロックチェーン上に個人情報を記録し、自販機にスマホをかざすだけで年齢認証ができてしまう。21歳以上の参加者にはこの自動販売機を通して無料でビールが振る舞われた。このプレゼンはForbesにも取り上げられ、大きな注目を集めることになった。

Now You Can Buy Beer From An Age-Verifying Blockchain Vending Machine

Civicが繰り返し「オンデマンド」という言葉を使用していることもポイントだ。あくまで民間企業による個人認証システムであり、政府に代わって個人認証を行おうというプロジェクトではない。「世界の問題を解決する」といった大きな話ではなく、より手軽に個人認証を実行するという、ごくシンプルなアイデアだ。

Civicは、2017年6月にICOを完了し、3,300万ドル(約36億8,940万円)を調達した。2018年には大きなブームとなったICOだが、実はこの時期にICOを誰もが参加できる形で実施したプロジェクトは非常に稀であった。Civicはそのプロジェクトのコンセプト通り、開かれた姿勢で資金調達に臨み、瞬く間に目標額を集めてしまった。プロジェクトのアイデアやプロダクトだけでなく、世間の注目を集めるその手法にも目を見張るものがある。これは多くのスタートアップが参考にすべき点だろう。
(為替レートは2019/3/6時点)

VeChain Thor、Tael(流通&小売、商品の真偽判定)

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VeChain Thorウェブサイトより

VeChain Thor (旧VeChain)とTael(旧Wabi)は、それぞれ異なるプロジェクトだが、共に中国を拠点にブロックチェーンを流通と小売業に利用しようとしている。その活用法とは、商品の真偽判定だ。生産者から流通、小売店に至るまで、製品に関与するすべての関係者の情報と製品の取り扱われ方をブロックチェーンベースのチップに記録していくことで、産地偽装やフェイク品の混入を防ぐことを目指す。

VeChain ThorとTaelは、似たコンセプトのブロックチェーンプロジェクトだが、その違いはどこにあるのだろうか。VeChain Thorは生産者から小売店までのトラッキングに注力しているBtoB事業だが、Taelは消費者自身がアプリを利用して製品の情報を確認できる。そしてこの違いは、両社が注力する製品を見ることでその理由が分かる。

偽ブランドの排除に注力するVeChain Thor

VeChain Thorがブロックチェーンによる製品認証システムで最初のターゲットに見据えているのがブランド商品だ。偽物が製造されるような人気ブランド商品にNFCチップを埋め込み、ブロックチェーン上に商品が辿った経路のデータを記録していく。これはウォルマートの「スマート・パッケージ」と同様の発想だ。

だが、VeChain Thorでは、このシステムを製品が本物であることを証明するために利用する。小売店は、生産者から流通の経路に至るまでの改ざんできない詳細なデータを手に入れることができるため、偽ブランド商品が市場に出回ることを防ぐことができる。Robot Cache同様、メーカーと消費者の双方にとって利益となるアイデアを掲げ、VeChain Thor は2017年9月にイーサリアム建のICOを完了、200,000 ETH(約5,757万ドル、約64億9,970万円)を調達している。
(為替レートは2017年9月時点)

乳児用製品に注力するTael

一方で、Taelが力を入れているのは、粉ミルクなどの乳児用製品だ。中国では2008年、許容含有量を超えるメラミンが混入した粉ミルクが販売され、30万人余りに健康被害が発生し、死者まで出ている。以来、乳児用食品の安全性は社会的に関心の高いトピックになっている。ブロックチェーンはさまざまな製品に応用できるが、まずは社会的に解決が望まれている問題にフォーカスしてプロジェクトを進めようという姿勢が支持を得た。Tael は2017年にICOで1,150万ドル(約12億8,570万円)を調達し、中国国内での展開を進めている。
(為替レートは2019/3/6時点)

つまり、そもそも偽物のブランド商品が出回ることを防ごうというのがVeChain Thorの目的であり、消費者の安心を実現するのがTaelの目的だ。Taelは、小さな子どもを持つ親が販売店で安心して乳児用製品を買えるように、消費者自身も重要なプレーヤーとしてアプリを用いた真偽判定に参加させようとしている。ニーズの捉え方によってブロックチェーン技術を活用した事業目的が全く違ってくる一例と言っていいだろう。

ChainLink & OpenLaw(スマートコントラクトで法契約、オフチェーンを仲介)

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OpenLawウェブサイトより

ブロックチェーン技術は改ざんできないデータを記録できることから、第三者を介さない信頼された契約=スマートコントラクトにも利用できる。これまで処理が煩雑であった不動産契約の管理に利用する動きもあり、今後、ブロックチェーンの主要な利用方法の一つとなることは確実だ。そして、スマートコントラクトを用いたブロックチェーンの法的領域への活用に注力しているスタートアップが、ChainLinkOpenLawだ。

ChainLinkは、オフチェーン(ブロックチェーン外部)にあるデータとブロックチェーン内のスマートコントラクトを繋ぐ(仲介する)目的で立ち上げられたスタートアップだ。例えば、ChainLinkネットワーク上でオフチェーンの銀行同士をスマートコントラクト(法的契約)で繋げることで、フィアット(法定通貨)を迅速に送金することができる。ブロックチェーン以前とブロックチェーン後の世界ができてしまうのであれば、それを繋ぐ役割が必要だという点にニーズを見出し、2017年9月にICOで3,200万ドル(約35億7,760万円)の調達に成功している。
(為替レートは2019/3/6時点)

スタートアップ同士がタッグ

ChainLinkは、2018年8月、ブロックチェーンをベースにしたスマートコントラクトを提供するOpenLawとの提携を発表した。

OpenLaw And ChainLink Partner To Use Real-World Data On Smart Contracts

OpenLawは、スマートコントラクト上での法的取引を最初に可能にしたプロジェクトだ。ブロックチェーンを利用した雇用契約書等の提供を行っており、不動産業者や弁護士のような第三者を介さずに契約の主体同士を繋ぐプラットフォームとして機能している。

ChainLinkはこのOpenLawと提携することで、ChainLinkのシステムを法的契約の分野まで広げることができる。OpenLawにとっては、ブロックチェーンではカバーできていなかった「オフチェーン」の人々にサービスを提供できるようになる。スタートアップ同士が互いの得意分野を活かして協業することで、より大きな事業への挑戦を実現している。

ODEM(高等教育、個人間の契約&証明書発行)

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ODEMウェブサイトより

そして、スマートコントラクトを高等教育に利用しようというプロジェクトがODEM(On-Demand Education Marketplace)だ。これまで、高等教育が提供される場所は学校に限られてきた。大学や専門学校が教育者を雇用し、学生を教育する、そして学校が単位付与や卒業証書によって修了を証明することで、学生が「高等教育を受けた」という事実が認定されてきた。

だが、さまざまな事情から学校に通えない人々が多く存在し、一方で、教育者の側においても学校の方針にそぐわない内容の授業は認められないといった問題も存在する。にもかかわらず、学校以外に高等教育の有力なオルタナティブは存在しなかった。高等教育には、教育を受けたこと、実施したことを証明する信頼できる機関が必要だったからだ。

ブロックチェーンが変える教育

ブロックチェーンの登場は、管理者を介さない記録の証明を可能にした。今や学校の存在がなくても、ブロックチェーン上に修了証を記録して保存しておくことができる。更にスマートコントラクトを用いて、ODEMのプラットフォーム上で教育者と学生をマッチングすることもできる。学校のように煩雑な手続きを経る必要がないため、まさに「オンデマンド」で、今必要な内容の教育を提供し、受講できる点も魅力だ。有名な学校を出ていなくても、著名な教育者から教育を受けたということが証明できれば、雇用市場においても一定の評価を得られるだろう。

ODEMでは、ハーバード大学講師でコンサルタントのスティーブ・ジャーディングを始め、教育に携わってきたビジネスマン達がアドバイザーを務める。ブロックチェーンシステムの開発やICOは、SICOS、BlockScienceといった専門チームから援助を受ける形でプロジェクトを立ち上げた。仮想通貨事業に寛容なスイスに拠点を置き、2018年3月のICOで約700万ドル(約7億8,260万円)を調達し、その後はサンフランシスコにも拠点を設置している。2019年のプラットフォーム公開を予定しており、実用化は目前に迫っている。
(為替レートは2019/3/6時点)

本来、成人を対象としている高等教育は多様な選択があって然るべき分野だが、高等教育にフォーカスしたブロックチェーンプロジェクトは稀であり、教育事業に関心を持つ投資家達から注目を集めた。ここでも、ブロックチェーンによる「信頼の確立」が実現されたことで、潜在的なニーズを掘り起こすと共に、それに対するソリューションを提示することに成功している。

以上が、プロダクトやサービスの実用化が目前に迫っているスタートアップ5社によるブロックチェーンプロジェクトだ。2017年から2018年にかけてICOを完了させたプロジェクトが、2019年はいよいよ実用段階に入っていく。各社が見出したニーズと、それに対するブロックチェーンを用いたソリューションは、一体どのように花開くのだろうか。2019年のブロックチェーンに注目したい。

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