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シェアリングエコノミーのキモはフィンテック~Airbnb、Uberが「信用創造」できるその理由

シェアリングエコノミーのキモはフィンテック~Airbnb、Uberが「信用創造」できるその理由

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2019/01/23

AirbnbやUberが「シェアリング」から「レーティング」、そして「信用創造」へと向かう時代

十分に活用されていない「モノ」や「空間」、「スキル」などの遊休資産を貸し出すことで、貸し手と借り手の双方に価値を生むシェアリングエコノミーは、インターネット(とりわけスマートフォン)の進歩とともに世界中でその市場規模を拡大し続けている。

世界4大コンサルティングファームのひとつであるプライスウォーターハウスクーパースの試算では2025年には約3,350億ドル規模に成長する見込みだ。ちなみに国内市場規模は、総務省の白書によれば、2015年度に約285億円であったものが、2020年までに約600億円まで拡大すると予測されている。

シェアされるものは乗り物、住居、家具、服などの他に、家事、幼児の送迎、家具の組み立て、ペットの世話などのスキル、あるいは資金を融通するクラウドファンディングもそのひとつに数えられるが、その代表格は自家用車を所有者が自ら運転してタクシーにするライドシェアサービスのUber、そして自宅や空き部屋を旅行者の宿泊に提供するAirbnbだろう。

Uberは、現在、世界の60カ国・地域の600都市以上で事業を展開しており、7,500万人の乗客と300万人のドライバーが登録され、一日に1,500万回以上、通算100億回以上の配車サービスが利用されてきた同社の時価評価額は2018年10月時点で約680億ドルとされてきたが、2019年にIPO(新規株式公開)する予定で、公開時には時価総額が約1,200億ドル(約13兆4000億円)に達する可能性があると報じられている。

一方、Airbnbのプレスリリースによれば今年夏の時点で、全世界191ヶ国以上の約80,000の都市においてリスティング数が500万室を超えた。通算のゲスト数は4億人を超え、毎晩平均200万人以上が宿泊している。同社の時価総額は5月時点で約310億ドル(約3兆3千億円)と推定されていて、こちらも2019年にIPO(新規株式公開)する可能性がある。

これらユニコーン企業が数々の法規制や既存勢力の抵抗に遭いながらも成長してきた理由には、これまでの大量生産・大量消費への反動もありつつ、すでにあるものを共有(共用)することでコストを下げる経済性と利便性を両立させる利用者のライフスタイルの変化が大きいが、加えて、赤の他人同士で共有するシステムを下支えする相互評価制度、いわゆるレーティングの存在も見逃せない。

Uberではドライバーと乗客が、Airbnbではホストとゲストが、サービスの利用の機会ごとに相互にレビューして評価する。運転技術、話の面白さ、清潔さ、キャンセルポリシー等、さまざまな点でお互いに評価し合い、その人のサービスがどれほどの価値があったかを明らかにするとともに、その後の利用者への重要な情報になる。

今や、インターネット上にはありとあらゆるレビューとレーティングが存在する。とりわけ、シェアリングビジネスでは、見も知らぬ者同士のマッチングだけに既存のユーザーの体験値が大いに物を言う。

要するにシェアリングエコノミーが実行されるプラットフォーム自体がコミュニティと化してドライバーと乗客、ホストとゲストが評価制度というツールを介してつながりつつ、サービス全体としての質を維持、向上するのに役立たせているわけだが、それはまた、サービスを提供する側も受ける側も、その人が信頼するに足る人物なのかどうかの判定であり、一種の格付けでもある。

AirbnbもUberも当然会員登録が必要であり、住所、氏名、電話番号、インターネットアドレスなどはもちろんのこと、Airbnbの場合は、2013年には免許証やパスポートなどの書類での提出を義務付けて匿名性を完全に排除し、システム全体の信用度を担保した。と同時に、ユーザー情報により信憑性が加わったことになる。

こうしたIT企業では、もちろんFacebookなどのSNS上でのユーザーの発言記録なども分析してユーザーの評価要素として利用されている可能性が高いが、サービスを利用する上でのユーザーの振る舞いを、テクノロジーの力を借りて逐一システムで捕捉して更に深くユーザー情報を収集することにも積極的だ。

これらのデータはすべてユーザーの与信情報として蓄積される。従来、これは銀行が行っていたことだが、今やインターネットが信用創造のプラットフォームになっている。

Uberの場合、その行為が行き過ぎて、事件になったことがあるものの、前述の桁違いのユーザー数の与信情報を別の領域のビジネスに活かさない手はない。ビジネスの究極は金融というのは衆目の一致するところだが、Uberの場合もその目的は間違いなく金融だろう。

事実、Uberと同じライドシェアサービスのシンガポールのGrabは、その版図をタイ、マレーシア、フィリピン、インドネシアなど東南アジア一体に広げつつある新興勢力だが、Grabpayという決済サービスを始めており、運賃のみならず、P2P送金や店舗での支払い、保険やマイクロレンディングまで展開している。なお同社は2018年3月にUberの東南アジア地域のすべてのビジネスを引き継いでいる。

こうして収集した情報をフルに活用して着々とビジネスを拡大しているのが中国のフィンテックだ。

中国のフィンテックによる「信用創造」が政府の思惑と絡んで実現するもの

中国では、個人の振る舞いをもとに信用度を格付けして、2020年までに社会信用制度を構築するという計画が国家レベルで進んでいる。このプロジェクトに深く関わっているのがアリババが提供するモバイル決済、アリペイ(支付宝)だ。

アリペイは、関連する金融サービスが豊富で、後述する「芝麻信用」のスコアアップに直結する他、特典となるメニューが魅力なので極めて人気が高い。ユーザー数は全世界で実に9億人を超える。ちなみに中国のモバイル決済は、アリペイとテンセントのウィーチャットペイ(微信支付)だけで、90%以上のシェアを占めていると言われている。

オンライン決済のみならず、飲食店、タクシー、映画、学費、納税、年金、公共料金、ローン返済、あるいは個人間送金、ホテルの予約・支払い、交通違反の反則金まで、ありとあらゆる決済や貸し借りに利用されており、当然ながらすべてが記録として残る。

アリペイでは、口座に資金を入れておいて商品の購入代金の支払いができる仕組みだが、この預かり資金を利用して理財商品を提供しているのが「余額宝」だ。ここの口座に資金を入れておけば、アリペイの関連会社がMMF(公社債投信)で運用して還元してくれる。利用実績次第では4%程度の利息がつく。

また、アリペイの中に組み込まれている「フアベイ(花唄)」というサービスでは、翌月の10日までに銀行口座かアリペイに資金を入れておけば決済が完了する、いわば、「後払い」だ。アリペイのユーザーは、後述の「芝麻信用」スコアを600点以上保有すれば利用できる。分割返済も可能で、これはリボ払いのようなものだ。しかも、年会費もない。

さて、アリババグループ会社のアント・フィナンシャルが運営する芝麻信用はアリペイのこの利用履歴に基づいてユーザーを格付けするが、そこに学歴や職歴、動産・不動産の保有状況、交遊関係なども加味して、信用スコアを350~950点で評価する。

このスコアをはじき出すために、以下の5つの要素を考慮している。

  • 信用履歴(公共料金やクレジットカードの支払いはできているか)
  • 履行能力(契約義務は果たせているか)
  • 個人的な特徴(携帯番号や住所などの個人情報)
  • 行動と嗜好(消費傾向の特徴)
  • 人間関係(交友関係)

この信用スコアによって、さまざまな特典が得られる。例えば、600点で5,000元(約80,000円)までローンを引き出せる。650点で、デポジット無しで車が借りられる。700点でシンガポールへのビザが専用アプリで申請でき、750点でシェンゲン・ビザ(ヨーロッパの各国に個別に申請することなくシェンゲン協定加盟国内を自由に往来できるビザで、最大90日まで滞在できる)が優先的に取得できる。

そしてそのスコアを与信や金利優遇などの判断材料にしているが、実はアント・フィナンシャルが提供する前述のさまざまな金融商品を利用すれば信用スコアは自動的にアップする仕組みになっている。

ただし、良いことばかりではない。その逆もあり得る。2020年にこのシステムが正式に国家事業として義務化されるとスコアが低い者には、旅行も自由に行けなくなったり、家の賃貸契約や保険の加入にも制限が加えられたり、高い信頼度が求められる職業には就けなかったりなど、罰則を科せられる可能性もあると、インターネットとテクノロジーが実現するシェアリングエコノミーの可能性についてコンサルティングする他、オックスフォード大学サイード・ビジネススクールで「協働型経済」コースを教えているレイチェル・ボッツマン氏はその著書『TRUST』で記している。

実際のところはまだわからないが、政府主導で信用社会の到来を実現しようとする中国の動向には、監視社会の気味悪さを感じさせつつ、ある意味、来るべき未来のフィンテックの可能性のひとつと言えるかもしれない。

メルカリは日本のアリペイとして複合型金融ビジネスへと進むのか

さて、かたや日本で注目したいのがメルカリの子会社での「メルペイ」だ。メルペイは決済サービスの他に、仮想通貨・資産運用、融資、保険といった金融関連サービスの提供を目的としている。

ちなみに、メルカリのユーザー数は1,000万人を超え、売上金は年間3,000億円以上になっている。このボリュームをベースに「メルカリ経済圏」を拡大する意図は明らかだが、イメージとしては前述のアリペイのように複合的に金融ビジネスを展開することは想像に難くない。

メルカリでは、出品した商品の売上金を引き出す際に10,000円未満の場合210円の振込手数料が課されるが、これをメルカリ内に留保したまま、メルカリ以外のリアル店舗での購入の支払いにも利用できるようあらたに取引先を開拓する。もちろん、決済手数料を収益にするのが目的だ。

ポイントはアリペイのようにわざわざ入金するのではなく、ユーザーの売上金をメルカリの口座で預かり状態にしておける点だ。この内部留保に対して資産運用などの金融商品を働きかけられるのは都合がいい。

当然、その際、メルカリでの売買を含めた利用履歴がメルカリならではの信用創造となり、その信用スコアが今後のメルカリのさまざまな金融ビジネスでモノを言う。

遊休資産を共用することで、貸し手と借り手の双方に価値を生み出したシェアリングエコノミーは、その拡大とともに着実に金融ビジネスのプラットフォームを構築している。メルカリのみならず国内においてもシェアリングエコノミーは勢いを増しているが、いずれフィンテックがそこを起点に新しい経済圏を作るのは自然な流れだろう。

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