tr?id=1970953653177752&ev=PageView&noscript=1

途上国救済を図る仮想通貨

途上国救済を図る仮想通貨

1,568view

2018/12/18

投機的な側面に注目されがちな仮想通貨だが、途上国の救済や銀行口座を持たないunbankedと呼ばれる人たちや、難民の救済にも利用されている。本記事ではDASH、Stellar、OmiseGoの途上国での取り組み、Bitnationの難民救済プロジェクトを紹介し、この分野での仮想通貨の役割を考察する。

途上国で注目が集まる仮想通貨

途上国や新興国では、不安定な政治・社会情勢、外国からの影響を受け急激なインフレが進むことがある。2018年にトルコの通貨リラやアルゼンチンの通貨ペソが大幅安を記録したことは記憶に新しい。

経済の立て直しにあたっては、地域共同体や同盟、経済的なつながりのある国や国際社会、IMF(国際通貨基金)に支援を求めるのが一般的だ。国民は可能であれば報酬を米ドルなど外貨で受け取ったり、手持ちの自国通貨を外貨に両替したりして資産を守ろうとする。ところが2017年後半のジンバブエでは、外貨ではなく仮想通貨に両替する動きがあった。そのため、先進国を中心とした仮想通貨バブルの最中に先進国以上にビットコインの価格が急騰するといった事態が発生した。

途上国や新興国では、モバイルデバイスが普及し、一定数の国民がインターネットにアクセスできるようになったことを背景に、携帯電話を利用した金融サービスが普及している。携帯通信事業者の業界団体GSMAの調査によると、2017年時点でサハラ砂漠以南のアフリカの国々での携帯電話の契約者は44%に達し、携帯電話を利用して金銭を保管し、やりとりできる135のモバイルマネーサービスが39ヵ国で展開されているという。ケニアのSafaricomと南アフリカのVodacomが2007年にスタートしたSMSを利用した金融サービス「M-Pesa」はこの分野のサービスの先駆けだ。ケニアでサービスをスタートし、アフリカ各国やインドにサービスを拡大した。

2009年のビットコイン運用開始から約10年経ち、第一世代の金融サービスに続き、仮想通貨を利用した取り組みが新たに出てきている。具体例として、Dashのジンバブエやベネズエラにおけるインフレ救済、unbankedと呼ばれる銀行口座を持たない人たちに対するStellarやOmiseGo、Bitnationの取り組みをみてみよう。

ハイパーインフレ救済、起業家支援

2017年11月、Dashはジンバブエのハイパーインフレ救済を発表した。2014年にXCoinとして誕生し、Darkcoinと改名されたのち、翌年現在のDashに改名された。CoinmarketCapによると2018年10月現在の時価総額は約1,450億円で13位。主要通貨とみなしてよいだろう。

Dashは匿名性の高い仮想通貨としてとりあげられることが多いが、世界初の自律分散型組織(DAO: Decentralized Autonomous Organization)として機能している点にも注目したい。新しく採掘されるDashの10%はtreasuryとよばれる基金にプールされ、投票によって世界中から提案されたプロジェクトに投資される。この仕組みもDash自体と同様自律分散的に機能する。

Dashの基金から55万ドルの投資を受けたKuvacashはジンバブエ出身のJames Saruchera氏が創業したスタートアップで、2017年11月にDashとのパートナーシップのもとジンバブエのハイパーインフレをはじめとする経済的な問題に解決策を示そうとしている。Kuvacashによると、ジンバブエでは自国の通貨よりも米ドルの信用力が高い。銀行によって管理されていない米ドルが流通し、ジンバブエの人々は汚れた紙幣を洗濯して干し、きれいになった紙幣を10~20%の利ざやで売っているという。しかし、政府はこうした現状を改善する長期的なビジョンを持っていない。このような状況に対して、Kuvacashは支払いや取引、米ドルとの両替を扱う無料のモバイルアプリを提供している。銀行の管理下にない高額で取引される米ドルが流通することを減らし、透明性のある流通市場の実現が目標だ。将来的には、固有の携帯電話の番号を持ち、メッセージを送信できる人であれば誰もが利用できるジンバブエ特化型の仮想通貨による金融サービスを提供するという。

Dashにとってハイパーインフレが現在進行形で加速するベネズエラも一大マーケットだ。Dashコアグループの最高経営責任者(CEO)を務めるRyan Taylor氏へのインタビューでは、既に大手を含め800の事業者がDashでの支払いを受け付けるべくサインアップしたという。前出のDashの基金の投資履歴にはベネズエラでのカンファレンスへの投資、Dashとベネズエラの通貨ボリバル・ソベラノをビットコイン経由ではなく取引できるようにするプロジェクトへの投資、Dashをベネズエラのユーザーや事業者に普及させるイベントへの投資などベネズエラに関するものが多く見られる。Taylor氏はベネズエラでの経験を生かして他のインフレ率の高い国へと展開することも示唆している。

銀行口座を持たない“unbanked”へのアプローチ

途上国支援という観点では、すべての人に金融サービスを提供しようという動きも見逃せない。国連のSDGsにおいても、貧困をなくすという目標の中でこの点に触れている。

全国銀行協会の調査によると日本における銀行口座保有率は97.5%となっている。これは世界的に見ると非常に高い割合だ。世界銀行の調査によると、銀行口座を持たない人の数は全世界で17億人にのぼる。一方で携帯電話やインターネットの普及により、デジタルな金銭のやりとりができる口座を保有する人の割合は途上国では2014年から2017年の間に57%から70%まで増加した。

すべての人が銀行口座を持てない背景には、従来の銀行サービスでは極少額を保有する口座を維持するのはコストに見合わない、送金では送金額に対して手数料が高くなり過ぎてしまうといった事情がある。また、社会情勢が不安定な国で出生証明など、IDを持たない人たちに対して口座を提供するのは難しい。

このような中、Mt. Goxや国際送金を扱うRippleを創業した仮想通貨分野のシリアルアントレプレナー、Jed McCaleb氏が率いるStellarは、極少額の貯蓄やほぼ手数料無料で国境を超えた迅速な送金ができる金融サービスを銀行に提供しようとしている。

東南アジアで決済サービスを提供するタイのスタートアップOmiseは、銀行口座の保有率は低いがモバイルデバイスが普及している東南アジアにおいて、Ethereumベースの仮想通貨「OmiseGo」で金融包摂を実現しようとしている。OmiseGoはバンコクを拠点に広まっており、既にタイのモバイル企業の多くが決済手段としてOmiseGoを導入しているといわれる。金融包摂とは、金融サービスにアクセスできなかった人々や事業者に対して、金融サービスを普及させることを意味する。

ブロックチェーンベースの「自立分散型国家」を目指すBitnationは、国を追われ難民となった人たちにIDを提供するとともに、ビットコインを利用したVisaデビットカードを提供した。この取り組みは2017年に国際連合教育科学文化機関のパートナーであるNetexploのNetexplo Awardsを受賞し評価された。

仮想通貨による途上国支援の今後

本記事で紹介した仮想通貨による途上国支援の取り組みは、ボトムアップでスピード感のある改革をもたらすものだが、国家や法規制、既存の金融サービスと対立するというよりも協調的な姿勢がうかがえる。ジンバブエでは中央銀行から仮想通貨禁止令が出され、最高裁判所によってこれが覆されるなど仮想通貨を取り巻く環境は不安定だ。しかし、Kuvacashは中央銀行からのライセンスの取得に取り組み、他のアフリカ諸国でもライセンスを取得し、正式にマーケットに入るアプローチをとるようだ。Stellarは国際送金を扱うRippleの創業者による組織だけあって、銀行や決済サービスとも協業する。Omiseはタイの政府機関とデジタルIDを発行するプロジェクトに乗り出した。

今後、途上国や新興国で仮想通貨がハイパーインフレ対策や金融サービスの鍵となるには、インターネットとモバイルだけでは不十分なのかもしれない。法定通貨の送金を仲介するStellarは少し異なるが、DashやOmiseGoのような仮想通貨では、利用者がこれらを手にして実際に使える経済圏が不可欠だ。銀行口座を持たない人たちも、これらの仮想通貨を手に入れられるように、イベントやオンラインでの無料配布が行われている。

救済策として途上国や新興国に浸透する仮想通貨について解説してきた。経済圏の築き方や仮想通貨が使われるために広く社会に行き渡らせる施策など、先進国で投機以外に仮想通貨の利用を進めるに当たり、これらの事例から学ぶところは大きいだろう。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

INNOVATION HUBの最新情報をお届けします

プログラム

スタートアップ・アクセラレータ

  • MUFG DEGITAL ACCELERATOR

コンテスト/ハッカソン

  • 三菱UFJ銀行 FINTECH CHALLENGE 2018
  • 三菱UFJ銀行 FINTECH CHALLENGE 2016
  • 三菱UFJ銀行 FINTECH CHALLENGE 2015

月間記事ランキング

MUFG関連記事

Facebook公式ページ