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ソーシャルレンディングは普及するのか~お金の貸し借りのこれまでとこれから~

ソーシャルレンディングは普及するのか~お金の貸し借りのこれまでとこれから~

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2018/10/24

(写真=only_kim/Shutterstock.com)

今でこそクラウドファンディングは一般的なものになりつつある。簡単に資金調達ができる仕組みが功を奏し、様々な事例で利用されている。英語で「P2P(Peer to Peer/ピア・ツー・ピア)レンディング」、日本では「ソーシャルレンディング」と呼ぶインターネットを介した融資が、銀行の取引と並んで近年少しずつ普及し始めている。本記事ではこの分野の変遷を踏まえ、ソーシャルレンディングをはじめとした新しいタイプのお金の貸し借りのトレンドを読み解く。

SBIソーシャルレンディングでサービスを提供しているソーシャルレンディングとは

ソーシャルレンディングとは、インターネット上で資金の借り手と貸し手をマッチングし、融資を成立させるサービスだ。プラットフォームが金利を決めるもの、オークションで金利が決まるものなど形態はさまざまだ。

ソーシャルレンディングを活用するのは企業だけではない。個人が融資を受け、投資する機会を広げるものとしても期待を集めている。実際に、統計や調査データを扱うドイツのポータルStatistaのデータによると、2018年の個人への融資を扱うソーシャルレンディングは、マーケットプレイス型のものだけで取引額約1,190億ドル(前年比37.3%増)、融資件数は約1億3,200万件(同24.5%)と見積もられている。同ポータルによると2013年には35億ドルほどだったソーシャルレンディングの市場価値が、2025年に1兆ドルに達する見込みだという。これは、日本の2018年国家予算の一般会計歳出総額を上回る規模だ。

日本については、ソーシャルレンディングに関する情報を提供するクラウドポートの「2018年 上半期ソーシャルレンディング業界レポート」によると、2018年上半期における国内のソーシャルレンディングへの投資額は1000億円を超え、2014年から2017年にかけて毎年2倍のペースで市場規模を伸ばしてきた。また、中国においてソーシャルレンディングが急拡大してきたが、2018年に入って中国当局による登録制の導入決定など規制強化もあり、大幅に鈍化してきている。

世界と日本のソーシャルレンディングのこれまで

現在も成長を続けるソーシャルレンディングだが、その先駆けとなったZOPAが英国で登場したのは2005年のことだ。ZOPAはこれまでに170億ドル近くの投資を受け、数百人の従業員を抱え、すでにスタートアップの域を脱している。ZOPAに続いて米国発のProsper、Lending Clubも登場し、Lending Clubは世界最大のソーシャルレンディングプラットフォームに成長した。欧州ではドイツのフィンテックの先駆けであるAuxmoneyもこの分野の雄だ。Auxmoneyは2007年の創業以来、ZOPAを超える200億ドル近くの投資を受け、欧州におけるトッププラットフォームとしての地位を保っている。

日本では20社余りがソーシャルレンディングサービスを提供している。maneoが先駆けで、創業は2007年だ。SBIグループも主要株主であるSBI FinTech Solutionsの子会社SBIソーシャルレンディングでサービスを提供している。

世界には個人間融資のためのプラットフォームやサービスが多くある。Statistaの統計によると、英国を除く欧州では、ソーシャルレンディングの取引額は企業間よりも個人間の取引額の方が圧倒的に大きい。一方で日本では、企業が組んだファンドに投資するタイプのものが主流だ。前出のクラウドポートは、「【最新版】日本のソーシャルレンディング市場規模と歴史」というタイトルの記事の中で、日本で個人間融資が普及しなかった理由について「消費者金融やカードローン他、個人向け金融のインフラが海外に比べて整備されており、P2Pサービスの広がる余地が少なかった」と分析している。

ソーシャルレンディングとクラウドファンディング

個人がプロジェクトなどに必要な資金を調達する手段として、ソーシャルレンディングのほかにクラウドファンディングが急速に普及している。ソーシャルレンディングプラットフォームの登場から遅れること数年、世界的なクラウドファンディングプラットフォームIndieGoGoが2008年に、Kickstarterが2009年にそれぞれ立ち上がった。IndieGoGoやKickstarterは購入・寄付型のクラウドファンディングプラットフォームで、正確にはレンディングではないが、クラウドファンディングプラットフォームの中には融資型のものもある。個人から資金を調達するという目的は同じで、その垣根はあいまいになりつつあるのかもしれない。日本においてもクラウドファンディングは普及している。安倍内閣はクラウドファンディングに注目し、活用のための検討や制度整備を進めてきた。このようにクラウドファンディングの普及とともに、欧米に遅れる形で日本でも個人が個人に出資し、また出資を受けるという行為が普及しつつあると言えるのではないか。

一方で、個人が気軽に資金を調達できるようになる中、クラウドファンディングキャンペーンをはじめ、巨額の資金を調達したもののプロジェクトが頓挫するケースもあり、ガバナンスの問題も明るみに出てきている。本記事の主題である個人間融資を仲介するソーシャルレンディングではなく、ファンドへの出資を募るソーシャルレンディングに関するものだが、maneoマーケットが投資家に対して虚偽の説明をしたとして、証券取引等監視委員会が行政処分を勧告、2018年7月13日付で関東財務局が金融商品取引法に基づき業務改善命令を出したのは記憶に新しい。

未来のソーシャルレンディング? - 分散型の真の P2Pレンディング

ソーシャルレンディングは英語でP2Pレンディングと呼ばれているが、現在普及しているサービスはプラットフォームを運営する中央集権的な組織の存在があり、真に「P2P」(Peer to Peer)であるとは言えない。

しかし、分散型システムを世に知らしめたビットコインの誕生から10年を迎える現在、個人間融資が本当の意味でP2P化する兆しが見えつつある。ドイツのベルリンに拠点を置くBitbondは仮想通貨のレンディングサービスを提供し、会員制のSALT Lendingではイーサリアムブロックチェーン上のスマートコントラクトを用いて、仮想通貨を担保にして信用情報なしで法定通貨の融資を受けることができる。

これらのサービスの登場はいったい何を示唆するのか。先進国の既存の金融機関が住宅ローンや、生活のための借り入れなど個人相手に融資する行為が今後も残る可能性は高い。だが、プロジェクトへの融資などある種の個人間融資に当たるものは、今後スマートコントラクトに管理される形で、巨大な中央集権的な組織を介さずに普及するのかもしれない。世界にはまだ銀行口座を持たない人たちが多く存在する。マイクロファイナンスの分野でも分散型のシステムを用い、口座手数料や取引手数料を抑えることができれば、新たな顧客や融資機会開拓の可能性が出てくる。

個人やプロジェクトが資金を調達するためのシステムが自律分散化するというのは突飛な発想ではない。その先例として、ブロックチェーンを利用した分散型のクラウドファンディングサービスFunditionがある。FunditionはSteemブロックチェーン上に構築された分散型クラウドファンディングプラットフォームで、Steemのトークンのほかビットコインといった仮想通貨や法定通貨でプロジェクトを支援できる。ただし問題が起きた際にプロジェクトと支援者を仲裁する仕組みが確立されていないことは問題で、現状では普及を進めるにはハードルがあることも否めない。しかしながら、このような課題についてはスマートコントラクトで資金をロックし、出資者の合意によって、プロジェクトの進捗とともに資金をプロジェクトに提供するような解決策も考えられる。コントラクトが適切に機能することを保証するコードの監査も重要になるだろう。

ソーシャルレンディングや個人間融資はフィンテックの黎明期から存在する古い分野だが、自律分散型システムの技術と歩みを合わせる形で新しい一歩を踏み出そうとしている。

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