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取引所を超える取引所、物議をかもすBinance

取引所を超える取引所、物議をかもすBinance

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2018/10/18

(写真=: Denis Mikheev /Shutterstock.com)

2017年に誕生し、ICO(Initial Coin Offering)での資金調達などをてこに急成長を遂げた世界最大の仮想通貨取引所Binance。仮想通貨に対する規制が世界的に強化される中、日本では、無登録のまま営業しており投資家が被害を被る恐れがあるとして改正資金決済法に基づく警告を受け、2018年4月には本拠地を香港から「ブロックチェーンの島」であるマルタに移転すると発表した。

取引所の未来というだけでなく、権限の中央集権化を脱し、現場と現場が直接取引するピアツーピアの考え方と、それを支える改ざん困難な技術であるブロックチェーンをベースとする仮想通貨が広く普及する「分散化社会」の青写真としても注目される。Binanceについて、その生い立ちや革新的な取り組み、課題について解説する。

Binanceの生い立ち

Binanceは2017年7月に中国で誕生した比較的新しい仮想通貨取引所である。名前はBinary Finance(二進法を表すバイナリとファイナンス)に由来する。

Binance - Blockchain and Crypto Asset Exchange

Binanceを一躍有名にしたのはその急速な成長だ。創業からわずか半年ほどで世界最大の仮想通貨取引所までに成長した。2018年8月現在、仮想通貨や取引所に関する情報を提供するCoinMarketCapにリストアップされているだけで218の仮想通貨取引所が存在するが、Binanceはその中で最大の取引高を誇る。

2017年7月にICOを実施。ICOは3分で終了し、1,500万ドル(ICO当時のレートで17億円ほど)相当の資金を調達した。Binanceではビットコインのみならず、イーサリアムをはじめとするアルトコインと呼ばれる多数の仮想通貨を取り扱っていたこと、取引手数料が低いことが人気を呼び、急速に多くのユーザーを獲得した。また、アフィリエイトによるアグレッシブなマーケティングも功を奏したと言われている。Bitcoin Newsによるとユーザー数は1,000万人、2018年の収益は5億から10億ドルに上ると言われている。

最高経営責任者(CEO)である趙長鵬(Changpeng Zhao、ジャオ・チャンポン)氏の特異な経歴にも注目しておきたい。趙氏の起業家としてのキャリアは2005年にブローカーのための高頻度取引システムを開発するFusion Systemsの創業にさかのぼる。その後、ビットコインブロックチェーンに関する情報やウォレットを提供するBlockchain.infoに初期メンバーとして参画。Blockchain.infoがビットコインに関する一大ウェブサイトとして急成長した2013年のことだ。

その後、大手仮想通貨取引所OKExを共同創業し最高技術責任者(CTO)を務めるが、方向性の違いから退職。2015年にBijieTechを創業してクラウドベースの取引所システムを提供。そして2017年、Binanceを創業した。

Binanceの急成長は、仮想通貨や取引所システムの分野で経験豊富な趙氏の存在による。趙氏は何度も新事業を立ち上げるシリアルアントレプレナーというだけでなく、住所も銀行口座も持たない型破りな人物としても知られる。Binanceも創業から長い間銀行口座を持たなかったため、地中海の島国マルタに移転後に口座を開設した際には大きな話題となった。

山積する課題 各国の警告や規制強化、企業の仮想通貨広告規制など

急成長を遂げ、仮想通貨取引所のトップを走るBinanceだが、OKExによる追い上げなど試練も伴う。日本にも多くのユーザーがいると見られるBinanceだが、2018年3月に日本の金融庁から警告を受けている。日本の居住者を相手に仮想通貨交換業である取引所を営むためには金融庁に登録しなければならないが、Binanceは無登録で仮想通貨交換業を行なっていると指摘されたのである。

日本進出がうわさされたこともあったが、この警告がきっかけとなったのか、Binanceのウェブサイトからは日本語のページが削除された。Binanceに警告したのは日本からだけではない。当初拠点を置いた香港の証券先物委員会からも警告を受けてきた。直接の警告でなくても、各国におけるICOや取引所に対する規制強化の影響は少なくない。

国家にとどまらず、GoogleやTwitterといった企業も仮想通貨広告の規制に乗り出している。一方、仮想通貨広告を禁止してきたFacebookは規制を改定し、ICOに関する広告については禁止としつつも、一部の仮想通貨広告を許可する方針を発表した。アフィリエイトによってユーザーを獲得してきたBinanceにとって、これら企業の対応はかなり重要な意味を持つ。

Binanceのアフィリエイトプログラムでは、勧誘したユーザーの取引ごとに最大手数料の40%が報酬として支払われる。だが、Binanceがアフィリエイトプログラムに経営資源を集中しすぎることで、処理すべきトランザクションの増大によるシステム異常やハッキングなどセキュリティ面の脆弱性拡大が懸念される。また、BinanceがAppleやGoogleへの投資でも知られる名門ベンチャーキャピタルSequoia Capitalと結んでいる独占的出資契約を破ったとして訴訟を受けている。

革新的な取り組みも

急成長を遂げ独自の路線を歩む中で様々な課題に直面しているBinanceだが、課題解決に向けた施策はとてもユニークで、業界を驚かせてきた。中国や日本での規制が強まる中、Binanceは2018年春、地中海の島国でEU加盟国のマルタに拠点を移動させてしまった。マルタは仮想通貨やブロックチェーンに対して友好的な政策をとり、ブロックチェーンの島として国家をあげてアピールしている。マルタはBinanceの他に趙氏がCTOを務めた仮想通貨取引所OKExの誘致にも成功した。Binanceとマルタは親密な関係にあり、分散型でコミュニティーが所有する銀行、慈善事業を支援するBlockchain Charity Foundation、マルタの証券取引所によるアクセラレータープログラムを支援するなどさまざまな構想が明らかになっている。

一旦は離れつつあったアジア地域だが、2018年7月には韓国への進出が趙氏によって発表され話題となった。2017年後半の仮想通貨ブーム、2018年に入ってからのバブル崩壊を経て落ち着きを見せてはいるものの、韓国は世界各国の中でも仮想通貨の取引がさかんなことで有名だ。ただし、仮想通貨取引における実名制が導入されるなど、必ずしもBinanceと親和性のよい環境ではないかもしれない。競合する韓国の取引所も少なくない。さらに政府は仮想通貨取引所に対する優遇税制見直しを検討していて、同国の取引所やBinanceの進出に影響をもたらすか見ものだ。

また、最後になるが、Binanceの最も野心的な取り組みとして、分散型取引所(DEX:Decentralized Exchange)の開設がある。人によって管理される中央集権型の取引所を運営するBinanceが、DEXを開設するというのだ。DEXは、管理に人が介在せず、改ざん不能なブロックチェーンの技術を軸に自律的で安全な取引を可能にする。過去に起きた中央集権型の仮想通貨取引所におけるハッキング事件のほとんどは、仮想通貨の仕組み自体が原因ではなく、人が管理していることによるヒューマンエラーのよるものと言われている。DEXには、ヒューマンエラーによるハッキング事件を防ぐことが期待されている一方で、ユーザーは自己責任で取引しなくてはならないという課題がある。分散化社会の到来を見据えるBinanceにとって、DEXの開設は技術による取引の安全性確保という戦術的な狙いにとどまらない戦略的な取り組みといえそうだ。

先ごろ2018年8月にはこの分散型取引所のデモが公開された。Binanceは今後2つのビジネスをどう両立していくのか、それともより急進的に分散化する方向に路線転向していくのか。Binanceによる分散型の金融サービスという点では、前出のマルタにおけるブロックチェーンベースの分散型の銀行の構想にも注目しておきたい。

破天荒で仮想通貨の未来を信じて疑わないCEOの趙氏が率いるBinanceは、今後も仮想通貨業界をリードすると考えられる。仮想通貨にとどまらず、ブロックチェーンの利用、システムの分散化の流れなど社会の仕組みの変化をとらえるという面からも、Binanceの取り組みの把握は重要になってくる。

署名: Aki T.

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