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急成長するサブスクリプションモデル その解約対策に迫る

急成長するサブスクリプションモデル その解約対策に迫る

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2018/10/09

(写真=David MG /Shutterstock.com)

顧客がサービスや商品の利用期間に応じて決まった料金を支払うサブスクリプションモデルが広く普及し始めている。従来は新聞購読などがサブスクリプションモデルの代表格であったが、それがデジタル領域でも加速している。

世界最大級のeコマース業界の専門誌「Internet Retailer」によると、大手eコマース企業によるサブスクリプションコマースモデルの市場規模は2011年の5,700万ドルから、2016年には26億ドルと、約50倍近くに成長した。一方で、サブスクリプション型のサービスを提供している企業は常にリスクを抱えている。それは解約リスクだ。顧客がサービスから離脱してしまうと、それ以降収益を得ることができない。各社は解約を見越して、事前に対策を打っている。

今回はサブスクリプションモデルの現状を紹介し、解約を予測する方法、企業の解約対策を調べていく。

世界中の企業が狙う サブスクリプションモデル

代表的なサブスクリプションモデルとして、Netflix、Amazonプライム・ビデオなどの定額制の動画配信サービスやSpotify、Apple Musicなどの定額制の音楽配信サービスが挙げられる。最近では、ソフトウェアや動画・音楽などのデジタルコンテンツだけではなく、洋服・倉庫・車の定額貸し出しや、ドリンク飲み放題、ライブに行き放題のサービスなど、非デジタル領域のサブスクリプションモデルも登場している。

サブスクリプション型のビジネスモデルは、顧客にとっては製品を購入するよりも金銭的負担が小さく、コストを抑えることができる。例えば、従来ソフトウェアを導入する場合は高価なイニシャルコストがかかり、さらにバージョンアップするたびに追加料金を支払う場合もあった。しかし、サブスクリプション型のビジネスモデルであれば定額で最新のソフトウェアを利用することができる。

企業側は複数の料金プランを用意することが多く、ユーザーは自分の利用頻度に合ったプランを選ぶことができ、コストパフォーマンスも高くなる。サブスクリプションサービスを提供する企業側にとっては、顧客の利用頻度が上がれば営業コストをかけずに顧客のリピート購入を狙うことができ、継続的な収益を見込めるのがメリットだ。実際に、米Adobe Systems社は2012年にビジネスモデルを従来のソフトウェア売り切りのプロダクト販売型から、サブスクリプション型へと転換した。2018年第1四半期の決算を見ると、売上高は20.8億ドルとなり、前年同期比24%と高い伸びを見せている。ビジネス形態について、サブスクプロション型の比率が全体の86.3%に上るなど、サブスクリプションモデルへの転換により業績を向上させた典型的なケースと言える。

各社が最も恐れる「解約」をデータで予測する

サブスクリプションモデルを導入すれば必ず成功するわけではない。顧客が満足しなければ解約されるリスクも高くなる。しかし、企業側が顧客の利用データをうまく活用すれば、解約が見込まれる顧客を予測し、解約を防ぐための働きかけも可能になる。

動画コンテンツのストリーミング配信サービスを展開する米Netflixのケースを見てみる。日本でNetflixのサービスは月額800円(税抜き)からで、最も重要な課題はこの月額会費を支払う顧客をどうつなぎ留めるかだという。ここで、自動課金を忘れてしまい、視聴しないのに月額費用を支払うユーザーを歓迎するといった見方があるが、Netflixでは「月当たりの視聴時間が一定の水準を割り込むと解約率が急に高くなる」という分析結果を得て以来、顧客の月額視聴時間数をできるだけ増やすための取り組みに注力している。具体策として、次に見るべきコンテンツに誘導するレコメンデーション施策が効くことを発見し、そのために数万のクラスターに顧客を分類、一方で数万のコンテンツジャンルからレコメンデーションするという体制を構築している。レコメンドするコンテンツの精度を上げるためのデータの収集、分析、検証などに日々取り組んでいるという。結果として、Netflixの総視聴時間の8割近くがレコメンデーション経由だとも言われている。シリコンバレーに構える本社のITスタッフの多くがデータアナリストということからも、同社がビッグデータを幅広く活用しようとしていることが分かる。

解約抑止の鍵は愛着の醸成に

解約予測モデルの構築と防止策の研究は世界中で進んでいる。Netflixに限らず、商品やサービスに愛着を感じてもらい、少しでも長く使ってもらうことがポイントのようだ。

カスタマーサポートを手がけるWOWOWの子会社「WOWOWコミュニケーションズ」では、解約抑止のために電話応対の現場で「レコメンド支援システム」を実践している。このシステムは、顧客の過去の視聴データから、顧客が好む番組のキーワードを導き出す。画面に表示されたキーワードをクリックすると、さらに嗜好性を絞り込むことができる。

これを用いると、顧客がアクション系の作品を好む印象を持った場合には、「ハラハラするような」「男らしい感じ」といった言葉でサービスを紹介するなど、具体的に提案できる。また、顧客が自覚していない潜在的な趣味嗜好を引き出せる可能性もある。同社はこのシステムを構築するために、映画や番組を個別の嗜好をもとに検索できるよう細かくカテゴリ分けした。監督や俳優名、商品ジャンルなどの情報に加え、顧客の気分や感情、嗜好などでも選べるよう1,300のカテゴリを設定した。顧客のニーズとのマッチング精度が向上し、同社の解約抑止率は30%向上したという。

ニューヨーク・タイムズでは、契約初期段階から解約抑止のための対策に取り組んでいる。新規購読者(契約から90日以内)には、サイトの画面上部に特定のセクション、著者、記事のおすすめなどを表示するリボンを用意している。また、新しいプロダクトや同社の報道内容についてメールでも案内する。

さらに、既存購読者維持に特化した専門家を雇い、サイトや記事の閲覧頻度が低下した購読者を検出するシステムを導入した。解約のリスクがどのような場面で発生するかを特定している。閲覧の頻度が低下していると判断されれば、再度閲覧頻度を上げてもらうために、資金を投じて同社の記事をFacebookのフィードに表示させる。また、購読者の獲得・維持に効果的なインタラクティブコンテンツの宣伝もするのだ。

サブスクリプションモデルでは、継続する価値のあるサービスだと感じてもらうことが重要である。顧客がサービスに満足感を感じていないとしたら、解約の申し出があるかもしれない。解約の問い合わせが来る前に、顧客が満足しているかどうかを把握し、最適なサービスを提供し続ける必要がある。

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