tr?id=1970953653177752&ev=PageView&noscript=1

ベンチャー投資のさらなる発展のために 経済産業省がまとめた指針とは

ベンチャー投資のさらなる発展のために 経済産業省がまとめた指針とは

1,127view

2018/07/26

(写真=beeboys/Shutterstock.com)

2018年4月2日、経済産業省は資料「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」を公表した。

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が台頭し、種類株式やExit(投資資金の回収)手法も多様化している。経産省はこれを踏まえ、今後ベンチャー投資を健全に促進するため、投資契約の条件を並べたタームシートの活用など、投資契約締結の指針をまとめている。

これまで、投資家が独自の経験や知見に基づいて締結してきた各種契約は、今後どのように手続きするのが望ましいと説いたのか。内容を紐解いてみよう。

「ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」を作った目的

そもそも、なぜ経産省がこのような資料をまとめたのか。まずは、その背景から見ていきたい。

資料では、2006年に会社法が施行されてから、ベンチャー投資の形は大きく変化したと指摘している。会社法は種類株式の取り扱いについて大幅な改正を施した。それにしたがって、投資条件も多様化しているという。

さらに、ベンチャー投資でExitする方法も増えている。かつては、資金を回収するための主な手段と言えば証券取引所へ株式を上場するのが主だったが、近年は企業からの買収も手段として加わった。ベンチャー投資の在り方は、この10年で大きく変化したのだ。

ベンチャー企業に対して投資する投資家も多様化している。ベンチャーキャピタルに加え、エンジェルと呼ばれる個人投資家、事業会社が運営するCVCも台頭してきた。また、それぞれが投資するステージも増えており、投資条件が複雑化する要因にもなっている。

資料の中では、契約内容が複雑化している現状も解説し、投資する際の契約形態を紹介している。当初は、ベンチャー企業と投資家の間で、主に投資の概要や実行条件などを定めた「投資契約」のみを結ぶ状況がほとんどだった。しかし、その後特定の株主が不利益を被らないよう、株主間の利害を調整する「株主間契約」を締結する第二形態が現れるようになった。そして、近年ではこれらの契約に追加して、「優先分配」を定めている場合に「財産分配契約」を結ぶことが増えている。

このように、ベンチャー投資する際の契約は近年、複雑になっている。そこで、経産省は現在の状況を踏まえて、適切に投資が行われるよう、ベンチャー投資に関する新たな指針を提示するに至ったのだ。

経済産業省が示す「タームシート」の活用の意義

経産省は投資契約を円滑に進めるための手段として、「タームシート」を紹介している。タームシートとは、投資契約を結ぶ前に利害関係者同士で契約内容を事前に検討するために作る、契約書のひな形のようなものだ。契約は、契約書を作成して初めて結ばれるものであり、タームシートの内容には拘束力はない。ただし、契約にかかわる内容を事前に明らかにすることで、利害関係者が契約するときに発生しうる齟齬を減らすことができる。

資料では、先ほど挙げた投資契約、株主間契約、財産分配契約の3つの契約に対するタームシートの例を提示し、それぞれ検討すべき内容を示している。たとえば、投資契約では、種類株式について、優先配当や残余財産分配の優先、取得請求権に関する内容を検討するよう項目を設けた。株主間契約では、発行会社が投資家に対して事前承認・事前通知するべき内容などについて検討するよう示している。財産分配契約では、同時売却請求権、みなし清算条項について検討できるよう、タームシートにまとめた。

詳細は、資料の57ページ以降にある「別紙 タームシート(例)」にまとめられている。投資家から出資を受けるには、これだけの項目について事前に検討する可能性があるということだ。現代のベンチャー投資がいかに複雑であるか、あらかじめ知っておく必要があるのではないか。

タームシートはどの段階で活用すべきか

ここまで、「ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」を発表した背景と、経産省の指針を紹介してきた。経産省は利害関係者の認識を一致させるために、投資契約などの締結を円滑に進める上でタームシートを活用するのは有用であると述べている。出資を受けることを検討しているスタートアップ経営者は、タームシートの存在をあらかじめ把握するといいだろう。実際に出資を受ける前に、タームシートなどを活用しつつ、契約内容を詰めるのが望ましい。

もっとも、タームシートは完璧なものではない。時代の変化や法律の改正により、タームシートで検討すべき内容も変化するだろう。経産省も資料の中で「会社法、税法、金融商品取引法をはじめとした、法令改正は投資契約等に対して大きく影響を与えるだろう」と述べており、今回提示したものはあくまで一例であると強調している。しかし、本資料で提示された内容は、今後のベンチャー投資をより活性化させる第一歩になるのではないだろうか。

執筆:山田 雄一朗

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

INNOVATION HUBの最新情報をお届けします