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銀行APIが実現させる、ヨーロッパにおけるテック企業の銀行サービスへの進出

銀行APIが実現させる、ヨーロッパにおけるテック企業の銀行サービスへの進出

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2018/06/14

(写真=patpitchaya /Shutterstock.com)

プログラム同士を連携させるインターフェイス「API」を、多くの企業やサービス業が外部に向けて公開するなか、銀行もAPIの公開を進めている。また、銀行APIを利用して、フィンテックスタートアップが銀行のようなサービスを提供する流れが生まれ、さらには銀行業の免許を取得してフィンテック企業にAPIを提供するBaaS(Bank-as-a-Service)型の銀行も生まれている。

ヨーロッパでは陸続きで多くの国がつながっており、特にEU域内では国境をまたいで盛んに人とお金が行き来する。そのためか、銀行APIについては欧州に興味深い事例が存在する。本記事では銀行APIの登場でフィンテック企業が銀行サービスに進出しやすくなりつつある現状について、ヨーロッパのトレンドを例にあげながら解説する。

銀行APIとは

APIとは「Application Programming Interface(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)」の略で、所定の手続きでプログラム同士がお互いにやりとりできるようにする仕組みである。2000年代にGoogleやYahoo!といったインターネット業界の大企業が、自社のサービスやデータを外部から利用できるようにAPIを公開したことにはじまり、サービスを組み合わせたマッシュアップサービスが生まれて急速にAPI提供と利用の流れが広まった。

金融業界で取り扱われるデータは、個人情報のほか、個人や法人の金融資産など、より慎重な対応が求められるものだ。セキュリティー要件も厳しくなるが、2010年代に入りフィンテックに注目が集まるなか、近年各国の金融機関がAPIを提供しはじめている。

特にヨーロッパについては国と国が陸続きであること、EU(欧州連合)の市民はビザや労働許可といったハードルが低く、国と国とを行き来して労働できること、さらに移民の多い国もあることから一国にとどまらない多様なニーズに応える金融サービスが求められ、金融機関同士、さらには業種を超えた提携も必要となる。このような状況もあるためか、銀行のAPIを利用して銀行サービスを提供するフィンテックスタートアップが続々と登場している。

続いてヨーロッパにおける銀行APIと、それを活用するフィンテックスタートアップについて見てみよう。

銀行APIを活用するフィンテックスタートアップ

2017年、ベルリンに拠点を置くモバイルバンクN26は、ヨーロッパ市場での急成長と米国への進出が報道され注目を集めた。N26は2016年7月にヨーロッパ中央銀行の銀行免許を取得し、現在、ヨーロッパ各国で銀行サービスを提供している。ただし、同社のブログによると、銀行業の免許取得要件は多くのスタートアップにとって厳しい条件であると感じさせるものだった。

このような状況のなか、独自で銀行業の免許を取得するのではなく、大手銀行が提供するAPIや銀行サービスのモジュールを提供するプラットフォームを利用し、銀行のようなサービスを提供するフィンテックスタートアップが出てきている。

ファイナンシャルアシスタントアプリ「Finanzguru」を提供するフランクフルトのスタートアップdwinsは、ドイツのメガバンクの一つドイツ銀行の「dbAPI」を利用したハッカソン「API/Open(2016年)」の勝者だ。これをきっかけに同行と協業し、顧客に「Finanzguru」を提供している。「Finanzguru」はドイツ銀行だけでなく他行の口座も対象とし、利用者はアプリ内で資産状況を把握し、資産管理のアドバイスを受けることができる。Financial Guruは銀行APIによって可能になったサービスで、APIが仲介となり大手銀行とフィンテックスタートアップがコラボレーションを果たした事例とみることもできる。

フィンテックスタートアップが従来の銀行業務により踏み込んだ例としては、ベルリンに拠点を置くスタートアップPENTAがある。2016年設立のPENTAは「A modern bank for SMEs(SMEs: Small and Medium-sized Enterprises、中小企業)」とうたい、中小企業やスタートアップに特化した銀行サービスを提供している。PENTAが注目を集めた背景には、PENTAが銀行免許を持たないことがある。また、ドイツでの銀行業免許を持つsolarisBankのプラットフォームを利用することで、年間売上高2億円、従業員30人ほどの中小企業やスタートアップに対象をしぼったニッチな銀行サービスを構築したことも特徴だ。

PENTAに基盤を提供するsolarisBankは、ベルリンに拠点を置くフィンテックのカンパニービルダーFinleapによって2016年に設立された企業で、短期間に100億円超を調達している。solarisBankについては銀行サービスのプラットフォームをAPIで提供する、「BaaS型の銀行」ととらえることもできる。solarisBankのプラットフォームを利用すれば、フィンテックスタートアップは銀行免許取得という頭の痛い問題を意識せず、サービスの構築に専念することが可能だ。

solarisBankのプラットフォームは、PENTAのほかにもフリーランスのためのツールを提供するKontist(ドイツ)、企業家やスタートアップ向けの銀行サービスを提供するhufsy(デンマーク)、PENTA同様中小企業向けにEUで銀行サービスを提供するbankqUP(ベルギー)などで利用されている。

従来の銀行とテック銀行の未来とは

今後、銀行APIはどうなっていくのだろうか。金融業の性質から完全に情報をオープン化することはないだろうが、フィンテックスタートアップを中心に、ビジネスパートナーとなり得る企業やサービスに銀行がAPIを提供する流れは加速するだろう。また、solarisBankのような銀行の設立には資本やネットワーク、経験、免許などさまざまなハードルがある。続々と設立できる性質のものではないが、APIでのサービス提供に特化した「BaaS型の銀行」も今後さらに出てくるに違いない。

銀行はAPIを積極的に公開しはじめている。銀行の持つデータにアクセスしたい、フリーランスや中小企業などニッチな対象のニーズに合わせてテーラーメイドのバンキングサービスを提供したいというフィンテックスタートアップにとっては好機といえそうだ。利用者としては今後より自分の用途に合った銀行サービスの出現が期待できる。

以前は、「フィンテックスタートアップが銀行業務を銀行から奪う」と考えられていたが、実情を見てみると、免許取得の制約などもあって必ずしもそうとは言い切れない。従来の銀行と、技術に特化したsolarisBankのように銀行によって性格は違うものの、最終的にデータやサービスを提供するのは銀行である。多少のパワーバランスの変化はあっても、フィンテックスタートアップと銀行は異なるレイヤーでお互いに利用しあいながらパートナーとして共生していくだろうと考えられている。

あいまいな国境をまたいで古くから人やお金が移動してきたヨーロッパは、ある種、銀行サービスの実験場ともいえる。ヨーロッパの銀行が提供するAPIと、それを利用するフィンテックスタートアップの動向には今後も注目しておきたい。

執筆者: Aki T.

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