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実現すれば社会的インパクトも経済的リターンも大 開発が争われている宇宙太陽発電所

実現すれば社会的インパクトも経済的リターンも大 開発が争われている宇宙太陽発電所

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2018/02/16

(写真=Mrs.Moon /Shutterstock.com)

「宇宙太陽発電所」とは、2030年を目途に実用化を目指している、宇宙空間で得た太陽エネルギーをマイクロウェーブで地上に送電・活用する未来型発電所である。果たして、この実用化は可能なのか。これによって既存の発電方式はどう変わっていくか。電力生産の観点から考察する。

宇宙太陽発電所とは何か?

「宇宙太陽発電所」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは2030年ごろまでに中国などが実用化を目指している新しい未来型発電施設のことである。発電方式の正式名称は宇宙太陽光発電システム(Space Solar Power System略してSPS又はSSPS)という。

原理と発想は非常に単純で、現在普及している太陽光発電と同じく、太陽光をもとに発電する方式である。ただし、発電場所が地球上でなく、宇宙になるという点が大きな違いだ。

地球上で発電する際の根本的な問題点は、以下3つがあげられている。
・天候や季節によって発電効率が落ちる
・365日、24時間日照が続く発電場所が存在しない
・地球に届くまでに大気圏などが邪魔をし、太陽光の強度が減衰している(=太陽光としての利用できるエネルギー量が小さい)

しかし、宇宙空間で太陽光発電をすれば、適切な場所であれば快晴率は100%であり、いつでも太陽光の力を利用することができる。また、大気圏による太陽光の強度の減衰がなくなるメリットもある。これにより、幅は大きいが従来の10~100倍以上の太陽光発電の効率を得られるという試算もある。

アイデアを生んだのは、NASA(米航空宇宙局)のピーター・グレイザー博士で、発案は1968年までさかのぼる。原理と発想は非常に単純なものなので、これまでにも何度か実用化検討が行われてきた。特に地球温暖化の問題が深刻化した1990年代以降は、本格的に実用化に向けて検討されてきた。

日本と中国が開発をリード

宇宙太陽光発電所の開発競争は日本と中国がリードしている。

日本ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)が音頭を取り、京都大学、三菱重工などを交え、産学官連携で研究開発を進めている。もともと開発は米国や欧州でも進められていたが、現在はその開発計画は進んでいない。開発計画がとん挫している理由は、実用化へのハードルが非常に高く、高額の予算が必要になる上に、その実現性も疑わしいとの判断があったからである。

一方、中国はこの技術の実現に向け莫大な投資をしている。その研究開発実績は10年以上で、技術力は世界一と見る向きもある。

普及への最大のハードル

普及への最大のハードルはコストや技術面にある。

有識者によると「宇宙に発電機を輸送する際のコストが高く、宇宙太陽光発電所一機の建設費は1.2兆円を優に超える額が必要となる」との意見が多い。発電機そのものも軽量化できていないため、1回のロケットを発射により運搬できる建設資材が少ないこともコストがかかる要因の一つであり、技術的な課題でもある。

技術的にはさらに、発電した電力をどうやって地球に送り届けるかという問題もある。現在はマイクロ波やレーザーによる送電が検討されている。いずれを使用する場合であっても、発電機から地球までの距離が長く、生産されるたくさんのエネルギーを理想的に送電することを実現する高効率で、人体・大気・電離層・航空機・電子機器等へ悪影響を及ぼさない大量輸送技術が必要となる。

こういった状況もあり、「やはり宇宙太陽光発電は想像以上にハードルが高いのではないか」という見解も少なくない。

では実現の可能性は?普及に伴って従来の発電方式はどうなっていくのか?

最後に、実現の可能性を考えてみる。当初、経済産業省の計画では2030年の普及を目指していた。しかし、上で述べたハードルを越すことは困難で、現在は計画を見直している。

経済産業省も研究費用を計上しているが、その額は宇宙開発関連の総予算3,420億円(2016年度、補正予算含む)に対し、宇宙太陽光発電所にかける予算は、その1%程度にとどまっている。これは、本技術がまだ研究段階で実用化が見えていないということを示している。

しかし、技術は非連続的に進化するため、実現の可能性はゼロではない。最先端を走る中国の専門家の中には、2030年は難しくとも2050年ならば可能ではないかという意見もある。エネルギー枯渇の問題がある中、宇宙太陽発電所の実現に向けて、今後も日本が研究を続けることは間違いない。

もし実現すれば、環境面、安全面で、現在主流となっている発電方式は代替されるかもしれない。また、実現した際の社会的なインパクトや経済的リターンも計り知れない。その意味で、宇宙太陽光発電所は、今後も動向を注視しておくべき領域といえるだろう。

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