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2種類の仮想通貨発行を提案 中央銀行が発行する仮想通貨「CBCC」

2種類の仮想通貨発行を提案 中央銀行が発行する仮想通貨「CBCC」

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2017/12/25

(写真=ALF Sniper/Shutterstock.com)

国際決済銀行(BIS)は2017年9月、各国の中央銀行が発行を検討しているとされる仮想通貨「CBCC(中央銀行暗号通貨)」に関する報告書を発表した。報告書は、中央銀行による仮想通貨開発・発行環境を効率良く整備するためのガイダンスだ。金融機関向けと消費者向けの2種類のCBCC発行とともに、ビジネス特化型のブロックチェーン技術の採用を提唱している。ここからはCBCCについて、その発行の背景から追ってみる。

CBCC発行検討の背景

仮想通貨の利用だけではなく、ICOなどへの投資も飛躍的に拡大し続ける近年、各国の中央銀行がそれぞれの思惑に沿って動き出している。トラブルを未然に防ぎ、消費者を保護する上で規制の必要性を認識している点は一致しているが、受け止め方や方向性には大きな温度差が見られるのが現状だ。そうした中、仮想通貨に秘められた経済効果を期待して、独自の仮想通貨を開発中、あるいは検討する中央銀行が目立つ。

BISの動きはこうしたことへの配慮から、中央銀行が発行する仮想通貨を定義付け、課題を明確にする意図がうかがえる。確固たる規制フレームを設け、安全性を担保することで、経済市場において飛躍的な透明化や効率化を図ることが期待できる。

中央政府が発行する仮想通貨(CBCC)とは?

BISは報告書の中で「ビットコインを筆頭とする仮想通貨が、ソブリン通貨に取って代わる可能性は低い」と指摘した一方で、CBCCがブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT)に秘められた可能性を実証する役割を果たしたことを認めている。

すでに準備金など、金融機関で取引されている中央銀行通貨がデジタル化されていることを考えると、新たなデジタル通貨の発行はそれほど大きな変化とはならないだろう。しかし導入にあたっては、利点とともに課題も指摘されている。

金融機関向けと消費者向け―2種類のCBCCを提案

BISは「大口取引限定の金融向け仮想通貨」と、「一般消費者が利用可能な小口取引向け仮想通貨」の2種類のCBCC発行を提案している。両方の通貨に共通する主な利点は、ブロックチェーン技術の特性を活かした、取引の透明化、スピードアップ、効率性の向上およびコスト削減だろう。リテール決済などで利用可能とされる消費者向けCBCC発行は、ビットコインなどに見られる急激な価格変動を排除できると期待されている。

BISはCBCCの特徴についてこれ以上詳しくは説明していないため、報告書の内容に基づいた憶測ではあるが、CBCCは為替の変動に左右されないのが特徴なのだろう。またビットコインなど、他の仮想通貨と異なり、投機対象にもなり得ない。あくまで中央銀行が決済用に発行するデジタル通貨である。そのため常に売りどきを狙う投機目的の保有が少なくなり、世界情勢による直接的影響を受けにくくなると考えられる。

消費者向け、小口取引向けCBCCの課題

消費者向けCBCCの課題は、「匿名性の確保」だ。仮想通貨の特性である匿名性が重視されないのであれば、中央銀行が取引を集約する、つまり一般消費者が中央銀行に個人口座を持ち、アクセスすることも考えられる。

仮想通貨は技術的にはすでに実現可能なレベルに達したにもかかわらず、どの国の中央銀行もその一歩を踏み出さずにいた未知の領域だ。しかし、「(破たんなどの危険がない)リスクフリー」である中央銀行と個人が直接、取引するようになれば、民間の金融機関に何らかの影響が及ぶことは避けられないだろう。

BISは同様の実例として「Fedコイン」をあげている。これはブロガーのJP・コニング氏の提唱によるもので、「米連邦準備理事会(FRB)が現金と交換できる暗号通貨を発行する」というコンセプトだ。

大口取引限定、金融機関向けCBCCの課題

金融機関向けのCBCCは、中央銀行経由の大口決済をCBCCに置き換えるものだ。大口決済では匿名性は必要ないため、ここでは決済の効率化・コスト削減が課題となる。振替の指図を受けると中央銀行がただちに決済する現行の即時グロス決済(RTGS)と比べて、CBCCは果たして効率化や決済コスト削減に役立つのだろうか。

2016年、カナダ中央銀行が国内大手銀行5社からなるブロックチェーン・コンソーシアム「R3」とともに、独自の「CADコイン」開発を通して同様の実験を実施した。実際にカナダ中央銀行の特殊口座から引き出された現金をCADコイン建てで送金し、CADコインのプラットフォーム上で認証後、再び現金化してから送金先の口座に振り込むという流れだ。

実験の結果、分散型台帳技術を中央銀行の送金に利用できることは立証されたものの、将来的な分散型台帳技術の採用にあたり、「業務の効率化」「リライアンスの強化」「コスト削減」が必須課題としてあげられている。

プロジェクトに参加したカリフォルニア大学サンタバーバラ校のロバート・ギャレット教授は報告書の中で、分散型台帳技術自体の歴史がまだ浅い点を指摘し、「分散型データシステムの観察期」を設けることを提案している。

同様の開発・実験に取り組んでいる他国の中央銀行も含め、現時点でそれらは実用段階に移行してはいない。やはり実用化にはまだ時期尚早との見方が強く、実用化は概念実証を重ね、有益性とリスクを慎重に検討した後になりそうだ。

BISは金融機関向けCBCCの採用にあたり、「技術的な問題がどこまで解消されるかにかかっている」と結論づけている。

「Corda」のようなビジネス特化型ブロックチェーン技術を採用!?

これまで「銀行のシステムがブロックチェーン・ベースになる」との前提で話題が先行していたが、肝心のシステム構成にはどのような技術が用いられるのか。報告書では、「CBCC(central bank Cryptocurrencies)という名称が示しているとおり、分散型のコンピュータネットワークを利用して、ブロックチェーン上に保管可能なデジタル通貨となることが明らかにされている。

しかし、BISはブロックチェーン技術を採用することにかなり慎重な姿勢を見せている。BISはブロックチェーンの利点を認める一方で、コストや安全性を懸念している。ビットコインやイーサリアムで利用されている「一般的なブロックチェーン型分散型台帳技術」は金融市場には不向きだとし、採用の可能性を否定している。

代わりに、機密性とスケーラビリティの向上が期待できるフィンテックベンチャー企業R3 CEV社のビジネス向けブロックチェーン・プラットフォーム「Corda」や、Linux Foundationのオープンソース・ブロックチェーン・プロジェクト「Hyperledger Fabric」に焦点を当てている。

「Corda」は取引の当事者のみが詳細へのアクセス、承認をできるよう限定しているため、機密性が保護される。またビットコインのように暗号通貨で取引を記録するのではなく、現実の通貨で記録されるという点でも大きく異なる。「Hyperledger Fabric」も同様、権限設定を担うメンバーシップ・サービスを実装するなど、ビジネスでの活用に適した設計となっている。「Corda」のコードは「Hyperledger Fabric」にも提供されている。CBCCにブロックチェーン技術が採用される場合、「Corda」や「Hyperledger Fabric」に代表されるビジネスに特化したタイプとなるはずだ。

各国で温度差のあるCBCC発行への動き

CBCC発行に向け、各中央銀行はそれぞれの方向性を打ち出している。キャッシュレス先進国、スウェーデンでは2018年を目途に「eクローナ」の発行を検討しているほか、ロシアは「クリプトルーブル」の発行に向けて動き出した。

日本では、大手金融機関が、「Jコイン(仮称)」の開発に着手すると日本経済新聞が報じている(2017年9月17日付 )。報道によると、銀行口座のお金をJコインに変換し、スマートフォンなどのデバイスを利用して、個人・企業間で自由に送金や小売店での決済ができるという。開発にあたり、新会社を設立する。コンセプト的にはBISが発行するCBCCよりも、ビットコインやイーサリアムに近いという印象を受ける。

一方、欧州では2016年にイングランド中央銀行(BoE)がユニバーシティ・カレッジ・ロンドンと提携し、「RSコイン」の開発に成功したほか、エストニアが独自の仮想通貨の発行を検討している。しかし欧州中央銀行(ECB)はこうした動きに対し、「いかなる加盟国も独自通貨は導入できない」と、強硬な姿勢を示している。

以上のことからもわかるように、CBCCを「国境を越えた未来のデジタル通貨」などと見なすのは、あまりにも安易だろう。現時点で提案されているCBCCは、あくまで「各国・地域の政府が個別で発行する仮想通貨」であり、金融市場の透明性や効率性、安定性の向上を図ると同時に、コスト削減を狙うことを意図したものだ。

さまざまな課題が解決され、各国・地域間の温度差がいずれ埋まる可能性も考えられるが、実現には相当の年月を要するはずだ。まずは「どのような手法でCBCCの発行に挑むのか」が、各中央銀行にとっての最初の課題となりそうだ。

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