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ブロックチェーンからAIまで JPモルガン「新たな顧客価値の創造」に1兆円を投資

ブロックチェーンからAIまで JPモルガン「新たな顧客価値の創造」に1兆円を投資

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2017/12/08

(写真=testing/Shutterstock.com)

「デジタル改革に最も熱心な国際金融機関」を語る上で、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーの存在は無視できない。「フィンテック」や「デジタル革命」などの言葉がまだ社会に浸透していなかった2014年、ジェームズ・ダイモンCEOは年次報告書の中で、「金融市場に大きな変化が訪れる」とシリコンバレーの活動領域の広がりを予告していた。それは見事に的中し、フィンテックは従来の金融システムを大きく変えることになる。

JPモルガンが本格的なデジタル改革に乗り出した2015年以降、年間90億ドル以上をテクノロジーに投じ、新たな開発に絶え間なく挑戦してきた。2016年にはそのうち6億ドルを、ビッグデータやAI(人工知能)、機械学習などのフィンテックソリューションおよびプロジェクトに投じている。

「新たな顧客価値の創造」に向けて巨額を投じることを惜しまない、JPモルガンの取り組みと今後の展望を見てみよう。

スマートコントラクト・プラットフォーム「Quorum」を開発

2016年に着手した分散型台帳プロジェクト「Juno(ジュノ)」では、オープンソース型ブロックチェーンの可能性を探索し、スマートコントラクト・プラットフォーム「Quorum(クオラム)」の開発に成功した。「ビジネス版イーサリアム」として誕生したQuorumは、中央管理者が存在しないパブリックチェーンや、複数の管理主体が共同運営するコンソーシアムチェーンとは異なり、単体の組織内で管理されるプライベートチェーンである。承認された参加者グループ内で、迅速・安全で透明性の高いプライベート取引ができる環境を提供している。

プロジェクトの中心人物だった同社の新商品開発部門のエグゼクティブ、スチュアート・ポぺジョイ氏と開発者ウィル・マルティノ氏は、のちにJPモルガンから独立し、新たにブロックチェーン・スタートアップKadena.ioを設立している。

JPモルガンの最新の取り組みを紹介すると、カナダロイヤル銀行およびオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)と共同で、「インターバンク・インフォメーション・ネットワーク(INN)」を立ち上げている。Quorumが提供するブロックチェーン技術を活用し、インターバンク(銀行間)決済プラットフォームを開発するものだ。複雑な処理と時間、コストを要する国際送金プロセスの、劇的な簡略化とスピードアップ、コスト削減を図る画期的な試みだ。

JPモルガンの国際決済・FX・トレジャリーサービス部門マネージング・ディレクター兼責任者・エマ・ロフタス氏 は、「ブロックチェーン技術の誕生は、国際銀行間における重要情報の取得や交換の在り方を再考する機会を与えてくれた」と、同社のブロックチェーン技術への取り組みを歓迎している。

社内密着型スタートアップ支援プログラム「In-Residence」

JPモルガンの未来への投資は、商品・サービスといった物理的な開発にとどまらない。革命的な商品・サービスを生み出す上で欠かせない、優秀な人材の育成にも熱心だ。大手企業と外部の有望なスタートアップとの提携が珍しくなくなった近年、JPモルガンは「すべての参加者にとって本当に価値あるものを創造する」意図で、「In-Residence」を 2016年に開始した。

「金融セクターに革命を起こす商品やサービスの開発を支援する」というコンセプトは既存のアクセラレーター・プログラムやオープン・イノベーションと共通する。大きく異なるのは外部の有望なスタートアップに、「In-Residence(住み込み)」————つまり一定の期間、JPモルガンの社内で密着型のサポートを提供するという点だ。

開発分野はAIからビッグデータ分析まで幅広く、ホールセール・バンキング(大口の預貸業務を中心とする企業向け金融業務)をはじめ、資本市場の価値観を覆すようなアイデアを現実化していく試みだ。

専属のサポートチームが集中的に開発を支援

選ばれたスタートアップは参加期間中(6~18ヵ月間)、同社が世界中に保有するネットワークやデータ、リソースへのアクセスを許可されているほか、社内の技術者やリーダーを含む専門家から、実践的な協力を得ることができる。一つのアイデアを複数のスタートアップとサポートチームで分散するという形式ではなく、スタートアップごとに専属のサポートチームやスポンサーがつき、集中的に開発を支援していく。

応募条件は特に設定していないが、「少なくとも一つの商品・サービスの開発経験があり、シリーズAへの準備段階にあるスタートアップ」を理想の候補としてあげている。世界中からプログラムに参加可能とのことだが、最大限の恩恵を受けるために、ニューヨークおよびロンドンのオフィス付近に住むことを推奨しているようだ。

プログラムを担当するJPモルガン・コーポレート・アンド・インベストメント・バンク(CIB)のダニエル・E・ピントCEO は、競争の激化や規制改革、テクノロジーの進歩によって金融産業が変革期に突入している今、「組織内への投資を大幅に拡大すると同時に、才能溢れる若いスタートアップとの提携にも力を入れ、変化に対応していく」と意気込んでいる。

Motif Investing 、Ankiなど、フィンテックスタートアップへの投資も活発化

外部のスタートアップへの投資にも余念がない。分野を問わず、これまで数え切れないほどの企業に投資してきたが、近年は特にフィンテックスタートアップへの投資が活発化している。代表的な例では、テーマ型投資プラットフォーム「Motif Investing 」や、小型ロボットで一躍脚光を浴びたAIスタートアップ「Anki」がある。

テーマに沿ってポートフォリオを構成するMotif Investing の資産運用サービス「Motif」には、2014年にシリーズDラウンドをリードし、ゴールドマン・サックスなどとともに総額3,500万ドルを投資した。Ankiには2014年と2016年の2度にわたってシリーズCラウンドをリードし、シリコンバレーのベンチャー・キャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツらとともに、総額1億ドル以上を投資している。

のちにフィンテックユニコーン(評価額10億ドル以上の非上場企業)となったカード決済ソリューション「Square」には、ゴールドマン・サックスやモルガンスタンレーなどと共同で、2014年にデット・ファイナンス(債券発行による資金調達)で総額1億ドルを提供している。

「In-Residence」第一期生が開発した機械学習プログラムをトレーディングに採用

早期段階からフィンテックを脅威ではなくチャンスだとみなしていたJPモルガンにとって、貪欲なまでの投資は変革期を迎えた金融市場で生き残るだけではなく、世界トップの座を維持する上で不可欠な戦略だ。ダイモンCEOは、自社のフィンテック投資を今後ますます拡大させる意向を示している。

同社は2017年10月、すでに金利トレーディングで採用しているデータ分析・機械学習プログラム「MSX」を、債券セールスおよびトレーディング業務にも導入する計画を発表したばかりだ。全トレーディングデスクの注文からデータを収集し、セールスパーソンやトレーダーにより明確な状況をリアルタイムで伝えることで、パフォーマンスの効率化を狙う意図である。「MSX」を開発したスタートアップ「Mosaic Smart Data」が、前述した「In-Residence」の第一期生であるという点も興味深い。

True Car、OnDeck Capitalなどとの提携で自社サービスの向上を図る

銀行業務、資産運用、サイバーセキュリティー領域においても、さらなるデジタル強化が期待されている。新たな開発・強化をより効率的かつスピーディーに実施するために、外部商品・サービスも積極的に取り入れている。米国大手オンライン自動車ディーラー「True Car」、小企業向け融資の「OnDeck Capital」、リアルタイム住宅ローンの「Roostify」、金融機関向けメッセージアプリ暗号化メッセージサービスの「Symphony」などだ。

たとえば2016年にサービスを開始した「チェース・オート・ダイレクト」は、同社のウェブサイト「Chase.com」を通して、True Carが取り扱う自動車の中から選択、購入から決済、ローンの申し込みまでを一度に行えるというシームレスなプロセスを売りにしている。また自社の小企業向けの融資サービスには、「OnDeck Capital」のデータ分析による自動融資審査システムを採用している。

自社開発だけにこだわらず、外部との提携関係にも力を入れるという柔軟な姿勢が、新たな顧客価値の創出に一役買っていることはいうまでもない。

フィンテックの本質「ファイナンシャル・インクルージョン」への挑戦

JPモルガンにとっては、フィンテックの本質である「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」も重要な課題である。フィンテックというと「金融とテクノロジーの融合」というイメージのみが先行しがちだが、その本質は「世界中のすべての人々に金融サービスを提供する」というファイナンシャル・インクルージョンにある。

ファイナンシャル・インクルージョンとは、単に「金融機関や一般消費者の利益や利便性を高めるためだけに革命的な商品を開発する」という概念ではない。銀行口座を所有しない、あるいは銀行へのアクセスが悪い地域に住んでいる、身体的・精神的な理由などで支店を訪問することが困難な人々へも、商品やサービスを届けるというミッションをさす。

JPモルガンはファイナンシャル・インクルージョン実現に向け、非営利金融サービス・コンサルティング団体CFSI(Center for Financial Services Innovation)と提携し、Financial Solutions Labを設立した。このプロジェクトでは他にも、地域、人種、男女、高齢者における所得・資産格差問題など、広範囲の視野から改善に挑戦している。ファイナンシャル・インクルージョンに貢献する革命的なソリューションを募集し、最も優秀なソリューションには賞金が贈られるというコンペティションも年に一度開催している。

JPモルガンは、開発と投資、支援をしつつ、フィンテックの本質であるファイナンシャル・インクルージョンの実現に向けて歩みを進めている。金融市場での世界トップの座を維持していくためにも、今後、それらをますます拡大させていくのだろう。

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