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サイバーセキュリティ先進国イスラエル、その背景と最新事情

サイバーセキュリティ先進国イスラエル、その背景と最新事情

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2017/10/19

(写真=Aleksandar Malivuk/Shutterstock.com)

2017年5月、経済産業省はイスラエル国の経済産業省とサイバーセキュリティ分野における協力に関する覚書を交わした。これは原子力発電所をふくむ日本国内の電力インフラなどのサイバーセキュリティを強化する施策の一環であると同時に、2020年の東京五輪に向けて同国とのシナジーを強化したいという意図もあるのだろう。9月18日にニューヨークでイスラエルのネタニヤフ首相と会談した安倍晋三首相が、10月に両国の投資協定が発効されることを踏まえ、両国のサイバー攻撃対策での連携強化を表明していることからもうかがえる。

一方、イスラエルとしては、長年同国が培ってきたサイバーセキュリティシステムやソフトウェアを海外の政府や企業に売り込むことで、広くビジネスを展開したいという思惑がある。特に近年は、自動運転車やIoT機器に対するサイバー攻撃に対応したソリューションを開発するスタートアップが注目を集めている。例えばKaramba Securityは、ルノーやプジョーが参加するフランスの官民団体VEDECOM Techと契約を結び、サイバーセキュリティを実装した自動運転車の開発を実現した。インフラ系の制御システムに特化したサイバーセキュリティ企業Clarotyは、シリーズAの資金調達として3200万ドル(約34億7400万円)を獲得している。

これらはほんの一例に過ぎないが、イスラエルから優れたサイバーセキュリティ企業が生まれる背景には、同国の軍事と深い関わりがある。

イスラエル国防軍はスタートアップのインキュベーションセンター

イスラエルに在住しているユダヤ人と一部のイスラム教徒(ドゥルーズ派のみ)の男女は、高校を卒業した時点で国籍を持たない場合でもイスラエル国防軍(IDF)での兵役が義務づけられる。IDFには8200部隊などサイバー攻撃や防衛、諜報を専門にする部隊が設置され、選ばれた優秀な若者が所定の試験を突破した上で配属される。IDFの特殊部隊での任務期間中はITの研究開発が主要な任務となり、専門知識を持つ研究者との人脈も培われる。

セキュリティ分野に関して言えば、イスラエルでの兵役はスタートアップのインキュベーションセンターのような役割を果たしている。それに加えてGDPの4.2%が国やベンチャーキャピタルを通じてIT分野の研究開発に投資されていることも、スタートアップの促進を後押ししていると言えるだろう。イスラエル国内ではサイバーセキュリティ分野だけでも2015年には81社、2016年には83社が設立されている。

創業者の出身を見ると2015年の時点では55.5%が経験を積んだビジネスパーソンだが、32.5%が大学を卒業した後2~3年の実務経験を積んだ若者、続いて12%がIDF出身者である。ただし、2016年にはIDF出身者が5%まで減少し、実務経験を積んだ若者の比率が43%と前年に比べて11%近く伸びている。これはIDFを退役した直後ではなく、近い業種の大企業やスタートアップで実務経験を積んだ後に起業する若者が増えているためと考えられる。

サイバー攻撃に対抗した防御システムは必要インフラのひとつ

イスラエル国防軍に関連した企業の代表格のひとつがRafael Advanced Defense Systemsである。もとはイスラエル軍の兵器開発部門であったが、2002年に株式会社化した後も国有企業としてミサイルなどの兵器を開発してきた。対ミサイル防空システム「アイアンドーム」の開発の他、電力会社などインフラ系のセキュリティ用の指揮統制システムも開発している。

スマートホーム向けのセキュリティシステムを開発しているMindoLifeは、アラブ人のラミ・クワーリーとIDF諜報部隊出身のヨアヴ・ローゼンザールが創業者として名を連ねている。同社はアラブ人を対象にした国からの補助金を受けて創業している。兵役義務のないアラブ人がIT分野でベンチャー企業を立ち上げる際に不利にならないよう、イスラエル政府は2007年よりアラブ人のスタートアップ経営者を対象に高額の補助金を出す制度を設けていることが背景にある。

パレスチナ問題を含め、近隣諸国での紛争が常にあるイスラエルにとって、サイバーセキュリティシステムは自国を守るために必要不可欠なインフラである。自動運転車やIoTなど、サイバー攻撃の対象が多様化し、場合によっては国家の存亡に関わり兼ねないリスクが生じる今の時代こそ、イスラエルのIT企業が本領を発揮する時代と言えるのだろう。

執筆:高橋ミレイ https://twitter.com/mikeneko301

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