国際金融センターには世界のFinTechベンチャーが集う?アクセラレータ・プログラム「Open Vault」

国際金融センターには世界のFinTechベンチャーが集う?アクセラレータ・プログラム「Open Vault」

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2017/05/19

(写真=ESB Professional/Shutterstock.com)

シンガポールを拠点とし、中国、インドネシア、マレーシアなどアジア18ヵ国・地域に610店舗 をかまえるオーバーシー・チャイニーズ(OCBC)銀行による新境地開拓の勢いには、創業100年、アジア屈指の老舗銀行というイメージを底辺から覆す勢いが感じられる。

FinTechという市場の新たな潮流に乗り、スタートアップと同じ視点に立って、金融産業の流れを変える革命的なソリューションを提供している。

FinTechソリューション・アクセラレータ「Open Vault」とは?

OCBCの新境地の開拓の目玉となっているのは、FinTech ソリューション・アクセラレータ「Open Vault」である。

Open Vaultでは支援プログラムを通してスタートアップの発想を具体化する。同時に、独自のデータ・サンドボックス(外部からのプログラムを保護された領域で動作させ、システムの不正操作を防止するセキュリティ機構)を利用した実験の場を提供している。

スタートアップは経験豊富な専門家やアドバイザーのサポートを受けながら、金融機関が直面している問題の改善に役立つ画期的なソリューションを実用化することが可能だ。また東南アジア地域の活気あふれる金融市場に参入する、絶好の突破口にも成り得る。

「FinTech」「SME向けFinTech」「InsuTech、HealthTech」「RegTech」分野における、効率的なソリューションの発想をもったスタートアップが対象だ。

残念ながら2017年度のプログラム参加者募集は3月末で締め切られたが、4月のピッチデー(投資家に対するプレゼンテーション)でファイナリストに選ばれたスタートアップは、12週間のプログラムへの参加権を得る。

5月から6月にかけて、専門家のサポートのもとソリューションの開発・テストを実施し、7月には実用の可能性を示すために、正式な概念実証(POC)を行うという流れだ。勿論、POCの結果次第ではパイロット・テスト段階へと前進するチャンスが与えられるほか、実用化に向けてさらに大規模な開発へと乗り出す期待も高まる。

「Open Vault 2016」で幕を開けたOCBCのFinTech 参入

OCBCのFinTechへの参入は、2016年のOpen Vault設立とともに幕を開けた。第1回目となったアクセラレータ・プログラムには、世界中から200件の応募が集まったという。

その中から3社がパイロット・テストへと進出を果たした。特長的なのは、欧州をはじめとする海外各地域の企業が名を連ねている点だ。国際金融センターと言われるシンガポールの地理的特性を大いに活かしたものであると言えるだろう。

豪次世代ウェルス・マネージメント・スタートアップのFincast、イスラエルを拠点に機械学習技術を活用したポートフォリオ構成・最適化・モニタリング・ソリューションを提供するBondIt、FinTechを得意分野とする英コンサルティング企業、Cognitoの3社だ。

ほかにもChromaWay、Coins.phなど5社が「提携候補」として、プログラムへの参加を許可された。

サミュエル・チェンCEOはOpen Vaultの成功にあたり、「既存の銀行が消費者からの信頼だけで生き残れる時代は終わりを告げようとしている」と、すでに培った消費者の信頼を糧に、FinTechという新境地でさらなる跳躍を目指す決意を明らかにしている。

「スタートアップのように全力で仕事に取り組む」姿が革命を生む

世界中の大手金融機関は次々とスタートアップと提携関係を結ぶなか、OCBCは「スタートアップのように全力で仕事に取り組む」ことをスローガンに掲げ、既存の金融機関との温度差を前面に押しだした。

絶えずさまざまな実験を行い、「失敗も学習のうち」とポジティブに受けとめることで、組織のアジリティ(機敏さ)を高めることが目標だ。スタートアップに研究や開発を依存するのではなく、共に協力しあって創造していくという姿勢が、ライバルに大きく差をつけると確信している。

ビジネス・スタイルでも、スタートアップを連想させるカジュアルな空気を醸し出している点が新鮮だ。

日々のタスクに真新しい気持ちで取り組み、イノベーション・プログラムを開催するかたわら、国際FinTechエコシステムで活躍するステークホルダーとの交流にも余念がない。オフィスにチームメンバーとして、BB-8(映画「スターウォーズ」に登場するドロイド)が加わっているのも親近感を誘う。

やる気あふれる優秀な人材が自らの発想や夢を現実化できる環境から、新たなイノベーションが生まれてくる。OCBCのOpen Vaultを通した取り組みは、アジアの、そして世界の金融市場をゆるがす結果をもたらすことになるかもしれない。

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